『宇宙大怪獣ドゴラ』:1964、日本

電波研究所でテレビ衛星から送られてくる映像を観測していた桐野技官たちは、空飛ぶ円盤でも宇宙螢でもない謎の物体を目にした。これまで行方不明になったテレビ衛星の原因に関係がありそうだと桐野が考える中、が突如として遮断された。同じ夜、宝石店の天宝堂の前に車を停めている浜子に、巡回中の警官2名が声を掛けた。特に問題は無いと考えた警官たちは、その場を去った。直後、彼らは宙に浮かぶ酔っ払いを発見した。地面に落下した酔っ払いは、自分が浮かんでいたことに全く気付いていない様子だった。
浜子は車のナンバープレートを入れ替え、作業をしている仲間に連絡を入れて状況を尋ねる。浜子はダイアモンド強盗団の見張り役だった。金庫を開けようとしていた強盗団の多田や真木たちは、いきなり宙に浮かび上がった。彼らが見えない力で追い出された後、クラゲのような謎の物体が金庫に張り付いた。邪魔が入ったと考えた強盗団は、車で逃亡した。次の夜、警視庁外事課の駒井刑事は結晶構造学の権威である宗方博士の元を訪れ、「お客が来たはずですが」と告げて邸内の調査を申し入れた。了承して彼を招き入れた宗方は、皿に置いてあったダイアモンドが消えているのに気付いた。
拳銃を構えて室内を調べた駒井は、マークという外国人が隠れているのを発見した。マークは「私がお客さんです」と告げ、隙を見て駒井を殴り倒した。マークは駒井の落とした拳銃を拾い上げ、部屋から逃走した。すると浜子と真木が車で近付き、マークを拳銃で脅して同乗させた。駒井が意識を取り戻すと、宗方の秘書である昌代が来ていた。駒井は宗方に、マークが宝石ブローカーであることを語った。
駒井は世界的な宝石強盗団が各地でダイアモンド泥棒を繰り返しているため、捜査を進めていた。しかし浜子たちの所属する組織が実行したのはパリの一件だけで、それ以外は全て別の犯人に横取りされていた。ボスが手下の松やサブたちを集めて苛立ちを示していると、浜子と真木がマークを連れて来た。宝石ブローカーのリストに名前が無いことをボスが指摘すると、マークは「じゃあモグリだ」と軽く言う。「昨夜の犯人はお前だろう」と詰め寄られたマークは、「さあねえ」と惚けた。真木がマークのポケットを探ると、宗方の家から持ち出されたダイヤモンドの袋が入っていた。
駒井は宗方に、天宝堂事件の現場写真を見せた。厳重な金庫が、まるで蝋細工のように溶けていた。屋敷から盗まれたダイヤについて被害届を出すよう求められた宗方は、「あれは人造ダイヤでね。それに結晶構造の研究中なので、まだ公にしたくないんだ」と口にした。マークのダイヤモンドは真木が鑑定し、全て偽物だと判明した。強盗団はマークを殴って昏倒させ、物置へ放り込む。しかしマークは連行した2人を殴り倒し、アジトから逃亡した。
強盗団は本部から連絡を受け、大きな仕事を手掛けることになった。明日、横浜にダイヤの原石を積んだ船が入港する。狙うのは宮城県のダイヤ磨きの工場へ運ぶ途中だ。駒井は昌代を、石炭置き場の近くにあるアパートまで送って行く。駒井は彼女に、「博士も貴方も、私の勘では産業スパイに狙われている」と警告した。2人が歩いていると、昌代の兄である桐野がやって来た。彼は何か警戒している様子で、空を見上げた。不気味な音が聞こえると、彼は「テレビ衛星を破壊した奴です」と言う。姿は見えないが、桐野は「確かに僕はこの音を聞いたんです」と告げる。
駒井、昌代、桐野は、石炭工場の煙突が折れて宙に舞い上がるのを目撃した。他にも大勢の人々が注目する中、集積場の石炭が空に吸い上げられた。その際、空には火花のような物質が発生した。駒井たちは撮影された写真を宗方に見せ、火花のような物質の正体について尋ねる。宗方は「検査器で詳しく調べてみないと分からないが」と前置きした上で、「見たところ、炭素物質らしいな」と告げた。
駒井は課長から電話を受け、「マークが大きな顔をして銀座を歩いているのを知ってるのか」と叱られた。新田刑事が尾行すると、マークは宿泊しているホテルへ戻った。マークが部屋に入ると、駒井が待ち受けていた。昨夜の行動について説明を求めると、マークは「そんな時間は無いんです。そろそろ奴が出掛けるんでね」と告げた。駒井は警察に出頭するよう要求するが、マークは隙を見て逃げ出した。
強盗団はダイヤの運搬車を襲撃するが、そこへマークが現れて銃撃戦になった。強盗団は通り掛かった石炭トラックを奪い、それをマークに突っ込ませようとする。しかしトラックは宙に浮かび上がり、墜落して運搬車に激突した。強盗団は車で逃亡した。事件の捜査に当たる駒井たちだが、石炭トラックが絡んでいることに首をかしげる。ニューヨークでは宝石店からダイヤが奪われ、同時刻に石炭竜巻の怪現象が起きていた。駒井は一連の事件の手掛かりを謎の怪物が握っているのではないかと推測した。
駒井は昌代から電話を受け、マークが宗方邸に来ていることを聞かされた。マークは金庫盗難事件の現場写真を宗方に見せ、「これほど強い熱と圧力を出せる機械は、貴方以外には作れません。我々が調べた結果です」と告げる。そこへ駒井が刑事たちを引き連れて現れるが、マークは彼が来ることを予期していた。駒井と課長だけが家に入ると、マークは自分がダイヤ保険協会の調査員であることを明かした。彼は駒井たちに「犯人は強盗団とは別にいる」と告げ、今後は協力することを約束した。一方、アジトに戻った強盗団は奪った袋を開けるが、中身は全て氷砂糖だった。
桐野は宗方邸を訪れ、「怪物の正体が分かりましたよ」と告げる。国連の宇宙対策委員会から連絡があり、放射能で突然変異した宇宙細胞だという結論が出たという。宇宙対策委員会は、宇宙細胞がエネルギー源として石炭を摂取しており、一連の宝石強盗の犯人でもあるという見方をしていた。マークは懐疑的な態度を示すが、石炭もダイヤも同じ炭素物質であることから、宗方は宇宙対策委員会の考えに同意した。宗方は、宇宙細胞がどんどん繁殖し、含有炭素物資を食い荒らして人類が滅亡することを危惧した。
宗方邸に宇宙細胞が飛び込み、金庫を溶かした。宇宙細胞は南アフリカのダイヤモンド鉱山にも出現し、大被害を与えた。宇宙細胞は「ドゴラ」と命名され、世界各地に次々と被害を与える。日本では石炭の産地である北九州が特別警戒態勢に入った。旅行の自粛が要請される中、宗方は研究のために昌代を伴って北九州へ向かう。駒井は宇宙細胞に石炭トラックが襲われた現場でダイヤの運搬車が被害を受けなかったことから、積まれていたのが偽物だったと確信した。
マークが何か情報を掴んでいると考えた駒井は、ホテルをチェックアウトして九州へ向かった彼を追い掛ける。マークは宗方たちと同じ列車に乗り込んでいた。列車には浜子も乗っており、マークに「私と手を組まない?貴方だけでダイヤを何とか出来るつもり?2人なら何とか出来るわよ」と持ち掛けた。彼女はマークがホテルのボーイに氷砂糖を買わせたことを突き止めており、彼がダイヤを摩り替えたと確信していた。マークは手を組むことを拒み、その場を去った。
北九州に到着した宗方は、教え子である防衛司令の岩佐と遭遇した。警報が鳴り響き、岩佐は対空レーダーに異常反応があったとの知らせを受けた。岩佐が宗方と昌代を連れて基地に戻ると、観測は続けられていた。目標は消えたり現れたりを繰り返していたが、宇宙細胞とは異なる物体ではないかと宗方は語る。音を聞いた彼は「虫の大群のようだ」と言うが、高度からすると虫の存在は考えにくい。偵察機が目標空域へ向かうと、ミツバチの群れが飛んでいるだけだった。
浜子はホテルに強盗団を呼び寄せ、マークの部屋番号を教える。強盗団は気付いていなかったが、マークの部屋には駒井が訪れていた。ダイヤの原石を持っていることは否定したマークだが、北九州へ来た目的については明かさなかった。宗方の部屋を訪れた駒井は、協力を要請された。その直後、ドゴラが出現したため、市民には避難命令が出た。駒井や宗方たちが基地に到着する中、自衛隊は上空に出現したドゴラを砲撃する。しかしドゴラは何の影響も受けず、石炭を吸い上げた。自衛隊がロケット弾を発射すると、ドゴラに命中した。しかし消滅したと思われたドゴラは、細胞分裂を起こして繁殖した…。

監督は本多猪四郎、特技監督は円谷英二、原作は丘美丈二郎『スペース・モンス』より、脚本は関沢新一、製作は田中友幸&田実泰良、撮影は小泉一、美術は北猛夫、録音は矢野口文雄、照明は小島正七、編集は藤井良平、音楽は伊福部昭。
出演は夏木陽介、藤山陽子、小泉博、若林映子、中村伸郎、河津清三郎、ダン・ユマ、藤田進、田崎潤、田島義文、天本英世、桐野洋雄、若松明、加藤春哉、船戸順、堤康久、岩本弘司、津田光男、熊谷卓三、当銀長太郎、広瀬正一、中山豊、上村幸之、土屋詩朗、鈴川二郎、坂本晴哉、澁谷英男、岡豊、千葉一郎、広田新二郎、伊原徳、岡部正、大前亘、宇野晃司ら。


『海底軍艦』『モスラ対ゴジラ』の本多猪四郎が監督を務めた作品。
監督の本多、特技監督の円谷英二、脚本の関沢新一、音楽の伊福部昭、製作の田中友幸という顔触れは、『大怪獣バラン』、『宇宙大戦争』、『キングコング対ゴジラ』、そして前述の2作品に続いて5作目。
駒井を夏木陽介、昌代を藤山陽子、桐野を小泉博、浜子を若林映子、宗方を中村伸郎、強盗団のボスを河津清三郎、マークをダン・ユマ、岩佐を藤田進、刑事課長を田崎潤、多田を田島義文、真木を天本英世が演じている。

冒頭、電波研究所が謎の物体を観測した直後、テレビ衛星からの映像が途絶える。その後でテレビ衛生が爆発しているが、もちろん映像は遮断されているので、電波研究所の面々は何が起きたのか把握していない。
で、そこから「研究所が原因究明に動く」とか「それと関連した事件が発生する」とかいう展開になっていくのかと思いきや、ダイヤモンド強盗団が宝石店を襲う展開になる。
その後、しばらくは宝石強盗に絡む物語になってしまう。
一応、謎の物体は出て来るが、どうも本筋が違うんじゃないかと違和感を覚える。

宝石店のシーンでは、強盗団が宙に浮かんで追い出された後、謎の物体が金庫に張り付いている様子が写し出される。
ってことは強盗団は謎の物体を見ていないはずなのに、後でアジトのシーンになると「モヤモヤした物体だった」と証言している。
それを目撃していたのかよ。だったら「謎の物体を目撃する」→「宙に浮かんで追い出される」という手順にすべきでしょうに。
強盗団が追い出された後で謎の物体をカメラに写したら、それを彼らは見ていないという解釈になっちゃうぞ。

その後も、メインとして描かれるのは宝石強盗を巡る話。
「駒井が強盗団を追い掛ける」「駒井がマークを追う」「マークが強盗団と戦う」という3者の対立する構図が描かれる。
たまに「石炭が絡む怪奇現象」が発生し、それを起こしている謎の怪物が宝石横取りに関わっているのではないかという筋書きもあることはあるが、マークの正体を謎にしたままで物語を進めるなど、やはり「犯罪ドラマ」の部がメインとして描かれていく。
謎の怪物の正体が宇宙細胞であり、石炭事件とダイヤ強奪の犯人だったことが明らかになった後も、マークが不審な行動を取ったり、浜子がマークに手を組まないかと持ち掛けたりと、相変わらず犯罪ドラマがメインのままだ。
もはや宇宙細胞は、犯罪ドラマのオマケのような存在と化している。
ぶっちゃけ、宇宙細胞の部分をバッサリと削り落とした方がスッキリするんじゃないかとさえ思うぐらいだ。

「宇宙細胞石炭目当てで事件を繰り返す」というSFサスペンスの部分と、「ダイヤ強盗団の犯罪、彼らを追う警視庁外事課、マークの謎めいた行動」という犯罪ドラマの部分が、いつまで経っても融合しない。
ずっとバラバラのままで、しかも前者よりも後者が圧倒的に強い状態で進行していく。
宇宙細胞がドゴラと名付けられ、舞台が北九州に移った後も、まだ「ダイヤの原石を持っているのは誰だ」というミステリーが残されている。
「ドゴラが日本を襲う」という話に集中する様子は、全く見えない。

北九州に舞台が移った後、自衛隊のレーダーが異常反応を観測し、でもドゴラじゃなくてミツバチの群れだったというシーンがある。
なぜ急にミツバチの群れが出て来るんだろうと思っていたら、宗方は駒井にミツバチ関連の調査を依頼する。
そして調査の結果、ドゴラが這い回った形跡のある廃坑にミツバチではなくジバチの巣があったことが判明する。
それを知った宗方は、「巣を破壊されたジバチの群れに襲われたドゴラが、その毒素で化学変化を起こした」と語り、薬物実験所の研究によってジバチの毒素がドゴラに効果をもたらすことが分かる。
ただ、ものすごくギクシャクしていて、無理のある展開に感じられる。

そもそも、その展開、ちょっと良く分からんのよね。
と言うのも、「ドゴラが何かの影響で弱っている」という描写なんて無かったので。
そこは、宗方が「レーダーに反応した物体が宇宙細胞ではないと感じたのは、化学変化を起こしていたからだ」と感じて、それにミツバチが関係しているのではないかと考えて調査してもらったということなんだろうけど、説明不足だから、分かりにくいことになっているのよ。
っていうか、化学変化を起こしたと感じたにしても、ドゴラが弱体化しているわけではないんだから、「ハチの毒素がドゴラを退治する武器になる」と考えるのは、ちょっと性急じゃないかと思うんだけど。

終盤に入ると、さすがにダイヤを巡る話よりも「ドゴラの襲撃」という部分がメインになるが、まだ「ダイヤの原石はどこにあるのか」という問題の決着は付いていないので、そっちの話も並行して描かれる。
そして、そこで犯罪サスペンスを作り出すことは、怪獣映画の部分を明らかに妨害している。
浜子がダイヤを持ち逃げしようと、強盗団が彼女を捕まえようと、駒井やマークが強盗団を追い掛けようと、ドゴラの襲撃とは何の関係も無いでしょ。
肝心なクライマックスに至って、メインの面々がドゴラとは別の方向に目を向けて、まるで関係の無い行動を取っているというのは、どう考えてもマズいでしょ。

ただし、じゃあ強盗団の絡む話を全て削ってドゴラの話に集中すれば面白くなったのかと問われたら、それは自信を持って「ノー」と断言できる。
その理由は、ドゴラがしょっぱいから。
「宇宙大怪獣」と冠が付いているけど、ゴジラやラドンとは比較にならないほど冴えないモンスターだ。それに、クラゲやイカのような形状の宇宙細胞だから、ちっとも「怪獣」じゃないし。
あと、そもそも姿がボンヤリしていて何だか良く分からないし、出番もすげえ少ないし。
技術的な問題で明確な形を写すことが出来ないとか、特撮カットが少ないとか、そういう事情があるらしいんだけど、そんなのは観客からすると知ったこっちゃないしね。

それと、ドゴラって石炭やダイヤモンドを吸い取るだけで、人間に対して直接的な攻撃を加えるわけではないのよね。
石炭を吸い取る時に鉄塔や煙突を破壊したり、竜巻を起こしたりしているので、それに巻き込まれて犠牲者が出るってことはあるだろうけど、「人々が怪獣に襲われる」という形ではないのよね。
「怪獣が街を破壊し、人々が逃げ惑う」という描写が作れないってのは、この映画の大きな弱点になっている。
東宝としては今までと違う怪獣映画を狙ったんだろうけど、完全に失敗だったね。

(観賞日:2014年3月21日)

 

*ポンコツ映画愛護協会