『リプレイスメント・キラー』:1998、アメリカ

殺し屋のジョン・リーは、ミスター・ウェイ率いるチャイニーズ・マフィアのために仕事をしている。中国本土に残してきた母と妹を人質に取られているため、組織の命令に逆らえないのだ。そんな中、ウェイの息子がジーコフ刑事によって射殺された。
ウェイはジョンに、ジーコフの幼い息子を殺すよう命じる。それも、ジーコフの目の前で殺せというのだ。ジョンは命令に背いたため、組織から追われる身となった。母と妹の命を案じたリーは、中国に戻るために出国書類を作ろうとする。
ジョンは偽造屋メグ・コヴァーンの元を訪れるが、組織に襲撃される。ジョンはメグを捕まえて逃亡し、彼女に協力を求めた。一方、ウェイは幹部のコーガンに命じ、殺し屋のリカーとコリンズを送り込む。ウェイは、ジーコフの息子を殺す計画を捨てていなかった。そのことを知ったジョンは、ジーコフと息子の救出に向かった…。

監督はアントワーン・フークア、脚本はケン・サンゼル、製作はブラッド・グレイ&バーニー・ブリルスタイン、共同製作はマイケル・マクドネル、製作総指揮はジョン・ウー&テレンス・チャン&クリストファー・ゴドシック&マシュー・ベア、撮影はピーター・ライオンズ・コリスター、編集はジェイ・キャシディー、美術はナオミ・ショーハン、衣装はアリアンヌ・フィリップス、音楽はハリー・グレッグソン=ウィリアムズ、音楽監修はラルフ・サル。
出演はチョウ・ユンファ、ミラ・ソルヴィーノ、マイケル・ルーカー、ユルゲン・プロホノフ、カルロス・ゴメス、フランク・メドラーノ、ケネス・ツァン、クリフトン・ゴンザレス・ゴンザレス、ダニー・トレホ、ティル・シュヴァイガー、パトリック・キルパトリック、ランダル・ダク・キム、チャン・ヤウジン、レオ・リー、アンドリュー・J・マートン、シドニー・コバーリー、カルロス・レオン他。


チョウ・ユンファのハリウッド進出第1作。
シナリオを担当しているケン・サンゼルは、これが映画初脚本。
ジョンをチョウ・ユンファ、メグをミラ・ソルヴィーノ、ジーコフをマイケル・ルーカー、コーガンをユルゲン・プロホノフ、ウェイをケネス・ツァン、コリンズをダニー・トレホ、ライカーをティル・シュヴァイガーが演じている。

この映画のために、チョウ・ユンファは英語の勉強をしたようだ。しかし、いくら頑張ったところで、急に英語の発音が上手くなるわけではない。カッコ良く決めているのに、英語によるセリフの発音がカッコ悪いというのでは、どうにも困ってしまう。
そこで製作サイドは、彼に口数の少ないキャラクターを与えた。メグに多くのセリフを喋らせて、ジョンは寡黙な男にしている。無口で表情の変化も少ない主人公の人物設定に合わせて、作品の演出も起伏を乏しくして、同じ調子で続くようにしてある。

この映画は、チョウ・ユンファをアメリカの人々に紹介するプロモーション・フィルムという役割を担っている。だから、とにかく彼のカッコ良さをアピールする必要がある。前述したように無口で表情の乏しい主人公に、人間ドラマをやらせるのは難しい。そこで、アクションシーンを重視して、その中でチョウ・ユンファを見せようとしている。
この映画、話は薄っぺらいし、一本調子だ。B級、もしくはC級アクション映画の中身を、キャスティングだけでA級に見せ掛けているような状態だ。しかし、ドラマを度外視しても、とにかくアクションシーンに力を入れようということなのだろう。

だが、そもそもチョウ・ユンファは、動きの鋭さや素早さ、重厚感や巧みさを見せるような役者ではない。確かに『男たちの挽歌』というアクション映画シリーズで名を上げたユンファだが、別に彼の動きが冴え渡っていたわけではないのだ。
『男たちの挽歌』でチョウ・ユンファがカッコ良く見えたのは、銃弾の嵐であったりスローモーションであったりといったジョン・ウー節が冴え渡っていたからだ。ユンファの銃を構える姿や雰囲気は決まっていたが、動きが冴え渡っていたわけではない。

そこで、この映画でも、『男たちの挽歌』と同じ手法でユンファのカッコ良さをアピールしようとしている。つまり、ジョン・ウー作品と同じように、スローモーションを多用し、銃を撃ちまくるのだ。とにかく撃って撃って撃ちまくる、それだけの映画だ。
いわば、銃の発情期である。
もちろん、チョウ・ユンファには二丁拳銃を使わせている。
アントワーン・フークア監督は、アクションにおいてはジョン・ウーの模倣を試みている。ただし、『男たちの挽歌』のような臭すぎる男の魂は、ここには無い。相棒との友情とか、敵とのシンパシーとか、そういう男達の絆は描かれていない。だから、熱く燃える男同士の絆が、アクションシーンを盛り上げるということも無いのである。


第21回スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【最悪のカップル】部門[ミラ・ソルヴィーノ&チョウ・ユンファ]

 

*ポンコツ映画愛護協会