『レッスン!』:2006、アメリカ

ニューヨーク。社交ダンサーのピエール・デュレインはダンス・スクールを経営しており、生徒のケイトリンたちを主催するパーティーで踊らせた。一方、スラム街の高校ではダンス・パーティーが開かれ、生徒たちがDJの音楽に合わせて楽しく踊った。黒人学生のロックも参加しようとするが、父のせいでチケットが濡れてしまい、入場を拒否される。激しく抗議するロックだが、女性校長のジェームズから「どうぞ、退学の口実を作って」と挑発され、その場を立ち去った。
ロックは悪友たちにゴルフクラブを渡され、ジェームズの車を壊すよう促された。「気が乗らない」と断ったロックだが、「腰抜け」と馬鹿にされたので車を何度も殴り付けた。その様子を見掛けたピエールが近付くと、ロックは走り去った。翌朝、ピエールが自転車で高校へ赴くと、玄関では厳重な身体検査が実施されていた。彼が校長との面会を待っていると、黒人生徒のエディーに話し掛けられた。スーツを着たピエールは、女性が通る度にドアを開けた。その振る舞いを、エディーは馬鹿にして笑った。
ジェームズは教師のテンプルから、数学の特別コースに予算を組んでほしいと求められる。ジェームズは6人しかいないことを理由に却下し、「全校生向けのコースなら予算を組む」と告げる。「居残りクラスの監督は?」と彼女が問い掛けると、テンプルは「不良より数学クラブの方が大事です」と訴えた。ピエールはジェームズと面会し、車を壊す生徒を見たことを告げる。するとジェームズは警察に届けるよう促し、早々に追い払おうとした。
校長室の壁には、在任中に死んだ生徒たちの写真が飾られていた。ジェームズはピエールに、「あれを見て、全力で働かないといけないと肝に銘じるの」と話す。ピエールが「手伝いますよ。社交ダンスを生徒たちに教えます」と言うと、ジェームズは冗談だと捉える。しかし本気だと知った彼女は、居残りクラスを任せることにした。ジェームズはピエールに、居残りクラスは犯罪に手を出すクズばかりであり、他の生徒と触れ合わないよう隔離していることを説明した。
ジェームズがピエールに居残りクラスを任せたのは、引き受ける教師がいないからだった。生徒が誰も社交ダンスなどやりたがらないので、放課後の足止めには効果的だという考えもあった。ピエールは居残りクラスの教室へ行き、生徒のロックやラレッタ、ラモス、エディー、サーシャたちに会った。ピエールが社交ダンスを教えることを話しても、生徒は誰も興味を示さなかった。彼がダンスのパートナーを決めると、ラレッタはロックと組むことを激しく拒んだ。ピエールが帰ろうとすると、自転車が無くなっていた。
翌日、ピエールはスクールの助手を務めるティナから、勝手に学生の指導を始めたことに苦言を呈される。「ケイトリンの舞踏会デビューやモーガンのコンテストもある。やっと軌道に乗って来たのよ」とティナが言うと、ピエールは「何とかなるさ」と告げた。ケイトリンの母親は、舞踏会が近いのに娘のダンスが上達しないことで焦っていた。ダンスに全く自信が持てずにいるケイトリンに、ピエールは「親のためではなく、自分のために踊ろう」と告げた。
学校へ赴いたピエールは、ラレッタがロックを嫌う理由をジェームズに尋ねた。するとジェームズは、ラレッタに優秀な双子の弟がいたこと、1年前にロックの兄のグループと衝突して死んだことを話す。その際、ロックの兄も命を落としていた。教室へ移動したピエールは、「社交ダンスがヤワだというのは誤解だ。社交ダンスをやれば、クールに見える」と述べた。座り込んで参加を拒絶するロックを除き、ピエールは生徒たちにパートナーを組ませてダンスを教える。彼はラレッタにセンスを感じ、彼女と組んで見本を見せた。
翌日、ピエールが教室へ行くと、生徒たちはストリート系のダンスを楽しく踊っていた。ピエールが「そのエネルギーを社交ダンスにも」と言うと、ラモスが「無理だね。曲がダサい」と告げた。ロックはピエールから「踊らないのに、なぜ来る?」と問われ、「サボると卒業できない」と答えた。ピエールがダンス・スクールへ行くと、ケイトリンは舞踏会で恥をかくことへの恐れを漏らした。優れたダンサーであるモーガンへの憧れを口にしたケイトリンの言葉で、ピエールは名案を思い付いた。
次の日、ピエールはモーガンを連れて教室へ行き、華麗な社交ダンスを生徒たちに披露した。ロックとラレッタを除く生徒たちは興奮し、自分も踊ってみたいと言い出した。ラレッタが「彼女は親がレッスン代を出してくれるお嬢様でしょ」と反発すると、ピエールは「関係ない。練習すれば君にも出来る」と告げた。彼が「学期末には大きなコンテストがある。優勝すれば5千ドルだ」と教えると、生徒たちは乗り気になった。しかしジェームズはピエールに、「甘い夢は禁物よ」と冷淡な口調で告げた。
ケイトリンはピエールが下手な生徒たちを教えていると知り、連れて行ってほしいと頼んだ。ピエールは彼女を教室へ同行させ、ラモスと組むよう指示した。相変わらずロックだけは参加せず、ピエールが「善意を信じろ」と言うと「無理だね。住む世界が違うんだ」と口にした。兄が死んで以来、父は酒浸りで仕事をせず、母は食事の用意さえ忘れるようになっていた。両親に反発したロックは家を飛び出し、悪友たちの泥棒稼業に加担した。
ケイトリンが翌日も教室に来たので、ラレッタたちは冷やかしだと感じて攻撃的な態度を取った。しかしケイトリンが「ここにいたいの。ここの方が落ち着くから」と言うので、受け入れることにした。エディーたちはヒップホップの2曲をミックスし、音に合わせてステップを踏む様子をピエールに見せた。するとピエールはサルサの曲をミックスしてもらい、それに合わせて踊らせた。巨漢のモンスターは、エジプトから組むことを嫌がられた。そこでケイトリンがパートナーに立候補し、彼と踊った。
その夜、ラレッタは母の友人だというウーリーにレイプされそうになり、家を飛び出した。深夜の教室へ忍び込んだ彼女は、音を流して踊った。学校に泊まり込んでいたロックは、その様子を目にした。ロックに気付いたラレッタは、「何してんの?」と睨み付けた。「家に帰れない。お前の弟に兄貴が殺されてから、父は酒浸りだ。お前の弟は売人だ」とロックが言うと、ラレッタは「家計のためよ。パパが出て行って」と反発する。ロックが「誰がパパだか。ママは娼婦だろ」と告げると、ラレッタは憤慨する。警備員に見つかったのでロックはピエールに連絡を入れ、解放してもらった。ピエールはロックを自宅へ連れ帰り、ソファーで休ませた。
次の日、ピエールはジェームズと会い、ロックとラレッタには停学ではなく支援を与えるべきだと訴えた。彼はロックとピエールに、罰として朝のレッスンを命じた。ロックとラレッタは嫌がるが、ピエールは2人を組ませて練習させる。夜、ピエールが自宅にいるとカードが来て、パートナーであるビッグ・ガールに惚れてしまったことを告白した。「クールにいたいんだ。彼女に惚れたとバレたらマズい。美人でもないし」とカードが言うと、ピエールは「自分の心に従う勇気を持つのが、いい男の条件だ」と述べた。
ピエールはロックとラレッタに、互いを信頼する必要性を説いた。彼はラレッタに目隠しをさせて、ロックと踊るよう指示した。地下の教室が水浸しで使えなくなったため、ピエールは生徒たちを自分のスクールで練習させた。練習時間が来たのでモーガンが言いに行っても、ピエールは生徒たちの踊りを続行させる。そこでモーガンは音楽を流し、スクールの仲間と練習を開始した。モーガンはラレッタたちに、「これが本物の社交ダンスよ。貴方たちのは物真似」と告げた。
ラレッタが憤慨して「コンテストで勝負しましょう」と言うと、モーガンは「コンテストに出るの?負けるために二百ドルを出すなら、どうぞ」と勝ち誇った態度で告げる。ロックたちはコンテスト出場に金が要ることを、その時に初めて知った。ラモスは「勝てるわけがない」とやる気を失うが、ピエールは「誰も君たちが勝つとは思っていない。だから失う物は無い。簡単には勝てないが、自分を信じろ」と生徒たちに説いた。PTAの役員会はダンス指導の中止を要求するが、ピエールが熱弁して説得した…。

監督はリズ・フリードランダー、脚本はダイアン・ヒューストン、製作はダイアン・ナバトフ&ミシェル・グレイス&クリストファー・ゴドシック、製作総指揮はトビー・エメリッヒ&マット・ムーア&マーク・カウフマン&レイ・リオッタ&マシュー・ハート、撮影はアレックス・ネポンニアシー、美術はポール・デンハム・オースタベリー、編集はロバート・アイヴィソン、衣装はメリッサ・トス、振付はジョーン・ジャンセン、音楽はアーロン・ジグマン&スウィズ・ビーツ、音楽製作総指揮はボニー・グリーンバーグ。
出演はアントニオ・バンデラス、ロブ・ブラウン、ヤヤ・ダコスタ、アルフレ・ウッダード、ダンテ・バスコ、ジョン・オーティス、ローラ・ベナンティー、マーカス・T・ポールク、ジェナ・ディーワン、ジョナサン・マレン、ジャシカ・ニコール、シャワンド・マッケンジー、イライジャ・ケリー、ブレンダン・D・アンドリュース、ローレン・コリンズ、カティア・ヴァーシラス、アリソン・シーリー=スミス、フィリップ・ジャレット、ジョー・チム、ヴォロジミール・ヴィノグラドスキー、ケヴィン・ハンチャード、ジョセフ・ピエール他。


社交ダンスチーム「American Ballroom Theater」の創設者であり、ブラックプールで4度の優勝経験を持つピエール・デュレインの実体験を基にした作品。
彼のドキュメンタリー番組を見たプロデューサーのダイアン・ナバトフが、映画化を企画した。実際は小学生を相手に教えていたが、そこを高校生に変更している。
監督のリズ・フリードランダーはミュージック・ビデオ出身で、これが映画デビュー。脚本はTV映画『ブロンクス・キッズ 夢はチェス盤の向こうに』のダイアン・ヒューストンで、これが長編映画デビュー作。
ピエールを演じたのは、ブロードウェイミュージカルでトニー賞にノミネートされたこともあるアントニオ・バンデラス。ロックをロブ・ブラウン、ラレッタをヤヤ・ダコスタ、ジェームズをアルフレ・ウッダード、ラモスをダンテ・バスコ、テンプルをジョン・オーティス、ティナをローラ・ベナンティー、エディーをマーカス・T・ポールク、サーシャをジェナ・ディーワンが演じている。
生徒役の面々はオーディションで選ばれ、撮影前にダンスのレッスンを受けている。ちなみにモーガン役のカティア・ヴァーシラスは実際に社交ダンスの元王者で、ハリウッド版『Shall we Dance? シャル・ウィ・ダンス?』にも出演していた。

導入部のシーンに、困惑させられる。
ピエールがロックが出掛ける準備をする様子が描かれ、ジェームズが会場へ向かって歩く様子が写し出される。彼女がドアを開けると、カメラはピエールたちが踊る様子を捉える。踊り終えたピエールはマイクを握ってスクールの生徒たちを招き入れ、スタートを指示する。
カットが切り替わると、クラブのノリで踊る若者たちの様子が写し出される。ロックは会場に入ろうとするが、チケットの問題で拒否される。
そういう構成に、混乱させられるのだ。

ようするに、そこはピエールの生徒たちが踊るパーティーの様子と、高校の生徒たちが参加するパーティーの様子を、並行して描いているわけだ。
だからジェームズが開けたドアの向こうでは、本当は高校の生徒たちが踊っているのだ。
でも、そのタイミングでピエールたちの場所に切り替えるので、混乱を招くのだ。
ちょっと細工を凝らした構成にしているのは分かるんだけど、まさに「策士策に溺れる」という状態に陥っている。

そこは無駄にややこしくなっているだけなので、先にピエールのターンを一段落させてから、ロックのターンに移った方がいい。
それに加えて、まずはピエールが社交ダンサーとして優秀な人間であることを示してから、話を進めた方がいい。
冒頭で踊るシーンはあるけど、彼の社交ダンスの世界における地位や知名度がどれほどなのかは全く分からない。
もちろん話を進めながら少しずつ紹介していく形でもいいけど、それでも社交ダンサーとしてのピエールを描く時間は、もう少し取っておいた方がいいんじゃないか。

実話がモチーフだが、中身の大半はフィクションだから、脚色できる余地は多いはずだ。
それを考えると、ピエールが学生たちを教えようとする動機の弱さは何とかした方がいい。
「押し付けられたので渋々ながら」とか、「成り行きで仕方なく」とか、そういうことではなく自分から売り込む形で教え始めるのだが、そういう形にするなら「車を壊す生徒を見たから」というだけでは突き動かす力が弱い。
ロックを誰かと重ね合わせているとか、過去の体験が関係しているとか、そういうことでもないんだし。

そこの問題を解消するには、「基本的に学校サイドから描写する形を取る」という方法がある。
「学校は荒れており、ロックは苛立ちを抱えている。ジェームズは不良学生たちに頭を抱えている」という状況から入り、「ピエールが現れ、社交ダンスを生徒に教えたいと言い出す。謎の多い男だったが、少しずつ正体が明らかになっていく」という進め方にするのだ。
こうしておけば、ミステリアスだが魅力のある男としてピエールを描くことにより、動機の部分がボンヤリしていても誤魔化すことが可能になる。

ジェームズはピエールを居残りクラスへ案内する際、様々な犯罪に手を染めている連中だと説明している。
しかし居残りクラスの生徒たちは、かなり聞き分けの良い面々だ。
ピエールがラジカセで曲を流して立つよう指示しても無視するが、音量を上げると渋々ながらも起立している。勝手に音を消すとか、ラジカセを壊すとか、そういう行動は取らない。
そもそも居残りについては承諾し、学校に残っているわけで。ホントのクズなら、その指示に従わないだろう。っていうか、まず学校へちゃんと来ることも無いだろう。

ピエールが「社交ダンスはヤワだと思う人?」と問い掛けると挙手するのは、とても素直な反応だ。ピエールから見本として一緒に踊るよう指示されたラレッタは嫌がりながらも承諾するが、とても聞き分けの良い反応だ。
ピエールが音を大きくしようとすると、生徒たちは社交ダンスを踊ることも了承する。もうちょっと反抗的で荒れている状態にしておかないと、設定が死んでしまうんじゃないか。これが単に「落ちこぼれ生徒たち」という設定ならともかく、「スラム街の荒れた高校で、その中でも隔離されているような生徒たち」という設定なんだからさ。
もちろん、最終的には社交ダンスを通じてピエールと生徒たちに強い絆が生まれるんだから、根っからの悪人じゃなくて「ホントは純真な心の持ち主」にしておくのは悪いことじゃない。
だけど「素直で純真な良い子たち」ってのが最初から見えまくっているのは上手くない。

ダンス・スクールのシーンは丸ごとカットして、ピエールが居残りクラスの生徒たちを教えて成長させる物語に集中した方がいい。
ダンス・スクールのシーンは、ケイトリンを登場させるってのが重要な目的だ。つまり裏を返せば、ケイトリンさえ登場させなきゃ、そこは排除しても問題ないってことだ。
ケイトリンを登場させるのは、生徒のバリエーションを増やしたいという狙いがあったのかもしれない。
ただ、それは居残りクラスの生徒だけでも出来るはずで。

しかも、わざわざ高校の生徒じゃないケイトリンを参加させておきながら、モンスターのパートナーに立候補した後はアンサンブルに埋もれてしまう。1人だけ別枠での扱いだったのに、ほぼ無意味になってしまう。
カードはビッグ・ガールに惚れたことを告白する展開があるけど、そこまでに2人の関係描写なんて全く無かったので「そんなことを急に言われても」と言いたくなる。
実質的には、ロックとラレッタ以外の面々は単なる数合わせに過ぎないのだ。
生徒以外のキャストでも、ティナやジェームズといった面々を上手く活用できているとは到底言い難いし。

後半には居残りクラスの地下教室が水浸しで使えなくなる展開があるが、なぜ水浸しになったのかサッパリ分からない。誰かの嫌がらせなのかと思ったが、そういうわけでもないのよね。
事情がサッパリ分からないし、そこは「ダンス・スクールで練習させたことでモーガンと揉める」という展開に持って行くための流れがギクシャクしているとしか思えない。
それと、モーガンは自分たちの練習時間が来たから場所を空けるよう求めているんだから、それは当然でしょ。
モーガンは「高い授業料を払ってる」と主張するが、その通りだ。なのに生徒の指導を続けるからトラブルになるわけで、そこはピエールがボンクラすぎるだろ。

この映画で何よりマズいと感じるのは、「最初は社交ダンスを嫌がり、何の技術も無かった生徒たちが、練習を積む中で上達し、楽しさや喜びを得るようになっていく」という成長のドラマが上手く描かれていないってことだ。
「渋々ながら従っていた生徒たちが、少しずつ前向きな気持ちに」という変化を用意せず、「ピエールとモーガンのダンスを見て一気に態度が変わる」という簡単な手口を使っていることについては、ピエール&モーガンの踊りに「本物の説得力」があるので、そこは受け入れられる。
だけど、何となく話が進む中で、いつの間にか生徒たちの踊りが上達しているってのはダメだわ。

コンテストのシーンに入ると、タップ部門ではサーシャのパートナーの座を2人が競い、結局は3人で踊る。
会場では拍手が起きるが、もちろんルール違反なので得点はゼロになり、モーガンのペアが優勝する。しかし会場ではブーイングが起き、仲間たちは激しく抗議する。そこでモーガンがマイクを握り、引き分けにしてもらう。
いや、それはダメだろ。
そこは「ルール違反だから得点はゼロだったけど、社交ダンスの楽しさを知った」ってことでいいだこの映画で大切なのは、「勝利」じゃないはずでしょ。

そもそも、わずかな期間しか練習していない生徒たちが、ずっと前から厳しい稽古を積んで来たモーガンたちに匹敵する社交ダンスを披露できる技術を会得しているという設定の時点で違和感が強いのよ。
そういうフィクションは、映画の質を下げるだけだ。
繰り返しになるけど、この映画に必要なのは「短い期間で上達し、優秀な社交ダンサーに匹敵するほどの技術力を習得しました」という成功物語ではないはずでしょ。
厄介な問題児たちが社交ダンスと出会い、人間的に成長するという物語のはずでしょ。

(観賞日:2017年9月7日)

 

*ポンコツ映画愛護協会