『リディック:ギャラクシー・バトル』:2013、イギリス&アメリカ

辺境の惑星で生き埋めになっていたリディックは、地上へ這い出した。傷を負っている彼は、ディンゴの群れを目撃した。左足の怪我で走れないリディックは、泉に身を投じて危険を回避しようとする。しばらくリディックが様子を見ていると、ディンゴの群れは泉から離れた。しかしリディックが泉から上がると、1匹のジャッカルが待ち受けていた。リディックは襲って来るディンゴに反撃し、道具を投げて遠ざけた。リディックは巨大洞窟を見つけて中に入り、湧き水を飲んで休息を取った。
ディンゴの群れが来たので、リディックは身を潜めた。すると沼の中から怪物のマッド・デーモンが出現し、1匹のディンゴを襲って殺害した。残る2匹のディンゴが逃走した後、マッド・デーモンはリディックを襲った。リディックが攻撃を防ぐと、マッド・デーモンは沼に戻った。寝床を構えたリディックは、過去を回想する。彼はネクロモンガーの最高権力者であるロード・マーシャルを殺害し、掟に従って後継者となった。しかし宣誓を拒んだことで反発を招いたため、故郷のフューリア星へ向かうことにした。
ヴァーコ司令官はリディックへの野心や反抗心を露骨に示しながらも、部下のクローンに船を出すよう指示した。だが、ヴァーコが船を向かわせたのはフューリアではなく、全く別の星だった。罠だと気付いたリディックは同行した兵士たちを始末し、クローンと戦った。するとクローンは崖崩れを起こし、リディックを生き埋めにしたのだ。洞窟で起床したリディックは1匹のディンゴを捕獲し、手作りの檻に入れた。
遠くに緑の広がる別世界を発見したリディックは、マッド・デーモンの子供を捕まえて牙から毒を採取し、ディンゴを利用して血清を作成した。リディックが1匹のマッド・デーモンを退治すると、ディンゴが檻から脱出して付いて来た。リディックは背後から迫った別のマッド・デーモンに襲われるが、洞窟を抜け出した。荒野にポツンと設置されている共用基地を発見したリディックは、中を調べた。無人の基地には非常用ビーコンがあり、机の上には指名手配写真が置いてあった。
遠くに雨雲を発見したリディックは、星から脱出しようと考える。基地に戻った彼は非常用ビーコンで遭難信号を発信し、賞金首である自分の存在を知らせた。リディックの狙い通り、すぐに1組の武装集団が宇宙船で着陸した。サンタナの率いる傭兵部隊は廃墟に乗り込むが、既にリディックは痕跡を消して立ち去っていた。廃墟の壁には、「死にたくなければ1隻置いて去れ」というメッセージが残されていた。もちろんサンタナや手下のディアスたちは、要求に応じる気など無かった。
サンタナは若い手下のルナに、拘束している女を宇宙船から出すよう命じた。女も賞金首だがリディックの方が高額であり、積み荷を軽くするためだ。ルナは女の拘束を外し、早く出て行くよう告げた。女が走り出すと、サンタナは狙撃して始末した。準備をしていると新たな宇宙船が飛来したので、サンタナは「遭難者の姿は無い」と嘘をついて追い払おうとする。しかし宇宙船は彼の説明を無視し、星に着陸した。新たに降り立ったのは、リーダーのジョンズと部下のダール、モス、ロックスパーという4人のグループだった。
ジョンズはサンタナに共闘を申し入れるが、相手にされなかった。ジョンズは「手柄を奪う気は無い」と言うが、サンタナは拒絶した。そこでジョンズは「請われるまで手は出さない」と告げ、基地に入った。サンタナは彼に、「船の動力源であるノードを1つ寄越せ。動力を抜いた船を囮にして、リディックに罠を仕掛ける」と告げる。ジョンズはダールに、ノードを持って来るよう指示した。サンタナは爆破装置をロッカーに仕掛け、リディックを待ち受けた。
リディックは傭兵部隊の動きを観察し、探索装置を機能不全に陥れる。ダールは備品リストをチェックし、モルヒネと大型トラバサミが全て消えていることをジョンズに報告する。ジョンズはサンタナに通信し、罠に気を付けるよう警告する。しかしリディックによって、一晩でヌネス、ルビオ、ファルコの3人が殺害された。そこで翌朝になって、サンタナはジョンズに共闘を持ち掛けた。サンタナは高慢な態度で装備を貸すよう要求するが、ジョンズは拒否した。
「どうしたら貸す?」とサンタナが苛立つと、ジョンズは「私の部下になれ。指示はダールを通して出す」と告げた。彼は「リディックを生け捕りにする。1日経ったら引き渡すから、勝手にしろ」と述べた。賞金を欲しがらないジョンズに、サンタナは「何の目的で来た?」と尋ねる。ジョンズは質問に答えず、部下たちに指示を出した。彼は日暮れまでに捕獲しようと考え、ダールにディンゴの狙撃を命じた。ダールはバリウム弾を命中させ、ジョンズは追跡装置でリディックの居場所を割り出した。
ジョンズたちは洞窟に足を踏み入れるが、リディックは時間稼ぎの罠を仕掛けて姿を消していた。リディックは基地に「フェアな取引を」と書き残し、通信機を破壊して去った。ジョンズはリディックがノードを盗み出し、ロッカーに爆弾を仕掛けたのではないかと推理する。サンタナが思い切ってロッカーのキーを捻ると爆発せず、ノードも残っていた。しかしリディックは基地の屋根に潜んでおり、開錠されたロッカーからノードを盗み出した。
リディックが取引のために姿を見せると、ジョンズは「私の目的は賞金じゃない。10年前の出来事だ」と言う。彼が星系の名を告げると、リディックは「奴の親父か」と事情を悟った。ジョンズはリディックに、息子の死因を知りたいと告げた。リディックは彼らに、「このまま戦いを続ければ、そっちの死人が増えていく。しかし状況が変わった。24時間後、この星は地獄と化す。そこで提案がある。ノードを1つ帰してやるから、残りのノードと船一隻を俺に寄越せ。雨が基地を叩くまでに考えろ」と持ち掛ける…。

脚本&監督はデヴィッド・トゥーヒー、製作はヴィン・ディーゼル&テッド・フィールド、製作総指揮はサマンサ・ヴィンセント&マイク・ドレイク&ジョージ・ザック、共同製作はマイク・ウェバー&ジミー・フィンクル、製作協力はT・J・マンシーニ&デヴィッド・オーティズ&シレイル・タイ、撮影はデヴィッド・エグビー、美術はジョセフ・C・ネメック三世、編集はトレイシー・アダムズ、衣装はシモネッタ・マリアーノ、クリーチャー・デザイナーはパトリック・タトポロス、音楽はグレーム・レヴェル。
主演はヴィン・ディーゼル、共演はカール・アーバン、ジョルディー・モリャ、マット・ネイブル、ケイティー・サッコフ、デイヴ・バウティスタ、ボキーム・ウッドバイン、ラオール・トゥルヒージョ、ノーラン・ジェラード・ファンク、アンドレアス・アペルギス、コンラッド・プラ、ノア・ダンビー、ニール・ネイピア、ダニー・ブランコ・ホール、ケリ・リン・ヒルソン、チャーリー・マリー・デュポン、ヤン・ゲルスト、アントワネット・カラジ、アレクサンドラ・ソコロヴスカヤ。


2000年の『ピッチブラック』、2004年の『リディック』に続く“リディック”シリーズ第3作。
脚本&監督は1作目からデヴィッド・トゥーヒーが3作連続で担当。
シリーズを通して出演しているのは、リディック役のヴィン・ディーゼルのみ。
ヴァーコ役のカール・アーバンは前作からの続投。サンタナをジョルディー・モリャ、ジョンズをマット・ネイブル、ダールをケイティー・サッコフ、ディアスをデイヴ・バウティスタ(プロレスラーのバティスタ)、モスをボキーム・ウッドバイン、ロックスパーをラオール・トゥルヒージョ、ルナをノーラン・ジェラード・ファンクが演じている。

2300万ドルの予算だった『ピッチブラック』がスマッシュ・ヒットしたので、『リディック』では1億500万ドルに製作費が跳ね上がって大作となった。
しかし興行的に惨敗し、今回は3800万ドルにグッと下がっている。
っていうか、前作が大失敗だったので3作目なんて絶対に無いだろうと思っていたので、続編が作られただけでも意外だった。
デヴィッド・トゥーヒーとヴィン・ディーゼルにとっては、それぐらい思い入れの強いシリーズってことなんだろう。

邦題には「ギャラクシー・バトル」と付いているが、そんな壮大なバトルなど一切盛り込まれていない。
むしろ予算が減ったことに伴い、前作よりも話のスケールは随分と小さくなっている(まあ2作目も、実はそんなにスケールの大きさを感じなかったけどね)。
そして、ほとんど1作目のセルフ・リメイクに近いような内容になっている。
2作目に失敗に懲りて、原点回帰を図ったってことなんだろう。
ただ、同じフォーマットを使うってことだけなら分からんでもないけど、3作目にして1作目のセルフ・リメイクっぽい内容にするってのは、「もうちょっと頑張って新しい話を考えろよ」と言いたくなるけどね。

1作目のリディックは「殺人犯の死刑囚」として登場したが、最初から凄みや恐ろしさのアピールは乏しかった。「何をしでかすか全く分からない」という危険な匂いは皆無で、捕まっても行儀良くしているような奴だった。
ホントはアンチ・ヒーローとしての魅力を発揮すべきだろうに、そういうモノが全く見えなかった。最初から善人の匂いが強すぎたのだ。
それは2作目でも相変わらずで、「悪をもって悪を征す」はずなのに、「ワルぶってるだけの善人」ってのが最初から見えていた。
今回も、その欠点は受け継がれている。
そもそも饒舌にモノローグで語らせると、アンチ・ヒーローとしての造形には不向きだ。なぜならそいつの心情が分かってしまうからだ。ワルを装っていても、本心がバレちゃうからだ。

リディックの「暗視能力を持っている一方、明るい場所では特殊なゴーグルが必要」という設定は、1作目からして既に上手く活用されていなかった。
そして2作目でも、その設定は無意味に近い状態となっていた。
もう3作目なので、さすがに学習して今回は上手く使っているかと思いきや、また今回も無意味になっていた。
リディックが賞金稼ぎに追い込まれる際の弱点として使われることも無ければ、逆に賞金稼ぎを倒すための特殊能力として使われることも無い。そりゃあ夜中に気付かれないように接近して始末する時に役立っているかのもしれないけど、だとしても分かりにくいし。
ちゃんと活用できないのなら、そんな設定なんて最初から持ち込むなよ。

前作で「アンダー・ヴァース」「ネクロモンガー」「ロード・マーシャル」といった要素を持ち込み、話のスケールをデカくしようとしていたが、それは大失敗に終わった。
デヴィッド・トゥーヒーとしては、前作は無かったことにしたかったのだろう。
だが、3本目を作るに当たって、前作を完全に無視するわけにもいかない。
そこで彼が取ったのは、「序盤の短い説明だけで前作の話を片付けて、その設定は引き継がずに今回の話を進める」という方法だった。

前作でリディックはロード・マーシャルを倒して後継者になっているわけだが、そのポジションのままだと、スケールを小さくして話を進めることが難しい。
ってなわけで、「裏切りに遭って辺境の惑星に置き去りにされた」という形を取っているわけだ。
だけど、それはあまりにも強引だし、無理がありまくりだ。
そもそも、ヴァーコとクローンの裏切りによって辺境の地へ置き去りにされたのなら、彼らに復讐を遂げる展開を用意しないとカタルシスが生じないでしょ。

最初にリディックがサバイバルする様子を描き、寝床に入って「こうなった事情」が明かされるまでに18分ぐらい掛かるのは、モタモタしているなあと感じる。
むしろ、映画が始まったら直ちに1分か2分程度のナレーションで「こういう経緯がありまして」と軽く説明して、それから今回の話に入った方が良かったんじゃないかと。
前作の内容を全てチャラにして一から始めようとしているはずなのに、それにしては経緯を説明する映像が無駄に長いのよね。

前半に多くの時間を費やしてリディックがサバイバルする様子を描いているんだけど、それだけでなく、ディンゴとの交流も盛り込まれている。
なぜかディンゴはリデイックに懐き、洞窟ではリディックがマッド・デーモンから守るという優しさも見せている。外へ出た後は、腐った携帯食を「ドッグフードだぞ」と与えたら、それにディンゴが小便を浴びせるシーンもある。
そりゃあ、ちょっと面白いけどさ、そこで時間を費やすほど余裕があるわけじゃないし、やっぱりダラダラしていると感じる。
それに、前半の内にディンゴとのユーモラスな交流なんて描いたら、リディックのアンチ・ヒーローとしての印象なんてゼロになっちゃうでしょ。

その後もすんげえモタモタしているんだけど、どう考えたって119分も使うような内容ではないのよね。
それだけボリュームがギッシリ詰まっているわけじゃなくて、ダラダラと時間を費やすから間延びしちゃってるだけなのよ。
たっぷりと間を取りながら淡々と進めるような内容じゃなくて、もっとテンポ良くメリハリをハッキリと付けて進めるべき話でしょ。
45分ぐらい経過しないと、リデイックと賞金稼ぎとのバトルが始まらないってのは、どう考えても歩みがノロいわ。

傭兵集団のボスであるサンタナは、最初から口先だけの小物ってのがバレている。実際、ディアスたちにはバカにされ、ダールに高慢な態度を取ったら顔面を殴られてヘロヘロになっている。
だから、リディックの敵としては全く歯応えが無い。やられ役でしかない。
まあジョンズが簡単にリーダーの座を奪うので、別にサンタナが小物でも構わないっちゃあ構わないのよ。
ただ、そもそもグループが2つ存在して一枚岩じゃないってのも、マイナスでしかないんだよね。相手がリディックなんだから、せめて一致団結して掛からないと絶対に敵わないでしょ。
一方、そんな連中を軽く制圧できないリディックも、どうなのかってことになるし。

それと、サンタナやジョンズたちが登場すると、ほとんどリディックは姿を見せなくなるんだよね。
ジョンズたちの行動する様子ばかりが描かれるのよ。
たまにリディックは出て来るけど、「リデイックが活躍する」という姿を見せるのではなく、「ジョンズたちが何か行動している」という様子がメインになるのだ。
ぶっちゃけ、リディックというキャラクターだけで引っ張っているような作品なのに、その存在感を薄めたらどうしようもないでしょ。

ジョンズやサンタナたちが内輪揉めを始める様子を描いたりしているけど、それで物語が面白くなるわけではない。っていうか、どうでもいいわ。
そんなトコに、この映画の面白さは埋もれていないぞ。どれだけ掘っても見つからないぞ。
サンタナがロッカーのキーを差し込むシーンで緊張感を出そうとしたりするけど、「どうでもいいから、さっさと片付けろ」と言いたくなる。
で、サンタナからリーダーの座を奪ったジョンズも、頭脳的な作戦でリデイックを追い詰めるわけじゃなくて、まんまと罠に落ちているのよね。「その中を確認しなければ帰れない」とサンタナにロッカーを開けさせて、そのせいでノードを盗まれているわけで。

後半に入るとリディックが狙撃されて捕まる展開があるけど、「普通にやったらリデイックの完全勝利になるけど、それじゃあ話が盛り上がらないから捕まる展開にしよう」という段取りばかりが見えてしまう。
それまで慎重に行動していたリディックにノコノコと姿を現す行動を取らせ、自ら隙を作らせているのが、どうにも無理を感じてしまう。
ただし、そうでもしないと、なかなかリディックの出番が増えないという事情もあるんだよな。
約40分ぐらい、ほとんどリデイックが消えている時間帯が続いていたし。

リディックのアンチ・ヒーローとしての魅力を存分に引き出すことを考えると、やっぱりヴァーコたちを敵に据えた方が良かったんじゃないのかと思うんだけどね。
ジョンズやサンタナたちでは、あまりにもショボすぎるでしょ。
ただし、それならそれで、リディックが捕まってボコられる情けない姿なんか描かず、徹底して「圧倒的に敵の上を行き、完全無欠の強さを見せ付ける男」にしても良かったんじゃないかと思うんだよな。
リディックが捕まってからも、尋問という名の下にダラダラした時間が続いちゃうし。

ジョンズの息子は1作目に登場したジョンズという設定で、息子の死因が知りたくてリディックを生け捕りにしようとしていたことが後半に入って明らかにされる。
だけど1作目の内容と関連させても、そんなの覚えてない奴、あるいは1作目を見ていない奴が大半じゃないかと思うぞ。
そこだけ中途半端に繋げるより、どうせ2作目を無かったことにしちゃうぐらいなんだから、1作目を全く見なくても全く問題が無いような内容を構築した方が良かったんじゃないかと。

終盤にはマッド・デーモンの大量発生があるけど、序盤でリディックが簡単に倒すシーンを描いているので、「そりゃあ数は多いけど、倒せる相手でしょ」と思っちゃうのよね。
怪物に関しては、量より質を重視した方が良かったんじゃないかと。
あと、クライマックスをマッド・デーモンとのバトルにするなら、サバイバルや一味とリディックの戦いに多くの時間を割き過ぎだよ。
そこを前半で終わらせて、後半を怪物とのバトルという構成にした方がいいよ。
それだと何となく『リオ・ブラボー』や『ジョン・カーペンターの要塞警察』っぽくなっちゃうけど、それは仕方ないでしょ。

(観賞日:2015年9月10日)

 

*ポンコツ映画愛護協会