『あずみ2 Death or Love』:2005、日本

徳川家康の刺客として浅野長政と加藤清正を討ち取ったあずみとながらは、山の中で覆面集団“羅刹鴉団”から逃げ回り、崖へと追い 詰められた。2人は刀を抜いて戦うが、敵は装束の下に鎖を着ているため、斬ることが出来ない。苦戦していると、そこに井上勘兵衛が 現れた。彼は主君の加藤清正を殺された恨みを晴らすため、あずみたちの命を狙っていたのだ。発砲を受けた2人は崖から海へ飛び込んだ ように見せ掛け、一味から逃れた。
勘兵衛は真田昌幸の元へ行き、清正を殺した刺客が最後の標的として昌幸を狙っていることを伝えた。勘兵衛が豊臣方の旗頭になる存念を 確かめると、昌幸は刀を抜いて怒りを示す。彼が徳川家康に蟄居された恨みを口にすると、息子の幸村は「しかし、勝つ見込みの無い戦で 家臣を死なせてはならんのでは?」と言う。彼は父上は物の怪に憑かれてござる」と告げ、昌幸の隣にいる愛妾・空如に目をやった。幸村 は勘兵衛に、空如が上野甲賀衆の頭であり、戦を好む物の怪だと説明した。
無駄な争いを好まぬ幸村は、空如に対して露骨に不快感を示した。昌幸が戦うつもりだと知った彼は、豊臣家の意向を確かめるため、大阪 へ赴くことに決めた。あずみは負傷したながらを手当てするため、雨宿りも兼ねて、月斎が連絡を受けていた御堂へ赴いた。眠り込んだ 彼女は、夢を見た。幼い頃から一緒に修業を積んでいた仲間・なちから「お前のことが大好きだ」と言われたこと、しかし月斎に仲間同士 で殺し合えと言われたこと、なちに刀を向けられて彼を殺したことを思い出した。
目を覚ましたあずみは食べ物を手に入れるため、一膳飯屋へ出掛けた。そこへ野盗の金角が一味を率いて現れた。彼らは「俺たちは人助け が目的だ。そのためには俺たちが生きていかなきゃならねえ」と言い、有り金を全て出せと客に要求した。あずみが出て行こうとすると、 金角たちが立ちはだかる。そこへ金角の弟・銀角が現れた。彼がなちに瓜二つなので、あずみは驚いた。金角から「いい女だ、連れて 行こうぜ」と持ち掛けられた銀角は却下するが、あずみを見ると、「仲間になんねえか」と誘った。
あずみは金を一味に渡し、店を出て行った。追い掛けようとする金角を止めた銀角は、「あの女は強い。下手すりゃ、こっちが斬られる」 と告げた。あずみが御堂に戻ると、刺客の気配があった。彼女が潜んでいた刺客と戦おうとすると、ながらが「仲間だ」と叫んだ潜んで いたのは伊賀忍者の半蔵やこずえたちで、天海の使いで来たという。あずみとながらは彼らに連れられ、天海のいる万願寺へ赴いた。 天海は2人に、使命を果たしたことへの礼を述べた。
まだ真田昌幸を討ち取る使命が残っていることをあずみが口にすると、天海は「お前たちでは真田は斬れん」と言う。半蔵はあずみたちに 、真田軍が暗殺専門の荒くれ者集団である上野甲賀衆を引き入れたことを話す。「場合によっては兵を挙げて討たねばならん」と天海は 言うが、あずみは「昌幸は俺たちが討つ。使命を果たす」と強い意志を示す。そのためなら命も投げ出す覚悟を彼女が口にしたため、天海 は「分かった、使命を果たせ」と告げた。こずえはあずみたちの道案内を申し出た。
半蔵は真田軍がいる九度山に手下を放ち、その動きを探っていた。だが、半蔵の放った忍者たちは、上野甲賀衆に全滅させられた。あずみ とながらは、こずえの先導で街道を進んだ。あずみはながらに、なちと瓜二つの野盗と会ったことを話した。真田軍は刺客を討つための 志願兵を集めた。銀角と野盗一味も参加し、給金を受け取った。荒れ果てた村に入ったあずみたちを、羅刹鴉団と志願兵たちが待ち受けて いた。あずみたちを見た銀角は「気が変わった」と言い、彼女の側に付くことにした。
あずみたちは敵と戦い、全員を抹殺した。銀角たちは、あずみたちを隠れ家へ連れて行った。そこには戦で親を亡くした子供たちの姿が あった。金角が引き取り、老女・よねや少女・千代たちが面倒を見ているのだ。千代は「人殺しの刺客なんて大嫌いなんだよ。早く出て 行ってくれ」と言い、あずみたちへの嫌悪感を示す。あずみは「親のいない子が増えないように、戦を無くしたいんだ」と言うが、千代に 「じゃあアンタの斬った奴の子供はどうなるんだい?」と問われると、言葉に詰まった。
ながらは千代の態度に腹を立て、あずみとこずえを促して立ち去ることにした。九度山へ向かう途中、ながらはこずえから「どうやって矢 を避けるの?2人とも、全く矢が当たらないじゃない?」と問われ、8歩以上の距離があれば避けられると教えた。こずえは、ながらと 2人きりになった時、「あずみは銀角が好きなんだよ。本心は、銀角と2人で、どこかへ消えちまいたいんだよ」と言う。「あずみを銀角 の所へ行かせてあげよう」と持ち掛けられ、ながらは悩んだ。
あずみたちが再び歩いていると銀角たちが来て、昌幸が九度山を出たことを教えた。「自分の目で確かめる」と言うあずみに、銀角は 「使命がそんなに大事か。どうせ戦は無くならん。そんなことより、自分たちが楽しく生きることを考えろ。千代みたいに、あそこで子供 たちと暮らしたいとは思わんか」と持ち掛けた。あずみが「俺だってそうしたい。だが、駄目なんだ」と九度山へ行こうとすると、ながら は「駄目じゃないぞ。銀角に付いて行け。使命が何だ。俺はこれから、こずえと旅に出る。俺は使命なんて真っ平だ」と告げ、こずえと共 に走り去った。それは、あずみを銀角の所へ行かせるための嘘だった。
銀角たちから一緒に来るよう誘われたあずみだが、「お前たちとは見て来た物が違うんだ」と拒否し、九度山へ向かう。一方、ながらは こずえと共に、昌幸を討ちに行こうとする。だが、こずえは彼の隙を見て矢を放った。彼女は上野甲賀衆が幼い頃から伊賀に潜ませていた 間者だったのだ。あずみは上野甲賀衆の土蜘蛛に襲われた。戦っているところへ野盗一味が来ると、土蜘蛛は「邪魔が入った。今度会う時 は必ず息の根を止める」と姿を消した。あずみはようやく、昌幸が九度山にいないことを理解した。
天海は半蔵から、真田軍が寺に迫っていることを知らされた。「ここを出るということは、刺客を見捨てることになる」と彼は悩むが、 結局は「残念だが、もう待つわけにはいかん」と言い、寺を去ることにした。あずみは野盗一味に連れられ、真田の兵が陣を敷いて寺を 包囲している様子を目撃した。あずみは「ここから先は地獄だ。お前らはどこかへ行け」と告げるが、銀角は「気にするな。こうなりゃ、 どこまでも付いて行くさ」と口にした。
空如は昌幸に「敵に逃げ道はございませんが、悪戯に兵を消耗するよりも、我らにお任せいただきとうございます」と申し入れた。天海を 護衛していた半蔵たちの前に、上野甲賀衆の六波と手下たちが現れた。半蔵たちは天海を逃がそうとするが、敵の圧倒的な力の前に、次々 と殺されていく。そこへ、あずみと野盗一味が駆け付けた。あずみたちは敵を倒すが、金角を含む野盗数名が命を落とした。
こずえは何も知らない素振りで、あずみたちの前に現れた。ながらのことを訊かれた彼女は、「私を庇って兵と戦っている間にはぐれた」 と嘘をついた。彼女は「徳川領への近道を見つけた」と言い、あずみたちを案内して歩き出す。だが、途中で本性を現し、刀を抜いて伊賀 の忍者たちを斬った。こずえはあずみに襲い掛かるが、あっさりと殺された。あずみは怒りに燃え、真田の陣へと向かった…。

監督は金子修介、原作は小山ゆう『あずみ』(小学館『ビッグコミックスペリオール』掲載)、脚本は水島力也&川尻善昭、 プロデューサーは山本又一朗&中沢敏明、共同プロデューサーは佐谷秀美、製作統括は近藤邦勝&森隆一&亀井修&島谷能成&高野力& 宮下昌幸&加藤鉄也&坂上直行、企画は濱名一哉、企画協力は古賀誠一、ライン・プロデューサーは大里俊博&青木弥枝美、 ポストプロダクションプロデューサーは篠田学、撮影監督は阪本善尚、編集は掛須秀一、録音は小原善哉、照明は大久保武志、美術は 稲垣尚夫、アクションディレクターは中村健人、VXFスーパーバイザーは進威志、音楽監督は川村栄二。
出演は上戸彩、石垣佑磨、栗山千明、平幹二朗、高島礼子、神山繁、小栗旬、北村一輝、遠藤憲一、永澤俊矢、宍戸開、坂口拓、謙吾、 野村祐人、増本庄一郎、伊藤俊、武智健二、前田愛、根岸季衣、渕野俊太、石丸ひろし、安藤彰則、大久保幸治、塚田知紀、高槻祐士、 奥深山新、辻本一樹、小柴彩、HaTsuMi、真宮里奈、宿南明日華、井新夏、杉村怜音、金高弘明、栩野幸知、細川竜志、樹里、小貫華子、 稲泉智万、中川峰男、安住紳一郎(TBSアナウンサー)、宮沢天、武田晶子、岡部優里ら。


小山ゆうの漫画を基にした2003年の映画『あずみ』の続編。
監督は前作の北村龍平から金子修介に交代。脚本はアニメーション監督の川尻善昭と本作のプロデューサーである山本又一朗が担当 (「水島力也」は山本又一朗のペンネーム)。
あずみ役の上戸彩、ながら役の石垣佑磨、勘兵衛役の北村一輝、天海役の佐藤慶は前作からの続投。銀角役の小栗旬、金角役の遠藤憲一、 土蜘蛛役の坂口拓は、前作とは異なる役柄での再登場。小栗が再登場しているのは、事務所の社長である山本又一朗がプロデューサーを 務めているからだろう。

『あずみ2 Death or Love』が正式な作品タイトルのようだが、劇中では『あずみ Death or Love』と表示される。
どっちにしても、「Death or Love」という文字が入るのは変わらない。
時代劇で、サブタイトルに英語が入っている時点で「ダメな映画っぽいな」という印象を受けてしまう。
それはヒドい偏見かもしれないが、少なくとも本作品に関しては、その偏見が当たっていると言える。

冒頭にアクションシーンを持って来るのは、何しろチャンバラを一番のセールスポイントに置いている映画だし、考え方として間違っては いない。
ただし、何しろ上戸彩と石垣佑磨の殺陣が稚拙なので、客を引き付ける力に乏しい。一応、カットを細かく割って誤魔化そうとは しているのだが、誤魔化し切れないぐらい、腰が入っていない立ち回りだ。
でも、チャンバラと同じぐらい演技力も稚拙なので、ドラマ部分に比重を置くということも難しいんだよな。
しかも、ドラマ部分の相手役も、やはり若い俳優であることが多いので、そっちが演技で引っ張っていくということも期待できない。

あずみが崖から海へ落下するところでタイトルバックなのだが、その「落ちて行く時の、あずみの表情」が、なんかマヌケなんだよな。
もちろん合成映像なんだけど、そういう問題じゃなくて、なんか表情とポーズ、アングルが相俟って、すげえマヌケっぽいのだ。
これって、撮影した映像をチェックした時に、誰か気付かなかったのかな。タイトル直前のカットって、かなり大事だと思うんだけど。
そこがマヌケっぽくなってるってのは、大きなダメージだと思うんだけど。

私は北村龍平が映画監督としてのセンスに優れているとは思わないが、アクションシーンに関しては、前作の方が上だ。
北村監督の演出には、とりあえずケレン味があった(っていうか、それしか無いのだが)。
それに対して金子監督は、良くも悪くもオーソドックスな演出をしている。
だから、例えば近衛十四郎や若山富三郎のように立ち回りに優れた人が出ていれば「魅せる力」が場面に備わっただろうけど、そうじゃ ないので、単にヌルいチャンバラを見せられるだけになってしまう。

こずえはながらが矢を避ける方法を確かめた上で、彼を殺害するために矢を放つ。
だけど、わざわざ「ながら」と呼び掛けて、こちらを向かせる必要なんて無いでしょ。
っていうか、相手は完全に油断しており、すぐ近くにいるんだから、わざわざ弓矢を使う必要さえ無いでしょ。
そりゃあ矢が得意なのかもしれんけど、小柄でも毒薬でも殺せるでしょ。
むしろ、わざわざ構えて矢をつがえなきゃいけないんだから、そんな近距離で飛び道具を選択するのは、利口ではない。

あずみは常人を超越した圧倒的な殺人能力を持っているはずなので、上野甲賀衆の雑魚キャラ程度を相手に苦労しているのは、原作の キャラ設定からすると納得しかねるものがある。野盗なんて一緒にいなくても、一人で全員を殺せるはずだし。
だからハッキリ言って、野盗一味は無駄死にでしかないんだよな。
ただし、上戸のモタモタした動きを見ていると、「そりゃあ苦労するのも当然だわな」と納得してしまうのも確かなのだ。
荒れ果てた村のチャンバラで敵が「お前は夜叉か」と言っているが、そんな風に呼ばれるほど、あずみの圧倒的な強さが伝わって来ない のは痛い。

原作のキャラと演じた女優、どっちに劇中のキャラ設定を寄せていくかとなった時に、女優の方を選択したのかもしれないね。
どちらが正解なのかと問われたら、どっちも正解じゃない。
なぜなら、そもそも上戸で『あずみ』を実写映画化しようという企画の時点で、たぶん間違いだからだ。
その間違いは、終盤の戦いで急にマントを着用させたところで、修正できるものではない。
いや、もちろん、そういう意味でマントを使ったわけじゃないことぐらい分かってるけど。
ちょっとマントについて触れたかっただけなのよ。

こずえが本性を現すタイミングは、阿呆にしか思えない。
その直前、警護の忍者が「この先に真田の敵兵がいる」と発見しているが、行く先に敵兵がいることがバレるのは予想 できなかったのか。
それと、バレたからって、こずえの正体がバレたわけではない。なのに、なぜか忍者を斬っていく。
だけど、あずみを矢で撃てる距離じゃないから刀で斬りかかり、あっさりと殺される。
やっぱり阿呆だよ。
っていうか、ながらが「あずみは6歩で避けることが出来る」と言っていたのが何の伏線にもならないって、どういうことだよ。
そこは「こずえは5歩の距離で矢を放つが、それでもあずみに避けられてしまう」とか、「6歩の距離」を活用した戦いがあるべきじゃ ないのか。

空如を倒すのはあずみではなく銀角で、あずみは毒が回って倒れているだけ。
それがクライマックスの戦いだったら、あまりにも冴えない。
その後、あずみが真田の陣へ乗り込むので、そこがクライマックスのバトルになるのかと思いきや、少し戦っただけで、幸村や天海たち が現れて、なぜか会話劇が始まってしまう。
その後、あずみが昌幸を斬る意思を口にするのだが、なぜか昌幸はタイマンでの戦いを求める。
いや、なんでだよ。ワケが分からない。
で、それは簡単に終わるし、「手出し無用」という昌幸の言葉があるため、その後で他の兵士と戦うことも無い。そいつらは、ただの 見物人となっている。
えーっと、これってアンチ・クライマックスってことなのかな。

(観賞日:2011年8月4日)

 

*ポンコツ映画愛護協会