『映画ドラえもん 新・のび太の宇宙開拓史』:2009、日本

移民団を乗せた宇宙船は、ワープ航法に入った。その途中、移民船はエネルギー波の嵐に巻き込まれ、ブースターが故障してしまう。少女 モリーナは心配になり、仲良しの少年ロップルと共に、父親のバーンズ博士や移民団の団長カモランたちの元へ行く。すると、バーンズが 修理のため外へ出て行くところだった。バーンズは船外活動でブースターを修理するが、ケーブルが切れて嵐に吸い込まれた。そんな夢を 見て、のび太は目を覚ました。部屋のカーペットはクリーニングに出されており、床は畳になっている。
のび太がジャイアンやスネ夫たちと一緒にやっている野球チーム“ジャイアンズ”の練習場所である空き地が、中学生グループに占拠 された。のび太はジャイアンたちに乗せられ、空き地を中学生から取り戻す代表にされた。ヘタすぎて野球部に入れてもらえないことを のび太が言い当てたため、中学生グループは怒り出した。のび太は慌てて逃げ出し、工事現場の穴に転落した。
ロップルはウサギのような宇宙生物チャミーと共に宇宙船で航行中、大きな宇宙船に追われていた。ロップルはワープ航法を使ったが、 高速での使用は危険を伴うものだった。そんな様子を、穴に落ちて気絶していたのび太は夢に見た。ジャイアンたちに追われたのび太は、 しずかに匿ってもらおうとするが、木から落ちてしまった。ロップルの宇宙船は、奇妙な空間で動けなくなった。その様子を、気絶した のび太は夢に見ていた。
意識を取り戻したのび太は、スネ夫から「ドラえもんに野球場を見つけてもらえばいい」と告げられた。ドラえもんはスモールライトで 小さくなるよう提案するが、のび太は今のサイズのままで常に使える野球場を所望した。夜になって、彼は「誰もいない星を見つけりゃ いいんだ」と考えた。ドラえもんは「何とかしてみよう」と言うので、のび太は寝床に就いた。
ロップルとチャミー腹を空かせていた。チャミーはドアを開けようとするが、全く動かなかった。そこで、力を入れてドアを押してみた。 すると、のび太の部屋の畳が持ち上がった。次にチャミーは木槌で思い切りドアを叩き、外に飛び出した。のび太は、畳から勢い良く何か が飛び出すのを目撃した。ドラえもんと共に音がする台所へ行くと、チャミーが冷蔵庫を漁っていた。のび太は、夢でみた宇宙生物だと、 すぐに気が付いた。
ドラえもんとのび太は、どうやってここに来たのか、チャミーに尋ねた。畳の底が宇宙船の倉庫に繋がっているのを目にして、彼らは 驚いた。何かの拍子に時間と空間がズレたのだ。のび太がチャミーたちの夢を見たのは、ねじれのせいだった。宇宙船に入ると、ロップル が空腹で倒れていた。ドラえもんたちは、彼に食料を与えた。ロップルたちは、地球という星の名前を聞いたことが無かった。彼らは コーヤコーヤ星という星に住んでいるという。
畳の底が宇宙船の倉庫と繋がったことに関して、ロップルは「ワープの失敗が原因かもしれない」と言う。宇宙船の故障箇所を調べるため、 ドラえもんたちは通り抜けフープを使ってメカルームへ移動することにした。倉庫には、野菜や穀物の種が大量に積んであった。春に なったら畑に撒くのだという。以前は定期便があったが、不気味な宇宙船に襲われて積荷を奪われた。そのため、ロップルが運んだのだが 、また宇宙船に襲撃されたのだ。
ドラえもんはタイムふろしきを使い、宇宙船を故障する以前の状態に戻した。ワープは終了し、目の前にはコーヤコーヤ星が見えた。 それでも、ねじれた空間の一部は繋がっており、ドアを開けると、まだのび太の部屋の底だった。ドラえもんとのび太はロップルたちに 別れを告げ、部屋に戻った。翌日、ドラえもんとのび太が畳の下を見ると、まだ宇宙船と繋がっていた。宇宙船のハッチを開けて外に出る と、そこは格納庫だった。のび太がボタンを押すと格納庫が上昇した。
ドラえもんとのび太が格納庫から出ると、そこはコーヤコーヤ星だった。何も無い荒野を目にしたのび太は、「ここを僕らの空き地に しようよ」と告げた。地中からカエルのような魚、ウオガエルが何匹も出現した。海が無いのに大津波が襲ってきたため、ドラえもんと のび太はタケコプターが空に逃げた。ドラえもんは救命イカダを出して、その中で水が引くのを待つことにした。
翌朝、津波が引いた荒野に、地中から家が出現した。ロップル、妹クレム、母ライザ、チャミーが家から出て来た。ロップルはクレムに 「春の大洪水が豊かな土を運んできてくれる」と語った。救命イカダから出て来たドラえもんとのび太は、ロップルたちと再会した。 ロップルは、冬の猛吹雪と春の大洪水を避けるため、家を地下に沈めてあったことを語った。だが、その格納庫をのび太が地上に出して しまったため、ロップルの宇宙船は洪水に流されて消えていた。
ドラえもんたちはタケコプターで空を飛び、宇宙船の捜索に向かった。周囲に人の姿はまるで無かった。ロップルは「この星に来てから、 まだ7年。開拓の途中なんだ」と告げた。コーヤコーヤ星はロップルの父が発見した星で、資源が豊富なのだという。しばらく行くと牧場 が見えた。牧場主の女性を見たのび太は、夢で見た少女モリーナの成長した姿だと気付いた。モリーナはバーンズが磁気嵐に巻き込まれて 以来、他の移民とは距離を置いていた。
モリーナはロップルに、「こんな所にいると大事になるよ、帰りな」とそっけなく告げた。そこへ大きな宇宙船が現れると、モリーナは 「早く隠れないと」と怒鳴った。ロップルは「ガルタイト鉱業の警備艇だ」と言い、ドラえもんたちを隠れさせた。宇宙船から降りてきた ダウトとウーノは、「見掛けない奴が空を飛んでいたって聞いたぞ」「この星への新たな移民は禁止になった。忘れてもらっちゃ困る」と モリーナに告げる。モリーナは「私には関係ないね」と冷淡に告げ、彼を追い払った。
ロップルはドラえもんとのび太に、「あいつらが勝手な法律を作って新たな移民を禁じた。この星はガルタイトの固まりだ。ガルタイトは 反重力エネルギーを発生させる結晶で、僕らの文明を支える石だ。奴らは僕らを追い出してガルタイトを独占するつもりなんだ」と言う。 ガルタイトで弾き飛ばされたのび太は、ロップルの宇宙船を発見した。のび太が「友達を連れてきていいかな?」と尋ねると、ロップルも クレムも大歓迎する意志を示した。
ドラえもんとのび太が部屋に戻ると、コーヤコーヤ星には2日間もいたはずなのに、2時間しか経過していなかった。地球の1時間が、 コーヤコーヤ星の1日なのだ。翌日、ドラえもんたちはジャイアン、スネ夫、しずかちゃんを誘ってコーヤコーヤ星に向かった。1日後 なので、コーヤコーヤ星では1ヶ月が経過していた。荒野だった辺り一面は、すっかり緑に覆われていた。
ロップルとクレムはバスに乗って学校へ向かった。ドラえもんたちは森を抜けて草原に辿り着き、野球を始めた。するとジャイアンの 投げたボールは超高速になり、バットに当たって跳ね返ったボールをキャッチしようとしたしずかの体はフワリと空に浮かんだ。そこへ ガルタイト鉱業の警備艇がやって来た。警備艇は、ボールが当たって穴が開いていた。ガルタイト鉱業の連中は「移民法違反で逮捕する」 と言い、光線銃を撃ってきた。ドラえもんたちは慌てて逃げ出した。
ジャイアンたちは「こんな恐ろしい場所で野球なんか出来ない」と怒り、さっさと帰ってしまった。ロップルはドラえもんとのび太に、 「ガルタイト鉱業の嫌がらせは酷くなる一方だ。自分たちの星は、自分たちで守るしかないのさ」と告げた。地球に戻ったのび太は、 ジャイアンたちが空き地で遊ぶ姿を目撃した。中学生が去って、空き地が自由に使えるようになったのだ。だが、ジャイアンとスネ夫は 「のび太は入れてやらないからな」と告げた。
ドラえもんとのび太が部屋にいると、ドラミが現れた。定期健診をサボろうとしたドラえもんを連れて行くためだ。ドラえもんは逃亡を 図るが、ドラミの手針で連れ戻された。ドラミがドラえもんを捕まえてタイムマシンで去った後、のび太は一人でコーヤコーヤ星へ行こう とする。だが、畳の下を見ると、宇宙船のドアとは隙間が生じていた。別の空間に流されてしまったのび太は、不気味な森に落下した。 巨大生物に襲われ、怪しい人影に迫られたのび太は、ドラミの手針で救出された。
ドラミが去った後、のび太の部屋にチャミーが飛び出し、「また海賊が」と告げた。ドラえもんとのび太がロップルのカーゴ船に行くと、 大きな宇宙船による襲撃を受けていた。ドラえもんがひらりマントで宇宙船を追い払うが、カーゴ船も操縦不能となって不時着した。 墜落した宇宙船を調べに行くと、中からガルタイト鉱業の連中が現れた。光線銃を向けられたのび太が持っていた空気銃を撃つと、コルク の弾丸を受けた敵は次々に倒れた。その場から逃げようとしたドラえもんとのび太は、驚異的なスピードを出した。
ドラえもんは「僕らはスーパーマンになってるんだよ」と気付いた。ドラえもんとのび太は、ガルタイト鉱業の連中を倒した。ドラえもん がタイムふろしきでカーゴ船を故障前の状態に戻し、彼らはコーヤコーヤ星に戻った。ロップルは移民の仲間たちに、ドラえもんたちの 活躍を語った。だが、捜索に行っていた警察からは、警備艇のカケラさえ見つからなかったとの報告が入った。
のび太はロップルとクレムに「これからも出来る限りのことはする」と約束し、部屋に戻った。警備艇の痕跡を消してダウトたちを回収 したのは、ガルタイト鉱業本社から派遣された男ギラーミンだった。彼はコーヤコーヤ星の主任バカラに、「邪魔者は速やかに消せ」と 命じた。バカラが「移民団の奴らに困ってる」と言うと、ギラーミンは「この俺に任せておけ」とニヤリと笑った。
翌日、のび太はママに0点の答案用紙を見つかり、外出禁止を言い渡された。「地球だとロクなことが無い」と愚痴をこぼしたのび太は、 ドラえもんと共にコーヤコーヤ星へ向かった。のび太はロップルたちの畑仕事を手伝ったり、あやとりを披露したりして楽しく過ごした。 そんな中、カモランの畑をガルタイト鉱業の連中が荒らした。ドラえもんとのび太は現場に駆け付け、一味をやっつけた。ギラーミンは、 その様子を観察していた。
酒場にいた移民たちはドラえもんとのび太の活躍を聞き、「これで安心」と口にした。だが、モリーナは会話に加わらず、そっけない態度 で立ち去った。畑では作物が枯れ始め、ウオガエルが苦しそうな様子を見せた。ドラえもんは川の水に問題があるのではないかと推理し、 のび太と共に調査に乗り出した。川の上流に行くと、ガルタイト鉱業の機械が毒を流していた。
ドラえもんたちを待ち受けていたダウトとウーノは、レーザーで攻撃してきた。ドラえもんがひらりマントで反撃すると、ギラーミンは 証拠となる毒の機械を爆破し、ダウトたちに「最後の手を使うぞ」と告げた。コーヤコーヤ星は秋になり、美しい紅葉の景色となった。 そんな中、ギラーミンはコア破壊装置を用意した。それは地中のマントルを刺激し、星を内部から木っ端微塵に打ち砕く装置だ。彼は不敵 な態度で、「後は地殻変動に見せ掛けて、星のカケラからガルタイトを集めるだけだ」と言う。
ギラーミンがバカラに「地球人とタヌキがどうやって来ているのか調べろ」と命じると、ダウトが「心当たりがあります」と告げた。彼の 案内で、ギラーミンはモリーナの家に出向いた。ギラーミンは「バーンズ博士の噂がある。教えて欲しければ、あいつらがどこから来て いるのか教えるのが条件だ」と持ち掛けた。モリーナはギラーミンの取引に乗り、情報を教えた。
ママから厳しく叱責されたのび太は、しばらくコーヤコーヤ星に行くのを控えることに決めた。ダウトとウーノはロップルのカーゴ船に 潜入し、倉庫のドアに爆破装置を仕掛けた。ドラえもんたちがドアを開けると爆発する仕掛けだ。ギラーミンはコア破壊装置を起動させ、 ダウトたちに命じて「この星は地殻変動で1週間以内に爆発するから立ち退くように」と移民向けにアナウンスさせた。
チャミーがドラえもんたちを呼びに行こうとしたのと、のび太が心配になってコーヤコーヤ星へ向かおうとしたのは、ほぼ同時だった。 だが、ドラミが現れたため、のび太は開けようとした畳を慌てて元に戻した。その瞬間、チャミーがドアを開いたために宇宙船が爆発した。 ロップルはドラえもんたちが来られなくなったと確信し、自分だけでギラーミンたちの元へ向かう…。

総監督は楠葉宏三、監督は腰繁男、原作は藤子・F・不二雄、脚本は真保裕一、チーフプロデューサーは増子相二郎&杉山登、 プロデューサーは小倉久美&吉川大祐&藤森匠&山崎立士&大倉俊輔、演出は宮下新平、 総作画監督は金子志津枝、作画監督は千葉ゆみ&大杉宜弘&浅野直之、絵コンテは腰繁男&楠葉宏三&やすみ哲夫、メカデザインは 渡辺歩、美術は土橋誠、色彩設計は松谷早苗、色彩設計補佐は堀越智子、3DCG監督は奥村優子、3DCGスーパーバイザーは 木船徳光、撮影監督は岸克芳、編集は小島俊彦、録音監督は田中章喜、効果は糸川幸良、音楽は沢田完。
オープニングテーマ『夢をかなえてドラえもん』作詞・作曲:黒須克彦、編曲:大久保薫、コーラス:ひまわりキッズ。
エンディングテーマ『大切にするよ』作曲・編曲:市川淳、作詞・歌:柴咲コウ。
挿入歌『キミが笑う世界』作詞:マイクスギヤマ、作曲・編曲:沢田完 歌:アヤカ・ウィルソン、ひばり児童合唱団。
声の出演は水田わさび、かかずゆみ、木村昴、関智一、千秋、大原めぐみ、三石琴乃、松本保典、萩野志保子、竹内都子、櫻井智、 佐久間レイ、香里奈、アヤカ・ウィルソン、大塚明夫、徳井義実(チュートリアル)、福田充徳(チュートリアル)、若田光一、 堀内賢雄、堀江由衣、渡辺菜生子、佐藤正治、茶風林、峰あつ子、大川透、渋谷茂、、高戸靖広、後藤史彦、まるたまり他。


ドラえもんの劇場版シリーズ第29作。リニューアル版では第4作。
リニューアル版第2作「のび太の新魔界大冒険〜7人の魔法使い〜」の真保裕一が脚本を担当している。
ゲスト声優はロップル役の櫻井智、チャミーの佐久間レイ、モリーナの香里奈、クレムのアヤカ・ ウィルソン、ギラーミンの大塚明夫、ダウト&ウーノのチュートリアル、宇宙船操舵員の若田光一(JAXA宇宙飛行士)、バーンズ博士の 堀内賢雄、モリーナ(10歳)の堀江由衣など。

これはシリーズ第2作『のび太の宇宙開拓史』のリメイクである。
私はリニューアル後の1作目と2作目が旧シリーズのリメイクだった時に、オリジナルの新作を生み出す気概が無いのなら、無理に シリーズを続ける必要など無いと感じた。
しかしオリジナル脚本だった第3作目は、最も出来が悪かった。
そうなると、またリメイクに戻るのは、製作サイドからすると当然の判断なのだろう。
それにしても、リメイクもダメ、オリジナル脚本でもダメとなると、製作サイドは根本的なところから見直した方がいいんじゃないのか。
真保裕一の起用は「ドラえもんのファンだから」ということらしいが、例えばファンじゃなくても、児童小説の作家やファミリー向け アニメに携わっている脚本家を起用してみるとか。

話が始まってすぐに、「キャラクターのデザインが歪んでいるんじゃないか」と感じる。全体のフォルム、バランスが変なのだ。
脚部がヒョロッと長くて、関節部分がやけにくびれていて、腕は細いのに手首の辺りがモコッと膨らんでいるというポパイみたいな フォルムで、なんか気持ち悪いぞ。
あと、腕や足の動きも、変な方向にグニャッと曲がったりするんだよな。
それ以降は、そんなにデザインの崩れが気になることは無くなるけど、導入部で違和感を持たせたらマズいでしょ。

のび太の部屋に「カーペットはクリーニングに出しました」というママの貼り紙があるのは強引にも思うが(リニューアル版では、彼の 部屋の床は旧シリーズのような畳ではなく、カーペットになっているのだ)、この話は床が畳じゃないと成立しないので、まあ許そう。
だが、それ以外は、甘受し難いモノがある。
ただオリジナル版をトレースするだけでなく、オリジナルの要素も付け加えようという意識があったんだろうが、その 改変部分が大きなマイナスを生むという残念な結果になっている。

チャミーがドアを開けようとすると、のび太の部屋の畳が持ち上がる。
ここ、チャミーの動きを見せずに、何の情報も無い状態で「畳が持ち上がる」という様子を見せて、そこからドラえもんとのび太が 調べて「実は宇宙船と繋がっていた」という形の方がいいような気がする。
先にネタバレさせちゃうと、ドラえもんとのび太が気付くまでの時間が、まどろっこしく感じる。
でも、ハッキリ覚えてないけど、原作漫画でもそんな描写だったような気がするし、しょうがないか。

のび太は大津波から逃げようとした時、いつもより異常に早く走ることが出来る。 だが、すぐに津波に飲み込まれてしまうので、「この星では地球人の運動能力が高くなる」というアピールとしては不充分なものになって しまう。
その程度で終わるなら、そんな中途半端な描写をすべきではない。
っていうか、どうやら、それをアピールする気は無さそうなんだよな。
じゃあ何の意味があるのか。

ドラえもんたちが宇宙船を捜索するためタケコプターで空を飛ぶと、周囲には民家も人の姿も全く見えない。
その後、ロップルが不時着した場所でのドラえもんとのび太の活躍を語る場面で、ようやく他の移民たちの姿が出て来る。
でも、その前に登場させておくべきじゃないのか。
移民たちにしてみれば、そもそもドラえもんとのび太は何者なのかってことになるし。

ロップルが「この星に来て、まだ7年。開拓の途中なんだ」と説明した直後、市街地が見えてくる。
オリジナル版だとトカイトカイ星があって、「トカイ(都会)」に対しての「コーヤ(荒野)」だったのに、今回はトカイトカイ星が登場 せず、コーヤコーヤ星に「都会」と呼べるような市街地があるのね。
だけど、まだ7年目で開拓の途中じゃなかったのかよ。なんで、そんな市街地があるのよ。それだと、「たまたまロップルの家が郊外に 建っているだけ」ということになっちゃうじゃねえか。
しかも洪水の直後で、まだ荒野だったはずなのに、その近くには草原や牧場といった緑豊かな場所もあるし。
設定がメチャクチャだな。

草原で野球をしていると、投げたボールは超高速になり、キャッチしようとジャンプするとフワリと浮かぶ。
ジャイアンたちは初めてだからともかくとして、ドラえもんとのび太は初めて来た時に「走って津波から逃げようとしたのび太が異常に 早く走る」というのを体験している。そして、そこでも前述のような出来事や、野球のボールで警備艇に穴が開くというのを見ている。
おまけに、ガルタイト鉱業の連中から逃げ出した時に異常なスピードが出ているのに、まだ「重力の違いでスーパーマンのような驚異的な 運動能力を発揮できるようになっている」ということに誰も気付かない。
不時着した場所でガルタイト鉱業の連中から逃げた時、ようやくドラえもんが気付く。
「どうして今まで気付かなかったんだろう」と言うけど、気付くのが遅すぎるだろ。
っていうか、不時着した場所はコーヤコーヤ星じゃないよね。
それはコーヤコーヤ星の大地の上で気付くべきことなんじゃないのか。

モリーナは「移民団が父を見捨てた」と思い込み、ギラーミンに協力する。彼女は集まった移民たちに「父はガルタイト鉱石を売ることに 反対していた。なのに貴方たちは星を売った」と怒りをぶつける。
ようするに、彼女は移民団が考えの異なる父を見殺しにしたと思っているわけだ。
でも、なぜ今さら、そんなことを言うのか。
で、そんなに根強い不信感を抱いていたのなら、カモランが「ガルタイト鉱業に騙されたんだ」と言った時、なぜハッとなって自分の 間違いに気付いたようなリアクションを取るのか。
そんな言葉に全く耳を貸さず、まるで信じようとしない方が自然じゃないのか。

原作やオリジナル版では、「カモランの息子ブブがクレムに好意を持っていたのでのび太に嫉妬し、敵に情報を提供する。宇宙船に爆弾が 仕掛けられ、責任を感じたブブは、ジャイアンの道案内を買って出る」という展開があった。
今回はブブをエキストラ扱いにして、似たような役割をモリーナという新キャラクターに任せているのだが、敵に協力する理由や、その後 の行動は全く違う。
ブブと違って、ずっと移民を嫌っているし。
ハッキリ言って、すげえ不快な奴になっている。

モリーナも要らないキャラだし、ドラミも要らない。
ドラえもんたちがピンチになった時、ジャイアン、スネ夫、しずかだけでなくドラミも駆け付けるが、ドラミが来たのなら、ジャイアンが 大きな石をバットで打って敵の警備艇を攻撃する必要なんか無いでしょ。
ドラミの秘密道具を使えば、それで済む。
ドラえもんと違って、焦ってパニックになることも無いだろうし。

コア破壊装置の処理方法は、オリジナル版では「ドラえもんがパニックになって取り出したタイムふろしきが、風に飛ばされて被さって いたため、セットされた時間より前に戻っていた」というものだった。
だが、今回はタイムふろしきにばかり頼るのを避けたかったのか、「敵のカーゴ船のアームで挟み、コア破壊装置をワープさせる」という 方法を取っている。
でも、それだと秘密道具が使われていないし、ドラえもんものび太も別に要らないだろと思ってしまう。
そこは派手な見せ場を作りたいという意識と、それ以上に「別の星に不時着し、そこに一人で住んでいたバーンズとモリーナが再会する」 という展開に繋げたかったんだろう。
だが、それもほんとに要らない改変だ。リメイク版の新キャラ2名が、作品のガンになっている。
大体さ、のび太とロップルの友情が話の軸として存在しているのに、そこに全く関与していないモリーナが父と再会するシーンを見せ場と して持って来られても、感動しないって。

モリーナはのび太との絡みもほとんど無いし、ジャイアンたちとは全く絡んでいない。
っていうか、ジャイアンたちはロップルとも、ほとんど絡んでいない。
再会シーンで、のび太が「この星にも、もう一つの宇宙開拓史があったんだね」と言うのは、取って付けた感 丸出しだし。
「のび太のくせに、生意気なセリフを吐いてるんじゃねえよ」と言いたくなる。

(観賞日:2010年3月23日)

 

*ポンコツ映画愛護協会