『レモ/第1の挑戦』:1985、アメリカ

ニューヨーク市警察のサム・マキンはパトカーを停めて食事を取っている時、黒人男性が2人組に追われる様子を目撃した。彼は2人組が黒人を暴行している現場に駆け付け、逃亡を図る彼らに拳銃を向ける。しかし背後から黒人に襲われ、2人組にも暴行を受ける。反撃したマキンは3人を叩きのめし、パトカーに戻って息を整える。しかしコン・マクレリーという男が運転するトラックに襲われ、パトカーごと海へ沈んだ。警察はマキンの葬儀を執り行うが、彼は重傷を負いながらも生きていた。
意識を取り戻したマキンは、整形手術で顔が変わっていることを知る。病室へ来たマクレリーは「君は秘密組織に採用された。顔も指紋も名前も変わった」と言い、レモ・ウィリアムズという別人になったことを告げる。マクレリーは「元海兵隊員で家族のいない君は適任だ。警察や政界は腐敗し、悪党がのさばる世の中だ。そいつらを始末してもらいたい」と語り、病室を去った。レモは救急車を盗み、病院から逃亡する。しかしマクレリーは彼の動きを詠み、救急車に潜んでいた。
マクレリーはレモを組織の本部へ案内し、ボスである調査部次長のハロルド・スミスに紹介した。スミスは「我が国では司法制度が機能していない。汚物処理に手を貸してくれ」と言い、断れば死んでもらうだけだと通告した。「組織の人数は?」とレモが訊くと、スミスは「この3人だけだ」と答えた。マクレリーはレモをアパートへ案内し、「最初は慣れるために、簡単な殺しからだ。相手は殺し屋だ。油断するな」と拳銃を渡した。
レモが指示された部屋へ乗り込むと、1人の老人が座っていた。レモが「アンタの主人を殺しに来た」と告げると、老人は「ここにはワシだけだ」と言う。「それなら何もしないで帰る」「もう遅い」と立ち上がる。レモが発砲すると、老人は全ての銃弾を軽く避けた。レモが殴り掛かると、これも老人は簡単にかわした。そこへマクレリーが来て、老人に「どうかね、チュン」と尋ねた。チュンはレモを酷評するが、「目にわずかな希望がある。鍛えてみよう」と述べた。
同じ頃、スミスはジョージ・グローヴという男の情報を確認していた。朝鮮戦争で補給係軍曹だったグローヴは1962年にグローヴ社を設立し、新兵器の開発を進めた。これまで彼は贈賄や殺害などの容疑で何度も逮捕されたが、調査官や証人の失踪で全て不起訴になっていた。レモはマクレリーからチュンと同居するよう指示され、アパートの最上階にある部屋へ赴いた。彼が生意気な態度を取ると、チュンは軽く触れただけで動きを封じて「ワシはシナンジュの達人だ。シナンジュは韓国の村の名前。全ての武芸発祥の地」と述べた。
チュンはレモに呼吸法を教え、恐怖を捨てて屋上の端を歩く稽古を積ませた。一方、スミスはグローヴ社が国防省からハープ衛星の開発を請け負い、当初予算を大幅に超過したことに着目していた。陸軍のレイナー・フレミング少佐はハープ衛星の予算について調べようとするが、機密扱いになっていた。納得できない彼女はスコット・ワトソン将軍に「私は兵器係の主計官なので資料が必要です」と掛け合い、「報告書を出してくれ」と告げられた。
レモはチュンから韓国の鍵盤を渡され、それを叩いて指を鍛えるよう命じられた。部屋には台になるような物が幾つも置いてあり、レモはバランス感覚を鍛える訓練も指示された。レイナーはグローヴ社が開発した小銃の実戦テストを見学し、暴発事故を目撃した。グローブはワトソンからの連絡で、兵士が死亡したことを知らされた。ワトソンが「破裂したという報告書が来ている。査問があるぞ」と話すと、彼は「報告書を始末しろ」と命じた。レモはチュンに指示され、観覧車を使った訓練を行った。
レイナーは防衛会議でグローヴにハープ衛星の実物を見せるよう要求し、テストに立ち会うと告げた。レイナーがグローヴを疑って調べていると知ったスミスは「気を付けないと殺される」と感じ、ニューヨークへ来る彼女を守るようマクレリーに指示した。グローヴは手下のストーンに、レイナーの監視を命じた。訓練を始めてから1ヶ月が経過したレモの様子を視察したマクレリーは、チュンに「しばらく彼を貸してくれ」と告げた。
レイナーはニューヨークでマクレリーと会い、資料を受け取った。レモはレイナーを追ってエレベーターに入り、彼女を口説くような言葉を口にした。ストーンはレイナーを張り込み、密かに写真を撮った。ストーンはレイナーを尾行しようとするが、気付いたレモが妨害した。グローヴはワトソンから、謎の秘密組織や正体不明の男がレイナーに関わってきたことを知らされる。グローヴは「テネシーのような手荒にやればいい。死体を誰が引き取るかで分かる」と言い、まずは正体不明の男を始末するよう命じた。
チュンはレモを改装工事中の自由の女神像へ連れて行き、高所恐怖症を克服するよう指示した。ストーンから金を貰った3人の作業員は、レモを転落死させようとする。レモは作業員たちを叩きのめすが、ストーンには逃げられた。ストーンの手下が背後からレモを射殺しようとするが、チュンが駆け付けて始末した。チュンはレモが気付かない内に、その場から立ち去った。マクレリーがスミスと会っている現場にレモが現れ、グローヴの手下に襲われたことを報告する。マクレリーは「我々が見つかる前に殺そう」と提案するが、スミスは「証拠が必要だ」と却下した。
レモはマクレリーと共にグローヴ社の工場に潜入し、別れて行動を取った。2頭の猛犬に追われたレモは、何とか撒いた。レモはハープ衛星が保管されている場所に辿り着くが、警備システムのレーザーが発動して爆発が起きた。慌てて逃げ出したレモは、マクレリーと合流した。レモは「失敗した」と漏らすが、マクレリーはハープ衛星の情報が入ったディスクを入手していた。しかしマクレリーは駆け付けた警官に撃たれて倒れ、レモは彼からディスクを託されて逃亡した。ディスクの中身を確認したスミスは、「工場にあったハープ衛星は偽物で、最初から本物は存在しなかった。誰かが近寄れば偽物は爆発して証拠を消すようになっていた」とレモに話す…。

監督はガイ・ハミルトン、原作はリチャード・サピア&ウォーレン・マーフィー、脚本はクリストファー・ウッド、製作はラリー・スピーゲル、製作総指揮はディック・クラーク&メル・バーグマン、共同製作はジュディー・ゴールドスタイン、撮影はアンドリュー・ラズロ 美術はジャクソン・デ・ゴヴィア、編集はマーク・メルニック、衣装はエレン・マイロニック、音楽はクレイグ・サファン。
出演はフレッド・ウォード、ジョエル・グレイ、ウィルフォード・ブリムリー、ケイト・マルグルー、チャールズ・シオフィー、J・A・プレストン、ジョージ・コー、パトリック・キルパトリック、マイケル・パタキ、ダヴェニア・マクファッデン、コージー・コスタ、J・P・ロマーノ、ジョエル・J・クラマー、フランク・フェラーラ、マーヴ・アルバート、レイ・ウッドフォーク、フィル・ニールソン、ウェブスター・ウィネリー、フランク・シンプソン、ドディー・ケナン、レジナルド・ヴェルジョンソン、ジョン・ポリト、ジーン・レベル、マイケル・M・ライアン、ジェフ・オーリン、ウィル・ジェフリーズ、セバスチャン・リガード他。


リチャード・サピアとウォーレン・マーフィーの小説『デストロイヤー』シリーズ(『殺人機械』シリーズ)を基にした作品。
監督は『クリスタル殺人事件』『地中海殺人事件』のガイ・ハミルトン。
レモをフレッド・ウォード、チュンをジョエル・グレイ、スミスをウィルフォード・ブリムリー、レイナーをケイト・マルグルー、グローヴをチャールズ・シオフィー、マクレリーをJ・A・プレストン、ワトソンをジョージ・コー、ストーンをパトリック・キルパトリック、ウィルソンをマイケル・パタキが演じている。

メイン2人のキャスティングには、大いに疑問がある。
フレッド・ウォードは『サザン・コンフォート』や『地獄の7人』に出演していたし、ボクシング経験もあるが、当時はそこまでアクション俳優としての印象が強かったわけではない。あと、何より主演を張るには地味。
ただし、彼より遥かに問題なのがジョエル・グレイ。チュンは朝鮮人の設定なのに、なぜユダヤ系のジョエル・グレイなのか。格闘能力が高いわけでもないんだし、アジア系の俳優を起用した方が良かったんじゃないのか。
どう頑張っても見た目がアジア系じゃないから特殊メイクを施しているけど、「そこまでしてジョエル・グレイにこだわる意味って何?」と言いたくなるわ。

チュンの設定は、なかなか香ばしいことになっている。
彼は韓国出身でシナンジュの達人なのだが、もちろんシナンジュは実在しない武術の名前だ。
チュンは「シナンジュは村の名前で全ての武芸発祥の地。カンフーも空手も忍術も影の存在に過ぎない」と語るが、韓国が何かに付けて「我が国が起源」と主張したがることを考えると、ちょっと笑っちゃうよね。
「韓国人は地球上の生物で最高なのだ」という台詞も、韓国人のプライドの高さを考えると、やっぱりニヤニヤしちゃうよね。

冒頭、レモは2人組に襲われる黒人を助けようとするが、なぜか黒人にも襲われる。
後になって、「実は全て秘密組織の計画」ってことが明らかにされる。でも、「偽の事件でレモを騙して暴行し、重傷を負わせて整形して」という手順が、あまりにも乱暴で愚かしい。そんな偽装の意味が全く無いでしょ。
そんな手間を掛けなくても、普通に拉致して死んだように偽装すれば良くないか。わざわざ車ごと海に転落させて重傷を負わせているけど、下手すりゃ死んだかもしれないし、リスクがデカすぎるだろ。
それに、そこまでやって「命令に従え」と要求しても反発を食らうのは当然だし、まだ拉致して事情を説明する方が少しはマシじゃないかと。

レモがチュンと会うシーンでマクレリーが騙すのも、これまた全く意味の無い趣向にしか思えない。
「殺し屋がいる」と嘘をついて部屋に行かせる必要性が、何も見当たらないのよ。
普通にチュンを「これから鍛えてもらう師匠」として紹介し、そこから「軽く見ているレモに発砲させたり殴り掛からせたりする」という手順にしても、似たような状況は作れるでしょ。
どちらの策略も、やりたいことは分からんでもないけど、ことごとく上滑りしている印象が強いのよ。

レモは強引な形で秘密組織にリクルートされるが、すぐに殺し屋として仕事を始めるわけではない。全く能力が足りていないってことで、前半の内は訓練を積む時間帯が続く。
直接的に殺人術を学ぶわけではなくて、呼吸法だったり、恐怖を捨てる方法だったり、バランス感覚を鍛える稽古だったりが描かれる。
「こんな訓練で、こんな能力が鍛えられるのか」という意外性は無いし、その訓練自体に面白さがあるわけでもない。
なので、ただの退屈な時間になっている。

あと、マクレリーとレモ以外のエージェントがいないので、「それで組織として成立してんのか」と言いたくなる。
まだ創設されたばかりの組織ってことなのか。だとしても実働部隊が2人しかいないって、やっぱり組織としては脆弱すぎるだろ。
しかも、まだレモは一人前じゃなくて、これから訓練を積まなきゃいけないレベルなんだし。なのに組織は、何度も逮捕を免れてきたグローヴという大物を狙っているんでしょ。
それをエージェントになったばかりの新人に任せるのは、かなりリスクがデカいんじゃないかと。

まずはレモに他の仕事を幾つか担当させて経験を積ませて、それから巨悪に挑むってわけでもないんだよね。
まあ「グローヴに気付かれてしまったので成り行き」という部分はあるのかもしれないけどさ。
っていうかさ、チュンはレモを遥かに超越する圧倒的な能力を持っているんだから、彼に頼めば良くないかと思っちゃうのよね。
レモがマクレリーに「彼に頼めばいいだろ」と言い、それに対して「こういう理由でチュンは引き受けてくれない」と説明するようなやり取りでもあれば納得できるんだろうけどさ。

レモは1ヶ月という短期間で、弾丸をかわしたり浮いて走ったりする驚異的な運動能力を会得する。
「どんだけ才能があったんだよ」と、呆れてツッコミを入れたくなるわ。
最低でも1年以上は訓練を積まなきゃ無理なぐらいの境地に(いやホントは1年どころのレベルじゃないぞ)、あっという間にレモは到達しているんだよね。
そこはホントなら、「訓練を開始してから数年が経過して」に時間を飛ばしてもいいぐらいなのに。

自由の女神像での戦いは、たぶん大きな見せ場として用意されているんだろう。
もちろんフレッド・ウォード本人が危険なアクションを自分でこなしているわけではなくスタント・ダブルの仕事だが、そんなのは分かり切っていることだ。
それは別にいいのだが、残念ながらカメラワークや編集がイマイチ。そのせいで高さの恐怖が弱いし、動きや位置関係も分かりにくい。
あと、そもそもレモのアクションも、かなりモッチャリしているし。

スミスはマクレリーがグローヴの始末を提案すると、「証拠が必要だ」と却下する。
だけど、グローヴが悪党なのは分かっているんでしょ。そして彼が法律で裁けない人間だからこそ、秘密組織が動いているんでしょ。だったら、もう証拠が云々とか言っている段階じゃないでしょ。暗殺に向けて動くべき段階でしょ。
これが「グローヴだけじゃなく、彼と結託している政府や軍の関係者を突き止めたい」という狙いでもあるなら、暗殺を留まるのは分かるけどさ。そういう目的に、スミスは全く言及していないからね。
しかも、ディスクを入手したスミスは証拠となる偽者のハープ衛星が爆発したにも関わらず、マクレリーの仇討ちに燃えるレモにグローヴの始末を命じているんだよね。
それは言ってることと矛盾してるじゃねえか。だったら最初からグローヴの暗殺を狙えばいいじゃねえか。

グローヴ社の工場に潜入する任務では、レモは何の役にも立っていない。
むしろレーザー装置を発動させて潜入を気付かれているので、マクレリーの邪魔をしているだけだ。
「撃たれたマクレリーがディスクを預かって逃げる」という役割は果たしているけど、およそ主人公とは言い難い役立たずっぷりだ。
そもそも、レモがチュンから指導を受けるのは暗殺者としての鍛錬なので、諜報員のような仕事は他の奴に任せた方がいいんじゃないのかと言いたくなるぞ。

まるでヒロインであるかのように登場したレイナーだが、その存在意義は皆無に等しいモノになっている。
彼女はグローブを調べているが、真相に近付くような流れは無い。肝心なレモとの絡みも、ほとんど無い。
レモはストーンの尾行を妨害するだけで、直接的にレイナーを助けて戦うようなことも無い。レイナーがレモたちの組織を知り、協力するようなことも無い。
終盤にはグローヴがレモとレイナーを同時に始末しようとするが、別にレイナーがいなくても成立するし。
あと、クライマックスの戦いが「レモが一味の元へ乗り込んで」という形じゃなくて基本的には逃げ回ったり射撃から隠れたりしているだけなので、ちっとも燃えさせてくれないんだよね。

(観賞日:2021年12月16日)

 

*ポンコツ映画愛護協会