『赤い糸』:2008、日本
鈴の森第二中学校3年生の竹宮芽衣と西野敦史はクラスメイトだった。文化祭の役割決めで、芽衣は大道具番長、敦史は占い番長になった 。文化祭の当日、敦史は「占いの館」で占いを担当していた。そこへ聖蓉女子中学の田所麻美が来て、敦史に「アッくん」と声を掛ける。 敦史が「ちょっと抜けるわ」と彼女と一緒に去るのを、芽衣は落ち着かない様子で見ていた。芽衣は敦史に父が自殺したことを明かし、 「1人になっちゃった。もうアッくんしかいないんだ」と泣いた。
敦史が教室に戻ると、クラスメイトはバンドを見に行ってしまい、芽衣だけが残っていた。敦史は彼女に、麻美が幼馴染だと説明した。彼 は「芽衣も占ってやろうか」と言い、誕生日を尋ねた。芽衣の誕生日が2月29日だと知った敦史は、改まって「同じ誕生日の人に会った ことはありますか」と質問した。芽衣は「8歳の誕生日、ケーキ屋の前で会った男の子が同じ誕生日と言っていた」と答えた。 長崎への修学旅行が近付く中、芽衣は姉の春菜から「ビードロの絵付け、記念にやるからやってみたら?」と言われる。
芽衣がクラスメイトの山岸美亜たちと自由行動の計画について話し合っていると、敦史が「もし良かったら、2人で一緒に回らない?」と 誘ってきた。放課後、待っている敦史に、芽衣は「一緒に回ろ」と笑顔で告げる。2人で歩いていると、同級生の不良少女・川口ミヤビと 遭遇した。彼女は恋人の安田愁と一緒だった。愁の兄貴分である村越浩市は、敦史に気付いて「母さんは元気か?」と言う。敦史は険しい 顔で「アンタには関係ないだろ」と告げる。
敦史は芽衣を家まで送り、彼女の母・幸子に挨拶した。敦史の名前を聞いた幸子は、「失礼ですけど、お母さんのお名前は?」と尋ねる。 西野夏実という名前を聞き、幸子は何か考えるような様子を示した。修学旅行に出掛けた初日の夜、敦史は母が怪我をしたという知らせを 受けた。彼は芽衣に「明日、一緒に行けなくなった。病院に行かなきゃいけなくて」と謝り、2人で密かにホテルを抜け出した。
敦史は「俺の初恋の話、してもいい?」と言い、初恋の相手が芽衣であること、彼女が話していた同じ誕生日の男の子が自分であることを 明かす。「運命って信じる?」と彼に尋ねられ、芽衣は「信じるよ」と口にした。2人はキスを交わした。部屋に戻った芽衣は、まだ 起きていたクラスメイトの中川沙良に、敦史の初恋の相手が自分だったこと、同じ誕生日だったことを話す。沙良は「それって運命の2人 だよ。自分のことみたいに嬉しい。勇気もらっちゃった。私もタカちゃんに気持ち伝えようかな」と、高橋陸が好きなことを話す。
翌日、芽衣はビードロを作るため一人で路面電車に乗り込んだ。すると、彼女に惹かれている陸が追い掛けて来た。一方、敦史は夏実が いる緑丘精神医療センターへ行き、「入院してるのに駅前で事故って、どういうことだよ。また抜け出そうとしたのか。薬やめるために、 ここに来たんじゃないのか」と責める。敦史は8歳の時、母の覚醒剤を誤飲して担ぎ込まれたていた。その時に研修医だった太田が、今は 夏実の担当医になっていた。彼は敦史に、夏実をリハビリ施設に入れるよう勧める。
幸子は敦史を引き取った大叶神社の宮司・森崎孝道の元を14年ぶりに訪れ、まだ夏実が薬物に手を出していることを知った。彼女は森崎に 、「芽衣に、敦史君を近付けないようにしてくれませんか。敦史君は、夏実さんの子供なんです。一緒にいたら、きっと傷付くことになる と思います」と頼む。森崎は「今の2人の気持ちは大切にした方がいいと思います」と意見を述べる。帰宅した敦史と遭遇した幸子は、 「これから話すこと、芽衣には絶対に言わないって約束してくれる?」と口止めした後、ある事実を打ち明けた。
沙良や美亜、神谷充たちは、芽衣と陸がビードロ屋にいるのを目撃した。芽衣は沙良から電話で「一人?」と訊かれ、「うん」と嘘をつく 。陸は芽衣に「芽衣のことが好きなんだ。でも敦史がいるって分かってる。だから今日付き合ってくれたら諦めるって決めてた」と告げる 。ホテルに戻った芽衣は、沙良から陸と一緒にいたことを問い詰められた。彼女は「心の中で笑ってたんだね。ホントのこと言われて 傷付く方が、よっぽど良かった」と泣いて屋上へ駆け上がる。慌てて芽衣が追い掛けると、沙良は「芽衣ちゃんは私のこと、心の中から 消したいんだね」と言って飛び降りた。
9月1日。新学期が始まり、担任教師は生徒たちに「昨日、中川沙良が退院した」と告げる。しかし家庭の事情で大阪へ転校が決まり、 挨拶無しで去ることになったという。芽衣や陸たちが沙良の家へ行くと、出発する直前だった。芽衣が声を掛けると、「誰ですか?」と 沙良は言う。彼女の母は、事故の後遺症で記憶喪失になっていることを説明した。敦史は芽衣と連絡を取らず、学校へも行っていなかった 。麻美が会いに来て「お母さんと一緒に行くことにしたの?」と訊くと、彼は「ああ」と答えた。
その夜、敦史は電話で芽衣を呼び出し、「電話もしねえしメールも返さないんだから、気付けよ。冷めちゃったんだよね」と冷たく告げる 。困惑する芽衣に、彼は「転校するから、会うことも無いから」と突き放して去る。次の日。芽衣が教室に入ると、クラスメイトは一斉に よそよそしい態度を取った。黒板に目をやると、「沙良の記憶返せ!」など芽衣への悪口が幾つも書かれていた。さらに携帯にも「教室 入ってくんな!」などの暴言メールが大量に送り付けられる。
そこに現れた陸が「責めるなら俺を責めろよ」と怒鳴ると、女子生徒2人が「芽衣が沙良の人生めちゃくちゃにしたんだ。死ねよ」と罵る 。芽衣は「私が死んだら私の中の芽衣が消える。芽衣が私を忘れても、私は芽衣を忘れない。それしか私が芽衣に出来ることは無いから」 と語った。彼女が神社へ行くと、敦史は麻美と一緒に引っ越し準備していた。敦史は麻美に「ちょっと遠いけど、遊びに来いよ。麻美が いるだけで心強いんだ。メールくれよ。返信するから」と告げる。芽衣は敦史に「好きな人が出来たのなら、言ってくれれば良かったのに 。そんな風に気持ち変わっちゃうなら、運命信じるなんて簡単に言わないでよ」と責めて走り去り、そして泣き崩れた。
受験シーズンに突入する中、芽衣は陸から「芽衣と同じ高校受けようと思ってる。もし受かったら、俺と付き合って下さい。芽衣に何か あったら必ず守ってやる。ダメかな」と言われる。芽衣は、合格したら付き合うことを承諾した。海沿いのリハビリ施設で母に付き添って いた敦史の元を、麻美が訪れた。敦史が持っている緑丘東高校の入学願書を見て、「高校、戻って来るんだ。あの子には連絡したの?」と 麻美が尋ねる。敦史は「してないよ。もう昔のことだし」と答えた。
芽衣と美亜は桜川高校に合格したが、陸は不合格だった。しかし芽衣は、彼と交際することにした。夜間の高校へ行くことにした陸から、 「毎日5時に待ち合わせ」と芽衣は告げられた。彼女は中学で一緒だった中西優梨から、敦史が帰ってきていることを知らされた。芽衣は 別のクラスの男子3人組に声を掛けられ、陸の小学校時代の友達だと自己紹介される。彼らは、「タカから悪い虫が付かないよう監視する よう頼まれている」と口にした。
陸と会うために友達付き合いが悪くなったため、芽衣は「放課後、毎日会うの、やめない?」と彼に提案した。すると陸は、いきなり芽衣 に平手打ちを浴びせて「なんでそういうこと言うんだ?」と睨む。翌日、彼からの謝罪メールが送信されて来た。芽衣は恋人にフラれた 美亜を励ますため、今日は会うのをやめにしてもらえないかとメールを送る。陸から「すっげー大事な話あり。こっち優先して」と返信が 来たので行ってみると、大事な話など無かった。
芽衣が「落ち込んでいる美亜と一緒にいたい」と言うと、陸は彼女を激しく突き飛ばして「メイのこと信じたいんだよ。なんで信じさせて くれねえんだよ」と喚き散らした。美亜はミヤビに誘われ、ドラッグ常用者の集まるクラブに足を踏み入れた。美亜はエクスタシーを 渡され、ドラッグに手を出すようになった。翌日から美亜は学校を休み、芽衣は連絡も取れなくなった。高校からの友人・のぞみは芽衣に 、美亜が駅前で愁と一緒にいるのを見たと告げる。
芽衣は陸と会う約束を破り、美亜を捜しに出掛けた。敦史は偶然にも美亜と遭遇し、ドラッグをやっていると気付く。そこへ芽衣がやって 来ると、美亜は「ちょっとやっただけで大げさなんだよ。これやったら忘れられると思ったんだよ」と言う。芽衣は「そんなことやっても 何も解決しないんだよ」と説得する。陸は少し離れた場所から、その様子を眺めていた。美亜が「もうやめる。絶対しない」と言うと、 敦史は厳しい口調で「どうせまたやるよ。みんな自分だけは大丈夫だと思ってるんだ」と言う。
芽衣が「どうしてそんな風に決め付けるの?」と抗議すると、敦史は「自分の意思だけではどうにもならないことだってあるんだよ」と 言う。芽衣は「それでも美亜を信じるよ」と反発した。敦史が去った直後、陸は芽衣に歩み寄って「何回電話したと思ってるんだよ」と 激しく暴力を振るう。気付いた敦史は急いで戻り、「何やってんだよ」と陸を殴り倒した。すると、芽衣は「アッくんには関係ないよ」と 陸を庇った。「みんなに責められた時、傍にいてくれたのはタカちゃんだった」と芽衣が言うと、敦史は無言で立ち去った…。監督は村上正典、原作はメイ「赤い糸」/「赤い糸destiny」(ゴマブックス刊)、脚本は渡辺千穂、脚本協力は半澤律子、製作は 亀山千広&野田助嗣&山田良明、企画は大多亮、エグゼクティブプロデューサーは石原隆&和田行&秋元一孝、プロデューサーは種田義彦 &関谷正征&森安彩、アソシエイトプロデューサーは瀬田裕幸、技術プロデューサーは佐々木宣明、撮影は北山善弘、編集は山本正明、 録音は関根光晶、照明は三上日出志、美術プロデューサーは杉川廣明、美術は柳川和央、音楽は菅野祐悟。
主題歌「366日」HY、作詞/作曲:仲宗根泉。
挿入歌「Ray」lego big morl、作詞/作曲:lego big morl。
出演は南沢奈央、溝端淳平、木村了、岡本玲、渡辺典子、小木茂光、山本未來、甲本雅裕、石橋杏奈、桜庭ななみ、柳下大、鈴木かすみ、 田島亮(現:田島優成)、岩田さゆり、鈴木浩介、松田賢二、平田薫、若葉竜也、宮武美桜、沢木ルカ、柊瑠美、米村美咲、池田愛、 矢柴俊博、岩橋道子、日和佑貴、上剛基、柴田将士、江澤璃菜、藤村直樹、渡辺万美、本多末奈、安田望、浅野順平、足立学、康喜弼、 戸羽広明、野村映里利、真下有紀、笠木泉、山内ナヲ、田中昌宏、田口寛子ら。
メイのケータイ小説『赤い糸』『赤い糸destiny』を基にした作品。
監督は『電車男』『7月24日通りのクリスマス』の村上正典、脚本は『この胸いっぱいの愛を』『恋する日曜日 私。恋した』の 渡辺千穂。
芽衣を南沢奈央、敦史を溝端淳平、陸を木村了、美亜を岡本玲、 幸子を渡辺典子、森崎を小木茂光、夏実を山本未來、芽衣の父・寿久を甲本雅裕、麻美を石橋杏奈、沙良を桜庭ななみ、夏樹を柳下大、 優梨を鈴木かすみ、神谷充を田島亮(現:田島優成)、春菜を岩田さゆりが演じている。フジテレビは本作品において、パテオ商法(1992年に『パテオ』におけるメディアミックス展開。第1弾と第2弾をドラマで放送し、その 結末となる第3弾は劇場映画として製作された)を進化させた手法を使っている。
2008年12月6日から2月28日までドラマを放送し、映画は2008年12月20日に公開し、ドラマと映画で並行して物語を展開させ、そのラスト はドラマの9〜11話で描かれるという方式を取ったのだ。
「映画で一応は物語が完結するが、その後日談がドラマの9〜11話で描かれる」とか、そういうことではない。
映画は尻切れトンボのまま終わってしまい、物語の結末はドラマの9〜11話を見なければ分からないのだ。
そういう、あこぎな商売をやっている時点で、この映画は完全に失格である。尻切れトンボとなっている物語の中身は、「さすがはケータイ小説の映画化作品だ」と思わせてくれる内容になっている。
私にとって、Yoshi系ケータイ小説の映画化作品は基本的に、「いかに笑わせてくれるか」という見方をする対象だ。
「Yoshi系ケータイ小説」ってのは私が勝手に考えた分類だが、ようするに『Deep Love アユの物語』で御馴染みのYoshi大先生の如く、 「波乱万丈すぎる物語」を描く類のケータイ小説ってことだ。
原作では「暴力」「ドラッグ」「風俗」「レイプ」「妊娠」「不治の病」といったスイーツな要素が満載だったらしいが、映画版と ドラマ版では「暴力」と「ドラッグ」の2つだけに限定されている。
それはつまり、笑わせてくれる要素が減ってしまったということになる。それでも、さすがにケータイ小説総合サイトで長期間に渡ってランキング1位をキープした人気作品が原作だけのことはあって、かなり バカ度数は高くなっている。
スイーツ要素をかなり減らしても、これだけおバカな仕上がりになるのだから、原作をそのまま映像化していたら、かなり突き抜けた バカ映画になったんじゃないだろうか。
そう考えると、過激さを抑制してしまった改変は残念だ。私はドラマ版を見ていないのだが、ひょっとして映画版って、ドラマ版のダイジェストなんだろうか。
そう思ってしまうほど、のっけからダイジェスト感が強い。
タイトルロールの後、いきなり文化祭の役を決めるくじ引きがあって、「陰気なメガネ少女だった沙良がバンドのダンサーに名乗り出て リハーサルに参加し、ヘッドバンキングで激しく踊り狂う」というシーンがあるのだが、まだメインである芽衣と敦史のキャラ紹介が全く 出来ていないのに、先に脇役をフィーチャーするカットが用意されているという変な構成だ。で、芽衣と敦史のキャラや関係性が全く説明されない内に、文化祭当日のシーンになってしまう。
タイトルの前に2人で屋上へ行くシーンがあるので、もう付き合っているという設定なのかと思ったりもしたのだが、その後の展開を見た 限り、そうではなかったようだ。
その辺りもボンヤリしていて良く分からない。
これは原作が云々という以前の問題で、シナリオや演出の責任だ。
でも、ある意味では、この原作にふさわしいクオリティーと言える。文化祭にやって来た麻美が、いきなり「ごめんね、お父さん、自殺しちやった」と告白した時には、「おおっ、いきなり来たか」と嬉しく なった。
ものすごく簡単に、いかにもケータイ小説らしい「自殺」という要素が入って来たからだ。
何かに付けて、BGMが先走るかのように盛り上がり、そのシーンを感動的に飾り付けようとして逆効果になっているダメっぷりも、 ケータイ小説の映画化にふさわしい仕上がりだなあとニヤニヤしてしまった。敦史が誕生日を尋ね、芽衣が「2月29日」と答えるシーンがある。
で、敦史は同じ誕生日なのだが、そういう場合、すぐに「えっ、俺も一緒だよ」と明るい感じで言いそうなものだ。
ところが、なぜか敦史は妙に真剣な表情に変わり、改まって「同じ誕生日の人に会ったことはありますか」など、複数の質問を立て続けに する。
かなり変な行動だが、そのヘンテコぶりが、これまた「いかにもケータイ小説的」と感じられて、ニヤニヤしてしまった。ただし、前半は芽衣と敦史の話より、沙良というキャラがダントツに面白い。
まず、彼女は芽衣から「敦史と誕生日が同じ」と聞いただけで、「それって運命の2人だよ」と言っちゃう。
ここ、せめて「その中でも2月29日ってのが珍しいし、8歳の誕生日に2人が会っていたんだから」ということで「運命」と結び付ける ならともかく、この映画だと、ただ単に「同じ誕生日」というだけで運命と言っている感じなのよね。
そんで沙良は、それだけで勇気を貰って告白する気になるのだが、思考回路がサッパリ分からない。それだけでも変な女なのだが、なんと沙良は、自分の惚れた相手である陸と芽衣が一緒にいたというだけで、「芽衣ちゃんは私のこと、心 の中から消したいんだね」などと飛躍したことを言い出し、ホテルの屋上から飛び降りてしまうのだ。
なんちゅう短絡的な思考なのかと。
このお笑いキャラっぷり、たまらんぞ。
彼女が屋上へ走っていった時点で既に頬が緩んでいたのだが、ホントに飛び降りた時には、「おおっ、マジか」と思わず声が出て しまった。沙良が集中治療室に入っているシーンでは、なぜか芽衣の両親が駆け付けている。早いなあ。
東京から長崎って、そんなに近かったっけ。
しかも、まだ沙良の両親も来ていないのに、なぜ目撃者でしかない芽衣の両親が駆け付けているのか、ワケが分からない。
で、暗転でカットが切り替わると、もう9月1日になっていて、担任教師が「昨日、中川沙良が退院した」と言っちゃう。
すげえ展開が早いなあ。
っていうか、あの高さのホテルの屋上から飛び降りて、死なずに済んだのかよ。で、芽衣たちが引っ越しする沙良の元へ行くと、彼女は元気でピンピンしている。どこにも怪我の跡は見られない。
えっと、修学旅行って、いつ行ったの?
集中治療室に入っていたような人が、そんなに短期間で、何も無かったように無傷の状態になれるもんなのか。
で、それだけでも笑えるのだが、なんと事故の後遺症で記憶喪失というオマケ付き。
いやあ、笑える。
っていうか、普通なら何かしらのイベントを盛り込むであろう「夏休み」という時期を、バッサリと省略している大胆な構成も スゴいよな。で、昨日の今日で、もう沙良が記憶喪失だということがクラス中に広まっている。どこから広まったんだよ。
駆け付けた連中しか知らないはずだから、裏切り者がその中にいるってことにならないか。
でも、それが明らかになるような展開は無い。
それとさ、沙良が記憶喪失になる前に、そいつらの中では既に「芽衣のせいで沙良が飛び降りた」という解釈になってるはずでしょ。
だったら、その記憶喪失が判明する前から、芽衣へのイジメが始まっていないと不自然だよな。「じゃあ沙良が記憶喪失にならなかったら 、芽衣を非難する意識は芽生えなかったのか」と考えると、そこはイジメが開始されるタイミングが変でしょ。「芽衣が沙良の人生めちゃくちゃにしたんだ。死ねよ」と罵る女子たちがいるが、そいつらの行動が極端なのも、やっぱり笑えるポイント だよね。
あと、そんな風に陰湿なイジメがクラスの大半によって始まったのに、芽衣が「私が死んだら私の中の沙良が消える。沙良が私を 忘れても、私は沙良を忘れない。それしか私が沙良に出来ることは無いから」と言った途端、パッタリとイジメは無くなるのであった。
早いなあ。
沙良だけじゃなくて、出て来る奴らが揃いも揃って短絡的なのね。後半に入ると、陸が芽衣との交際をきっかけにDV男へと豹変したり、失恋した美亜が簡単にドラッグに手を出すようになったりと、 短絡的な奴らのおバカな行動が次から次へと繰り出される。
で、身勝手なDV男だった陸は、敦史に殴られた後、今度は「芽衣のこと幸せにできるのは、お前だけじゃないの」と、芽衣とヨリを 戻させる手伝いを買って出ようとする。
急に、いい奴になっちゃうのだ。
この変わり身の早さにはビックリだ。で、陸はいい奴になった途端、なんと車にひかれて死んでしまう。
いやあ、やっぱ笑える。
こういう場合、ホントは死なせちゃったらダメなんだよね。
だって、芽衣のケータイに謝罪のメッセージを入れているぐらいだし、その状態で死んでしまうと、芽衣の中に彼への罪悪感が残って しまい、敦史とヨリを戻すことが難しくなるでしょ。
ただし、この話の見事なところは、陸が死のうが生きていようが、それは何の影響も与えないってことだ。
芽衣が敦史とヨリを戻そうとする展開において、彼女が「陸に申し訳ない」という感情で苦悩・葛藤することは全く無いのだ。陸が事故で死んだのに、その日の内に芽衣は帰宅している。そして何も知らない母に「どうだった、お祭り?」と問われて「タカちゃん、 いなくなっちゃった」と言っている。
すげえな。
普通、一緒に祭りに行くはずだった恋人が死んだら、母親に電話しないかね。
っていうか、恋人が死んだのに、病院にも警察にも行っていないのね。そのまま自宅へ直帰してるのね。
それって、どういう状況なんだよ。もう残り15分ぐらいになって、さすがに芽衣と敦史の関係に物語が集中してくるのかと思いきや、まだまだカーニバルは終わらない。 芽衣の両親が離婚すると言い出し、さらに、そのタイミングで幸子が芽衣の本当の娘ではないことが明かされる。
「小さい時に亡くなった幼馴染だったの娘だった」と明かされるのだが、それが芽衣と敦史の恋愛劇にどんな関係があるのかというと、 全く関係は無い。
しかし「何でもいいから、波乱万丈になるような要素をこれでもかと盛り込む」というのがYoshi系ケータイ小説の鉄則なので、それに 従っているってことなんだろうね。「芽衣が本当の娘ではない」と明かされた時には、てっきり「幸子の幼馴染が夏実で、芽衣は敦史は血の繋がった兄妹だった」という オモローな展開かと思ったのだが、そうではなかった。
同じアパートの隣同士に、芽衣の母と夏実が住んでいただけだった。
ってことは、「同じ誕生日で、かつて母親が隣同士に住んでいた仲良しさんだった」というだけで、「芽衣は敦史は赤い糸で結ばれた 運命の2人」ということにしちゃってんのか。
ケータイ小説にしては、ちょっとヌルすぎるんじゃないか。あと、そのタイミングに来て「実は夏実のリハビリは終わっておらず、嘘をついて抜け出していた」ということがリハビリセンターからの 電話で明らかになるが、それも考えてみりゃ凄いことだ。
夏実が戻ってから半年以上が過ぎているのに、それまで放置しているって、かなり管理体制の甘いリハビリセンターってことになる でしょ。
そこで初めて、母がバイトしているはずのスーパーへ敦史が行き、辞めていたことも明らかになるが、それまで一度もスーパーへ母の 様子を見に行っていなかったというのも、これまで何度も病院を抜け出した前科があるんだから、息子として甘すぎるだろ。ぶっちゃけ、後半に入る頃には飽きが来てるんだよな。
芽衣と敦史がどうなろうが、どうでもいいやと思っちゃう。
まあ、それは最初からそうなんだけどさ。
ただ、どうせデタラメな話なんだから、もっと突き抜けてほしかったなあ。っていうか、やっぱレイプ要素が無いと手落ちなんじゃないかな。
で、誰か女優陣の一人ぐらいは脱がしちゃってさ。
そのぐらいのサービスはあってもいいんじゃないかと思ったけど、冷静に考えるとケータイ小説の映画化だから中高生の女子がメインの ターゲットなんだよな。
そう考えると、溝端淳平のシャワーシーンとか、そっち系の方が正しいサービスってことになるのか 。でも、そういうサービスも無いよ。(観賞日:2011年12月8日)