『あぶない刑事フォーエヴァー THE MOVIE』:1998、日本

国際指名手配の凶悪犯である城島が警察病院から脱走したため、港警察署捜査課のタカとユージは外国人の集まるクラブへ赴いた。2人は城島と連絡を取っていたアメリカ人の男を尋問するが、シラを切られてしまう。しかし城島の煙草を見つけたタカとユージは、彼が隠れていると確信した。タカとユージは警戒するが、城島は扉の向こうから発砲し、手榴弾を店内へ投げ込んで脱出する。タカとユージは後を追うが、城島は車に乗って逃走した。
翌日、署へ顔を出したタカとユージは、深町課長が神奈川県警察本部へ行っていることをトオルから知らされる。深町は緒方本部長から、勝手な行動で苦情の多いタカとユージを辞職させるよう命じられた。その頃、伊達という男が部下3名を引き連れて来日していた。喫茶店で立て籠もり事件が発生したという知らせが港署に入り、トオルとナカさんは出動する。タカとユージも行こうとするが、松村署長から「行かなくてもいいわ」と止められた。松村は本部長が2人をクビにしたがっていることを明かし、「しばらくは、じっとしていた方がいいわ」と告げた。
タカとユージは行き付けのバー「ポールスター」で休憩し、マスターの津山や従業員の恵美と話した。深町に同行していたパパは喫茶店へ到着し、人質の女性がカオルだと知る。犯人の中村が拳銃を突き付けて凄んでも、カオルは平然としていた。その頃、伊達はポールスターを訪れ、イスラエル土産のダイヤを恵美にプレゼントした。タカとユージは庶務の瞳から極秘で連絡を受け、城島から押収した銃器を運搬している県警のマイクロバスが襲撃されていることを知った。
パパたちも事件の連絡を知り、立て籠もり事件を放置して現場へ向かう。カオルは中村を叩きのめし、喫茶店を飛び出した。城島と仲間は車でマイクロバスに接近し、担当の警官たちを始末した。城島はマイクロバスを奪い、タカとユージは車の2人と銃撃戦になる。彼らは取り残された犯人の1人を始末するが、城島には逃げられた。タカとユージは深町から「捜査に首を突っ込むな」と叱責されるが、従うつもりは無かった。
タカとユージが射殺した男について庶務の真理がネットで調査すると、FBIから手配されている傭兵だと判明した。情報が掲載されていたファイルには、伊達の名前もあった。タカはユージに深町の相手を頼み、ポールスターへ赴いた。タカは津山に、伊達のことを尋ねた。津山は伊達が自分の育てた傭兵であること、日本にいられなくなった彼をアフガニスタンで自分の部隊に入れたことを話す。津山は既にリタイアしていたが、国際的テロ組織「NET」の一員である伊達は仲間に誘っていた。
伊達の仲間たちは元教官の津山を捕まえ、タカを始末しようとする。津山はタカを助けて逃亡させ、胸を撃たれて命を落とした。ユージは恵美から撮影した伊達の写真を見せられ、彼が拳銃を持っていたと知る。ポールスターでの事件発生とタカの失踪を受け、深町は本部長の命令として拳銃と手帳を渡すよう要求した。ユージが拒否すると、彼はクビを通告した。ユージはタカからの電話を受け、彼が身を隠しているホテルを知らされる。一方、伊達は城島の所へ行き、「自分で撒いた種は自分で刈り取れ」と命じた。
城島はホテルへ乗り込み、タカを襲撃する。しかし予期していたタカと格闘になり、駆け付けたユージが発砲する。城島は手榴弾を投げて逃走し、タカとユージが後を追う。城島は停めてあった車に爆弾が獲り付けられているのを発見するが、それでも乗り込む。タカとユージは近付こうとするが、車が爆発して城島は志望した。タカとユージは恵美に危険が及ぶと睨み、彼女のマンションへ急行した。しかし恵美の姿は無く、2人は彼女が伊達たちに拉致されたと確信する。
伊達の部下がロケットランチャーが撃ち込み、部屋で大爆発が起きる。タカとユージは浴槽に隠れて無事だったが、死んだように偽装して立ち去った。部下からタカとユージの始末を報告された伊達は、「熱い嵐作戦」を実行に移すことを決定する。横浜港沖に停泊中の巨大タンカーには、NETのメンバーが船員として潜入していた。一味は拳銃を構えて船長たちを脅し、タンカーを占拠した。NETは横浜市に百億円を要求し、緒方たちは対策本部を設置する。
タンカーに乗り込んだ伊達は、メンバーに「これから熱い嵐作戦を展開する」と通達した。彼は緒方に電話を掛け、横浜市が新しい庁舎を建設するため、大手ゼネコン3社に渡す百億円を用意していることを指摘した。横浜市は百億円を用意し、港署が休職センターのトラックで取引現場へ運ぼうとする。そこへ顔を隠したタカとユージが現れ、トラックを強奪して逃走した。タカとユージは伊達からの電話を受け、90億円で恵美を引き渡すよう要求した。伊達が承諾したため、タカとユージは取り引き現場へ赴いた。しかし伊達は武装した部下たちに2人を包囲させ、金を奪おうとする。タカとユージは銃撃戦を展開し、バイクで駆け付けたトオルも加勢する。大怪我を負った伊達はヘリを使い、タンカーへ逃亡した…。

監督は成田裕介、脚本は柏原寛司&大川俊道、製作は漆戸靖治&石川一彦&細川知正&伊藤和明&大塚恭司&高岩淡、企画は清水豊次&黒澤満&伊地智啓、プロデューサーは奥田誠治&近藤正岳&服部紹男、撮影は仙元誠三、美術は山崎秀満&小林正義、照明は井上幸男、録音は柴山申広、編集は只野信也、助監督は鳥井邦男、技斗は高瀬将嗣&森聖二、音楽はFuji-Yama(諸藤彰彦・山崎茂之)&鷺巣詩郎、音楽監督は鈴木清司、音楽プロデューサーは高桑忠男、オープニングテーマ「Firecracker」はSING LIKE TALKING、挿入歌「RUNNING SHOT-SHOTGUN MIX」は柴田恭兵、エンディングテーマ「CRY OUT〜泣いていいよ〜」は舘ひろし with COLTS。
出演は舘ひろし、柴田恭兵、浅野温子、仲村トオル、木の実ナナ、小林稔侍、加藤雅也、永澤俊矢、本上まなみ、ベンガル、山西道広、中山秀征、マイク眞木、西岡徳馬、西田健、中丸新将、草薙良一、伊藤洋三郎、飯島大介、長谷部香苗、海一生、賀川幸史朗、衣笠健二(現・衣笠拳次)、実田江梨花(現・村田映里佳)、石山雄大、庵野秀明、萩原紀、森富士男、島村日出人、森聖二、祢寝宗吾、BOB藤原、越村公一、中松俊哉、北村隆幸、小寺大介、町田幸矢、入江正徳、岩本宗規、藤田邦之、渡辺城太郎、滝沢明弘、須藤健一、大西康文、芝原徹、久保修一、内海敦、大村晃司、石井仁一、氏家英樹、芝地章、藤谷綾、藤川美帆、伊藤博子、萩野祐子ら。


日本テレビ系列で放送されていた人気の刑事ドラマ『あぶない刑事』の劇場版第5作。
監督は『六本木バナナ・ボーイズ』『復讐の帝王』の成田裕介。脚本は『あぶない刑事リターンズ』に続いて柏原寛司&大川俊道が担当。
タカ役の舘ひろし、ユージ役の柴田恭兵、カオル役の浅野温子、トオル役の仲村トオル、松村役の木の実ナナ、ナカさん役のベンガル、パパ役の山西道広らは、TVシリーズ1作目からのレギュラー陣。深町役の小林稔侍、岸本役の伊藤洋三郎は、前作からの加入。
伊達を加藤雅也、中村を中山秀征、津山をマイク眞木、緒方を西岡徳馬、城島を永澤俊矢、恵美を本上まなみが演じている。後半、トオルがホームページで宣伝した銃器専用ボックスに銃を入れる髭とサングラスの男役で、庵野秀明が1シーンだけ出演している。

封切2週間前にスペシャルドラマとして放送された『あぶない刑事フォーエヴァー TVスペシャル'98』が前篇で、この映画が後篇という形になっている。
封切の直前に番組を放送することで、観客動員に繋げようというのは戦略として理解できる。
しかし、「TVドラマが前篇、映画が後篇」という形を取ったのか、いかがなものかと。
映画なら上映期間中は、何度でも観賞のチャンスがある。しかしTVドラマの場合、その日を逃すと見られなくなってしまうわけで。

「2つで1つ」という扱いだと考えれば、この映画を見るには「スペシャルドラマを観賞していること」が必須とされてしまうわけだ。
それは逆に、「ドラマを見逃したから、映画はパスしよう」という心理に繋がる恐れもあるんじゃないかと。封切直前にドラマを放送するにしても、「続きは劇場でね」ってことにするのではなく、そこで一応は話を完結させた方が良かったんじゃないかと。映画は「ドラマと切り離して、単独でも成立する内容」に仕上げた方が良かったんじゃないかと。
ドラマとリンクさせるにしても、「その後日談」ってことにでもすれば良かったんじゃないか。
あと、ドラマ版を見た人にしても、「続きは劇場でね」って形で終わったことで消化不良になり、そこで不満を覚えて「むしろ劇場には行かない」と思った人も少なくなかったんじゃないかと。

映画の冒頭には、『TVスペシャル'98』のダイジェスト映像が用意されている。
「だったらドラマを見ていなくても大丈夫じゃないのか」と思う人もいるだろうが、そんなことは全く無い。ドラマの方を見ていない人には、今までの粗筋なんてサッパリ分からないような内容だ。
あくまでも「ドラマ版を見た人のためのダイジェスト」であり、ようするに本来あるべき役割は全く果たしていない。
そんな無意味なダイジェストを頭に付けるぐらいなら、最初から「ドラマと切り離した内容」にしておけば良かったんだよ。

県警のマイクロバスが襲撃されると、すぐにタカとユージは瞳から松村には内緒で連絡を貰う。その後、パパの元にも連絡が入る。
なんで捜査から外されているタカとユージの所へ先に連絡が入って、その後でパパたちに知らされるんだよ。順番がおかしいだろ。
そんでタカとユージが現場へ到着すると、他の刑事は誰も来ていないし。どういうことなんだよ。
っていうかさ、城島から押収した銃器を運んでいるマイクロバスなのに、なんで警官2人が乗っているだけで何の警戒もしていないんだよ。城島が逃亡中なのは分かっていることなんだし、奪いに来ることを予期すべきじゃねえのかよ。

そんなことを今さら言っても仕方がないことではあるのだが、タカとユージがボンクラすぎる。
冒頭シーンで城島に逃げられているのも、マイクロバスの襲撃シーンで再び逃げられるのも、まあ「相手が一枚上手だった」と解釈しておこう。だから、それは構わない。
しかし、せっかく犯人の1人が取り残されたのに、そいつを簡単に射殺してしまうというのは、何の言い訳も出来ない愚かな行為だ。
カッコ付けて射殺している余裕があったら、生け捕りにして情報を聞き出そうとするべきでしょ。
ユージは背中を向けて後ろ向きに犯人の脳天を撃ち抜いているが、そんな芸当が出来るのなら、肩や手を撃って捕まえることも出来たでしょうに。

っていうかさ、そもそも「残っている2人に執着し、銃撃したり追い掛けたりする」という時点で、あまりにもボンクラでしょ。
そこで何よりも重要なのは、「奪われたマイクロバスを奪還し、城島を捕まえる」という仕事のはずでしょ。だから、そんな連中を追い掛けるより、逃げてしまった城島のマイクロバスを追い掛けることに意識を向けるべきでしょ。
そっちは完全に無視して取り残された犯人だけを追い掛け、おまけに捕まえて情報を聞き出すのかと思ったら簡単に射殺するんだから、底無しの阿呆じゃねえか。
そりゃあ深町から「捜査に首を突っ込むな」と叱責されても仕方がないよ。

タカとユージが射殺した男について真理はネットで調査すると、FBIから手配されている傭兵だと突き止める。
だけど殺された男が身許の分かる物を所持していたとも思えず、どうやって調べたのかサッパリ分からない。調べるためには何らかの手掛かりが必要なはずだが、何をどうやったのかと。
伊達がタカの隠れている場所を突き止めるのも同様で、何をどうやって知ったのかサッパリだ。
「そんな細かいことは気にしちゃダメな類の作品でしょ」と言われたら、そうかもしれんよ。
ただ、そういう大雑把なトコが気になっちゃったんだから、仕方がないでしょ。

あと、テロ組織の男が逃走するとか、県警のマイクロバスが奪われるとか、ロケットランチャーがマンションに撃ち込まれるとか、かなりデカい事件になっているにも関わらず、なんで港署だけで捜査に当たる状況が延々と続いているんだよ。
国際的なテロ組織が日本で行動していることは既に明白なんだから、警視庁や公安部が乗り出さなきゃ変でしょうに。
もちろん、警視庁を投入したら、それだけ登場人物が多くなり、港署の面々に皺寄せが来たり、全員を捌き切れなかったりする恐れはあるよ。
ただ、それぐらいデカい事件を題材にした以上、それに見合った捜査体制を敷かなきゃマズいでしょ。

タカとユージは恵美が部屋からいなくなっているのを知ると、伊達に拉致されたと確信する。
しかし、それにしては彼女を見つけ出すための行動を取る気配が全く無い。
百億を奪ってから伊達に恵美の解放を要求しているが、すんげえ悠長だなあと。
っていうか、そもそも伊達が恵美を拉致するのは行動として変でしょ。彼にとって厄介な存在なんだから、始末すればいいだけでしょ。何かの取り引きに使うための人質ってわけでもないんだからさ。

港署の面々がジョークを飛ばし、どんな時でも笑いに行こうとするのは、「あぶ刑事」シリーズの特色である。そこを抜きにして、このシリーズは語れない。だから、そういうノリを持ち込むのは、当然の作業と言えるだろう。
ただ、「それにしても」と言いたくなるぐらい、この映画における港署の面々の、「いつでもどこでも軽薄で軽口を叩く」というノリが、本筋と上手く融合していないように感じられる。
タカとユージがピンチでもジョークを飛ばすとか、あえて余裕の態度を取るとか、そういうのは構わないのよ。
だけど、カオルとトオルの浮かれポンチな振る舞いは、事件と何の関係も無いバカ騒ぎでしかないわけで。

タカとユージにしても、前述したようなケースで軽いノリを見せるだけじゃなくて、「それは場違いじゃないのか」と言いたくなるトコでも軽薄さを披露する。
タンカー占拠事件を知ったタカが「この辺りにタンカーが爆発すれば、百億どころの被害じゃ済まないからな」と言うと、ユージは「ちょっと面白くなってきたんじゃないの。百億か」と笑う。
でもね、タンカーが爆発すれば、多数の死傷者が出ることは確実なわけで。
そういう状況で、いつものノリを発揮して「大金を奪おう」と目論むのは、ちょっと違うんじゃないかと。

そんで実際にタカとユージは、横浜市が用意した百億を横取りしちゃうんだよね。
そもそも「横浜市が要求通りに百億を用意する」とか、「相変わらず神奈川県警レベルの捜査になっている」という部分は置いておくとしても、それは「やっちゃいけないレベル」のハミ出しじゃないかと。
結果的には、伊達が向こうから電話を掛けて来てくれた上、とりあえずは交渉に応じてくれたから何とかなってるよ。
でも、百億を強奪された伊達が、タンカーを爆発させちゃう可能性だって考えられるわけでね。

(観賞日:2017年1月19日)

 

*ポンコツ映画愛護協会