『ワンダラーズ』:1979、アメリカ

1963年、ブロンクス。様々な人種ごとに若者たちのグループが編成される中、17歳のリッチーがリーダーを務めるイタリア系グループの「ワンダラーズ」も存在している。ある日、ワンダラーズのジョーイは、仲間のターキーが頭を剃り上げているのを見掛けた。驚いたジョーイが声を掛けると、ターキーは「フォルダム・ボルディーズ」に乗り換えると宣言する。テラーがリーダーを務める武闘派集団のボルディーズは、喧嘩での利便性を考えてメンバー全員が頭髪を剃っているのだ。
「ボルディーズにはみんなが一目置いている」とターキーが言うので、ジョーイは「奴らは耳のあるチンコだ」と口にする。テラーの恋人であるピーウィーがジョーイの言葉を聞き、「なんて言った?」と詰め寄る。改めてジョーイがボルディーズの悪口を言うと、ピーウィーはテラーに告げ口する。ジョーイとターキーはボルディーズに迫られ、その場から逃げ出す。恋人のデスピーと初めてのセックスに及んでいたリッチーは、助けを呼ぶジョーイの口笛を耳にした。彼は仕方なくセックスを中断し、彼らの元へ向かうことにした。
リッチーは仲間のバディーと合流し、逃げて来たジョーイ&ターキーを目撃する。しかし相手がボルディーズだと知ると、リッチーとバディーも喧嘩を避けて逃走する。4人は追い詰められるが、そこにペリーという大男が現れ、ボルディーズに「子供には手を出すな」と告げる。ペリーはボルディーズを軽く叩きのめし、そこから追い払った。リッチーたちが話している間に、ペリーは姿を消した。
アパートに戻ったジョーイは、ペリーと再会した。彼はアパートの新しい住人だったのだ。ジョーイはペリーを連れて、高校へ行く。同じ高校の中で、ワンダラーズ以外にも、ベレー帽がトレードマークの「アイリッシュ」、黒人たちの「デル・ボマーズ」、テディー・ウォンが率いるカンフー達人の連中など、数多くのグループが存在している。ワンダラーズはクリントンの率いるデル・ボマーズと授業中に激しく対立し、日を改めて決闘することにした。
リッチーは他のグループに協力してもらおうと考えるが、色好い返事は貰えなかった。ターキーはボルディーズに援軍を求めようとするが、リッチーは断固として拒否した。一方でデル・ボマーズは、同じ黒人グループである「ピップ」や「キャヴァリアー」、「マウマウ」を味方に付けた。焦りを感じるリッチーの元にデスピーが現れ、父親のチャビーが会いたがっていることを告げた。チャビーは兄弟と共に「ガラッソ・ブラザーズ」として街を仕切っており、デル・ボマーズとの喧嘩で助っ人が欲しいかどうか尋ねた。「何とかなる」と強気に振る舞ったリッチーだが、チャビーは「良く考えて連絡しろ」と促した。
リッチーとジョーイはボルディーズ&クリントンの従兄ロジャーに捕まり、橋へ連行された。ボルディーズは2人のズボンを下ろし、ターキーに仲間入りの条件として彼らのペニスをロープで縛るよう要求した。ターキーは迷わずに承諾し、リッチーとジョーイを嘲笑った。リッチーは仲間たちを連れてガラッソ・ブラザーズの元を訪れ、決闘での手助けを求めた。チャビーはリッチーに、ロング・アイランドの連中とボウリングをすることを話す。リッチーは「相手はプロ級の腕だ。絶対に勝てない」と言うが、チャビーは「もっと自信を持て」と余裕の表情で告げた。
ガラッソ・ブラザーズはロング・アイランドの連中を捕まえ、ハンデとしてメンバーの腕を折った。賭けボウリングを済ませたチャビーは、リッチーに「俺たちはスポーツマンだ。賭けをする」と述べた。チャビーはデル・ボマーズとも会い、ワンダラーズはアメリカン・フットボールの試合で彼らと戦うことになった。リッチーは仲間3人と街へ出て、女のオッパイに触る遊びに興じた。順番が来たリッチーは、歩いて来たニーナという女のオッパイを掴んだ。
リッチーはニーナに好意を抱き、ジョーイを紹介して「電話番号を教えてくれ」と迫った。ニーナもリッチーに興味を抱いた様子だったが、電話番号は教えずに車へ乗り込んだ。そこでリッチーは、ジョーイに彼の電話番号を教えさせた。リッチーたちは車を追跡するが、途中で見失っただけでなく、乱暴なダッキー・ボーイズの縄張りに入ってしまう。挑発に乗ったペリーが喧嘩を始めてしまい、リッチーたちは加勢するが、多勢に無勢だった。4人は車に戻り、慌てて逃走した。
ジョーイがアパートに戻ると、ニーナから電話が掛かって来た。リッチーとジョーイはニーナの運転する車に乗り込み、チャビーの家で開かれるパーティーに繰り出した。デスピーはニーナのことを気にするが、リッチーが一緒に踊ってキスをしてくれたので笑顔になった。リッチーとジョーイはデスピーとニーナを連れて2階へ移動し、負けたら服を脱ぐトランプ遊びを始める。リッチーとジョーイはイカサマで女性たちを脱がせていくが、リッチーがニーナの下着姿に目を奪われるのでデスピーは不機嫌になった。
男たちがセックス目当てだと知ったデスピーは、腹を立てて1階へ戻ってしまった。リッチーはジョーイにデスピーを連れ戻すよう告げて1階へ向かわせた後、ニーナとキスを交わした。2人は他の面々に気付かれないように車へ移動し、キスの続きに及ぼうとする。テラーは仲間たちを率いてパーティー会場の前に車を停め、女を連れて来るようターキーに命じたターキーが会場に乗り込むと、ペリーが外へ連れ出した。ターキーはテラーを呼ぶが、彼は車で去っていた。
ペリーに続いて外に出て来たジョーイとデスピーは、車で抱き合っているリッチーとニーナを目撃した。リッチーはショックで立ち去ろうとするジョーイを追い掛け、「彼女は特別なんだ。忘れられないんだ」と釈明する。ジョーイは激昂し、彼を殴り倒した。デスピーはリッチーに罵声を浴びせて走り去った。テラーを捜し回っていたターキーはダッキー・ボーイズに追い詰められ、転落死してしまった。ジョーイと険悪な状態のままのリッチーは、ケネディー大統領暗殺事件をテレビのニュースで知った…。

監督はフィリップ・カウフマン、原作はリチャード・プライス、脚本はローズ・カウフマン&フィリップ・カウフマン、製作はマーティン・ランソホフ、製作総指揮はリチャード・R・セント・ジョーンズ、製作協力はフレッド・C・カルーソ、撮影はマイケル・チャップマン、編集はロナルド・ルース&スチュアート・H・パッペ、美術はジェイ・ムーア、衣装はロバート・デ・モラ。
出演はケン・ウォール、ジョン・フリードリック、カレン・アレン、トニ・カレム、アラン・ローゼンバーグ、ジム・ヤングス、トニー・ガニオス、リンダ・マンズ、マイケル・ライト、バート・ハリス、サム=アート・ウィリアムズ、ディオン・アルバネーゼ、オリンピア・デュカキス、ジョージ・メロール、テリー・ペリー、ジョン・カリファノ、リチャード・プライス、リンダ・アルトゥーゾ、イアリー・J・バトラー三世、ラファエル・カブレラ、ブライアン・コレアリー、ローズマリー・デ・アンジェリス、ローナ・エリクソン、ケン・フォリー他。


リチャード・プライスの同名小説を基にした作品。
監督は『ミネソタ大強盗団』『SF/ボディ・スナッチャー』のフィリップ・カウフマン。
リッチーをケン・ウォール、ジョーイをジョン・フリードリック、ニーナをカレン・アレン、デスピーをトニ・カレム、ターキーをアラン・ローゼンバーグ、バディーをジム・ヤングス、ペリーをトニー・ガニオス、ピーウィーをリンダ・マンズが演じている。
他に、ジョーイの母親役でオリンピア・デュカキス、黒人スポーツマン役でケン・フォリーが出演している。

オールディーズ・ヒットが何曲も使用されている。
オープニングはThe Four Seasonsの『Walk Like a Man』で、ワンダラーズの由来であるDionの『The Wanderer』も当然のことながら使われている。Dionの曲では『Runaround Sue』も使われている。
それ以外ではThe Surfarisの『Wipe Out』、The Chantaysの『Pipeline』、Lee Dorseyの『Ya Ya』、The Four Seasonsの『Big Girls Don't Cry』、The Champsの『Tequila』、The Angelsの『My Boyfriend's Back』、Ben E. Kingの『Stand By Me』、The Isley Brothersの『Shout - Part 1』、The Contoursの『Do You Love Me』などが使用されている。
劇中の挿入歌は時代を写す鏡になっており、終盤にはBob Dylanの『The Times They Are a Changin'』を流すことで「一つの時代が終わり、新たな時代がやって来る」という「時代の転換期」を暗示している。

不良たちの青春を描いた映画なのだが、そんなに殺伐としているわけではない。
オールディーズによってポップな雰囲気が生じているということも、一つの要因だ。
例えばジョーイとターキーがボルディーズから逃げる時にThe Surfarisの『Wipe Out』が流れると、何となく軽快な印象を受ける。
BGMだけじゃなくて、リッチー、ジョーイ、バディー、ペリーが車でニーナを追うシーンでは、『Stranger Girl』(作曲はバディー役のジム・ヤングス)を4人が合唱する。
そんな連中に、殺伐とした雰囲気は似合わないでしょ。

ただ、そもそも物語の内容として、そんなに暴力志向が強いわけではない。それに、ボルディーズのように怖い連中も登場するけど、ワンダラーズは本格派の不良グループじゃなくて、まあ言ってみりゃ「格好付けてるだけ」のヘタレ集団だ。
ボルディーズにしたって、酔っ払っている時に海兵隊の勧誘係から声を掛けられ、良く分からずに渡された紙に書かれていることを宣誓して海兵隊員になってしまうというバカっぷりをさらけ出す。
荒っぽい言葉は飛び交うし、喧嘩もある。ただ、例えば悪口を言われて激怒したボルディーズがリッチー&ジョーイにどんな報復をするかというと、「ズボンを脱がせてチンコをロープで結び、そのまま放置して立ち去る」という行為だ。
半殺しの目に遭わせるとか、そういうことではなくて、「過剰な悪戯」のノリに近い。決して「下手すりゃ相手を殺してしまう」みたいなことはやらないんだよね。
果たし合いの時も、絶対に武器は使わないと決めているし。
その辺りは、不良なりの分別があるのだ。

ガラッソ・ブラザーズがボウリング相手をレーンに磔にして、ボウリングの球を腕に落として骨折させるってのは、かなりエグい行為だ。
そこはさすがに殺伐としているけど、ガラッソ・ブラザーズは裏社会の人間なので、その程度は普通のことだ。
ワンダラーズを含む不良グループたちは、いきがっているけど、所詮は青二才だ。
本物はシャレにならないよ、ってことだ。
最後はリッチーがチャビーに脅されてデスピーと結婚することになり、婚約パーティーが開かれる。
Bob Dylanの『The Times They Are a Changin'』と共に、リッチーがヤンチャな若者でいられる時期は終わりを迎えるってことだ。

実はエロの要素が薄いだけで、映画の精神的な部分だけを抽出すると、『グローイング・アップ』やシリーズと大して変わらないんじゃないだろうか。
っていうか、この映画もリッチーとデスピーの濡れ場から始まるし、リッチー&ジョーイがカードでニーナ&デスピーを脱がせるシーンもあるから、エロの要素も盛り込まれているし。
あるいは、「不良たちの『アメリカン・グラフィティ』」と表現してもいいかもしれない。
ちなみに、この映画と同じくオールディーズを散りばめた『アメ・グラ』は1962年の夏が舞台にも関わらず当時の最大のヒット曲であるThe Four Seasonsの『Sherry』を使っていないのだが(ジョージ・ルーカス監督の好みじゃなかったから)、1963年が舞台の本作品では使用されている。

まあダサいっちゃあダサい映画であるが、それは「今となっては」ということだ。世の中には、どれだけ時代が経過しても変わらずに素晴らしいと思える「不朽の名作」もあれば、時代の波に乗ってヒットした映画もある。
この映画は、間違いなく後者である。
いわゆる「時代と寝た映画」ってヤツだね。
日本だと、分かりやすいのはホイチョイ・プロダクションズが製作した『私をスキーに連れてって』『彼女が水着にきがえたら』『波の数だけ抱きしめて』の3部作かな。

「リッチーを浮気男にすべきじゃない」とか、「リッチーが特別な存在だったはずのニーナを簡単に忘れ、デスピーが簡単に彼とヨリを戻すのはどうなのよ」とか、「ダッキーズとの争いなんて要らない」とか、「ターキーの死が軽く流されているのはイカンだろ」とか、色々と気になる点はあるし、作りが粗いとも感じる。
だが、「その時代を感じさせる映画」であることは間違いない。
当時はアメリカだけじゃなくて日本でも、この映画のファッションに憧れて同じアイテムを購入した若者たちが大勢いたのだ。

ちなみに、スティンカーズ最悪映画賞では「世界最年長に見えるギャングたち」と揶揄されているが、ワンダラーズ(厳密にはギャングじゃないんだけど)の当時の年齢を調べてみると、ケン・ウォールが24歳、ジョン・フリードリックが21歳、アラン・ローゼンバーグが28歳、ジム・ヤングスが22歳、トニー・ガニオスが19歳。
女性陣も書くと、カレン・アレンが28歳、トニ・カレムが29歳、リンダ・マンズが17歳。
実年齢よりも見た目の方が問題だけど、「高校生に見えるのか」と問われたら、うーん、まあ見えないなあ。
ただ、本来は設定年齢と大して変わらないトニー・ガニオスも、かなり年長に見えてしまうんだけど。

(観賞日:2014年3月7日)


1979年スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【最も苛立たしいグループ】部門[世界最年長に見えるギャングたち]
<*『傷だらけの疾走』『ワンダラーズ』『ウォリアーズ』の3作でのノミネート>
ノミネート:【最も苛立たしいインチキな言葉づかい(女性)】部門[リンダ・マンズ]

 

*ポンコツ映画愛護協会