『ランダウン ロッキング・ザ・アマゾン』:2003、アメリカ

ロサンゼルス。回収屋のベックはクラブへ赴き、フットボール選手ナップミラーと仲間たちが飲んでいるのを確認した。ベックは雇い主の 命令を受け、ナップミラーから借金を取り立てるためにやって来たのだ。ナップミラーが千ドルしか支払わず「月曜日まで待て」と要求 したため、ベックは指輪を担保として渡すよう告げた。しかしナップミラーは拒否し、酒をベックに浴びせた。
ベックはトイレに行って雇い主に電話を掛け、「選手たちに怪我を負わせたくない。取立ては後日にしよう」と持ち掛けた。しかし雇い主が 納得しなかったため、ベックは再びナップミラーの元へ舞い戻った。ナップミラーの仲間たちが殴り掛かって来たが、ベックは返り討ちに 遭わせた。ベックはナップミラーの腕を捻じ曲げ、指輪を奪った。店を出たベックだが、雇い主が寄越した別の回収屋マーティンにゴム弾 で襲われ、倒れている内に指輪を奪われた。
ベックは雇い主である裏社会の大物ウォーカーの元へ行き、マーティンを寄越したことを非難した。ベックはウォーカーに多額の借金を しており、返済のために回収屋となった。彼は小さなレストラン経営を夢見ているが、今回のギャラは差し引かれてしまった。ウォーカー はベックに、ある男を見つければ借金をチャラにして開業資金を出してやると持ち掛けた。
探し出す男の名はトラヴィス・ウォーカー。ウォーカーと別れた3番目の妻との間に生まれた息子だ。トラヴィスはトラブルを起こして おり、それを解決するために連れ戻す必要があるとウォーカーは説明した。トラヴィスは現在、アマゾンのヘルドラドという場所にいる という。ベックはブラジルへ飛び、デクランという男のヘリでアマゾン奥地へと入った。
ベックはデクランのジープに乗り、ヘルドラドを移動した。ヘルドラドには金鉱があり、それを発見したハッチャーという男が独裁者と して現地民を支配していた。トラヴィスは馴染みのバーを訪れ、バーテンダーのマリアナにボートを貸してほしいと頼んだ。トラヴィスは 古代の秘宝である黄金の猫ガトーを探しているのだ。マリアナはボートを貸す変わりに、分け前を約束させた。
ベックはハッチャーのアジトを訪れ、トラヴィスを探しに来たことを説明した。ハッチャーは、トラヴィスに金鉱近くで発掘する許可を 出したが、6割の分け前を渡すよう約束させたと話した。ベックがトラヴィスを連れ戻す目的を告げると、ハッチャーは一万ドルを要求 した。余計な争いを避けたいベックは、一万ドルをハッチャーに支払った。
ベックはバーに赴き、トラヴィスを発見した。トラヴィスは抵抗しようとするが、あっさりベックに取り押さえられ、手錠を掛けられた。 だが、そこにハッチャーが弟のハーヴェイや手下のスウェンソンたちを引き連れて現れ、トラヴィスを置いていくよう要求した。トラヴィスが 秘宝を発見したという情報を得たハッチャーは、それを自分の物にしようと考えたのだ。ベックはトラヴィスの引渡しを拒否し、武力行使 に訴えたハッチャーの手下達を蹴散らした。ベックはトラヴィスを引き連れ、バーから脱出した。
ベックはジープにトラヴィスを乗せ、デクランを待たせている飛行場へ向かおうとする。しかしトラヴィスは抵抗し、ジープを崖下に転落 させた。ベックはジープから激しく投げ出され、トラヴィスは鍵を奪って手錠を外した。逃げ出したトラヴィスだが、あっさりベックに 追い付かれた。トラヴィスは「ガトーの価値は数百万ドルはする。それを使って俺は博士号を取る」と捲くし立て、「分け前を渡す」と 取引を持ち掛けた。しかしベックはキッパリと拒絶した。
ベックは豚の罠に掛かり、宙吊りになってしまう。高笑いを浮かべたトラヴィスだが、彼も罠に引っ掛かってしまった。そこへ猿の群れが 出現し、2人を包囲した。だが、ゲリラの連中が現れ、猿を追い払った。ベックとトラヴィスは、ゲリラの味とに連行された。ベックが ポルトガル語を理解できないのを利用し、トラヴィスは「この男はハッチャーの殺し屋だ」とゲリラに吹き込んだ。そのため、ベックは 良く分からないまま、ゲリラのマニートたちと戦わされるハメになった。
ベックがマニート達と戦っているところへ、マリアナが現れてゲリラを制止した。トラヴィスも知らなかったが、マリアナはゲリラの リーダーだったのだ。マリアナはゲリラ活動の資金確保のため、ガトーを手に入れようと考えていた。マリアナはベックに、トラヴィスを 置いて飛行場へ行くよう要求した。そこへハッチャーと手下たちが現れ、攻撃してきた。マニートたちが殺害される中、ベックとトラヴィス、 マリアナの3人はボートで脱出した。
マリアナは銃をトラヴィスに向け、ガトーのある場所へ案内するよう脅した。ベックはマリアナから銃を取り上げ、「トラヴィスにガトー のありかまで案内させる。その後、自分がトラヴィスを連れて飛行場へ行く」という条件でマリアナとの交渉をまとめた。トラヴィスは ベックとマリアナを引き連れてジャングルを進み、滝に辿り着いた。滝の洞窟にガトーがあるのだという。
3人は滝の洞窟に入り、古代の金庫の暗号を解いてガトーを見つけ出した。その直後、洞窟の天井が崩落し、ベックたちは慌てて脱出した。 休憩を取る間、マリアナはベックとトラヴィスに現地の果実コンラボスを食べさせた。だが、それは麻痺を引き起こす毒性のある果実 だった。ベックとトラヴィスが麻痺している間に、マリアナはガトーを奪って姿を消した。痺れが消えた後、ベックはトラヴィスを連れて 飛行場へ戻った。そこで彼はデクランから、マリアナがハッチャーに捕まったことを知らされる…。

監督はピーター・バーグ、原案はR・J・スチュワート、脚本はR・J・スチュワート&ジェームズ・ヴァンダービルト、製作はケヴィン ・ミッシャー&マーク・エイブラハム&カレン・グラッサー、製作総指揮はヴィンス・マクマホン&リック・キドニー、撮影はトバイアス ・シュリッスラー、編集はリチャード・ピアソン、美術はトム・ダフィールド、衣装はルイーズ・ミンゲンバック、音楽はハリー・ グレッグソン=ウィリアムズ、音楽監修はアマンダ・シェアー=デミ。
出演はザ・ロック、ショーン・ウィリアム・スコット、クリストファー・ウォーケン、ロザリオ・ドーソン、ユエン・ブレムナー、ジョン ・グリース、ウィリアム・ラッキング、アーニー・レイエスJr.、スチュアート・F・ウィルソン、デニス・キーファー、ギャレット・ ウォーレン、トビー・ホルグイン、ポール・パワー、スティーヴン・ビショップ、チャック・ノーマン、ジャマール・ダフ、ジョン・ダフ 、ジェフ・チェイス、ジャクソン・プライス、アンソニー・ディアス=ペレス他。


『ベリー・バッド・ウェディング』で映画監督デビューした俳優出身のピーター・バーグがメガホンを執ったアクション・コメディー映画。
日本公開時は「ロッキング・ザ・アマゾン」という意味不明なサブタイトルを付けられたが、DVD化の際に削られて単なる『ランダウン』 になった。主人公のベックを演じるのは、プロレスラーから俳優に転進したザ・ロック様。
他に、トラヴィスをショーン・ウィリアム・スコット、マリアナをロザリオ・ドーソン、ハッチャーをクリストファー・ウォーケン、 デクランをユエン・ブレムナー、ハーヴェイをジョン・グリース、ウォーカーをウィリアム・ラッキングが演じている。
アンクレジットだが、冒頭のバーのシーンでアーノルド・シュワルツェネッガーがベックとすれ違い、声を掛けている。

冒頭にあるバーでの乱闘は、「ザ・ロック様のアクションで観客を惹き付ける」という意味を持つシーンのはずだ。
ところが、クラブの照明で画面がチカチカして目に優しくない。
その上、カット割りもやたら細かいので、何がどう動いているのか良く分からない。
せっかくザ・ロック様が重厚感溢れる格闘をやっているのに、ゴチャゴチャしている印象しか受けない。
ベックがハッチャーのアジトに到着した場面でも、無意味に細かいカット割りで目を疲れさせる。マリアナのバーでの格闘では、ベックが 飛び付きヘッドシザース・ホイップのような大技を見せたりするが、やはりカット割りが細かすぎるしカメラワークに難がある。
ザ・ロック様は魅せるアクションの出来る人なのに、監督にアクション演出のセンスが欠けているので台無しになっている(ただし、その ザ・ロック様も従弟のタノアイ・リードにスタント・ダブルを任せているんだけどね)。

監督のセンスに対する疑問符は、アクション演出だけに留まらない。
バーでの格闘が終わった後、ベックはハアハアと荒い息を吐いて疲れた様子を見せる。さらにゴム弾で撃たれて苦悶し、指輪を奪われる 様子を見せる。
いきなり主人公の弱さ、情けなさを見せてどうする。
指輪を奪われて稼ぎを差し引かれなくても、「金が必要だから仕事を請け負う」という状況にベックを追い込むことは余裕で出来るぞ。
そんで指輪を奪って邪魔したマーティンは、二度と出て来ないし。
じゃあ何の意味があるのかと。

トラヴィスは「騙したり出し抜いたりする卑怯な奴だが、どこか憎めない部分もある」というビビビのネズミ男チックなキャラであるべき だと思うんだが、ただのムカつくウザい奴になっている。
これは芝居の質や方向性に問題があるのではなく、キャラ設定や動かし方に問題がある。
終盤になって急にトラヴィスが「いい人」になるが、心の変遷は全く描かれていない。
ベックのキャラ造形も不安定。
「貫禄たっぷりで強面の堅物が真面目なことを言うのが、結果的にボケになる」という見せ方をしていくのかと思ったら、簡単な罠に 引っ掛かってうろたえたり、猿にビビって悲鳴を上げたりする。
いつもタフな奴が弱点を持っているという形ではなく、どこで弱さ・情けなさを見せるかという使い分けがフワフワしている。
ベックとトラヴィスの掛け合いにバディー・ムーヴィーとしての面白味が全く感じられないのもキツい。

クリストファー・ウォーケンは、特に面白味があるわけでもない、ごく普通のB級映画の悪役をやっている。
ハッチャーにしてもマリアナにしても、大して活躍の場を与えられていない。
それを「いかにもB級らしいな」と受け入れるわけには行かない。
同じB級映画でも、例えば『沈黙の戦艦』のトミー・リー・ジョーンズは、もっと活躍していたぞ。

トラヴィスが「ベックはハッチャーの殺し屋だ」と吹き込んだことで、ゲリラの連中は始末しようと銃を構える。
ところが、なぜか銃を手放し、素手ゴロでの対決を持ち掛けるという不自然極まりない展開になる。
で、マニートは戦いを避けようとするベックを英語で挑発する。
ちょっと待て、英語が分からないから、ベックの言葉が通じないんじゃなかったのかよ。

トラヴィスには秘宝を探すという目的があり、そこにベックも関わりを持つことになる。
だったら、秘宝の発見が終盤の盛り上がりになるかと思いきや、それほど苦労も無く簡単に見つかる。
そんで結局、秘宝はマリアナが売却することで話が締め括られているが、いいのか、それで。
博物館に寄贈されるような国宝級の宝なんでしょ。それが闇のルートで捌かれるってのは、いいのかよ。

終盤の展開には苦しさを感じる。 マリアナはベックとトラヴィスを果実で麻痺させるが、そんな必要があるのか。「ベックが秘宝を彼女に渡し、トラヴィスを連れて別れる 」という形で済むでしょ。
その後の展開も、あの流れだと、ベックがマリアナを助けるために戻るのは説得力が弱い。
トラヴィスが秘宝のためとは言え、死の危険がある場所への同行をベックに申し出るのも不自然だ。
そこはハッチャーの隠れ家をトラヴィスが知っている設定にして、ベックが案内役で連れて行く形にでもすればいいじゃん。

ベックは銃の使用を避けているんだが、その理由については「銃を使うと、どうなるか分からないから」という簡単な説明があるだけ。 特に大きな意味があるわけでもない。単純に、ザ・ロック様の肉弾アクションを増やしたかっただけだろう。
ラスト・バトルでは、思案してから銃を手にするのだが、そもそも使わなかった理由が「深い事情があって絶対に守るべき掟」みたいな モノではないので、タメを作ってから銃を撃たせても高揚感に繋がらない。
で、劣勢だった状況を銃によって挽回し、勇ましく活躍したのだから、そのままボス退治まで雪崩れ込んでいくべきだろう。
なのに、また手下との素手ゴロによる格闘に戻り、しかも苦戦する始末。
タルいよ。
ただ、ジャッキー・チェンのスタント・チームの一員であるアンディー・チェンが格闘シーンのコーディネイターを務めているのだが、 アクション場面の出来映えが冴えない中で、この人のコレオグラフィーだけは、今後に注目したいと思わせるモノがある。

最後にベックはウォーカーと手下たちにコンラボスを食べさせ、麻痺している間にトラヴィスを連れて逃亡するのだが、なんでやねんと。
それなら、そもそもトラヴィスをロサンゼルスへ連れ帰らなければ良かったじゃないか。ロサンゼルスに戻ってから、何か出来事があって 気が変わったわけでもないんだし。
そんなことをしたら金も貰えないし、組織に追われる身になるんだぞ。
そこまでしてトラヴィスを助けてやる義理があるのか。
あと、助けないとトラヴィスが殺されるとか拷問されるというならともかく、彼のトラブルは謝罪すれば済む問題だろ。
なんでベックは命を狙われるリスクまで負って逃がしてやるのかと。

どこまでもB級の作りであり、何の捻りも無いベタベタでオーソドックスなスクリプトだ。
新鮮味は何も無いし、はみ出したり弾けたり突き抜けたりという箇所も見当たらない。
だが、何の捻りも無いB級映画だからといって、必ずしもダメだというわけじゃない。
この作品がダメなのは、雑に作っているからだ。
丁寧な肉付け、繊細な味付けをやっていないからだ。

(観賞日:2008年4月17日)

 

*ポンコツ映画愛護協会