『ロミオ&ジュリエット』:1996、アメリカ
ヴェローナの街には、モンタギュー家とキャピュレット家という2つの名門一族がある。両家は昔からお互いを憎み、対立を続けてきた。そんなある日、モンタギュー家の息子ロミオは、親友のマキューシオ達と共に、キャピュレット家の仮装舞踏会に潜入した。
そこでロミオはキャピュレット家の娘ジュリエットを見掛け、たちまち恋に落ちてしまう。一方、ジュリエットもロミオに一目で惹かれる。2人は互いに憎しみ合う一族の人間だと知りながらも気持ちを止められず、ロレンス神父の協力で密かに結婚式を挙げる。
しかし、ジュリエットの従兄ティボルトはロミオにケンカを売り、マキューシオを殺してしまう。ロミオはティボルトを殺害し、ヴェローナを追放処分となる。一方、ジュリエットは知事の息子パリスと結婚するよう、親に命じられてしまう…。監督はバズ・ラーマン、原作はウィリアム・シェイクスピア、脚本はクレイグ・ピアース&バズ・ラーマン、製作はガブリエラ・マルティネリ&バズ・ラーマン、共同製作はマーティン・ブラウン、製作協力はジル・ビルコック&キャサリン・マーティン、撮影はドナルド・M・マッカルパイン、編集はジル・ビルコック、美術はキャサリン・マーティン、衣装はキム・バレット、音楽はネリー・フーパー、追加音楽はクレイグ・アームストロング&マリウス・デ・ヴリーズ。
出演はレオナルド・ディカプリオ、クレア・デーンズ、ピート・ポスルスウェイト、ブライアン・デネヒー、ポール・ソルヴィノ、ジョン・レグイザモ、ミリアム・マーゴイルズ、ポール・ラッド、ジェシー・ブラッドフォード、ハロルド・ペリノー、ダッシュ・ミホーク、ダイアン・ヴェノーラ、ジェイミー・ケネディー、ザック・オース、ヴィンセント・ラレスカ、クリスティーナ・ピックルズ他。
シェイクスピアの有名な戯曲を、現代版にアレンジした作品。
例えば服がアロハシャツになり、武器は拳銃になる。
だが、台詞回しは昔のスタイル。
つまり、ヴィジュアルだけが現代風というわけだ。
浅いアレンジには、その意図に疑問符を付けたくなる。外面は現代風に装飾しているが、中身は全く変わっていない。
時代を置き換えたことによって発生する問題は、完全に無視されている。
だから、舞台を現代に置き換えているのに、殺人を犯しても追放処分で済まされるというムチャを強引に通してしまう。ヴィジュアルだけをセールスポイントにするのなら、それを徹底すればいいのに、そこも中途半端に処理してしまう。
前半はMTVのような映像表現が続くが、途中からは普通になってしまう。
前半と後半で、映像の演出がガラリと変わる理由が全く分からない。
凝った映像表現さえ途中で消滅してしまい、衣装や装飾を見るだけの作品となる。
それなら演出なんて、必要が無くなってしまう。
おまけに、シェークスピア劇そのままの仰々しい台詞回しが、テンポの良さを完全に止めてしまうという困った状態に。ところで、うがった見方をすれば、ロミオという男は、「自分のガキっぽい恋愛ごっこのせいで仲間が死んでしまい、ジュリエットの親戚を殺害し、それでも平気でジュリエットと寝てしまう」という、とんでもない悪党である。
それでも、彼は主人公なのである。
たぶん演じているのがレオナルド・ディカプリオなので、そんなことはどうだっていいのだろう。
そもそも、この作品はディカプリオを見せるための映画だったのかもしれない。
そうとでも考えなければ、ヴィジュアルを現代風にしただけの“ロミオとジュリエット”を映画化する理由が思い付かない。