『ラフ・ナイト 史上最悪!?の独身さよならパーティー』:2017、アメリカ

2006年。同じ大学に通うジェス、アリス、フランキー、ブレアは、ハロウィンのゲーム大会に参加する。アリスは男子学生と対決するが、最後になって不安を漏らす。ジェスが「勝てば女性初の優勝者よ」と勇気付け、アリスは優勝した。学生寮に戻ったジェスたちは、「卒業した後もずっと一緒よ。子供たちを一緒に遊ばせるの」と約束した。10年後。ジェスは上院議員に立候補するが、ペニスの写真をツイートした敵陣営のウェッソンとは接戦だった。ウェッソンは「写真を間違えた」と謝罪し、別のペニス写真をツイートしていた。
選挙スタッフのラヴィヴはジェスに、「有権者は共感できる相手に投票する。彼は一緒にビールが飲めそうだ。でも君は違う」と告げた。そこへ結婚して子供もいるアリスから電話が入り、「今度の旅行、すごく楽しみ」とジェスは言われる。ジェスは独身最後に、アリスたちと集まってマイアミ旅行へ出掛ける予定を組んでいた。スタッフのリサに「またウェッソンがペニスの写真をツイートした」と知らされたジェスは、慌てて電話を切った。
帰宅したジェスは、同棲中のピーターと会話を交わす。アリスから電話が入っても彼女は携帯を取らず、「もう旅行プランの話は勘弁。今は女友達と楽しむより、貴方と一緒に過ごしたい」と語る。しかし選挙活動で忙しいため、その希望は叶えられなかった。週末、ジェスはピーターに車で空港まで送ってもらい、アリスと合流した。政治活動家になったフランキー、息子の親権を巡って夫のマルコムと揉めているブレアは、マイアミの空港で合流した。ブレアは恋人だったフランキーと別れて結婚したが、2人は再会を喜び合った。そこにジェスとアリスも現れ、全員が揃った。4人が集まるのは、ブレアが出産した3年前の大晦日が最後だった。
ジェスたちはマイアミ・ビーチのコテージに到着し、鍵を持っているリアとピエトロを訪ねた。情欲を隠そうとしない2人の独特な雰囲気に、ジェスたちは戸惑った。コテージに入ったアリスが「私はジェスと同じ部屋ね」と言うと、ジェスは「その部屋は二段ベッドだからピッパとルームシェアね」と告げる。「誰?」と訊かれたジェスは、「オーストラリアに留学していた頃の友達よ」と説明する。ジェスは「コテージを貸してくれたのは親切な支援者なの」と話し、綺麗に使うよう求めた。奥の部屋にはセックス用のブランコが置いてあり、フランキーは「アンタの支援者は変態よ」と言う。狼狽したジェスは「きっと別の人が忘れていったのよ」と告げた。
その夜、ジェスたちがバーで飲んでいると、ピッパが来た。ジェスとピッパが笑顔で抱き合う様子を見たアリスは、不快感を隠せなかった。アリスはピッパに嫌味を浴びせ、露骨に敵対心を示した。ピッパも負けておらず、嫌味で返した。アリスが調べておいたクラブのリストを見せると、ジェスは「今日は早く寝たいんだけど。ずっと忙しかったし」と言う。しかしアリスは「人生で最も大事な週末なのよ」と告げ、彼女の希望に同意しなかった。
トイレから戻ったフランキーは、ウェイターがコカインをくれたことを興奮した様子で語る。ジェスは「私はやらない。出馬してるのよ」と言うが、アリスたちに説得されて一緒にコカインを吸った。5人はアッパーになってクラブに繰り出し、酒を飲んで踊った。ブレアがストリッパーを呼ぼうと提案すると、全員が賛同した。アリスはDJに曲をリクエストし、ピッパ以外の3人をステージに上がった。4人は大学時代にやっていたダンスを披露するが、アリスは途中で転倒してしまった。彼女が体を預けるとジェスが受け止めるはずだったが、すっかり振付を忘れていたのだ。ジェスは謝り、さらにコカインを吸った。
コテージに戻った5人は、プールサイドで酒を飲んだ。しばらくすると男性が来たので、ブレアは「ストリッパーが来たわ」とジェスたちを呼ぶ。ジェスたちは音楽を流し、男に踊るよう告げる。男は上着を脱いで踊り出し、ジェスに歩み寄った。しかし男が「欲しいんだろ、尻軽め」と言うと、ジェスは「やめて、気持ち悪い」と突き放した。アリスは「次は私」と言い、男に飛び付いた。すると男はテレビ台の角に頭をぶつけ、大量に血を流して死んでしまった。
ピッパが「警察に電話しましょう」と言うと、ジェスは「ダメよ。まず薬を片付けないと」と止める。フランキーが「彼は厳密に言うと、ストリッパーじゃなくて男娼よ。ウェブの広告で見つけたの」と話すと、ジェスは「私は出馬してるのよ。酷いじゃない」と非難の言葉を口にする。フランキーは「私はもっとキツい。もう3回も有罪だから、次は終身刑かも」と語り、足首の監視装置を外して旅行に来たことを明かす。ピザの宅配業者が来たので、ジェスたちは慌てて死体を移動させた。ピッバが金を支払い、ピザを受け取った。
5人はピザを食べ、ブレアは弁護士を呼ぼうと提案した。ジェスたちは賛同し、ブレアは弁護士をしている叔父のジャックに連絡すると告げる。ピーターから電話が掛かると、ジェスは携帯を取って話し始める。ピッパたちが慌てて通話を切るよう促しても、彼女は無視して「コカインを吸った。男娼が来た」などと饒舌に喋る。フランキーは携帯を奪い取って床に叩き付け、「弁護士と話すまで誰にも話しちゃダメだよ」と釘を刺した。ブレアは「計画が固まるまで、みんなの携帯を預かる」と告げ、携帯を回収した。
ピーターはジェスが結婚を嫌がっていると誤解し、一緒にいる親友たちの前で嘆く。フランキーは「プリペイド携帯なら履歴が残らない」と言い、ブレアと共に町へ行く。2人は顔が分からないようパックを施し、老人夫婦に金を渡してプリペイド携帯を買って来るよう頼んだ。ジェスたちは死体の視線が気になり、サングラスで隠すことにした。彼女たちは窓にカーテンを掛け、隠蔽工作に取り掛かる。ジェスがピッパとスカイプで話していることを知り、アリスはショックを受けた。「パスワードを忘れたって言ってたわよね」と問われたジェスは、「だからログインが大変なの」と取り繕った。
猛犬が近付いて来たのでピッパは追い払おうとするが、右腕を噛まれて怪我をした。ジェスたちがガレージに死体を隠すが、シャッターが勝手に開閉を繰り返した。そこへフランキーとブレアを乗せたタクシーが来たので、3人は狼狽した。フランキーたちは慌てて誤魔化し、タクシーを帰らせた。5人は死体を隠す場所について思案し、セックス用のブランコに乗せた。ブレアはジャックに電話して事情を説明し、意見を求めた。ジャックは「警察は君らを過失致死容疑で訴追するだろうが、立証は簡単じゃない。死体や殺害現場に触らなければ問題ない」と語るが、既に死体を動かしたと聞いて「過失致死で懲役15年になる」と言う。動揺するジェスたちに、彼は「彼は死体が無ければ事件にならない」と助言した。
ブレアは「服役なんて無理」と漏らし、半年前からマルコムと別居していること、親権を巡って争っていることを打ち明けた。アリスは「生徒は私を崇拝してる。刑務所には行けない」と吐露し、ジェスは「みんな同じよ。刑務所なんて耐えられない」と涙ぐむ。5人は相談し、死体を捨てて事件を隠蔽しようと考える。一方、ピーターは仲間たちに背中を押され、ジェスを取り戻しにマイアミへ行くと決めた。彼はトイレ休憩を挟まず車でマイアミへ急行するべきだと言われ、オムツを買い込んだ。
ジェスたちは死体を海に捨てるためビーチへ行くが、気付いたリアとピエトロが来たので慌てて誤魔化した。2人を帰らせた後、ピッパが水上バイクで死体を海に捨てた。しかし水上バイクを運ぼうとしたジェスたちは、リア&ピエトロのコテージの防犯カメラが海を写していることに気付いた。ブレアは2人の元へ行き、ビーチに出て3Pを撮影しようと持ち掛けた。しかし3Pが終わった後、彼女はテープが入っていないことを知らされた。車を走らせていたピーターは警官に怪しまれるが、飲酒の疑いは晴れた。
ジェスたちはコテージを掃除し、立ち去る準備をする。ビーチに出て集合写真を撮影した5人は、死体が打ち上げられていることに気付く。慌てて死体を回収したジェスたちが困っていると、「警察だ」と声がして激しくドアがノックされた。フランキーが応対に出ると、警官は両手を壁に置いて足を開くよう命じた。フランキーは体に触れる警官に憤慨してノックアウトするが、ストリッパーのスコッティーだと気付いた。ジェスたちは気絶したスコッティーを寝室へ運び、彼の車に死体を乗せて捨てに行く。しかし事故を起こして車が故障したため、仕方なくコテージに戻った。
5人は口論になり、アリスは自分だけジェスの前祝いに呼ばれていないことを知ってショックを受ける。ジェスが「あれはピーターの家族のためにやっただけよ」と言い訳すると、アリスは「ピーターはホントに疎ましい。私に嫉妬して嫌ってる」と語る。ジェスは彼女の態度に腹を立て、「貴方を呼んだら私の時間を独占するでしょ」と声を荒らげた。ジェスはアリスと口論になり、部屋に閉じ篭もる。重苦しい雰囲気が漂う中、コテージに2人の刑事のルイスとフレイジャーがやって来た…。

監督はルチア・アニエッロ、脚本はルチア・アニエッロ&ポール・W・ダウンズ、製作はマット・トルマック&ルチア・アニエッロ&ポール・W・ダウンズ&デイヴ・ベッキー、製作総指揮はマシュー・ハーシュ&ベン・ワイズブレン、撮影はショーン・ポーター、美術はボブ・ショウ、編集はクレイグ・アルパート、衣装はリア・カッツネルソン、音楽はドミニク・ルイス。
出演はスカーレット・ヨハンソン、ケイト・マッキノン、ジリアン・ベル、イラナ・グレイザー、ゾーイ・クラヴィッツ、デミ・ムーア、ポール・W・ダウンズ、タイ・バーレル、エンリケ・ムルシアーノ、カラン・ソーニ、ディーン・ウィンタース、ライアン・クーパー、コルトン・ヘインズ、パトリック・カーライル、エリック・アンドレ、ボー・バーナム、ハサン・ミンハジ、ローラ・グレイ、マーク・トールマン、グラント・モノハン、ヨニ・ロタン、コールドウェル・ティディキュー、ダニエル・レイモント、カルロス・イバーラ、マディソン・アーノルド、ジーナ・コットーネ他。


映画化されていない脚本を評価するThe Black Listで2015年にランクインし、ソニー・ピクチャーズが映画化権を獲得した作品。
監督&脚本のルチア・アニエッロ、脚本のポール・W・ダウンズは、いずれも本作品が映画デビュー。
ジェスをスカーレット・ヨハンソン、ピッパをケイト・マッキノン、アリスをジリアン・ベル、フランキーをイラナ・グレイザー、ブレアをゾーイ・クラヴィッツ、リアをデミ・ムーア、ピーターをポール・W・ダウンズ、ピエトロをタイ・バーレルが演じている。

冒頭シーンから、観客の気持ちを掴むパワーが不足していると感じる。パワー不足っていうか、ピントを合わせ切れていないって感じかな。
アヴァン・タイトルで大学時代の出来事を描いて、そこから「現在」という入り方をするのは悪くないと思うのよ。
ただ、その大学時代の描写が、ボンヤリしちゃってんのよね。
ゲームに興じるシーンがあるけど、それで終わらずシーンを切りかえて寮の部屋で語り合う様子に切り替えた時点で既にボヤけてる。

寮のシーンは、「ジャニーンという同級生が来て放尿しようとするので、ジェスたちは慌てて止める。だけどジャニーンは生意気な態度で無視する」というトコで終わり、タイトルが表示されて10年後に切り替わる。
だけど、ジャニーンを使った展開は、パンチラインとしては上手くオチてないんだよね。
なんで無関係な女を、そのために投入するのかと。
10年後のシーンに絡んでくるならともかく、そこだけで出番は終わりなんだよね。

10年後になると、ジェスは上院選に立候補して苦戦を強いられている。だが、敵陣営については台詞で少し語られるだけで、まるで姿が見えない。選挙スタッフも、数名しか見当たらない。
それで何か支障があるかというと、全く無い。なぜなら、ジェスが立候補しているという設定は、後の展開に何の関係も無いからだ。
粗筋でも触れたように、この作品は「卒業後に集まった仲良しグループがトラブルに巻き込まれてアタフタして」というドタバタ劇だ。そこにジェスの立候補という要素は何も絡んでいない。
そこを排除したところで、話の展開は全く変わらないのである。

大学を卒業して10年も経っているので、それぞれが社会に出ている。なので全員が結婚して家庭に入っているのではなく、バリバリと仕事をしているキャラを置くのはいいだろう。
ただ、「上院議員に立候補」ってのは、設定としての無駄な装飾になってしまう。ただ「会社で仕事をしています」とか「個人事業主として何かやっています」みたいな設定じゃダメだったのか。
もっと言っちゃうと、実は「ジェスが結婚間近」という設定すら上手く機能させられていないんだよね。ここが無くても、ほとんど変わらない。
だったら、独身最後なのは彼女じゃなくて別のキャラにしておけば良かったんじゃないか。それなら「あっても無くても大して変わらない」という状態でも、そんなに気にならなかった可能性はあるぞ。

っていうか他の連中の「現在の生活」についても、ほとんど使いこなせていないんだよね。
アリスはフルタイムで先生をやっているとか、母親がアルツハイマーという設定がある。フランキーは活動家、ブレアは真剣を巡って別れた夫と揉めている設定がある。
この内、マトモに活用できているのは、何も無いと言ってもいい。
「充実した暮らしを送っているはずの5人だが、実は違うことが明らかに」という展開で、ドラマを作る作業も無いし。ブレアが別居や親権のことを明かしても、以降の展開には何も繋がらないし。

「ジェスが仲良しグループとバチェラー・パーティーに出掛ける」という話だが、すぐにピッパという部外者が参加してしまう。
ジェスが留学した時に親しくなった相手なので、彼女にとっては「友達」という関係だ。でも、最初に「大学時代の仲良しグループ」として4人を登場させているので、やはりピッパは部外者と言わざるを得ない。
そして、そんな人間をジェスが平気で呼んでいる時点で、「どういうつもりなのか」と言いたくなる。
アリスたちにしてみれば「仲良しグループがジェスの独身最後を一緒に過ごす」という大事な時間なわけで、そこにジェス以外からすると赤の他人でしかない人間を呼ぶのはデリカシーが無さすぎるでしょ。ピッパと一緒に過ごしたければ、別の時間を設けるべきでしょ。

ピッパが来ると、フランキーとブレアは歓迎するが、アリスは露骨に不快感を示す。
しかし、「アリスがピッパを嫌っている」という設定も、そんなに上手く使いこなせていない。コテージに戻ってもアリスはピッパへの不快感を口にするものの、それが物語を動かす要素として機能することも無い。
そんな中で男が死ぬのだが、それは始まってから30分ほど経過した辺り。そこまでに描かれた内容が、「男が死んでしまい、ジェスたちが狼狽して」という展開と上手く連携しているとは、到底言い難い。
半分ぐらいに短縮しても、たぶん大して変わらないだろう。

男が死んでからの展開が面白いのかというと、それも冴えないしね。大きくコースから外れることは無いけど、弾けっぷりが不充分。
あと、人を殺して激しく狼狽していた面々が、舌の根も乾かない内にジョークを飛ばしたり軽口を叩いたりするようになっちゃうのは「お前らマジか」と言いたくなる。
せめて「焦ったりパニくったりしてるけど不謹慎なジョークを飛ばしてしまう」みたいな描写なら、分からんでもないのよ。でも、「すっかり落ち着いて余裕が出てきました」って感じなのよね。
どんだけ肝っ玉がデカいんだよ。
その後で再び焦りを見せるようになるんだけど、なぜ一時的に余裕を持ったのかと。

ジェスたちの様子だけでなく、途中で何度かピーターと仲間のシーンも挿入する。ジェスを誤解したピーターがマイアミへ行くと決めて、オムツを買い込むシーンもある。
そっちサイドでもコメディーを作ろうとしていることは分かるけど、邪魔だわ。
オムツを購入するシーンをスローモーションで飾り付けているけど、そこまでしても芳しい効果は得られていない。彼のパートはザックリとカットして、基本的にはジェスたちのパートだけで構成しちゃった方がいい。
まあ本作品の場合はジェスたちのパートも面白くないので、全面的に大幅な改変が必要になるけどね。

(観賞日:2020年7月1日)

 

*ポンコツ映画愛護協会