『ロビン・フッド』:2010、アメリカ&イギリス

12世紀末、イングランドは混乱を極めていた。ノッティンガムで暮らすマリアン・ロクスリーは、孤児の盗賊たちに納屋の種を盗まれた。リチャード1世は10年に渡る十字軍遠征により、富も栄光も失った。彼は各地で城を略奪し、帰国の途に就いていた。1199年、彼の軍勢はフランスのシャールース城を狙った。軍に参加していた射手のロビン・ロングストライドは、仲間のウィル・スカーレットやアラン・ア・デイルたちと共に攻撃した。城には火が放たれ、リチャードは城門が焼け落ちるのを待って夜明けに突入しようと決めた。
ロンドン塔の王宮では、リチャードの弟であるジョン王が王妃を部屋から追い出し、フランス王フィリップの姪であるイザベラとの情事を楽しんでいた。母のアリエノールから叱責されても、ジョンは全く身を貸さなかった。アリエノールは「フィリップが姪を返せと言っている。彼がイングランドを攻める口実を、貴方が与えたのよ」と告げ、王妃の元へ戻るよう促す。しかしジョン王は「子供の産めない王妃の元へ戻れと?私はイザベラを王妃に迎える」と告げ、イザベラは「彼が次のイングランド王よ」と述べた。
リチャードは夜明けを待ちながら、腹心である騎士のロバート・ロクスリーに「私には長生きし過ぎる母と私の死を願う弟がいる。帰国したら2人を監禁する」と語った。ロビンはギャンブルがきっかけで、兵士のリトル・ジョンと喧嘩になる。そこへリチャードがロバートを伴って現れ、十字軍遠征についての感想をロビンに尋ねた。ロビンは大量虐殺に触れ、自分たちは神を失ったと述べた。リチャードは「正直で勇敢だ」と告げるが、ロビンと仲間たち、それにリトル・ジョンを罰として拘束した。
翌朝、ロビンは仲間たちに、「罰を解かれたら俺は軍を去る。もう神にも王にも、何の義務も無い」と述べた。ジョン王の乳兄弟であるゴドフリーはフォンテーヌブローの森へ行き、フィリップと密会した。フィリップは「ジョン王の統治するイングランドなら簡単に制圧できる。しかしリチャードは強敵だ。ブロセリアンドの森を抜けるルートは分かっている。リチャードを殺せば褒美は弾む」と告げた。だが、そのリチャードは城攻めの最中、矢を受けて命を落としていた。
ロビンは弟分のジミーからリチャードの死を知らされ、「拘束を外せ。逃げるぞ」と告げた。彼は仲間たちだけでなく、リトル・ジョンも連れて行くことにした。ロバートの小隊が森を抜けようとした時、ゴドフリーの一味が襲撃して金品を略奪した。深手を負ったロバートはゴドフリーの質問を受け、リチャードが死んだこと、王冠を国へ届けようとしていたことを話した。王冠を積んだリチャードの白馬が走り出したので、ゴブトリーは手下2人に後を追わせた。
ロビンの一行は王の馬を見つけ、追って来た2人と戦いになった。手下の1人がジミーをロープに繋いで逃走したので、ロビンたちは後を追った。ゴドフリーの一味を発見したロビンたちは、すぐに攻撃を仕掛けた。大半の連中は始末したが、ゴドフリーには顔に傷を付けただけで逃げられた。ロビンは瀕死のロバートから、「剣を取ってくれ。それは父の剣だ。ノッティンガムのウォルター・ロクスリー卿だ。父に許可を得ずに持ち出した。届けてほしい」と頼まれた。
ロビンが剣を届けることを約束すると、ロバートは安心して息絶えた。ロビンはロスクリーが王の船に乗る予定だったと知り、「王冠が切り札だ。騎士に成り済まして乗船する。金品を集めろ」と仲間たちに告げた。ロバートの妻であるマリアンは、教会へ赴いた。教会ではタンクレッド神父がヨークへ異動となり、新しくタック修道士が赴任したばかりだった。マリアンはタックに、教会の種を畑に撒かせてほしいと頼んだ。するとタンクレッドは、「種は全てヨークへ送る」と告げる。タックは「きっとヨークの司教に頼んで下さるでしょう」と言うが、タンクレッドは冷淡な態度で「頼むことなど何も無い」と言い放った。
ロビンはロバート・ロスクリーを詐称し、海岸で待っていた王の船に仲間と乗り込んだ。彼はグレイブセンドに到着したら、王冠を渡して消えようと考えていた。しかし酔っ払って眠り込んでいる内に、船はロンドンへ到着してしまった。ロビンはロバートに成り済ましたまま、アリエノールに王冠を渡した。アリエノールは王冠をジョン王の頭に乗せ、新国王の誕生を宣言した。ジョン王はロバートに「お前の父は私に税金を納めていない」と告げ、褒美を与えなかった。
摂政のウィリアム・マーシャルはロビンに声を掛け、「父上とは昔からの仲だ。春の新月の宵に訪ねると伝えてくれ」と告げた。帰国していたゴドフリーは、ロバートがロスクリーを名乗って謁見している様子を見ていた。彼は知り過ぎたロビンを邪魔ものだと考え、始末するよう部下に命じた。マリアンが畑を耕していると、代官がやって来た。税金の徴収に来たことを話す代官に、マリアンは非難の言葉を浴びせた。代官は「態度を変えれば守ってやる」と言うが、マリアンは拒絶した。代官は「お前の夫は遠征へ行って10年だ。もう死んでいるか、異国の売春宿にいるだろう。ウォルターが死ねば土地は接収され、頼れるのは私だけだぞ」と告げた。
ロビンは仲間に金を分け、剣に彫られていた「羊が獅子になるまで何度でも立ち上がれ」という言葉に覚えがあることを話す。彼は剣を届けて約束を果たすつもりだと明かし、仲間から反対されても考えを変えなかった。ジョン王は増税の方針を決定し、マーシャルが反対しても耳を貸さなかった。「北方の諸侯は金が無いと嘆くが、言い逃れだ。どうすべきだと思う?」と彼が言うと、ゴドフリーは「出兵して納税させます。さもなくば命を奪う」と語る。ジョン王は抗議する母を批判し、マーシャルを解任した。
ノッティンガムに入ったロビンは、飼っている蜂の世話をするタックと出会った。ロビンはタックからロスクリー邸がペパー・ハロウにあると聞き、仲間と別れて馬を走らせた。ロビンはロスクリー邸に到着し、マリアンを使用人と間違えて「ウォルター卿に御子息の死を伝えたい」と告げた。マリアンがロバートの妻だと知り、ロビンは謝罪した。マリアンは彼に、「義父には辛すぎる。彼は聖地にいて、じき戻ると言って」と頼む。ロビンの名前を聞いたウォルターは、驚きの表情を浮かべた。
ロビンから剣を渡された盲目のウォルターは、すぐに息子の死を悟った。ウォルターから夕食に誘われたロビンは、剣に彫られた言葉の意味を質問した。するとウォルターは、「ゆっくり話してあげよう。君の物語でもある」と述べた。それから彼は、「ここに留まり、帰還した私の息子になってほしい。つまりマリアンの夫だ」と口にした。マリアンが腹を立てると、ウォルターは「夫がいないと私の死んだ後土地を失うんだぞ。私が息子だと言えば、君の夫として世間に通る」と述べた。ロビンはウォルターから「君には剣をやろう。取り引きに応じるかね」と言われ、「イエス」と答えた。
ハンプトン港から200名のフランス兵が上陸し、ゴドフリーは森で使者と密会した。マーシャルがゴドフリーを怪しんで差し向けた間諜は、フランス軍の上陸を確認して伝書鳩を飛ばした。マーシャルは伝書鳩の手紙を読み、ゴドフリーの陰謀を知った。ウォルターはロビンに「剣を携えた姿を皆に見せろ」と言い、マリアンに村の案内を指示した。ロビンが村へ出ると、人々はロバートだと思い込んで接した。村に残っているリトル・ジョンたちを見つけたロビンは、「ロバートと呼べ。事情は後で説明する」と告げた。
ロビンはタックが司教命令で穀物の種をヨークへ送ることを知り、「蜂のことが司教に耳に入れば、蜂蜜を奪われるぞ」と告げる。タックが「穀物がヨークへ届かなければ?」と尋ねると、ロビンは「蜂のことは秘密にしよう」と言う。その日の深夜、ロビンやタック、リトル・ジョンたちはフードで顔を隠し、教会の使者を襲って穀物の種を奪った。彼らは村へ戻り、畑に種を撒いた。そのことを知ったマリアンは、ロビンに感謝の言葉を告げた。
ゴドフリーはフランス軍を率いてバーンズデイルへ乗り込み、領主のボールドウィンに納税を要求した。ボールドウィンが「リチャード王の十字軍遠征で人も金も出した。もう何も残っていない」と拒否すると、ゴドフリーは軍に村を襲撃させて焼き打ちにした。その後も彼は北方を巡り、次々に村を焼いて金品を略奪した。ヨークの教会も襲撃に遭い、タンクレッドは死亡した。マーシャルはアリエノールと会い、ゴドフリーがフィリップの手下だと知らせた。彼はフランス軍が密かに上陸していること、ジョン王の名で殺戮を繰り返していることを語り、「北方の諸侯が王の暴政に決起すれば、混乱を利用してフランスが侵略してきます」と述べた。
アリエノールはイザベラにゴドフリーの裏切りを明かし、フィリップ王から聞いた情報としてジョン王に伝えるよう指示した。イザベラが指示通りにすると、欺かれていたことを知ったジョン王は強い衝撃を受けた。ゴブトリーの手下はノッティンガムの代官を訪ね、税金の徴集に応じるよう要求した。代官は従うことを約束するが、「ロスクリー家が厄介で」と言う。息子のロバートが帰って来たのだと代官が話したことで、手下はロビンの所在を知った。
ジョン王はバーカムステッド城へ赴いてマーシャルと会い、「ゴドフリーが北方の諸侯に反乱を起こさせた。彼らが攻めてくる」と話す。マーシャルは「彼らを説得しなくてはフランスと戦えません」と言い、北方へ赴いて交渉するよう説いた。しかしジョン王は「王に反旗を翻した連中だぞ。皆殺しにしてやる。お前はもう役に立たん」と告げ。その場を去った。ゴドフリーは手下からロビンの居場所について報告を受け、「ノッティンガムへ向かう。捕虜は要らん。村を焼き払え」と述べた。彼は帯同しているフィリップ王の腹心に、「部下を連れてパリへ行け。時は来たとフィリップ王に伝えるのだ」と指示した…。

監督はリドリー・スコット、原案はブライアン・ヘルゲランド&イーサン・リーフ&サイラス・ヴォリス、脚本はブライアン・ヘルゲランド、製作はブライアン・グレイザー&リドリー・スコット&ラッセル・クロウ、製作総指揮はチャールズ・J・D・シュリッセル&マイケル・コスティガン&ジム・ウィテカー&ライアン・カヴァナー、共同製作はニコラス・コーダ、製作協力はキース・ロジャー、共同製作総指揮はマイケル・エレンバーグ、撮影はジョン・マシソン、編集はピエトロ・スカリア、美術はアーサー・マックス、衣装はジャンティー・イェーツ、音楽はマルク・ストライテンフェルト。
出演はラッセル・クロウ、ケイト・ブランシェット、ウィリアム・ハート、マックス・フォン・シドー、マーク・ストロング、マーク・アディー、オスカー・アイザック、ダニー・ヒューストン、ケヴィン・デュランド、スコット・グライムズ、マシュー・マクファディン、アイリーン・アトキンス、サイモン・マクバーニー、アラン・ドイル、レア・セドゥー、ダグラス・ホッジ、ジェラルド・マクソーリー、ロバート・パフ、ジョナサン・ザッカイ、ヴェリボル・トピク、キアラン・フリン、デニース・ガフ、ジョン・ニコラス、トーマス・アーノルド、ピップ・カーター、マーク・ルイス・ジョーンズ、ブロンソン・ウェブ他。


数多くの映画やTVドラマなどで取り上げられてきた伝説上の人物、ロビン・フッドを主人公とする作品。
監督は『アメリカン・ギャングスター』『ワールド・オブ・ライズ』のリドリー・スコット、脚本は『ボーン・スプレマシー』『サブウェイ123 激突』のブライアン・ヘルゲランド。
ロビンをラッセル・クロウ、マリアンをケイト・ブランシェット、マーシャルをウィリアム・ハート、ウォルターをマックス・フォン・シドー、ゴドフリーをマーク・ストロング、タックをマーク・アディー、ジョン王をオスカー・アイザック、リチャード1世をダニー・ヒューストン、リトル・ジョンをケヴィン・デュランド、ウィルをスコット・グライムズ、代官をマシュー・マクファディン、アリエノールをアイリーン・アトキンス、タンクレッドをサイモン・マクバーニーが演じている。

この映画は全米の興行収入で、製作費の半分程度しか稼ぎ出すことが出来なかった。
そんな結果になった最も大きな原因は、製作費をバカみたいに使い過ぎたってことだ。この映画、2億ドルを超える製作費が投じられているのだ。
同年に全米で公開された他の大作映画を見てみると、『インセプション』の予算は1億6千万ドル、『タイタンの戦い』は1億2500万ドル、『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』は9500万ドルだ。
『アイアンマン2』や『アリス・イン・ワンダーランド』は2億ドルを使っているが、アメリカ国内の興行収入だけでキッチリと黒字を出している。この映画と同じリドリー・スコット&ラッセル・クロウのコンビで世界的大ヒットを記録した『グラディエーター』だって、全米興行収入は約1億9千万ドルだった。
ちなみにリドリー・スコット監督が十字軍を題材にした『キングダム・オブ・ヘブン』の全米興行収入は、約4700万ドル。
そりゃあ、どう考えたって2億ドルってのは使い過ぎでしょ。

ただし、2億ドルも投入するってことは、それでも黒字に出来るという自信や期待があったんだろう。
で、全米での興行成績が期待したほど高くなかった原因の1つとして、「コレジャナイ感」が強かったというのが挙げられるんじゃないだろうか。
ロビン・フッドと言えば、「シャーウッドの森に仲間と住み、庶民の味方としてジョン王の圧政や代官の横暴に立ち向かうアウトロー」というイメージが強い。
しかし、この映画で描かれるロビンは、そういうイメージとは大きく異なっている。

そもそも本作品で描かれるのは、シャーウッドの森で暮らし始める前のロビンだ。ロビン・フッドが誕生するまでの物語だ。
タイトルは『ロビン・フッド』だが、劇中に登場する男はロビン・・ロングストライドであり、途中からはロビン・ロスクリーだ。
最後の最後で、ちょっとロビン・フッドになるだけだ。
公開前から「ロビン・フッドがシャーウッドの森の無法者にになるまでの物語」ってことが宣伝されていたとは言え、「期待していた内容と違う」と感じた人は少なくなかったんじゃないだろうか。

「今までのロビン・フッド映画とは違って、なぜ彼が無法者になったのかを描く内容にしたい」というのはラッセル・クロウの意向で、それをリドリー・スコットが受け入れたということらしい。
しかし、そもそもラッセル・クロウがロビンを演じているというのが、完全にミスキャストなのだ。
リドリー・スコットがラッセル・クロウとコンビを組むのは、『グラディエーター』『プロヴァンスの贈りもの』『アメリカン・ギャングスター』『ワールド・オブ・ライズ』に続いて5度目となる。
ラッセル・クロウはリドリー・スコットにとって、それぐらい信頼できる役者ということなんだろう。
ただし残念ながら、この映画に関しては組むべきじゃなかった。

まず、1964年生まれのラッセル・クロウでは年を取り過ぎている。
前述のように、「ロビン・フッドが無法者になるまでの話にしたい」というのは彼の意向なんだけど、だったらプロデューサーだけに留まるべきだわ。
シャーウッドの森に暮らす前のロビンってことは、まだ若くなきゃダメなはずでしょうに。
「それ以前」の段階でラッセル・クロウの年齢だとしたら、「シャーウッドの森に住む庶民の英雄」として活躍する頃には、もうジジイになっちゃうぞ。

また、ラッセル・クロウでは恰幅が良すぎるという問題もある。
ちっともアーチャーっぽくないのよ。むしろブロード・ソードでも持って戦う方が似合う。重厚さがありすぎて、それこそ『グラディエーター』的なガタイなのよね。
そこにリドリー・スコットの持ち味も加わり、この映画そのものが重厚さに満ちた仕上がりになっている。
『グラディエーター』の時は、それが上手くマッチしただろうけど、同じようなことを『ロビン・フッド』でやったら、そりゃあ違和感を抱く人が多くても仕方が無いだろう。

ロビンとマリアンの恋愛劇は、ちっとも魅力的に感じられないし、共感を誘われない。
10年も会っていなかったとは言え、待ち続けていた夫の死を伝えられたばかりのマリアンにはショックも残っているだろうに。
その状況でロビンと惹かれ合う展開を作られても、ちょっと共感するのは難しいわ。
互いの感情が変化し、恋心が育まれていくのに1年や2年の期間があったということならともかく、ロビンが来てから間もない内に2人は惹かれ合っちゃうのよね。

最初にロビンへの拒否反応を示し、ウォルターから結婚を要求されて渋々ながら承諾していたマリアンだが、ロビンが穀物の種を撒いたことを知った時には、もう完全に惚れている様子を見せる。
そういう早すぎる心情変化が、ただの尻軽女という印象になっている。
後になってマリアンは「婚期を過ぎてロバートと知り合った。結婚1週間で遠征へ行ったので、ロバートのことは良く知らない」などと説明するけど、ただの下手な言い訳にしか聞こえないよ。
「ロビンとマリアンが簡単に惹かれ合ってしまう」というマイナスの印象は、そんなモノでは取り戻せないよ。

ロビンがウォルターから「剣をやるから私の息子になれ。つまりマリアンの夫だ」と持ち掛けられた時、即座に「イエス」と答えるのは、 それまでに何度もマリアンを見つめているエロい視線からしても、「マリアンに惚れたから承諾した」ってのが大きいと思われる。
つまり、彼は夫の死を伝えたばかりの未亡人に惚れて、何の遠慮も無く新しい夫になることを引き受けたってことになるわけで。
気遣いってモノが全く無いじゃねえか。
そんでロビンはマリアンに「召し使いを欺くなら、貴方、とか愛する夫と呼べばいい」とか、「優しく誘えよ」とか、随分と偉そうな物言いもするんだよな。なんかねえ、すんげえ嫌な感じなんだよな。

あと、マリアンも年を食い過ぎていると感じるんだよなあ。
ラッセル・クロウとのバランスを考えれば、ケイト・ブランシェットは決してミスマッチじゃないのよ。
ただし、これが「ロビン・フッドがシャーウッドの森の無法者として活躍する以前の物語」であることを考えると、マリアンもロビンと同様に老けすぎじゃないかと。
それを考えると、そもそも「夫を10年間も待ち続けていた女」という設定の時点で、もう違うんじゃないかと。

ロビンの感情表現が乏しく、何を考えているのか良く分からないってのもマイナスだ。
前述した「マリアンの夫になれというウォルターの提案を承諾する」というシーンにしたって、簡単にOKしている裏に潜んでいるロビンの心情が分かれば、腑に落ちたかもしれない。
そこに限らず大半のシーンにおいて、ロビンの心情は、あまり伝わって来ない。
ロビンを心情表現の乏しいキャラにするのなら、周囲の人物を利用して彼の気持ちが伝わるようにすべきだろうに、そういう配慮も無い。
これはハードボイルドじゃ困るのよ。ロビンの心情を表現し、観客が彼を応援したくなるような形にしておかなきゃダメなのよ。

ロビン・フッドの物語に多くの人が求める要素って、たぶん重厚さよりも軽やかさや爽快感じゃないかと思うんだよね。
「庶民の味方である英雄が悪党をやっつける」という、分かりやすい勧善懲悪だと思うのよね。
だけど、この映画にはスカッとしたハッピーエンドが用意されていない。
「いかにもリドリー・スコットらしい」と言えなくもないけど、そんな「らしさ」って、この映画には要らないのよ。

オープニングでは「暴政と不平等な法によって人々が苦しめられていた時代、1人のアウトローの名前が広く知れ渡った」という文字が出るんだけど、そこから期待するような物語は描かれない。
イングランドとフランスが戦う構図を作り、その中でロビンを「祖国のために戦う英雄」に仕立て上げている。
「ロビン・フッドの誕生篇」を描くのはいいとしても、やはり「庶民の味方」「悪と戦うアウトロー」という部分は崩しちゃマズいと思うのよね。
でも、この映画はそこを崩している。

「祖国を守るため」という目的のために、一時的ではあるが、ロビンがジョン王と手を組むのも賛同しかねるシナリオだ。
「共通の敵を倒すため、それまで敵対関係にあった2人が協力する」という構図を面白いと感じるのは、手を組む相手も「敵ではあるが魅力的な人物」というケースに限られるのよ。
ジョン王の場合、ワルとしての魅力なんて皆無だからね。こいつは単なるクズ野郎だからね。
だから当然のことながら、ロビンが彼と手を組んでイングランドのために戦う展開も、まるで魅力的に思えないのよ。

ジョン王や代官を敵役に据えると、撲滅することが出来ないという問題は生じる。
ロビンがロビン・フッドになってからも敵として戦う相手だから、ここで退場させるわけにはいかないのだ。
だから他の人物を敵のポジションに配置し、「悪党を撃滅する」という形にするのは分からなくもない。
ただ、ジョン王や代官も悪人として登場しているので、にも関わらずロビンが彼らを退治せずに他の奴と戦う話が展開されると、「こっちにも悪人がいますけど。しかも貴方の戦うべき相手は、むしろ彼らですけど」と言いたくなってしまう。

後半に入り、ロビンの父親が先進的な思想の持ち主で多くの支持者を集めていたこと、自由を求める憲章を書いたけど処刑されたことが明かされる。
そしてロビンは父の遺志を継ぎ、「専制政治は必ず崩壊する」と語ってジョン王に民衆の権利を要求する。
ロビン・フッドの物語をマグナ・カルタと組み合わせているわけだが、これは完全に脚色の方向性を間違えていると言わざるを得ない。
そんな政治の深いトコにロビンを関与させても、そこに面白味は生まれないよ。

自由の権利を訴えるのも、ある意味で「庶民のために戦う英雄」と言えるってのは間違いないよ。
ただ、結局はジョン王が約束を破棄してしまうから、庶民の生活は何も良くならない。
むしろ、フイリップは一時徹底しただけでインドラング侵略を諦めていないし、ジョン王を倒していないから暴政が続くし、状況は余計に悪化していると言える。
で、そうなると、この映画でロビンは庶民の役に立つようなことを何もやっていないという形になってしまうでしょ。

そもそも、ロビンと庶民たちが求めているのは「自由な権利」なのに、「それをジョン王に承諾させるのと引き換えにフランス軍と戦う」という流れだから、完全にピントがズレちゃうんだよな。
それに、今回の話でロビンが戦う相手はフランス軍なので、彼が「シャーウッドの森の無法者」になってから戦う相手よりもスケールがデカいってことになるんだよな。
それは「ロビン・フッド・ビギンズ」としては、いかがなものかと。
『プライベート・ライアン』に影響されまくりとしか思えない戦闘シーンも、なんだかなあと思っちゃうし。

(観賞日:2015年5月13日)

 

*ポンコツ映画愛護協会