『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争(リトル・スター・ウォーズ) 2021』:2022、日本

ピリカ星で反乱が勃発し、城にも兵隊が押し寄せた。大統領のパピは最後まで戦おうとするが、姉のピイナや治安大臣のゲンブはロケットに乗せて脱出させた。スネ夫は特撮映画を作るため、家の庭にセットを作った。のび太はジャイアンや出木杉と共に撮影を手伝うが、ヘマをやらかして怒りを買った。そこへドラえもんが現れ、秘密道具を出して映画撮影を手伝った。スネ夫からゴミ出しを命じられたのび太は、小さなロケットを見つけた。ロケットが勝手に動いたので、のび太は驚いた。
のび太はロケットを家に持ち帰り、ドラえもんと一緒に調べる。するとロケットに乗っていたパピが現れ、事情を説明した。ロケットは不時着の衝撃で故障しており、ドラえもんは修理を買って出た。のび太はパピに、直るまで家で泊まっていくよう勧めた。翌日、しずかが訪問すると、パピはピイナの面影を見た。しずかはパピが暮らす場所として、ドールハウスを持参していた。しずかが「小さい頃、人形の家で住みたいと思った」と話すと、ドラえもんはスモールライトを取り出した。
ドラえもんたちはパピと同じサイズになり、ドールハウスに入った。しずかは自分の人形を運び込み、ドラえもんがロボッターを付けて動かせるようにした。パピはしずかにピイナという姉がいること、8歳で大学を卒業したことを話した。しずかがピアノのレッスンで帰宅し、入れ違いでジャイアンとスネ夫がやって来た。ドラえもんが映画撮影を忘れていたため、呼びに来たのだ。パピを紹介されたスネ夫は、小さくなって映画を撮影することを思い付いた。
ドラえもんたちがバギーに乗って撮影していると、宇宙戦艦が飛来して攻撃を加えた。ドラえもんたちが逃走すると、宇宙戦艦はトラックと衝突した。宇宙戦艦は船体が損傷し、煙を吐きながら飛び去った。パピはピリカ星がギルモア将軍の反乱によって乗っ取られたこと、ドラコルルの率いるPCIA(ピシア)という組織が自分を追って来たことを説明した。パピがピリカ星の大統領だと告白すると、ジャイアンは協力することを申し出た。
ドラコルルは宇宙戦艦を修理するため、裏山に着陸させた。彼は大量の探査球を放出し、周辺を調べることにした。ドラえもんとのび太は探査球の存在を知り、敵に顔を知られていないしずかにパピを匿ってほしいと頼む。ドラえもんはかべ紙秘密基地を使い、地下室にドールハウスを置いた。探査球の監視を受けるドラえもん、のび太、ジャイアン、スネ夫はどこでもドアで合流し、しずかの部屋へ赴いた。その際、ジャイアンのズボンのポケットには探査球が入り込んでいた。
しずかは不在だったが、ドラえもんたちは秘密基地に移動した。彼らはスモールライトで小さくなり、ドールハウスに入る。探査球は彼らの様子を宇宙戦艦に伝えており、その位置が特定された。ドラえもんはパピたちに、探査球の発信源が裏山だと突き止めたことを教える。スネ夫はラジコン戦車を使い、裏山へ乗り込もうと言い出す。パピはロケットの修理が完了したことを話し、自分が地球を離れれば済むと告げる。しかしドラえもんたちは同意せず、戦車に乗り込んで裏山へ向かう。仕方なくパピは、彼らの後を追った。
買い物から戻ったしずかは、秘密基地に放置されているスモールライトを発見した。彼女は小さくなり、牛乳風呂を楽しむ。そこへピシアが乗り込み、しずかを宇宙戦艦へ連行した。ドラえもんたち裏山に宇宙戦艦が無かったため、秘密基地へ戻った。するとドールハウスが破壊されており、パピは「今夜9時、公園の噴水へ一人で来い」というドラコルルのメッセージを見つけた。
ドラえもんたちはしずかが拉致されたと知り、元の姿に戻ろうとする。しかしスモールライトは持ち去られており、戦車を改造して救出に向かおうと考える。パピは彼らが作業を始める間に、秘密基地を抜け出した。修理を終えたドラえもんたちは、敵の場所が分からないことに気付いた。そこへ犬のロコロコが現れ、飼い主であるパピのことを尋ねた。パピは宇宙戦艦へ行き、しずかの解放と引き換えに捕まった。しずかは彼の考えを知り、すぐに戻った。そこへドラえもんたちが駆け付け、しずかとパピを連れて逃亡した。
秘密基地に戻ったドラえもんたちは喜ぶが、パピは無謀な行動を諫めて「君たちはピシアの恐ろしさを知らない」と告げる。ドラクルルはビジョンの姿でドラえもんたちの前に出現し、ピリカ星へ戻ることを伝えた。彼はパピに戴冠式への出席を要求し、ピイナが人質になっていることを教えた。ドラえもんたちはパピのロケットを使い、ピリカ星へ向かうことにした。怯えて反対したスネ夫も仕方なく同行するが、船内でも苛立ちを漏らした。
パピはスネ夫の心境に気付き、自分も本当は怖いのだと打ち明けた。彼が「自分で出来ることを、がむしゃらにやるしかないんだ」と口にすると、スネ夫は戦車を改造してパワーアップすることを思い付いた。ロケットはワープでピリカ星に到着し、小惑星にある自由同盟の秘密基地へ向かう。自由同盟のロケットがピシアの無人宇宙船に襲われる様子を目撃したドラえもんたちは、戦車で出撃した。のび太が敵の宇宙船を撃退し、一行は自由同盟の秘密基地に到着した。
自由同盟のリーダーを務めるゲンブは、ギルモアが2日後の戴冠式の後でピイナを処刑するつもりであることをドラえもんたちに教えた。自由同盟はピリカ星にいる同志の地下組織と共に、戴冠式の日に攻撃を開始する計画を立てていた。パピはロケットでピリカ星へ向かい、ギルモアに投降した。ドラえもんたちは地下組織への連絡係を志願し、ロコロコが案内役を引き受けた。ドラえもんたちはしずかとスネ夫を留守番に残し、ピリカ星へ向かった。
ドラえもんたちはピリカ星の首都であるピリポリスに入り、地下組織の隠れ家へ赴いて計画を説明した。ピシアが隠れ家に乗り込んで来ると、地下組織のリーダーはドラえもんたちを地下水道から脱出させた。ピシアは自由同盟本部のある衛星を特定し、ギルモアはドラコルルに無人戦闘機を束へ送り込むよう命じた。スネ夫は怖がって隠れようとするが、しずかが戦車で出撃すると駆け付けた。ドラえもんたちはスモールライトを奪還するため、ピシア本部へ潜入した。ドラコルルは彼らの動きを見抜いており、スモールライトを囮にして待ち受けていた。ドラえもんたちは敵を欺き、のび太を逃亡させた…。

監督は山口晋、原作は藤子・F・不二雄、脚本は佐藤大、企画は赤津一彦(藤子プロ)&梅澤道彦(シンエイ動画)、チーフプロデューサーは森文彦&中島進、プロデューサーは小西佑平&谷澤吉紀&八木征志&勝山健晴、クリエイティブディレクターは宮田庄司郎&星聡宏、キャラクターデザイン/総作画監督は丸山宏一、、メカニックデザインは石垣純哉、プロップデザインは鈴木勤、演出は加来哲郎&げそいくお&岡野慎吾、美術監督は河合伸治、撮影監督は末弘孝史、撮影特殊効果は大矢創太、編集は小島俊彦、録音監督は田中章喜、効果は北田雅也、絵コンテは山口晋、エフェクト作画監督は桝田浩史&遠藤正明、メカニック作画監督は鈴木勤、色彩設計は横井未加、音響効果は北田雅也、音楽は服部隆之、主題歌はOfficial髭男dism『Universe』、挿入歌はビリー・バンバン『ココロありがとう』。
声の出演は水田わさび、大原めぐみ、かかずゆみ、木村昴、関智一、三石琴乃、折笠愛、萩野志保子(テレビ朝日アナウンサー)、花藤蓮、香川照之、松岡茉優、内海崇(ミルクボーイ)、駒場孝(ミルクボーイ)、朴ろ美、梶裕貴、玄田哲章、諏訪部順一、武田幸史、鈴木琢磨、柳沢栄治、古川裕隆、鳥海勝美、利根健太朗、高梨謙吾、藤原貴弘、瀧本富士子、慶長佑香、菅谷弥生。


シリーズ第41作。第6作『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争(リトル・スター・ウォーズ)』のリメイク。
TVシリーズや劇場版で原画や演出を担当してきた『超劇場版ケロロ軍曹』シリーズの山口晋が監督を務めている。
脚本はTVアニメ『交響詩篇エウレカセブン』『怪盗ジョーカー』の佐藤大。
ドラえもん役の水田わさび、のび太役の大原めぐみ、しずか役のかかずゆみ、ジャイアン役の木村昴、スネ夫役の関智一らは、TVシリーズのレギュラー声優陣。
他に、ギルモアの声を香川照之、ピイナを松岡茉優、地下リーダーを内海崇(ミルクボーイ)、パイロットを駒場孝(ミルクボーイ)、パピを朴ろ美、ロコロコを梶裕貴、ゲンブを玄田哲章、ドラコルルを諏訪部順一が担当している。

オリジナル版では、オープニングで脱出したのがパピであることは隠されていた。だが、それは何の意味も無い仕掛けなので、最初から姿を見せる改変には賛同できる。
続く映画撮影のシーンは、大幅に短縮されている。スネ夫の映画撮影シーンはオープニング・クレジットで大半を消化しており、のび太が対抗して自分の映画を撮ろうとする手順は丸ごとカットされている。
ロケットを見つけたのび太が、それを使って特撮ビデオを撮ろうと言い出す手順も無くなっている。
オリジナル版では、自分の特撮ビデオを撮ろうとするのび太の身勝手が不快に思えたので、そこの改変にも賛同できる。

今回は出木杉が塾の合宿で映画撮影から離脱しており、彼が不在の時に宇宙戦艦の攻撃を受けている。
そのため、オリジナル版のような「出木杉も宇宙戦艦との戦闘を目撃しているのに、パピを助けるための作戦には参加していない」という部分の引っ掛かりが無い。
ここも出木杉が理不尽に除け者扱いされることが無いように、上手く改変していると感じる。
そういう改善点も幾つかあるものの、全体としてはリメイクした意味を感じない仕上がりとなっている。

しずかの外出中にパピと話す際、ドラえもんたちは全く必要が無いのにスモールライトで小さくなる。裏山へ向かう時、スモールライトを秘密基地に置いて行く。元の姿に戻って裏山へ向かえばいいのに、なぜか小さいサイズのまま、ラジコン戦車で出撃する。
そのせいで、遊び感覚のままで行動しているように見える。
その辺りはオリジナル版から全く修正されておらず、相変わらずのツッコミ所になっている。
スモールライトを奪われても元の姿に戻る方法は何かありそうだが、その可能性もオリジナル版と同じく完全に否定されている。
今回はドラえもんに「他の道具じゃダメなんだよ」と言い訳させているが、それで納得できる余地など皆無。

ドラコルルがパピに戴冠式への出席を要求して姿を消した後、ジャイアンは戦う意思を明確にする。それに対してスネ夫は「こんな豆粒みたいな体で?相手は宇宙戦艦まで持った大軍団だよ」と言い、怖がる態度を見せる。
スネ夫のキャラ設定を考えれば、そこで怖がるのは何もおかしくない。ただ、そこまでのスネ夫は、宇宙戦艦を見ているのに全く怖がらず、ラジコン戦車で撃退に向かうことをノリノリで提案していたのだ。
なのにドラクルルがビジョンで現れた途端、急に腰が引けるのは不自然に見えるぞ。
ドラコルルがビジョンで話した内容なんて、それ以前と敵に対する印象を一変させるようなことは含まれていないし。

スネ夫はピリカ星へ行く道中で不安を抱えていたが、パピの「自分で出来ることを、がむしゃらにやるしかないんだ」という言葉で勇気を貰う。自由同盟のシャトルが無人戦闘機に襲われる様子を目撃した時には、ドラえもんたちと共に出撃して戦う。自由同盟本部で留守を預かっている時は、しずかと共に戦車で戦う訓練をする。
ところがピシアの無人戦闘機軍団が襲来すると、怖がって隠れる。
既に戦闘も経験しているのに、また怖がるのかよ。それは場面によって、コロコロと態度を変えすぎていると感じるぞ。
しかも、そこで再びスネ夫が怖がったら、「パピの言葉で勇気を貰った」という手順が台無しになっちゃうでしょうに。

自由同盟はピリカ星の同志と蜂起する計画を立てており、ドラえもんたちは協力を約束している。にも関わらず、パピは内緒で抜け出し、ギルモアに投降している。
その裏に「実は投降すると見せ掛けて」みたいな狙いがあるわけではなく、ただギルモアを次の国王として承認するために屈服しただけだ。
一応は「仲間を守るため」という言い訳は成立するけど、むしろ仲間に対する裏切り行為にしか見えないぞ。
冒頭シーンでは残って共に戦おうとしていたのに、真っ先に戦いを放棄するってのは、どういうつもりなのか。

そもそもパピが投降したところで、それで仲間が助かることが確約されているわけでもない。投降する代わりに、ピイナを解放するという約束を取り付けているわけでもないし。
あと、大量の無人戦闘機が衛星へ向かう様子を目撃した時のパピが無反応なのは、どういうことなのか。すんげえ薄情な奴に見えるぞ。
そんで実際に式典が始まると、パピはギルモアを厳しく批判するスピーチをする。そのせいで彼は、ピイナと共に処刑されそうになる。
いやアホじゃねえか。スピーチを聞いた市民が蜂起するけど、それを狙っていたわけではないし。市民の放棄は、都合の良すぎる結果論に過ぎないし。
しかも、市民が蜂起しなくても、ドラえもんたちが元のサイズに戻るから、それだけでギルモアたちとの戦いには勝てちゃうし。

(観賞日:2023年7月28日)

 

*ポンコツ映画愛護協会