『レニー・ハーリン コベナント 幻魔降臨』:2006、アメリカ

その力の起源は不明だが、それを持つ者は常に迫害を受けて来た。17世紀半ば、彼らの多くはヨーロッパの魔女狩りを逃れ、アメリカに移り住んだ。しかし新天地のマサチューセッツでも迫害は続き、イプスウィッチの子孫たちは沈黙の誓いを立てた。その誓いは300年に渡り、破られることなく守られてきた。そして現在、その血筋である能力者のケイレブ、ポーグ、リード、タイラーは、名門私立高校であるスペンサー高校に通っていた。もちろん彼らも、外部には特殊能力のことを明かしていない。
ダンス・パーティーに参加した4人は、ポーグの恋人であるケイトから、ルームメイトになったサラを紹介される。サラは公立から転入してきたばかりだった。同級生のキラがサラを小馬鹿にする態度を取ったので、ケイレブは注意した。そこにキラの恋人のアーロンと仲間たちが来て、ケイレブを挑発した。ケイレブが反抗せずに我慢していると、チェイスという寮生が仲裁に入った。それでもアーロンたちが喧嘩を吹っ掛けると、リードが密かに能力を使って嘔吐させた。
警察が来たという情報が入ったので、生徒たちは会場を去ることにした。サラがケイレブに惹かれているような態度を見せると、リードは露骨に嫉妬心を示した。サラが「車のエンジンが掛からない」と言うと、リードは「俺が直してやるよ」と告げる。ケイレブは軽く諌めるが、リードは「勝負はこれからだ」と対抗心を剥き出しにした。リードは能力でエンジンを直し、自分たちの車に戻る。パトカーが追って来たので、ポーグたちは能力を使うことにした。ケイレブは気が乗らなかったが、他の3人から「4人じゃないと無理だ」と言われたため、仕方なく協力した。
サラ、ケイト、チェイスの3人は、学生寮に戻った。ケイトは紳士的なチェイスのことを気に入り、「私たち、明日は街へ買い物に行くんだけど、付き合ってくれない?」と誘った。ケイレブが郊外の豪邸へ帰宅すると、母のイヴリンが夜遅くまで起きていた。彼女は亡き夫の思い出を語り、「貴方にだけは同じ道を辿って欲しくない」と口にした。「僕は父さんのようにはならない」とケイレブが言うと、彼女は「あの人も同じことを言っていたわ」と告げた。
イヴリンはケイレブに、「13歳の時に貴方たちに芽生えた力は、ますます強くなっていき、千倍の威力を持つようになる。この世は自分の物だと思い、見境なく力を使うようになる。その度に命をすり減らし、抜け殻になる。あんな思いは二度としたくない」と語る。ケイトはサラに、「もしケイレブとリードの両方から誘われたらケイレブにしなよ。真面目でマトモだから。遊ぶために学生寮に入ったりせず、自宅で酒浸りの母親の面倒を見てる」と語った。
サラはケイレブたちが「イプスウィッチの息子」と称されていたことに興味を抱き、ケイトに尋ねた。ケイトは「17世紀から街に住んでいる5つの家族の子孫。旧家ってやつね」と言う。「5人目は誰?」とサラが訊くと、「魔女狩りで殺されたんだって」とケイトは言う。森の外れで放置車両が発見されたという知らせを受けた警官たちが現場へ行くと、運転席では男子生徒が色目を剥いて死んでいた。
シャワーを浴びていたサラは人の気配を感じ、警戒しながら周囲を捜索する。割れた電球を見つけた彼女の背後に、半透明の不気味な存在が迫った。しかしサラが振り返ると、それは姿を消した。眠っていたケイレブは強烈なパワーを感じ、ベッドから飛び起きた。廊下に出たサラはリードと遭遇し、「シャワー室に誰か居たような気がして」と言う。リードは「確かめに行こう」と告げ、彼女を連れてシャワー室へ戻る。リードは誰もいないことを確認し、サラと別れた。
翌日、ケイレブは高校生の薬物死を伝える新聞記事を見ながらポーグに電話を掛け、昨晩の出来事を話す。「たぶんリードだと思う。でも他人の力を感じるなんて今までは無かった」と彼が言うと、ポーグは「18歳の誕生日が近付いているからだろう」と告げる。助手席に森で死んでいた生徒の悪霊を見たケイレブは驚いて運転を誤り、対向車線のトラックと正面衝突する。彼は慌てて力を使い、木っ端微塵になった車を瞬時に修復して、事故を無かったことにした。
街へ出たケイレブは、買い物に来ていたサラ、ケイト、チェイスと遭遇した。ケイトが「これからポーグと映画を見に行くけど、一緒に来る人は?」と誘うと、ケイレブは「母の用事があるから」と断った。サラは「その映画はもう見たから」と言い、ケイレブに付き合う。ケイレブはサラを車に乗せ、かつて一族が暮らしていた場所へ行く。彼は先祖の住んでいた古い家の前に車を停め、管理人のゴーマンに任せていることをサラに告げた。
ケイレブはサラを車に残し、家へ入った。ケイレブが荷物を置くと、ゴーマンは「慎重に行動しろ」と釘を刺した。室内にはゴーマンの他に、もう一人の人物もいた。ケイレブとサラはバーへ行き、チェイスとケイトに合流した。バイクに掛かりっきりで映画に行けなかったポーグが、後からやって来た。ポーグはケイレブに、リードとタイラーが来ていることを教えた。サラはジュークボックスで好きな曲を流し、ケイレブをダンスに誘った。
リードとタイラーがビリヤードで賭けをした相手と揉め始めたので、ケイレブとポーグはすぐに駆け付ける。店の外に出た彼らは一触即発の雰囲気になるが、店長が注意して事なきを得た。相手グループが去った後、ケイレブに叱責されたリードは「カモをカモって何が悪い」と軽く言う。リードは「いい子ぶるのはやめろよ」と言い、ケイレブが肩を掴むと特殊能力で捻じ伏せようとする。ケイレブは特殊能力で彼を吹き飛ばし、「いつになったら分かるんだ?癖になってやめられなくなるぞ。お前一人ならいいが、お前が派手に動いたら俺たちのパワーまでバレる」と怒鳴った。
サラはケイレブに車で学生寮まで送ってもらい、彼にキスをした。深夜、ベッドで就寝していたサラは異変を察知し、目を覚ました。蜘蛛の群れがベッドに入り込んでいたので、サラは悲鳴を上げた。天井や床も蜘蛛だらけだったので、彼女は絶叫するが、それは夢だった。次の日、ケイレブはヒギンズ学長に呼び出され、昨夜の喧嘩騒ぎを諌められた。彼は「チェイスは成績優秀なだけでなく、莫大な遺産の相続者であり、我が校にとって貴重な存在だ。彼と親しいらしいが、これからも面倒を見てやってほしい」と告げた。
サラは図書室で書物を調べ、ケイレブたちの先祖がイプスウィッチの悪魔と呼ばれていたこと、5人目のジョン・パットナムが小屋で蜘蛛を使って処刑されていたことを知った。ケイレブたちは、ロッカールームでチェイスがアーロンを挑発し、殴って来た相手を一発でKOする様子を目撃した。ポーグは危険なものを感じ、ケイトに「もうあいつには近付くな」と告げる。しかしケイトは「ただの友達よ」と反発し、「あっちはそう思ってないぞ」と言うポーグと険悪な雰囲気になった。
水泳の時間、ケイレブは自由形でチェイスと勝負する。チェイスが特殊能力を使って勝利し、ケイレブは頭を打って気絶した。チェイスはヒギンズに呼び出され、「森で死んだ生徒と知り合いか?」と尋ねる。「違います」とチェイスが答えると、ヒギンズは車を引き取った遺族から預かった学生証を見せた。それは車の座席に落ちていた物で、チェイスの学生証だった。「あの日、亡くしたんです。死んだ生徒が拾ったのかな」とチェイスは告げた。
ケイレブはチェイスについて調べるため、ポーグを誘って深夜の事務局に忍び込んだ。サラが寮に戻ると、ドアには「病気みたい。保健室へ行く」と書かれたメモが挟んであった。サラが電話を掛けると、看護師はケイトが高熱で寝込んでいることを告げる。サラは保健室へ向かうことにした。チェイスの資料を調べたケイレブとポーグは、彼の養父母が交通事故で死亡していること、本名はチェイス・ポープであること、養父母が死んだのは彼が18歳の誕生日を迎えた日であることを知った。
サラが保健室へ行くと、医師はケイトが40度の高熱を出していること、アナフィラキシー・ショックも出ていることを説明し、病院へ運ぶことを告げた。「まるで虫の大群にやられたような。蜘蛛とか」と医師は言う。ケイレブはポーグに「思い出した。魔術師の本にポープのことが載ってた」と言い、リードたちを呼ぶよう指示した。
ケイレブは小屋に3人を集め、魔女狩りでジョン・パットナムの一家を告発した面々の中にポープの名があったことを教えた。それは夢の中で悪霊になったパットナムに犯されたと証言した女性だった。当時の記録から推測する限り、チェイスはパットナムの血筋ということになる。サラはケイレブに電話を掛け、「ケイトが蜘蛛に襲われたみたいで大変なの。私の夢にも蜘蛛が出て来て」と怯えた様子で話す。ケイレブは寮に戻るよう彼女に指示した後、チェイスが蜘蛛を作ってケイトを襲わせたのだと仲間たちに語った。
ポーグがバイクを走らせると、道路の真ん中にチェイスが立っていた。彼は不敵な笑みを浮かべ、「ケイトの元へ行くつもりなら、もう手遅れだ」と告げた。チェイスは能力を使い、走るバイクからポーグを叩き落とした。「ケイトはただの餌だ。狙いはお前だ。そして、お前はケイレブを釣る餌だ」とチェイスは言い放った。彼はケイレブに化けて、サラの部屋に行く。そこへ本物のケイレブが来ると、彼は能力を使ってサラを眠らせた。彼はサラを人質に取り、「お前のパワーが最大限になる明日の誕生日、パットンナム小屋に来い。そして、そのパワーを俺に譲り渡せ」とケイレブに要求した…。

監督はレニー・ハーリン、脚本はJ・S・カーダン、製作はトム・ローゼンバーグ&ゲイリー・ルチェッシ、製作総指揮はアンドレ・ラマル&ジェームズ・マクウェイド&ロジャー・ミンチェフ&J・S・カーダン&キャロル・コッテンブルック&スコット・アインビンダー、製作協力はマーク・シルヴェストリ、撮影はピエール・ギル、編集はニコラス・デ・トス、美術はアン・プリチャード、衣装はエイプリル・ネイピア、音楽はトムアンドアンディー、音楽監修はマイケル・フリードマン。
出演はスティーヴン・ストレイト、セバスチャン・スタン、ローラ・ラムジー、ウェンディー・クルーソン、テイラー・キッチュ、トビー・ヘミングウェイ、ジェシカ・ルーカス、チェイス・クロフォード、カイル・シュミット、ケネス・ウェルシュ、スティーヴン・マクハッティー、クリスチャン・バリル、バーバラ・バーシア=ジャシンスキー、ロブ・バーンズ、ロバート・クルックス、スティーヴン・クロウダー、ラリー・デイ、ヴィトー・デフィリッポ、ジョナサン・デヴォー、フランク・フォンテイン、ドーン・フォード、ポール・ホプキンス他。


映画監督としても活動する『山猫は眠らない3 決別の照準』『ザ・マークスマン』のJ・S・カーダンが脚本を書き、『エクソシスト ビギニング』『マインドハンター』のレニー・ハーリンが監督を務めた作品。
同名のコミックが原作という情報もあるようだが、それは間違い。
ケイレブをスティーヴン・ストレイト、チェイスをセバスチャン・スタン、サラをローラ・ラムジー、イヴリンをウェンディー・クルーソン、ポーグをテイラー・キッチュ、リードをトビー・ヘミングウェイ、ケイトをジェシカ・ルーカス、タイラーをチェイス・クロフォード、アーロンをカイル・シュミット、ヒギンズをケネス・ウェルシュが演じている。

中には例外もあるだろうが、基本的には「邦題に監督や出演者の名前が付いている1970年代以降のハリウッド映画は駄作」と考えておいて、ほぼ間違いない(古い映画やヨーロッパ映画の場合は事情が異なる)。
例えば『プリンス アンダー・ザ・チェリー・ムーン』とか、『ミッキー・ロークの逃亡者』とか、そんな感じの作品だ。
監督や出演者の名前を冠にするってことは、裏を返せば「中身で勝負できないので、そこを強く押し出している」ということである。
ちなみに、「中には例外もあるだろうが」と前述したが、今まで私が例外に遭遇したことは一度も無い。

まず初期設定の部分が雑。あえてボンヤリさせているのかもしれないが、ケイレブたちの持っている能力が具体的にどういうモノなのかが良く分からない。
いわゆる「超能力」的なパワーであることは分かるが、何が出来るのか、何が出来ないのか、どれぐらい強いパワーを発揮できるのか、そういうことがボンヤリしている。
また、イヴリンが「力を使い過ぎると命をすり減らす」と言っているが、実際に能力を使った後のケイレブたちが疲れた様子を見せたり苦しんだりすることは一切無い。終盤になって、パワーを使い過ぎた能力者が疲れた様子を見せるというシーンがあるが、そこに至るまでは、パワーの使い過ぎが生命力に影響を及ぼすという設定がピンと来ない。
そこは前半の内から、キッチリと表現しておくべきだろ。

ケイレブは男子生徒を殺した犯人について、リードに違いないと考える。
だが、その一方で飛び起きるほど強烈なパワーを感じたり、「誰かがとてつもない力を使っている」と言ったりしている。
だったら、「リードじゃないかもしれない」と考えるのが筋じゃないのか。
だって、リードが本気で対抗心を燃やして喧嘩を吹っ掛けた時、ケイレブの能力に彼は敵わなかったんだよ。
つまり、ケイレブが恐れるほどの強い力は持っていないってことになる。

もちろん、強烈なパワーがあることをリードが隠している可能性もゼロではないが、少なくともケイレブがリードと戦った時点では、「彼じゃないのでは?」と考えた方がスムーズだ。なのに、むしろ「リードに違いない」と言っている。
そうなると、ケイレブがアホにしか思えないぞ。
っていうか、そもそも「リードに勝手な行動を取らせてミスリードを図る」ということ自体、そんなに上手く行っているとは感じないし、やめたらどうかと。
どうせ後半になると、反目なんて何も無かったかのように、あっさりと結束を固めるんだし。

サラは魔女狩りの歴史について図書室で調べるが、何故それを調べようと思ったのかは良く分からない。
前日に蜘蛛の悪夢を見ているが、それはきっかけとしては筋道がおかしい。蜘蛛と魔女狩りの関係性なんて、その時点では知らないわけだし。
彼女はケイレブに好意を抱いているが、「だから彼の先祖について調べよう」ということでもなかろう。
サラに昔のことを調べさせたいのなら、そういう行動を取るきっかけをキッチリと与えてやるべきだ。それが無いから、不自然な行動になってしまっている。

テンポはノロくて無駄にダラダラしており、ゆっくりと丁寧に描いて登場人物を深く掘り下げたりドラマを膨らませたりしているわけではない。
青春物とファンタジー・アクションとホラーとミステリーをミックスさせて、どれも薄味な上に混ぜても薄味という状態に陥っている。
青春物の瑞々しさや爽快感は無く、ファンタジーとしてはVFXが凡庸で、アクションのキレはイマイチで、ホラーとしては怖さが無くて、ミステリーとしては犯人がバレバレで謎解きの面白みに欠ける。
複数のジャンルを混ぜ合わせたのが間違いってことではなく、薄味と薄味を混ぜても薄味にしかならなかったってことだ。
薄味のレベルがもう少し上だったら何とかなったかもしれないけど、どうにもならないぐらいの薄味ばかりだったということだ。

ミステリーの部分についてもう少し詳しく書くと、のっけから目立つ行動を取っているのはリードだ。
しかし「最も怪しい奴は犯人じゃない」という推理の基本を考えると、おのずと容疑者は絞られる。ポーグはケイレブ派で、タイラーは数合わせに過ぎないので、ネタバレになるが、たぶんチェイスだろうという推理が成り立つ。
あえて第二候補を挙げるならポーグの可能性は少しだけ考えられるが、まあベタにやるならチェイスだろうと。
で、そのベタな答えが用意されている。
別にベタでも構わないけど、犯人に繋がるヒントや伏線が皆無に等しいので、ミステリーとしての面白味は味わえない。
チェイスが開始48分頃に能力を使うことで、彼が犯人であることが簡単にバレてしまうという作りも、なんだかなあって感じだし。

特殊能力を持っている連中の話だからと言って、やたらとスケールを大きくすればいいってもんじゃないし、高校生たちの話だから高校生のスケールで収めようという方針を取ったとしても、それは間違いじゃない。
ただ、「持っている能力の割には、やってることがチンケだなあ」と感じてしまう。
だってさ、ケイレブは正面衝突で木っ端微塵になった車(っていうか本人も即死するような事故だから、もはや能力を発揮することは出来ないんじゃないかと思ったりするが、それは置いておくとして)を一瞬で元に戻せるぐらいのパワーを披露しているんだから、どうやら彼よりは少し劣るらしい他の連中だって、かなりデカいことをやれそうなモンでしょ。
ところが、やってることは「難癖を付けて来た生徒にゲロを吐かせる」とか、「ビリヤードでイカサマして勝つ」とか、その程度なんだぜ。

リードも「パンティーの色を当てるゲームをして女性のスカートをめくる」というエロいことに能力を使っていたが、それはチェイスも大して変わらない。
シャワー室に半透明の奴が出没しているけど、あれってチェイスでしょ。
つまり、「姿を隠してシャワー室を覗く」という行動を取っているわけだ。
それを「ホラー」のシーンとして演出しているけど、ただのデバガメじゃねえか。お前の目的は、そういうことじゃないはずだろうに。

あと、チェイスはサラに執着しているのか、シャワーを除いたり、蜘蛛の悪夢を見せたりしているが、「何がしたいんだよ」と言いたくなる。
それを言い出したら、ケイトを蜘蛛の呪いで病院送りにする意味も無いんだよな。だってさ、チェイスの目的は本人曰く「さらなるパワー」を手に入れることなんだぜ。そのために、4人の中で最も強いケイレブのパワーを奪おうってのが彼の目的だ。
だったら、素人を装って接近したり、しばらくは紳士的に振る舞ったり、サラをビビらせたり、ケイトを病院送りにしたりする必要性なんて無いでしょ。
彼は聖なる誓いを守る気なんて無いんだし、最初から能力者としてケイレブたちの前に現れ、脅しを掛けて能力の譲渡を要求すればいい。
ケイレブが誕生日を迎えるまで待つ必要はあるけど、それ以外で無意味な行動を取る必要性はゼロだ。

「ケイレブか悪霊を見る」という描写が何度かあったり、シャワー室に半透明の不気味な悪霊が出現したり、サラが蜘蛛の悪夢を見たりするんだけど、それって「悪霊が色んなことをやっている」という設定でも成立することだ。
っていうか、むしろ超能力者の仕業ではなく、悪霊の仕業という設定の方が腑に落ちる。
実際は超能力者の仕業なんだけど、「超能力を使って悪霊を出現させるとか、蜘蛛の悪夢を見せるとか、それってパワーの使い方を間違ってないか?」と言いたくなる。

この映画、実はホラーとしての部分は、「ケイレブたちが超能力を持っている」という設定が全く効果的に使われていない。
本作品は欠点の多い仕上がりだが、そこが最も重大な欠陥ではないかという気がする。
超能力物としての企画と、ホラーとしての筋書きが、まるで融合していないんだよな。
そもそもホラーとしての色付けを持ち込んだことが間違いだったんじゃないか。
もっと言っちゃうと、「悪さをしている犯人は誰なのか」というミステリーも面白くないので、その要素も削って良かったんじゃないかと。

いっそのこと、最初から「ケイレブたちを脅かす能力者が現れた」という形で物語を進めて、アクション色を強めた方が良かったんじゃないか。
レニー・ハーリンって基本的にアクション畑の人だし。
ホラー仕立てにしたせいもあって、超能力アクションとしてのスケールがすげえ小さいし、かなり地味なんだよな。
最後の最後になって、ようやく8分ほど派手な超能力バトルがあるけど、そこまではバトルが一切無いのよ。
そういうのを増やせば良かったのに。

(観賞日:2014年5月2日)

 

*ポンコツ映画愛護協会