『相棒 -劇場版III- 巨大密室!特命係 絶海の孤島へ』:2014、日本
東京から300キロ離れた鳳凰島では、3泊4日の軍事訓練が実施されていた。民兵の神室司たちが指導を担当し、参加者たちは合宿最終日を迎えた。神室は「最後にエンピの使い方を教える」と言い、部下の丹波元史に指導を任せた。丹波は仲間を次々に指名するが、岩代純也は返事をしなかった。参加者を八丈島まで船で送った後、岩代は厩舎で死体となって発見された。八丈島署の桂浜泰三が部下を連れて赴き、馬のヤマトに蹴られた事故死として処理した。
警視庁特命係の杉下右京と甲斐享は、かつて特命係だった神戸尊の訪問を受けた。彼は2人に岩代のことで話があるのだと告げ、鳳凰島について説明する。鳳凰島は私有地で、数名の民兵が合宿生活を送っている。密かに生物兵器を隠し持っているという噂があり、公安部の監視対象になっている。しかし民兵は陸自OBであり、防衛省が応援しているため、警察の潜入捜査がバレると揉めることは確実だ。民兵の正式メンバーは神室、高野志摩子、丹波、因幡、相模、三橋、柿沼の7名で、岩代は特別に長期訓練として参加していた。
岩代は若狭産業の会社員であり、社長の若狭道彦は島の利権者だ。若狭は防衛大学校出身だが任官を拒否して起業している。神室は若狭の防大時代の後輩に当たる。神室の活動は、防衛大臣政務官である栗山朔太郎の支援も受けている。神戸は右京と享に島へ出向いての調査を依頼し、警察庁次長である甲斐峯秋の指示であることを明かした。峯秋は特命係が勝手に行動する形を取らせようと目論んだのだ。
右京と享は船で鳳凰島に上陸し、携帯電話が繋がらないことを知る。神室は2人に通常の電話回線が通っていないこと、だから衛星電話を使用していることを語った。右京が厩舎に落ちていたベルト通しを発見すると、神室は自分の物だろうと告げた。使われていない馬房に新しい馬糞があることを右京が指摘すると、神室は死体が発見されてヤマトを移した時に排便したのだろうと説明した。蹄鉄があるのを見つけた右京は、幸運を呼ぶお守りに使われることを話した。
防衛省幕僚監部監理部長の松坂忠義は防衛政策局次長補の綿貫孝雄に、上陸して調査すべきではないかと告げる。しかし綿貫は刑事2人が上陸していることを話し、アクションを起こすべきではないと進言した。松坂は警察に事件化されることを防ぐよう指示した。右京は高野に、馬糞が気になっていることを話した。若狭が島へ来たので、彼は話を聞くことにした。若狭は民兵支援の理由について、任官を拒否した罪滅ぼしなのだと告げた。
享は右京の「事故ではない」という断定を受け、「さっさとホシを捕まえて生物兵器の答えを聞き出しましょう」と告げた。2人は死体の第一発見者である因幡と会い、最近の岩代は訓練に身が入っていなかったことを聞く。夕食の時、右京は蹄鉄が19個で1つ足りないことを告げる。誰か持ち出した人はいないかと彼は尋ねるが、名乗り出る者はいなかった。峯秋は栗山から右京と享の行動を咎められ、詮索癖がある問題児なので困っていると釈明した。栗山から善処を要求された彼は、すぐに連れ戻すと約束した。
峯秋は人事第一課首席監察官の大河内春樹や刑事部長の内村完爾、参事官の中園照生たちと会議を開き、捜査一課の伊丹憲一、三浦信輔、芹沢慶二を島へ派遣することにした。大河内は3人に、「次長の狙いはミイラ取りがミイラになることです」と告げた。右京は丹波たちに、岩代が途中から訓練の意欲を失った理由について尋ねる。すると丹波は、「女にうつつを抜かしたからだ」と口を滑らせた。右京と享が宿泊に使っている兵舎へ戻ると高野が待っており、蹄鉄を持ち出したのは自分だと告げた。彼女は恥ずかしくて黙っていたのだと釈明し、蹄鉄を右京に渡した。
享は恋人の笛吹悦子に誕生日のお祝いを告げるため、神室から衛星電話を借りた。悦子が小料理屋「花の里」にいたので、右京は女将の月本幸子と少し会話を交わした。右京は衛星電話を使って鑑識課の米沢守に連絡し、島へ来て指紋を調べてほしいと依頼した。続いて彼は組織犯罪対策部組織犯罪対策第5課長の角田六郎に電話を掛け、仕事を依頼した。角田は部下の志水正義と久保田龍吉を引きつれて岩代の実家を訪れ、彼の母親に話を聞いた。飛行機に乗り込んだ米沢は、伊丹たちと遭遇した。
綿貫は栗山と会い、陸自東部方面総監や幕僚長が様々な媒体で神室を称賛していることを説明する。その上で彼は、「それがテロ集団となると集中砲火を浴びる」と言い、栗山の責任を指摘した。綿貫は栗山に、新たに4人の刑事が島へ向かっていることを教えた。八丈島署へ赴いた伊丹たちは、神室から上陸を拒否されたことを桂浜から聞かされた。しかし彼らは構わず、船で鳳凰島へ向かった。神室は若狭に「信じていいんだな」と問われ、「本当に信じてるなら、ふさわしいやり方があったんじゃないですか」と非難した。
神室は伊丹たちの上陸を知らされて不快感を示すが、仕方なく「気の済むまでどうぞ」と告げた。右京は米沢に頼んでおいた衛星電話を使って角田と話し、岩代が会社の指示で訓練に参加していたことを知った。右京は米沢に、蹄鉄の指紋照合を依頼した。享や伊丹たちは若狭と会い、岩代へ訓練に参加させた指示について尋ねた。若狭は「君たちに協力する気は無い」と返答を拒否し、その場を去った。右京は米沢から目当ての蹄鉄が見つかったことを聞かされ、「これでおおよその謎は解けました」と口にした。
右京たちは自衛隊の急襲を受け、薬物注射で眠らされた。自衛隊は右京たちをヘリコプターで移送し、民兵グループも制圧した。栗山は峯秋を訪ねて自衛隊が強硬手段を取るつもりだと知らせ、「私は自衛隊と心中する気はありませんよ」と述べた。自衛隊は東京で右京たちを解放し、「ご協力ありがとうございました」と告げて撤収した。右京は彼らが特殊作戦群であること、訓練の名目で動いたこと、鳳凰島での別行動が主目的であることを悟った。
右京は神戸からの電話で、生物兵器の正体が天然痘であること、自衛隊がテロ対策で備蓄していたウイルス株が盗まれていることを聞いた。右京は警察のヘリを使い、享と共に鳳凰島へ向かった。一方、特殊作戦群リーダーの多賀周治は管理下に置いた神室に対し、非合法兵器の調査に協力するよう求めた。「見つかった場合は破壊して無かったことにする」「後から警察が現場検証に来ても何も見つからないようにする」と、彼は説明した。
神室は高野たちに意見を求め、「多勢に無勢。勝ち目は無い。どうする?勝機があるとすれば奇襲だな」と告げた。多賀が「自衛隊ごっこはいいかげんにしろ」と怒鳴ると、神室は協力を承諾した。多賀が生物兵器の有無を確認すると、彼は「ある」と告げた。若狭は「同情した俺が馬鹿だった」と漏らし、除隊を余儀なくされた神室に戦士としての暮らしを続けさせるために支援したことを明かした。神室は「人に憐みなんて欠けるもんじゃないですよ」と告げ、多賀たちを生物兵器の隠し場所へ案内した…。監督は和泉聖治、脚本は輿水泰弘、製作総指揮は早河洋、製作は平城隆司&鈴木武幸&水谷晴夫&都築伸一郎&山本晋也&浅井賢二&木下直哉&樋泉実&大辻茂&笹栗哲朗&渡辺万由美、エグゼクティブプロデューサーは林雄一郎、Co.エグゼクティブプロデューサーは大川武宏、プロデューサーは松本基弘&伊東仁&遠藤英明&西平敦郎&土田真通、撮影は会田正裕、照明は大久保武志、美術は近藤成之、録音は舛森強、編集は只野信也、ラインプロデューサーは今村勝範、アソシエイトプロデューサーは村上弓、音楽は池頼広、音楽プロデューサーは津島玄一。
出演は水谷豊、成宮寛貴、鈴木杏樹、及川光博、伊原剛志、釈由美子、石坂浩二、宅麻伸、吉田鋼太郎、風間トオル、川原和久、大谷亮介、山中崇史、山西惇、六角精児、志水正義、久保田龍吉、片桐竜次、小野了、神保悟志、真飛聖、渡辺大、六平直政、島かおり、嶋田久作、神尾佑、金児憲史、渡邉紘平、瀬川亮、生島勇輝、中薗光博、唐沢民賢、粕谷佳五、井川哲也、崎浜秀彌、福永武史、松島圭二郎、五十嵐昇、西泰平、今田真治、赤池高行、保科光志、依田真一、中村勝、西沢智治、板垣克ら。
テレビ朝日系の刑事ドラマ『相棒』の劇場版シリーズ第3作。
監督の和泉聖治と脚本の輿水泰弘は、劇場版第2作と同じコンビ。
右京役の水谷豊、享役の成宮寛貴、幸子役の鈴木杏樹、峯秋役の石坂浩二、大河内役の神保悟志、笛吹悦子役の真飛聖、伊丹役の川原和久、三浦役の大谷亮介、芹沢役の山中崇史、角田役の山西惇、米沢役の六角精児、大木役の志水正義、小松役の久保田龍吉、内村役の片桐竜次、中園役の小野了は、TVシリーズの出演者。享の前の相棒である神戸役の及川光博も出演。
他に、神室を伊原剛志、高野を釈由美子、若狭を宅麻伸、栗山を吉田鋼太郎、綿貫を風間トオル、多賀を渡辺大、桂浜を六平直政、岩代の母親を島かおり、松坂を嶋田久作、丹波を神尾佑、因幡を金児憲史、相模を渡邉紘平、岩代を瀬川亮が演じている。まず「特命係の2人だけを東京から300キロ離れた島へ送り込む」という導入部の時点で、かなり違和感が強い。
峯秋がそういう指示を出すことに対する違和感もあるが、それよりも「そういう筋書きにした」ってことに対する違和感の方が強い。
相棒シリーズは基本的に、都内で特命係を活動させていたわけで。そりゃあ鳳凰島も地域としては東京都内なんだけど、あまりにも遠すぎる。だから、ちっとも「東京都」というイメージが無い。
絶対に活動場所が東京じゃないとダメってことは無いんだけど、でも孤島は無いなあ。いかにも都会的な紳士然とした右京を文明から遠ざかった孤島へ放り込むことによって、そのギャップや、そういう場所でもマイペースを崩さず泰然自若としている右京の様子を描くことで面白味を出そうという狙いがあったとしたら、それは賛同できる。
ただし、そういう方向での描写って、そんなに多くないんだよね。
それよりも「馬が好きな右京が浮かれた様子を見せる」って部分の方が遥かに目立つ。
「孤島での暮らしに苦労する享と、余裕で対処する右京」という対比で面白味を作ろうという意識も無い。鳳凰島という架空の島を設定したことによって、ファンタジー色が強くなりすぎているってのもマイナスだろう。もう少しリアリティーを強めにしておかないと、相棒シリーズの世界観が崩れちゃうんじゃないかと思うんだよね。
もちろん今までのシリーズが全てリアリティーを追及した内容だったとは言わないけど、「あたかもリアリティー」を構築して政府や警察といった組織の腐敗を糾弾するようなこともやってきたわけで。
そこへ架空の孤島(しかも民兵の島)ってのを入れちゃうと、かなり荒唐無稽になっちゃう気がするのよね。
まあ、かつて峯秋と綿貫が出会っていた国がエルドビアという架空の場所なのも、そのノリなんだけどさ。っていうかさ、確かに孤島は孤島なんだけど、「絶海の孤島へ」というタイトルは言い過ぎだろ。
そういうタイトルにしたら、外部から遮断されて連絡を取ることも難しい場所なのかと思っちゃうぜ。実際、最初に特命係が鳳凰島へ到着した時には、通常の電話回線が無くて享の携帯電話が使えないことが描かれているし。
だけど、後から伊丹たちが簡単に上陸しちゃうし、衛星電話も簡単に使えている。
自衛隊によって右京たちは簡単に連れ去られ、また簡単に戻っている。出入りも連絡を取るのも、すんげえ容易なのよ。せっかく「東京から遥か遠くにある孤島」という設定を用意したのに、それを活かそうという気が全く無いんだよな。
その設定なら、どう考えたって「外部と完全に遮断されて連絡を取ることも難しい状況の中、特命係が2人だけの戦いを強いられる」という構図のはずでしょ。
そりゃあ、シリーズのレギュラー陣を物語に関与させたい、それなりに出番を与えたいってのも分からんではないよ。
だけど、それなら「絶海の孤島」なんて設定を持ち込まなきゃいいわけで。相変わらず「いかにもテレビ朝日」的なイデオロギーが強く押し出されており、娯楽映画としての面白さを妨害している。
ちょっとしたスパイスとして使われるとか、じっくり考察すると込められたメッセージが透けて見えるとか、そういうレベルではない。
誰でも明確に分かるような形で、声高に政治的なメッセージが訴えられている。
何しろ登場人物が台詞を使って真正面からハッキリと語るんだから、そりゃあ分からないはずがない。で、そういうメッセージを声高に訴えている時点で疎ましいのだが、それに輪を掛けて問題なのは、内容や設定がボンクラなせいで、そのメッセージが空虚に響くってことだ。
神室たちは「現実味を感じさせる脅威」を表現しなきゃいけないはずのグループなのに、すんげえ陳腐なテロリスト集団になっている。
多賀が評するように、まさに「自衛隊ごっこ」をしているだけに見える。
神室は「俺はテロリストじゃない。そこまで無節操じゃないですよ。俺は無闇に人を殺したりしない」と言うが、生物兵器を隠し持っている時点でテロリストだし、無闇に人を殺す以外に生物兵器を保持する理由が無いし。そもそも、自衛隊を抜けてまで民兵になる意味が無いんだよな。神室は足の怪我で除隊を余儀なくされているから自衛隊に留まりたくても出来なかったという事情はあるんだけど、他の連中に関しては自衛隊に残っていた方が間違いなく国防のために出来ることは多いはずで。
「なぜ自衛隊じゃダメなのか」という疑問に対して、この映画は何も答えを用意していない。
「神室に強烈なカリスマ性があって、だからメンバーが集まった」ってことなら、説得力に欠ける部分はあるものの、まあ一応の説明は付けているってことになるだろう。
だけど、神室には何のカリスマ性も感じられない。ただのイカれたオッサンにしか見えない。っていうかさ、そもそも設定として「神室の足の怪我で除隊」ってのを排除して、「神室たちが自衛隊として活動しながら、密かに策略を進めている」という形にした方がいいんじゃないかと思うんだよな。
それだと撮影が難しいとか、色々な問題が出て来るとは思うよ。でも、だからって「孤島で7人が軍事訓練を行っている」ってのは、あまりにもチープだよ。
マトモな武器も持たず、わずか7人しかいない状態で、国防もへったくれも無いだろうと言いたくなるのよ。
で、そうなると「頭の悪い奴ら」という見方しか出来なくなる。非合法で秘密裏に活動しているわけではなく、防衛省の応援も受けている組織なので、民兵は銃火器を使った訓練は行っていない。自衛隊じゃないので、銃を所持することは出来ないからだ。
ってなわけで、冒頭では素手での格闘やエンピを使った戦いの訓練をしているのだが、その時点で既にバカバカしさの匂いが漂って来る。
白兵戦のための訓練ってのは、どの国の軍隊でも実施されていることだ。だから、格闘の訓練がダメってわけじゃない。
ただ、この組織の場合、エンピの訓練は第二次世界大戦中の「竹槍で敵兵を突き刺す訓練」に似たバカバカしさを感じさせるんだよな。で、銃火器が使えないもんだから民兵は生物兵器を隠し持っているんだけど、それも奇妙な話なんだよな。
だってさ、生物兵器は合法的に所持しているわけじゃなくて、密かに隠し持っているんでしょ。だったら、銃火器を密かに入手するってことでもいいんじゃないかと。
っていうか、生物兵器を持っている時点で完全にテロリストじゃねえか。
それは国防のための道具じゃなくて、テロリストの武器なんだよ。敵の攻撃を受けても、生物兵器じゃ国を守れないでしょうに。それを使って、どうやって国を守るつもりだったんだよ。あまりにも民兵グループがボンクラなせいで、どれだけ神室が熱く政治的メッセージを訴えても、まるで心に響いてこない。
それは例えるなら、大根芝居でエキストラの経験しか無い三流役者が「芝居ってのは云々」と語るようなモンで。
そこに重みや説得力が伴わないのよ。
だから、わざわざ言うまでも無いだろうけど、映画評論家でも何でもないドグサレ素人のワシが、ここで映画について色々と批評しても、もちろん重みや説得力は無いってことよ。そもそも、防衛省とか幕僚長が民兵を堂々と応援しているという設定からして、違和感を覚えるんだよなあ。
防衛省にしてみりゃ「国防のための組織は自衛隊」という考えがあるはずだし、民間で勝手に国防のための組織を作るのは、むしろ迷惑じゃないかと思うんだけど。
「国防に対する意識を国民に持ってもらう」ってことは考えるだろうけど、それと「だから民兵組織を作る」ってのは全く別の話であって。
だから応援するよりも、「ホントは煙たがっているけど、陸自OBの組織だから文句も言いにくいし困っている」という形の方が納得できるような気がするんだけどなあ。そこは訴えたいメッセージのために、無理な設定になっているように感じるなあ。っていうか生物兵器を持っているなら、いっそのこと「イカれたテロリスト集団」という設定にしちゃった方が分かりやすい。そんでテロの脅威を描く話にすればいい。そういう内容であったとしても、左曲がりのメッセージを盛り込むことは難しくないはずだし。
あとさ、民兵は生物兵器を持っているのに、「生物兵器が使われるのを何とか阻止しようとする」というサスペンスも無いんだよな。
自衛隊が簡単に民兵を制圧して生物兵器の倉庫を破壊しているし、その裏をかいて事前に民兵が島から持ち出していた生物兵器も右京たちが見つけてしまうので、「使われるかもしれない」というギリギリのトコまで至らないんだよな。その遥か手前で阻止されちゃうのよ。
だから、せっかく「テロリスト集団が生物兵器を隠し持っている」という設定なのに、まるで活かされていない。あと、天然痘ウイルスの倉庫を多賀たちが破壊する時って、普通の軍服で装置を仕掛けたりウイルスを移動させたりして、大きな爆発を起こして証拠を隠滅しているんだよね。
だけど、そんなことしたらウイルスが飛散しちゃうんじゃないかと思うんだけど、大丈夫なのか。
終盤に島の外へ持ち出された天然痘ウイルスを処置するシーンがあるんだけど、ちゃんと防護服を着た面々が慎重に運び出しているのよ。
それに比べて自衛隊の行動は、かなり雑に思えてしまうんだよなあ。最後は右京&享と神室の討論によって、政治的メッセージが語られる。
そこでは神室が「生物兵器は駄目で核兵器は良いのか」と言うが、ただのカッコ悪い屁理屈にしか聞こえない。
彼は「可能になれば核兵器を持つ」と言うのだが、だったら手に入れる努力をすればいいのよ。どうせ生物兵器だって非合法な形で手に入れているんだから、日本では認められていない核兵器の持ち込みに対しても全く逡巡することは無いはずなんだし。
そりゃあ生物兵器に比べたら入手は困難だろうけど、それが国防のためだと本気で思っているのなら、何としてでも手に入れようとするんじゃないかと。彼が語る「自分を守るための備え」としては、そっちの方が遥かに有効なんだし。神室は「核兵器は良くて、生物兵器や化学兵器はなぜ駄目なんだ?核兵器を持ってもいい国といけない国があるのは、どうしてだ?誰がそんなことを決めたのか」「核兵器は人道的な兵器なのか」「我々は唯一、世界中の誰も冒すことの出来ない権利を持っています。防衛権です。私はその権利を行使したいだけなんです」「核兵器以上に平和が担保される兵器はありません。原子力の平和利用を本気で考えるならば、核兵器を開発すべきです」と語る。
それに対し、享は「人間は過ちを犯します。犯した罪は償えばいい。だけど核兵器に至っては、その過ちをどう償えるんですか」と反論する。
神室が「貴方がたは平和ボケという名の重い病に侵されている」と言うと、右京が「貴方の方こそ侵されていますよ。国防と言う名の流行り病に」と返す。
その問答は、ただの薄っぺらい言い合いでしかない。(観賞日:2015年6月26日)