『あぶない刑事リターンズ』:1996、日本

神奈川県港警察署のタカは、ジャズクラブでコカインを売っている女を捕まえた。仲間の男が向けた銃を撃ち落とし、ナカさんとパパが 取り押さえた。トオルは幼児っぽい犯人を路地裏まで追跡し、手錠を掛けた。新人のトラが追い掛けて来るが、転倒してトオルに手錠を 掛けてしまった。少年課の岸本と愛川がディスコに来ると、ウサギのキグルミで踊っている人物がいた。キグルミを脱ぐと中身がカオル だったので、2人は「どうするんだよ、未成年の取り締まり」と頭を抱えた。
若者たちがBMXとバスケで遊んでいるところへ、ユージが現れた。彼はバスケットボールに若者たちが盗んだ宝石が隠してあるのを発見 し、ハルさんと筋肉に投げ渡した。タカとユージは落ち合ってタバコを吸い始めるが、背後にあるナイトクラブの窓際に飾られた鉢植えに 爆発物が仕掛けられているのに気付いた。慌てて逃げ出した途端、鉢植えが爆発した。死者3人、重軽傷者11人が出た。
翌朝、課長の深町が出勤すると、タカとユージの姿は無い。「いつも彼らは課長より遅く来ていたのか」と、深町は不愉快そうに述べた。 タカとユージは病院へ行き、ナイトクラブでホステスをしている樋口麻美が異様におびえた様子だったことを警官から聞いた。その麻美が 白衣を奪った男に連れ去られるのを目撃した2人は、後を追った。男たちは彼女を駐車場でバンに乗せ、タカたちに気付くと発砲した。 一味は麻美を捨てて逃走した。タカが麻美を問い詰めると、彼女は「怪しい男を見たの」と言う。
港署に戻ったタカとユージに、深町は「お前たちは産業廃棄物だ」と不愉快そうに告げた。彼は「これからは私の命令に服従しろ」と要求 するが、タカとユージは聞く耳を貸さなかった。使用された爆発物は、豆電球を使用したマニアックなプラスチック爆弾であることが判明 した。それを知ったユージは一人で外出する。カオルはディスコでフォトグラファーの青柳にモデルにならないかと誘われており、その ことで浮かれていたそこへ青柳が来て、カオルにポシェットをプレゼントした。
ユージは電気部品屋で働く唐木保を訪ねる。5年前にユージが逮捕した爆弾魔だ。使用されたプラスチック爆弾は、過去に彼が作った物に そっくりだった。ユージは部屋に案内するよう要求した。タカは麻美が前科者リストを熱心に見ていないのに気付き、「本当のことを 言ったらどうだ」と告げる。タカは彼女が誰かを庇っていると確信していた。ユージが唐木の部屋を訪れると、爆弾を作るための設備が 揃っていた。パソコンを操作したユージは、ナイトクラブの見取り図を発見した。
ユージはパソコンのデータを調べ、インターコンチネンタルホテルが15時に爆破される計画を知った。彼は襲ってきた唐木を叩きのめして 逮捕し、深町に連絡を入れた。その後、ユージはタカに電話を入れ、爆破計画があることを告げて呼び出した。ホテルで銀行の頭取会議が あることを知り、タカとユージは車で向かう。タカはトラの携帯に電話を掛け、一緒にいるトオルを出すよう言う。タカはトオルに、 ホテルまで来るよう指示した。
ホテルに集まった5人の頭取の元には、脅迫状が届いていた。国民の生活を困窮している責任を取って1億円ずつ出せというものだ。 犯人は“ブレーメン”と名乗るテロリスト集団で、代表者である柊誠の署名があった。そこへ柊が手下1人を引き連れて乗り込んだ。彼は 拳銃を構え、「脅しても金を支払おうとしなかった。値を上げて1人2億だ」と告げる。手下は頭取たちに爆弾を見せ付けた。頭取の部下 である木内も、実はブレーメンの一味だった。
柊たちは頭取5人をサロンバスに乗せ、ホテルを出た。柊は「このバスで銀行を周り、金を回収させてもらう」と告げた。サロンバスを 追ったタカとユージは、頭取たちが爆弾で脅されていると知った。トオルとトラがが追い付くと、タカはバスの頭を押さえろと指示する。 柊たちはバスを降り、頭取たちを残してライトバンに乗り換えた。彼はトラを捕まえ、10億円の現金を持って逃走した。
柊は港署に電話を入れ、トラの身柄と引き換えに唐木を釈放するよう要求した。深町が「自分だけでは判断できない」と告げると、柊は 「3時間後に再び電話する」と言って電話を切った。深町は県警に連絡するが、「容疑者を取引に使うなんて言語道断」という考えだった 。タカとユージは勝手に柊と連絡を取り、唐木の引き渡しに応じた。彼らは唐木をピザ屋に化けさせ、トオルと共に連れ出した。
タカたちは指定された逗子マリーナへ行き、唐木を車から出した。すると一味は、唐木を狙って発砲してきた。一味と銃撃戦になる中、 トオルはクレーンで吊り上げられていたトラを助けた。唐木は逃げ出し、柊から受け取った拳銃で自害した。署に戻ってデータを調べた ユージは、唐木の腹違いの兄が柊であることを知る。柊は8年前まで総合商社八百富物産のニューヨーク支店に勤務していたが、帰国直後 に麻薬密輸で逮捕されてクビになっていた。
署長の松村優子は、ブレーメンが海外にサイトを持つカルト的な反体制組織だと思い出した。サイトを開くが、パスワードが掛かっていて 先に進めなかった。カオルはマンションで麻美を預かっていたが、そこに覆面男が侵入して襲ってきた。カオルが拳銃を向けて捕まえて いる間に、麻美は逃亡した。カオルが男の覆面を剥がすと、正体は青柳だった。彼もブレーメンのメンバーだったのだ。
青柳はカオルにプレゼントしたポシェットに発信機を仕掛け、動きを掴んでいた。そのポシェットを麻美が持って逃げたため、タカ、 ユージ、カオルは彼女を追跡してブレーメンのアジトに辿り着いた。だが、そこにブレーメンの一味はいなかった。彼らは逃亡しており、 パソコンには陽動作戦として東永銀行横浜支店を襲撃する計画が記されていた。さらにブレーメンは短距離弾道ミサイルを入手しており、 それを発射する準備を進めていた…。

監督は村川透、脚本は柏原寛司&大川俊道、企画は武井英彦(日本テレビ)&大井紀子(日本テレビ)&黒澤満、プロデューサーは 奥田誠治(日本テレビ)&伊地智啓(ケイファクトリー)&服部紹男、撮影は仙元誠三、編集は西東清明、録音は曽我薫、照明は井上幸男、 美術は小林正義&山崎秀満、音楽はFuji-Yama(諸藤彰彦、山崎茂之)、音楽監督は鈴木清司、音楽プロデューサーは高桑忠男、 主題歌は舘ひろし「冷たい太陽」&柴田恭兵「RUNNING SHOT」。
出演は舘ひろし、柴田恭兵、浅野温子、伊原剛志、小林稔侍、仲村トオル、木の実ナナ、ベンガル、山西道広、関口知宏、大竹一重、 倉田てつを、入江雅人、野際陽子、伊藤洋三郎、飯島大介、長谷部香苗、秋山武史、海一生、賀川幸史郎、衣笠健二(現・衣笠拳次)、 島崎和歌子、石山雄大、福澤朗、御木本伸介、草薙幸二郎、小林勝彦、久遠利三、早川雄三、須藤正裕、城明男、工藤俊作、唐邊亮ら。


日本テレビ系列で放送されていた刑事ドラマ『あぶない刑事』の劇場版第4作。
TVシリーズは第2作『もっとあぶない刑事』が放送され、劇場版の第3作『もっともあぶない刑事』の公開で一つの区切りが付いて いたのだが、続編を要望する声が多かったため、7年ぶりの復活となった。
レギュラー陣は大半が顔を揃えているが、捜査課長の近藤卓造を演じていた中条静夫は1994年に亡くなっており、また少年課の鈴江刑事を 演じていた御木裕は芸能界を引退したため、登場しない。タカ役の舘ひろし、ユージ役の柴田恭兵、カオル役の浅野温子、トオル役の 仲村トオル、松村署長役の木の実ナナ、ナカさん役のベンガル、パパ役の山西道広などは、TVシリーズ1作目からのレギュラー陣。 柊を伊原剛志、深町を小林稔侍、トラを関口知宏、麻美を大竹一重、唐木を倉田てつを、青柳を入江雅人、冒頭でタカが捕まえる女を 野際陽子、トオルが捕まえる犯人を福澤朗が演じている。

冒頭では、タカがジャズクラブで女を逮捕し、トオルが路地裏で男を逮捕し、カオルはディスコで青柳にスカウトされ、ユージは若者たち の隠していた宝石を発見する。そこには、ナカさんやパパなどのメンツも絡んでいる。
どうやら、レギュラー陣を登場させる狙いで導入部が作られているようだ。
だけど、わざわざ1人ずつシーンを切り替えて描写するのは、「めんどくせえなあ」としか感じない。
それに、やっぱりタカとユージが主役なんだから、この2人が冒頭で何か事件を解決するなりトラブルを起こすなりというのを描いて、 そこに他のメンツを絡める形でいいと思うんだけどなあ。
大体、わざわざ紹介しなくても、ファンなら、みんな知ってるし。そしてファンじゃなかったら、そんな軽い紹介では全く意味が無いん だし。
あと、細かいことを言うと、ジャズクラブで踊る女が野際陽子ってのは違うなあ。もう少し若い女性にすべき。あと、福澤朗はどういう 犯人なのかサッパリ分からないぞ。

もっと問題なのが、トラというキャラの扱い。
こいつ、今回から登場する新キャラなのに、ちゃんとした紹介シーンも用意されていない。いきなりヘマをやってトオルに手錠を掛けるが 、すげえ雑な扱いで登場する。
新人なのに、もはや「そこにいるのが当たり前」という感じで扱われている。
ようするに、新人だけど、本編が始まってから新加入するわけじゃなくて、既に赴任してから日数が経過していますよ、ということなの だが、こいつの扱いが中途半端だし、正直、要らないなあ。
どうせ「あぶ刑事の同窓会」のような作品として作っているみたいだし、だったら新人なんて不要でしょ。

アヴァン・タイトルの最後に爆発が起きているが、それは何の流れも無くて、急に爆発だけがポンと配置されているんだよな。
そうじゃなくて、何か事件の捜査をやっている中で爆発するとか、もしくは最初から爆弾が仕掛けられているという通報があった上で捜査が 始まっているとか、そういう形の方がいい。
そうじゃないから、たまたまタカとユージが落ち合った後ろで爆発するという、不自然な形になっている。
あと、冒頭が無駄にゴチャゴチャしているせいで、観客の気持ちをキャッチできていない。導入部でキャラを登場させること を目的にするのなら、発端となる爆破事件はタイトルロールの後に回した方が良かったんじゃないか。

そもそも「あぶ刑事」はコミカルなテイストのある刑事物だったが、それにしても今回は喜劇に傾きすぎていると感じる。
例えば、駐車場から逃げるブレーメンの車にユージが発砲しようとするシーンの描写。
ミイラのように包帯を巻かれて患者の車椅子を看護婦が押して横切り、ユージの邪魔をするのだが、そのミイラ&看護婦がどんどん増えて 行くというネタになっている。それは、おふざけが過ぎるぞ。
ギャグをやるなとは言わないが、そこに限らず、TPOを考えないで、調子に乗りすぎている悪ふざけが多い。

ユージは序盤で簡単に、麻美が誰かを庇っていると見抜く。そうなると、唐木がボスじゃないことも、おのずと分かるようになる。
まあ本作品にミステリーとしての深みなんて最初から期待しちゃいないけど、それにしても淡白だよな。
その後、柊も堂々と姿を見せ、彼がリーダーであることが簡単に示される。分かりやすいねえ。
それが「あぶ刑事」シリーズの味と言えば味なんだろう。
小難しいことはやらない。サルでも分かる単純明快な中身にしてある。

ユージは唐木を捕まえた後、なぜか深町に容疑者逮捕だけを知らせ、爆破計画のことは内緒にする。
だけど計画を阻止したいのなら、どう考えても大勢の人手があった方がいいはず。まさか、それを深町が妨害するとも思えないぞ。
一方、柊は頭取たちのいるホテルの部屋に部下1人だけを連れて乗り込む。
なぜか部屋には一人の警備も付いていないし鍵も掛かっていないので、普通に入ってくる。

ホテルの連中は、頭取たちが連れ去られるのを見て何も不審に思っていないし、頭取たちも助けを求めて喚いたりしない。
あと、頭取たちはホテルに一人で来たわけじゃないだろうに、部下はどこで何をしているんだろうか。
それと、柊にしても、ナイトクラブの爆破が脅しという意味なのかもしれんが、だとすれば分かりにくいわ。その爆破と頭取たちの関係が 全く見えないし。
しかも、柊が自ら乗り込んでくるって、テロ組織のボスとしては、すげえアンポンタンな行動だぞ。ボスは簡単に出て行っちゃダメでしょ 。かなり巨大で世界的な組織のはずなのに、そんなに簡単にリーダーが出て来るのか。

タカとユージは頭取たちが爆弾で脅されていると知って「うかつに手を出せないな」と言っておきながら、簡単にパトランプを鳴らして 刑事だと知らせる。
それは手を出しているのと変わらないだろ。
で、追跡を知った敵は、なぜか車の防弾ガラスばかり撃ち、タイヤは撃たない。
一方のタカたちも、ただ追跡しているだけ。タイヤを撃って足止めしようという策は取らない。
で、ここで思うのは、「やはり深町に知らせておくべきでしょ」ってことだ。そうすれば、もっと多くのパトカーで追跡することも 出来たわけだからね。

廃工場みたいな場所で柊たちはバスを停めて降りて来るが、それはタカたちが追い詰めたというより、なぜかそんな場所に向けてバスが 走ったとしか感じない。ご都合主義のために、意味不明な行動を取らされているということね。
大体、そこでバスを降りて爆弾を見せているが、それでどうしたいのかが良く分からない。ただ突っ立って爆弾を見せているだけ だからね。「人質を助けたかったら立ち去れ」と要求するわけでもない。
そこにバンが来て柊たちは乗り換えるけど、そのための時間稼ぎってことなのか。
だったら、最初からバンをどこかに待機させておいて、そこに向けて走れば良かったんじゃないのか。でも、乗り換える意味が良く 分からないし。
あと、そこでバンに乗り換えるけど、そもそもサロンバスにした意味って何だったんだろう。サロンバスを使っての、見せ場になるような カーアクションが展開されるわけでもないし。
柊たちの都合も、製作サイドから考えての理由も良く分からない。

ここで柊たちがトラを連れ去る意味も全く分からない。後で唐木との取引を要求しているが、だったら最初から頭取の一人でも連れて 行けば良かったんじゃねえのか。
それに、たまたまトラがいたから人質交換が成立したけど、それは偶然に過ぎないんだよな。
パソコンには計画が色々と書かれていたけど、実は綿密な計画が無くて、行き当たりバッタリだよな、こいつらの犯罪って。
それと、トラを生かしておく必要性も無い。どうせ今まで人を殺しているんだし、無関係だから助けてやろうという人情味のある連中でも なさそうなのにね。
まあ、そこは、「誰かが人質として捕まる」という内容の作品では、良くあるご都合主義だけどね。ただ、柊は「貴様は生きている価値の 無い人間だ」とまで言っておきながら、なぜか殺さないのね。
人質交換じゃなくて、釈放を要求しているのだから、別にトラを指定した場所に連れて行く必要は無いんだけど。

青柳もブレーメンなんだけど、こいつを一味にしている意味が全く無い。
彼が薫にプレゼントしたポシェットに発信機を仕込んでいるけど、薫の動きを掴んでも、あまり意味が無いでしょ。たまたま麻美を 預かったけど、少年課なんだから。
っていうか、麻美もある意味ではグルなんだから(アジトを知っているぐらいだし)、その気になれば連絡を取ったり逃げたりできたはず だし。
あと、その発信機の入ったポシェットを麻美が持っているからタカたちが追跡できるというのは、すげえご都合主義だな。

タカたちがアジトに行くと、東永銀行横浜支店の襲撃計画があることや、それが陽動作戦であることが、わざわざパソコンにデカい文字で 残されている。
柊はタカたちが来ることを想定しており、ヘッド・マウント・ディスプレイを装着させてメッセージを語るが、そこまで分かっていたのに 、短距離弾道ミサイルを使った計画があることや、銀行襲撃が陽動作戦であることを教えちゃダメだろ。
なんでアジトを引き払う際、そういうデータを平気で残しておくんだよ。

で、そのミサイルは発射され、誘導装置をユージが操作する。でもタカがぶつかった弾みで色々なボタンを押してしまい、ミサイルは クネクネと曲がって飛行する。そして港署の上空をかすめ、最後はタカとユージのいる場所に突っ込んでくる。
だけど、そこでミサイルが爆破したのに、タカとユージは生きている。
この辺りの展開は、やりすぎでしょ。
派手にしたかったのかもしれんが、ミサイルの発射が阻止できなかったのはいいとして、2人が巻き込まれても無事ってのは無いわ。
おふざけが過ぎるわ。

(観賞日:2011年4月6日)

 

*ポンコツ映画愛護協会