『レプリカズ』:2018、アメリカ

プエルトリコのアレシボ。バイオナイン産業の研究所で勤務する神経科学者のウィリアム・フォスターは、死んだ人間の意識を人工の合成ボディーに移植する研究を行っていた。彼はドナーであるケリー軍曹の遺体を確認し、同僚のエドやスコットたちと共に神経情報を取り出した。マッピングが完了すると遺体は部屋から運び出され、ウィリアムは神経インプリントに取り掛かる。彼はインプリントを終えると、同僚のマーガレットに合成ボディーの起動を指示した。
ウィリアムが「ケリー軍曹」と呼び掛けると、人工ボディーは動き出した。人工ボディーが「私は誰だ?」と言葉を発すると、ウィリアムは状況を説明する。しかし人工ボディーがパニックに陥って暴れ出したため、ウィリアムはコードを引き抜いて緊急停止させた。研究所長のジョーンズは実験開始から8ヶ月が過ぎても結果が出ていないことを指摘し、ウィリアムに「先行きは厳しい。これまでの失敗で出資者が尻込みするかもしれない」と告げた。
時間を確かめたウィリアムは急いで帰宅し、妻のモナ、長女のソフィー、長男のマット、次女のゾーイと会う。エドが訪ねて来て「クビになったかと思った。被験者が自分の首を引き千切った」と話すと、モナはウィリアムに説明を求めた。ウィリアムは「被験者が喋った」と言うが、医者であるモナは「成功するまで死者を呼び戻し続けるつもり?」と疑問を呈した。モナは「そのやり方では苦しむ人も出る」と研究に否定的だが、ウィリアムは「もう少しで成功する。兵士や認知症患者の命が救えるようになる」と主張した。
ウィリアムが「人間には魂が無い」という持論を口にすると、モナは「私や子供たちは貴方を愛してるのに?ただの電気信号や経路?」と批判した。モナが「善悪の見分けが付かなくなってる」と指摘すると、彼は「そんなことはない」と否定した。ウィリアムは家族と車で出掛けるが、夜になると嵐に見舞われた。すると倒木が車に命中し、ウィリアムは運転を誤って崖から川に転落した。意識を取り戻したウィリアムは家族の死を知り、全員の遺体を岸辺に並べた。
ウィリアムはエドに電話を掛け、実験道具を持って来てもらう。遺体を見たエドは「警察に連絡しないと」と言うが、ウィリアムは「まだ死んでない」とマッピングの起動を命じた。エドはウィリアムと共に研究所へ戻ると、人間のクローンを作るリスクを警告する。さらに彼が「君は心を転送する問題を解決してないだろ」と指摘すると、ウィリアムは「クローン動物の生態間の転送には成功しただろ」と反論する。エドが「人間では成功していない」と言うと、彼は「経験は無いが、やれる」と述べた。
ウィリアムはエドに絶対に口外しないよう約束させ、遺体の始末を依頼した。エドは研究所からウィリアムの自宅へ実験用のポッドを運ぶが、3つしか無かった。ウィリアムは「4つ必要だ」と声を荒らげるが、エドは「あと1つは来期にならないと手に入らない」と告げた。ウィリアムはエドに1人を選ぶよう頼むが「選ぶのは君だ」と告げられる。彼はゾーイを選び、他の3人をクローンで蘇らせることにした。エドは停電に備えて発電機が必要だと言うが、ウィリアムの自宅には置いていなかった。ウィリアムは近所を回って車のバッテリーを大量に盗み、それを繋いで発電機を作った。
エドはウィリアムに、17日間でクローンが完成すると教える。「ゾーイのことはどうする?」と彼が訊くと、ウィリアムは「ドライブからゾーイの記憶を消す。新しい神経マップを送って記憶を書き換える」と語った。エドが去った後、ウィリアムはゾーイの記憶を消す作業を行った。彼が仮眠を取っていると、警官のペレスとロドリゲスがやって来た。バッテリー盗難事件について捜査していることを聞かされたウィリアムは、自分は盗まれていないと答えた。
ウィリアムが出勤しないため、エドはジョーンズから事情を問われる。エドが肺炎だと嘘をつくと、ジョーンズは「では伝えてくれ。彼の実験が成功しなければ研究所は今期で閉鎖される」と述べた。エドはウィリアムに電話を掛け、閉鎖の話を伝える。「君の家に地下室には機材が置いてある。研究所が閉鎖されれば、その行方を調べられる」と彼が言うと、ウィリアムは「こっちに来てポッドを見ろ。俺は仕事に行く」と告げた。研究所に顔を出した彼は、同僚たちから仕事を頼まれて苛立った。
ウィリアムが帰宅すると、マットの担任教師であるバーンズが立ち去るところだった。「マットはお気の毒に」と言われたウィリアムは、適当に話を合わせた。エドは彼に、「マットが水ぼうそうになったので祖父母に預かってもらっている」と嘘をついたことを知らせた。「祖父母は死んでる」とウィリアムが言うと、彼は「そんなの僕には分からないよ。君の嘘の上塗りまで押し付けないでくれ」と告げる。エドは「学校には連絡したのか?モナの病院には?5日も経つんだぞ。君の家族が誰もいないのに、気付かないと思うのか」と指摘し、手を打つよう助言した。ウィリアムは家族に送られて来たメールを全て確認し、本人に成り済まして返信した。
クローンの肉体が完成に近付く中、ウィリアムは意識を移す工程について分析を繰り返す。しかし失敗が起きた原因を突き止められないまま17日が経過し、最終作業のためにエドがやって来た。ウィリアムは「まだ準備できていない」と言うが、「タンクに入れておけば老化が進む」とエドは説明する。ウィリアムは3人に注射を打って昏睡状態に陥らせ、その間に解決方法を考えることにした。エドは「猶予は3日だ」と言い、ウィリアムの家を去った。
何も思い付かずにモナを始末しようと考えたウィリアムだが、問題は体にあったと気付いた。彼はエドを呼び、「脳が全てをコントロールしてる。脳は自分に肉体があることを知ってる。だから合成体の心に、自分は血の通った人間だと信じ込ませればいい」と語る。「だが君の家族はロボットじゃない」とエドが言うと、ウィリアムは「彼女の心をインプリントするのは、彼女自身の肉体だ」と述べた。彼はエドと共に神経インプリントを実行し、家族を注射で眠らせている間に家を片付けた。
翌朝、ウィリアムが起床すると、家族は普通に生活していた。エドからの電話でドナーが来ることを知らされたウィリアムは、家族を心配しながらも研究所へ向かった。しかし彼は「俺には出来ない。また誰かを苦しめることになる」と神経インプリントを嫌がり、エドは「間の悪い時に良心が咎めたな。家族はどうなる?何か方法は考えろ」と説いた。ウィリアムはトイレの個室へ機材を持ち込み、密かに脳のデータを取り出した。エドは「どうかしてるぞ」と呆れるが、ウィリアムは「これしか無かった。俺の神経マップを人工ボディーにアップロードする。俺が中に入る」と話した。
ウィリアムが帰宅すると、モナが「何か変なの。昨夜の食事を思い出せないし、休暇の前に病院を出た記憶も無い」と言う。ウィリアムは彼女を抱き締め、「少し休むいい。明日の朝に様子を見よう」と告げた。彼は神経インプリントのためのアルゴリズムを作成し、眠りに就いた。熱を出して寝込んでいたソフィーは、悪夢で飛び起きた。ウィリアムが駆け付けると、彼女は「ママが死ぬのを見た」と訴える。ウィリアムはソフィーを鎮静剤で眠らせると、地下室の装置を使って事故の記憶を抹消した。
地下室にモナが来て「何をしたの?」と問い詰めるので、ウィリアムは仕方なく「君たちは自動車事故で死んだ。俺が蘇らせた。君たちはレプリカだ」と打ち明けた。「なぜこんなことをしたの?」と訊かれたウィリアムは、「君たちの亡骸を見た。取り戻せると思ったんだ」と弁明した。彼は誰にも言わないよう頼み、家族での平穏な生活を取り戻そうとする。しかしウィリアムはソフィーから「ゾーイって誰?クレヨンで落書きがあった」と言われ、モナに「寝室に二段ベッドがあった。2階の廊下に写真があったのも覚えてる」と指摘されて激しく動揺する。そこへジョーンズが来てウィリアムを呼び出し、モナたちのクローンを引き渡すよう要求した…。

監督はジェフリー・ナックマノフ、原案はスティーヴン・ハメル、脚本はチャド・セント・ジョン、製作はスティーヴン・ハメル&キアヌ・リーヴス&ロレンツォ・ディ・ボナヴェンチュラ&ルイス・A・リーフコール&マーク・ガオ、製作総指揮はジェームズ・ドッドソン&ニック・バウアー&ディーパック・ナヤール&ビル・ジョンソン&ジム・セイベル&アラ・ケシシアン&エリック・ハウサム&チャド・セント・ジョン&マキシム・レミラール&クラーク・ピーターソン&ウォルター・ジョステン&グレゴリー・ウェノン&セバスティアン・ボネタ、製作協力はロバート・ザルカインド、撮影はチェコ・ヴァレス、美術はジョニー・ブリート、編集はジェイソン・ヘルマン&ペドロ・ムニス、衣装はジュリア・ミシェル・サンティアゴ、音楽はホセ・“ペペ”・オヘダ&マーク・キリアン、音楽監修はクリス・ピカーロ。
主演はキアヌ・リーヴス、共演はアリス・イヴ、トーマス・ミドルディッチ、ジョン・オーティス、ナシャ・ハテンディー、アリア・リーブ、エミリー・アリン・リンド、エムジェイ・アンソニー、アンバー・リヴェラ、ジョナサン・ドウェイン、ルイス・ゴンサガ、アンドレス・“ヴェルクロ”・ラモス、ジェフリー・ホルスマン、エマニュエル・ログロノ、アンジェラ・アルヴァラード他。


『トレイター 大国の敵』のジェフリー・ナックマノフが監督を務めた作品。
脚本は『エンド・オブ・キングダム』のチャド・セント・ジョン。
ウィリアムをキアヌ・リーヴス、モナをアリス・イヴ、エドをトーマス・ミドルディッチ、ジョーンズをジョン・オーティス、スコットをナシャ・ハテンディー、ゾーイをアリア・リーブ、ソフィーをエミリー・アリン・リンド、マットをエムジェイ・アンソニー、マーガレットをアンバー・リヴェラが演じている。

ザックリ言うと、『フランケンシュタイン』&『ペット・セメタリー』である。その2つを組み合わせて現代風にアップデートしてみたら、ただのトンデモSFに仕上がったってことだ。
冒頭、ウィリアムが研究している様子が描かれる。それらしい言葉を語りながら、それらしい装置を操作している。でも、そこに説得力は微塵も感じられない。
これは推測でしかないが、たぶん監督も脚本家も科学的な知識が豊富とは言えないんじゃないか。そして薄い知識だけで何となく「それっぽい実験風景」を描いているだけで、ディティールの細かさは無視しているんじゃないか。
だけど監督や脚本家に知識が乏しくても、その筋の専門家をコンサルタントに招聘すれば、科学的考証は充分に可能なのだ。この映画は、そういうトコで丁寧な仕事をしているようには感じられない。

別に「あたかもリアリティー」でも構わないんだけど(だって現実には不可能な実験だからね)、そういう作業も欠けている。
とは言え、絶対に正確な科学考証が必要というわけではない。「死んだ人間の意識を人工のボディーに移植する」ってのが入り口に過ぎず、例えばアクションを主体にした内容で進めるのなら、そんなに細かいディティールは気にしなくても構わない。
でも本作品の場合、「ウィリアムが家族を蘇らせようとする」という展開になっており、つまり実験がメインなのよね。
だったら、そこのリアリティーや説得力を思い切り軽視するのは、どう考えてもマズいでしょ。

これは後述するクローンでも同様で、ただのバカバカしいトンデモSFになっている。
「大丈夫なんだろうな?」とウィリアムに言われたエドが数式を書いて「いける」と答えるシーンがあるが、どういう根拠で何がどう大丈夫なのかは教えてくれない。
そこが陳腐になっていることで、映画の質が分かりやすく下がっている。
あとさ、出て来るメカが全て古臭いのよ。実験用の道具にしろ、人工ボディーにしろ、もうちょっと「最先端の技術」を感じさせてほしいのに、「十数年前から何も進歩していない」と感じるのよね。

ウィリアムは家族が死ぬと、エドを呼び出してマッピングの起動を命じる。最初にウィリアムの実験内容が説明されているので、もちろん「家族の意識を人工の合成ボディーに移植する」という行動に出るのだと思った。
ところが研究所に戻ったエドは、「人間のクローンを作るのは禁止されている」「僕が最初に作ったクローン動物は様々な欠損があった」などと語る。
「エドはクローンを作り出せる科学者」という設定が、そこで急に明らかにされるのだ。
それだけでも唐突だし、そんなことを言い出すのも唐突だ。

そこで「まさかな」と思ったら、その「まさか」だった。ウィリアムの目的は、家族のクローンを作ることだったのだ。
いやいや、じゃあ冒頭の実験シーンは何だったのか。それを見せておいて、同じことを家族で試さないって、どういうシナリオだよ。支離滅裂じゃねえか。
そもそも、クローンを作る技術があるのなら、それだけでいいじゃねえか。バイオナイン産業だって、その技術だけで充分に稼ぎが出るぞ。
そっちに資金や人員を投入した方がいいだろ。死んだ人間の意識を合成ボディーに移す実験なんて結果が出ていないんだから、さっさと中止すればいい。なんでウィリアムの実験ばかりを進めているんだよ。そして、なぜ彼の実験が成功しないと閉鎖になるんだよ。

ウィリアムは家族のクローンを作る時、ポッドが足りないのでゾーイを諦める。
その際、苦渋の選択でゾーイを排除するシーンはあるが、それ以降は「ゾーイだけを排除した」という罪悪感に苦しむようなことも無い。そしてゾーイがいなくても、そんなに大きな問題は起きていない。
ウィリアムがクローン家族について周囲に誤魔化すのも、ただ「本人に成り済ましてメールを返す」というだけで片付いてしまう。
そこからボロが出そうになるとか、「怪しんだ友人や知人が調べ始めて」というトコで緊張感が高まるとかも無い。

「ウィリアムが思考を巡らせながら作業を進める」という描写に多くの時間を費やし、基本的にはそれだけで中盤を進めてしまう。
だけど、彼が考え込んでいる様子を見せられても、そこにドラマとしての面白味なんて何も無いのよ。
ぶっちゃけ、クローン家族の誕生なんて、かなり端折ってもいいぐらいだ。誕生した後の方が、間違いなくドラマとして盛り上がる要素は多いはずで。
いや、やり方によっては誕生するまでの過程でも色んなドラマは作れるんだけど、この映画だと可能性を感じないからね。劇中に描かれている内容だけで過程の部分を膨らませても、中身がスッカスカで尺が長くなるだけだからね。

「ウィリアムが問題の解決に悩んでいたけど、あるきっかけで方法を思い付く」というトコなんかも、ドラマとしての起伏を全く感じない。
「これが原因で、こうすれば解決できる」と解説されても、基本の部分からディティールが適当なので、ピンと来ないのよ。
しかも、なんとクローンは17日間で完成する。大人も子供も、同じタイミングで完成する。どういう理屈なのか、サッパリ分からない。
「考えるな、感じろ」ってことだったりするのかね。

モナは「君たちは自動車事故で死んだ。俺が蘇らせた」とウィリアムから聞くと、すぐに落ち込んでいる。
つまり、その説明を全面的に信じたってことだ。
でも、幾らウィリアムの研究内容を聞かされていたにしても、そんな説明を即座に受け入れるのは不可解だ。
「まさか、そんなはずがない」と、まずは信じないスタンスから入る方が自然じゃないか。そして死んで復活した証拠を幾つも提示され、感じていた違和感と照らし合わせて、「信じたくはないけど信じざるを得ない」という心の変遷があるべきじゃないか。

ウィリアムはモナとソフィーからゾーイについて問われ、激しく動揺する。だが、ここで話を進めようとせず、「ジョーンズが訪ねて来てウィリアムを呼び出す」という展開で中断してしまう。
おまけに、ジョーンズが訪問した目的は、モナたちのクローンを引き渡せってことなのだ。彼は軍事利用のために研究所を運営していて、だからクローンの情報が必要ってことなのだ。
「いやアホか」と。ウィリアムは実験に成功したんだから、そのまま続けさせればいいだろ。そして新たなクローンを次々に生み出させればいいだろ。
軍事利用を目論んでいるのなら、そっちの方が遥かに有益だろ。「秘密を知っている」ってことで脅しを掛けて、利用すればいいだろ。
クローンを奪っても、ウィリアムほどの優秀な技術者を失うのは大きな痛手だろうに。実験の全てを知っているのは彼だけなんだからさ。

それなのに、この映画は「ウィリアムがジョーンズを昏倒させ、クローン家族を連れて逃亡を図る」という展開に持ち込んでしまう。
これにより、終盤をアクション映画にしちゃうのだ。しかも、そのアクションに入る直前に「ゾーイは娘だ」とモナに打ち明けるので、それに対する家族の感情は二の次にされちゃうのだ(しかも打ち明ける相手はモナだけだし)。
いやいや、だったら「ゾーイだけ排除した」という要素は、まるで無意味になっちゃうでしょ。それがストーリーを進める上で、ドラマを構築する上で、何の役にも立っていないでしょ。
ラストではゾーイも一緒にいる様子が描かれるけど、これも「17日後になるとゾーイも復活しました」ってだけで何のドラマ的な要素も無いしさ。
あと強引に用意したアクションシーンも、しょっぱいだけで全く盛り上がらないし。

(観賞日:2021年4月28日)

 

*ポンコツ映画愛護協会