『ワイルドシングス』:1998、アメリカ

フロリダ州エバーグレースのブルーベイ高校。ハンサムな進路指導教諭サム・ロンバルドは、女子生徒達から人気のある男だ。生徒の1人ケリーは、友人と共に彼の車を洗うことを申し出た。サムの自宅での洗車が終わって友人が先に帰り、ケリーとサムは2人きりになる。
翌日、学校を休んだケリーは母サンドラに、サムにレイプされたと告白する。激怒したサンドラは警察に訴え、サムは裁判に掛けられることになった。サムは潔白を主張するが学校を解雇され、恋人の父親で町の実力者であるトム・バクスターからも見放される。
サムはケネス・ボウデン弁護士を雇い、裁判で無実を証明しようとする。一方、捜査を開始したレイ・デュケ刑事は同僚グロリア・ペレスに、ケリーが偽証しているのではないかという自分の考えを告げる。しかし、ブルーベイ高校の生徒スージーが1年前にサムからレイプを受けたと告白する。
裁判が始まり、証言台に立ったスージーにボウデンの質問が投げ掛けられた。ボウデンから証言の不審点を突かれ、ついにスージーは自分が偽証していたことを明かした。さらにスージーは、ケリーがサムとサンドラの関係を妬んで嘘のレイプ事件を作り上げたのだということも証言する。
身の潔白が判明したサムは、サンドラから多額の示談金を受け取った。実は今回の騒動はサンドラから金を巻き上げるため、サムとケリー、スージーの3人が一緒に企んだ計画だった。大金を手に入れて喜ぶ3人だが、彼らを怪しむレイがスージーに接近する…。

監督はジョン・マクノートン、脚本はスティーヴン・ピータース、製作はスティーヴン・A・ジョーンズ&ロドニー・M・リバー、製作総指揮はケヴィン・ベーコン、撮影はジェフリー・L・キンボール、編集はエレナ・マガニーニ、美術はエドワード・T・マカヴォイ、衣装はキンバリー・A・ティルマン、音楽はジョージ・S・クリントン。
出演はマット・ディロン、ケヴィン・ベーコン、ネーヴ・キャンベル、デニース・リチャーズ、ダフネ・ルービン=ヴェガ、ビル・マーレイ、テレサ・ラッセル、ロバート・ワグナー、キャリー・スノッドグレス、ジェフ・ペリー、コリー・ペンダーガスト、マーク・マッカウレイ、トイ・スヴァン、デニス・ニール、エデュアルド・ヤーネス他。


レイ・デュケ刑事を演じるケヴィン・ベーコンが製作総指揮も務めた、エロティックな雰囲気を持つサスペンス。サムをマット・ディロン、スージーをネーヴ・キャンベル、ケリーをデニース・リチャーズ、ボウデンをビル・マーレイがそれぞれ演じている。

基本的にはシリアスなサスペンスのはずだが、ビル・マーレイが登場すると、途端に場違いと断言できるようなユーモラスな雰囲気を作り出す。
それは彼のせいではなく、必要も無いのに首にコルセットをしているなど(ひょっとすると『Mr.BOO!』のリッキー・ホイのパクリか?)、彼にユーモラスなキャラクターを演じさせていることに問題がある。でも、ユーモラスになっちゃダメだろ。

二転三転どころか、四転五転するサスペンス。「過ぎたるは及ばざるが如し」という言葉があるが、その言葉がピッタリ当てはまる作品だ。裁判終了までの流れで後半まで持ち込み、終盤に二転、そして最後に三転というところで止めておけば良かったものを、やり過ぎてしまったのね。

意外な展開を作り出すために、それを予期させないように観客の目を逆方向に向けさせようとする。そういった誘導は、そりゃあ大切なことだろう。
しかし、それがあまりにも過剰になってしまうと、意外というレヴェルを通り越して、ただ唐突で不自然なものにしか感じなくなってしまう。

ドンデン返しを面白く見せるためには、「確かに意外ではあるが、思い返してみるとそれらしい雰囲気があった」という風に納得できる形になっているべきだ。
つまり、その瞬間だけ急激な方向転換をするのではなく、それまでに観客に気付かせないようにエサを撒いておく必要があるのだ。

ところが、この作品ではドンデン返しを見せるための流れが弱すぎる。
流れを作り出す前にドンデン返しを持ち出してしまう。
そこには必然性や動機といったものは非常に希薄で、とにかく「たくさんドンデン返しを見せてやろう」という意識だけが突出している。

提示されるのは観客を騙すためだけに作られたシーンであり、そのために不必要な部分まで登場人物に嘘をつくことを強いている。
本来ならば自分の騙したい相手だけに嘘をつこうとするはすが、この作品の登場人物は常に観客がいることを意識しているのだ。
そこに不自然さが生まれる。

例えば序盤で、ケリーとスージーの不仲を示すシーンがある。
だが、後の展開を考えると、そのシーンは明らかにおかしい。
その場所で2人が不仲であるように見せ掛け、嘘をつく必要のある相手はいない。
つまり、2人が観客のためだけに不仲を演じているという不自然さがあるわけだ。


第21回スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【最悪の助演女優】部門[ネーヴ・キャンベル]
<*『54 フィフティー★フォー』『ワイルドシングス』の2作でのノミネート>

 

*ポンコツ映画愛護協会