『明日があるさ THE MOVIE』:2002、日本

浜田課長は、中堅総合商社トアール・コーポレーションの営業13課で働いている。同期の望月課長率いる営業1課は、ロケット工学の専門家・上条沙紀をヘッドハンティングし、官民共同によるロケットの開発プロジェクトに携わっている。それに比べて、落ちこぼれ集団の13課は、ファインセラミックの陶器セットを売り歩く毎日だ。
ある日、営業に回っていた浜田は、ファインセラミックに強い興味を示す老人・野口仁助に出会う。野口は、ファインセラミックのタイルをロケットに貼ると話した。彼は、たった1人で、日本で初めてとなる有人ロケットを作っていたのだ。
種子島の宇宙センターで行われたロケット打ち上げは、失敗に終わった。一方、浜田が手伝った野口のロケットエンジン実験も、爆発して失敗する。だが、野口はロケット開発を諦めなかった。浜田は会社の仕事そっちのけで、野口の手伝いを続ける…。

監督は岩本仁志、脚本は高須光聖 坂東賢治、製作は横澤彪 平井文宏&気賀純夫&島谷能成&阿部秀司、企画は岡本昭彦&奥田誠治&遠谷信幸&堀部徹、プロデューサーは門屋大輔&守屋圭一郎、協力プロデューサーは井上健&壁谷悌之、製作総指揮は林裕章&萩原敏雄、撮影は柴崎幸三、編集は田口拓也、特撮監督は尾上克郎、VFXスーパーバイザーは石井教雄、照明は上田なりゆき、美術は清水剛、音楽は椎名KAY太、主題歌はRe:Japan。
主演は浜田雅功、共演は中村嘉葎雄、柳葉敏郎、東野幸治、藤井隆、遠藤章造、田中直樹、田村亮、田村淳、松本人志、酒井美紀、相楽晴子、青島幸男、伊東四朗、花紀京、仲間由紀恵、山田花子、宮迫博之、蛍原徹、間寛平、西川きよし、桂三枝、桑原和夫、Mr.オクレ、130R・ホンコン、130R・板尾創路、中川家・剛、中川家・礼二、三瓶、坂本あきら、ベース・ウー、角替和枝、あめくみちこ、広岡由里子ら。


ジョージアの缶コーヒーのCMから生まれたTVシリーズの劇場版。
吉本創業90週年、日本テレビ開局50周年記念として製作された。
主要キャストはTV場と同じ。野口を中村嘉葎雄、沙紀を酒井美紀が演じており、他に吉本芸人が多くゲスト出演している。

TVシリーズがドラマとしてはヘロヘロの出来映えで、アドリブとダウンタウンの絡みぐらいしか見所が無いという状態だったので、それを映画化しても、そりゃあロクな作品になるわけがない。
クランクインの前から、玉砕は決まっていたも同然なのだ。
確か公開当時、吉本興業の林会長が「“社長”シリーズのような長く続くシリーズにしたい」と言っていたように記憶している。
映画を見る前から「絶対に無理だ」と思っていたが、その通りだった。
さすがの邦画界も、これがシリーズ化されるほど甘くはないだろう。

何がダメなのかというポイントを挙げていくのも意味が無いんじゃないかと思えるぐらい、全てがダメ。個人的には、TVシリーズでヒロイン役だった稲盛いずみをリストラしたのは大いに不満。TV版で、彼女はそれまでに出演した他のドラマより魅力的だったのに。

社長シリーズは、話が抜群に面白かったとは言わないが、しかし森繁久彌のノホホンとした受け身芝居があり、フランキー堺のおバカな存在感があり、三木のり平の惚けた味わいがあった。時には観光映画としての色も見せたりしていた。
さて、この作品には何があるだろうか。
見所は、ダウンタウンの絡みぐらいだろう。
中途半端にシミジミした話にするより、脳天気なお気楽コメディーにした方が良かったと思う。ハッキリ言って、吉本オールスターキャストによるギャグ連発大会にしてしまった方が、話のまとまりには欠けるだろうが、パワーは生まれたと思う。

この映画、確か“サラリーマンへの応援歌”のはずなのだが、ちっとも応援歌になっていない。むしろ、サラリーマンに「現実逃避しろ」とメチャクチャなメッセージを送っているようにしか思えない。何しろ、主人公が現実逃避のパッパラパー男なのだから。
主人公は、「大人は夢を持ってはいけないのか」と熱く訴える。
いや、悪くない。
大人に「夢を持て」と訴えるのは、いいだろう。
しかし、頭がおかしいジジイにしか見えない野口に、主人公が何の裏付けも無く「天才だ」と乗っかるのは、深く考えていないバカなオッサンにしか見えない。夢を追う男ではなく、現実から逃げる男にしか見えない。

浜田はロケットを見た翌日から野口の工房に泊まるほど、すぐに入れ込む。しかし、その急に燃える気持ちが全く分からない。そんなに「子供の頃に宇宙飛行士になりたかった」という夢の強さが描写されてるわけでもないから、なんでそこまで燃えるのかと。
彼は作り掛けのロケットを見て圧倒されたのかもしれないが、映像としては単なるでっかいオブジェがあるだけで、ピンと来ない。
主人公がロケットに詳しいという設定なら、野口の計画が優れていることを見抜けるだろうし、そういう描写を入れることでロケット開発に説得力が生まれる。
でも、彼は完全にドシロートなのよ。

「野口のロケットは飛ばないし、飛んだとしても大気圏で燃える」と否定する望月や沙紀に対して、浜田は「博士はブロや。セミプロのお前らに何が分かる」と怒鳴る。
しかし、そんなお前はドシロウトだろうが。
何を偉そうに怒鳴っているのかと思うよ。
「いつもは夢を忘れて適当に生きていた男だったが、ロケットのために真剣に打ち込むようになる」というわけではない。彼はアバウトな男のままで熱くなる。だから、その行動に気持ちが乗って行けない。
大体、子供の面接の席で面接官に「大人が夢見たらアカンのか!」と怒鳴る様子は、熱い男というより単なるチンピラにしか見えないぞ。

そもそも、ロケットを作っているのは野口であって、形としては「浜田が自分の夢をジジイに託す」という感じなのね。だから浜田は野口の夢を手伝っているわけで、自分の夢を自分が主体となって叶えようとしている、という印象が無い。
それに、大事な仕事をすっぽかして、会社を何日も休んで、それでロケット作りを手伝うなんて、サラリーマン失格でしょうに。家庭のことを放り出してロケット作りに没頭するなんて、夫として、父親として失格でしょうに。それで本当にいいのかと思うよ。

スケールのでっかい話にしたかったのかもしれないが、、「宇宙飛行士になりたかった」という夢を実現するという話はムチャだった。もっと身近な夢、例えば「野球選手になりたかった」とか、その辺りにしておいた方がいい。
で、最後に憧れていた長嶋茂雄さんがスペシャルゲストで登場するとかさ。
製作が日本テレビなんだし。
ようするに、野口のロケット開発に熱くなる主人公の様子に説得力を持たせるだけの、細かい描写であるとか、あるいは有無を言わせない勢いやハッタリであるとか、そういう諸々が足りなすぎるということだろう。脚本も演出も、手抜き作業の突貫工事ということだろう。
この映画に、夢は無い。
この映画に、明日は無い。

 

*ポンコツ映画愛護協会