『レリック』:1997、アメリカ&イギリス&ドイツ&日本

ブラジルから出航間近のサントス・モラレス号。乗り込もうとする船長に、人類学博士ジョン・ホイットニーが慌てた様子で声を掛けてきた。彼は自分が勤務するシカゴ歴史博物館宛てに木箱を送ろうとしたのだが、キャンセルしたいと言う。船長に断られたジョンは、密かに船に潜入した。
6週間後、ミシガン州で漂流していたサントス・モラレス号が、沿岸警備隊によってシカゴの港まで曳航されてきた。シカゴ警察殺人課のダゴスタ警部補と部下のホリングワースは、船内を調べ始めた。船内に人の気配は全く無かったが、2人は船底に腐敗した遺体があるのを発見する。
その1週間後、シカゴ歴史博物館に航空便でジョンから送られた木箱が届けられた。その中には、遺物と葉っぱが入っていた。遺物は南米の部族が敵を殺すため、悪魔と契約を結んで生まれたとされる怪物の姿をしていた。葉っぱの方には、カビのようなものが付着していた。生物学博士マーゴ・グリーンは、その葉っぱを保存してカビの成分を調べ始める。
その日の夜、歴史博物館の警備員が首を斬られて殺された。ダゴスタ警部補や部下のホリングワースが博物館に現れ、捜査を開始する。やがて犯人らしき男が発見され、博物館では市長を始めとするVIPを招いたパーティーが開催される。だが、博物館には恐ろしい怪物が潜んでいた…。

監督&撮影はピーター・ハイアムズ、原作はダグラス・プレストン&リンカーン・チャイルド、脚本はエイミー・ジョーンズ&ジョン・ラッフォ&リック・ジャッファ&アマンダ・シルヴァー、製作はゲイル・アン・ハード&サム・メルサー、製作総指揮はゲイリー・レヴィンソン&マーク・ゴードン、編集はスティーヴン・ケンパー、美術はフィリップ・ハリソン、衣装はダン・レスター、クリーチャー効果はスタン・ウィンストン、特殊効果監修はゲイリー・エルメンドーフ、視覚効果監修はグレゴリー・L・マクマリー、音楽はジョン・デブニー。
出演はペネロープ・アン・ミラー、トム・サイズモア、リンダ・ハント、ジェームズ・ホイットモア、クレイトン・ローナー、チー・ムオイ・ロー、トーマス・ライアン、ロバート・レッサー、ダイアン・ロビン、ルイス・ヴァン・バーゲン、コンスタンス・タワーズ、フランシス・X・マッカーシー、オードラ・リンドレイ、ジョン・カペロス、ティコ・ウェルズ、マイク・バカレラ、ジーン・デイヴィス、ジョン・ディ・サンティ、デヴィッド・プローヴァル他。


怪物ホラー映画。マーゴをペネロープ・アン・ミラー、ダゴスタをトム・サイズモア、アン・カスバート博士をリンダ・ハントが演じている。
監督はピーター・ハイアムズだが、これは彼の作品ではなく、スタン・ウィンストンや特撮スタッフの作品だと言った方がいいのかもしれない。

タイトルの『レリック』というのは遺物のことで、悪魔との契約で生まれた怪物を示す言葉ではない。作品の中では怪物に関する科学的な説明がなされているが、極論を言ってしまえば、そんなことはどうだっていいのよね。
どうせ迷信の生物なんだし、理論的に説明が出来なくても怖ければOK。

警備員が殺された後、状況は完全に停滞してしまう。
何か得体の知れない生物が人間を狙っているという気配がほとんど無いので、緊張感は生まれてこない。殺人を起こさなくても構わないから、もっと怪物が潜んでいることを示す描写があった方がいいだろう。

ジワジワと恐怖が迫ってくるムードが、一向に漂ってこない。
やはりハイアムズ、実際に生物を登場させないと、どう演出していいのか分からなかったのか。“見せる”ことによって迫力を出すのは得意でも、“予感させる”ことによって恐怖を生み出すことは苦手らしい。

終盤に近付くと、「防火扉が閉じて、照明が全て消えて、スプリンクラーが作動して、パーティー客がパニックになる」という動きがあるんだけど、そこに怪物の気配は無い。
「それはテロリストの行動で起きた結果だ」と言っても成立するし、ホラーじゃなくてサスペンス・アクションみたいな展開だ。

舞台を暗くして怖さを表現しようとしているのかもしれないが、暗すぎて何が何だか分からないので、恐怖もへったくれも無い。
博物館の構造も不明なので、人物の位置関係が分からない。終盤になってもノンビリトークをしたりして、緊張が持続しない(最初から無いのかもしれないが)。

結局、ピーター・ハイアムズにホラー映画は作れないということを証明した映画だ。
素直にアクション映画だけを作り続けて下さい。
宣伝コピーに「扉が閉まったら、後はいっさい責任もてません」とあったが、「駄作だから映画を見始めたら後は知らないよ」という意味だったのかもしれん。

 

*ポンコツ映画愛護協会