『レッド・スパロー』:2018、アメリカ

ロシアのモスクワ。ボリショイ劇場のプリマであるドミニカ・エゴロワは、体に麻痺を抱える母のニーナと2人で暮らしている。彼女は母の面倒を見ながら、プリマとして華々しく活躍している。その日の公演には、対外情報庁副長官で叔父のワーニャが政府高官のウスチノフを連れて来た。一方、CIA局員のネイト・ナッシュはモスクワで暗号を受け取った。食堂に立ち寄った彼は上着を残し、外へ出た。彼はゴーリキー・パークで情報提供者と接触するが、直後に麻薬捜査官がやって来る。情報源を守るために発砲した彼は、パトカーに追われて大使館へ駆け込む。ドミニカはジャンプしたプリンシパルのコンスタンティンに左足を踏まれ、大怪我を負って病院へ運ばれた。
次の日、ワーニャは情報庁長官のザハロフとコルチノイ将軍に呼ばれ、ゴーリキー・パークの一件を聞かされる。ネイトの素性は露呈したが、既にアメリカへ戻っていた。密会の相手については、何の情報も得られていなかった。3ヶ月後、松葉杖で暮らすドミニカはワーニャの訪問を受け、バレエ団が代役にソーニャを選んだと聞かされる。復帰が絶望的なドミニカは、近い内にボリショイの所有するアパートも出て行かざるを得ない状況だった。それだけでなく、ニーナの医療費も今まではバレエ団が支払っていた。
ワーニャは「助けに来た。いつでも力になる」とドミニカに告げ、ボイスレコーダーと数枚の写真を置いて立ち去った。ドミニカが写真を見ると、ソーニャがコンスタンティンと密会する様子が写っていた。レコーダーを再生した彼女は、ソーニャがコンスタンティンに自分を負傷させるようそそのかしたことを知った。ドミニカはボリショイ劇場へ行き、女子更衣室でセックスするコンスタンティンとソーニャを松葉杖で何度も殴り付けた。
ドミニカが帰宅すると、ニーナが浴室の近くで倒れ込んでいた。今まで面倒を見てくれていたレニの契約を、ボリショイが打ち切ったのだ。ドミニカは母に、「これからは私が何とかするから」と告げた。彼女はワーニャの元へ行き、「力になると言った。何をすればいい?」と尋ねる。ワーニャはドミニカに、彼女のファンであるウスチノフに近付いて誘惑するよう命じた。ドミニカは拒否するが、「この仕事を受ければ母親は治療を受けられる」と言われて承諾する。
ドミニカはワーニャから用意したドレスに着替えてホテルのバーへ行き、ウスチノフの隙を見て携帯電話を摩り替える仕事を命じられた。ドミニカはウスチノフを誘惑し、彼の部屋へ招かれる。ウスチノフの指示でドレスを脱いだ彼女は、ベッドに押し倒されてレイプされる。そこへ殺し屋のマトーリンが窓から侵入し、ウスチノフを始末した。彼はボディーガードを殺害し、ドミニカをバイクに乗せてホテルから逃走した。ワーニャはコルチノイに、彼女は使えると告げた。
ワーニャはドミニカから「何が起きるか知ってて黙っていたのね」と抗議され、「私の仕事を知っていて頼ったはずだ」と冷静に言う。彼はドミニカの素質を高く評価し、諜報員の養成所に入って訓練を積むよう促した。「断れば身の安全は保障できない」と脅されたドミニカは、母に別れを告げて養成所へ向かった。責任者である監察官に迎えられたドミニカは誰にも本名を明かさないよう指示し、カーチャという偽名を与えられた。
監察官は訓練生をスパローと呼び、皆の前で服を脱ぐよう命じられて従わないドミニカにプライドを捨てるよう説いた。ネイトは海外勤務から外され、アメリカに留まるよう命じられた。彼は情報源との信頼関係について語り、他の人間とは取引しないだろうと訴えた。監察官は猥褻行為で逮捕された議員の写真を見せ、「彼の欲求は?」と訓練生に質問する。アーニャが「同性愛者よ」と言うと、監察官は「彼は少年愛好者だった」と告げる。監察官は逮捕された議員を部下たちに連行させると、アーニャに少年役となって彼を満たすよう命じた。フェラチオを要求されたアーニャが泣いて嫌がると、観察官は「不快なことに慣れなさい」と訓練生に説いた。
ネイトは尾行されていると気付き、CIA幹部のマーティー・ゲイブル、トリッシュ・フォーサイス、サイモン・ベンフォードに報告して「尾行されるってことは、情報源は生きてる」と告げる。情報源と連絡が取れなくなっていることを聞いたネイトは、「俺なら呼び出せる。行かせてくれればロシア情報庁が動く」と訴える。サイモンは承諾し、情報源と接触してマーティーに引き継ぐよう命じた。監察官は海外へ派遣されていた兵士たちを呼び、満足させるよう訓練生に命じた。ドミニカはピョートルという兵士を部屋に連れ込み、リードして手淫した。その映像を訓練生と共にチェックした監察官は、「楽が出来る相手を選んだわね」と指摘した。シャワーを浴びていたドミニカはヴィクトルに襲われるが、すぐに反撃して何度も殴り付けた。
コルチノイはネイトがブダペストに入った情報を掴み、捕まえて情報を聞き出すようワーニャに命じた。しかしワーニャはスパイが報復を受ける可能性を考えて反対し、ザハロフも同調した。ワーニャはネイトが情報源に情を感じて助けたはずだと指摘し、さらに情が移る相手を用意する作戦を提案した。ドミニカはヴィクトルを暴行した件で呼び出され、コルチノイと会う。監察官はコルチノイに意見を求められ、ドミニカには素質があると評した。
授業に戻ったドミニカは、ヴィクトルを満足させるよう監察官に命じられた。ドミニカは挑発的な態度で全裸になり、セックスを要求した。ヴィクトルは勃起せず、悔しそうに立ち去った。ドミニカは「彼の望みは力よ」と指摘し、その様子を見ていたコルチノイはネイトの件で彼女を使うことに決めた。モスクワへ戻されたドミニカは母と再会して喜ぶが、すぐにワーニャの呼び出しを受けた。ワーニャは上層部に裏切り者がいることを話し、その連絡相手であるネイトに接触して情報を聞き出す仕事を命じた。
カテリーナという別名義のパスポートとIDを受け取ったドミニカはブダペストへ飛ぶ。彼女は用意されたアパートへ赴き、ルームメイトのマルタと会った。翌日、ドミニカはブタペスト支局の主任を務めるヴォロントフを訪ね、ネイトの資料を貰う。彼女はネイトを尾行し、その様子を観察した。ドミニカはネイトが通うスポーツジムに登録する際、少し考えて本名を使うことにした。ネイトはプールでドミニカを見て興味を示し、次の日には声を掛けた。ネイトが食事に誘うと、ドミニカは断った。
ネイトはドミニカの会員証を盗み出し、その素性を調べ上げた。彼はマーティーとトリッシュに報告し、「彼女の狙いは情報源だ。彼女は使えるぞ」と言う。ドミニカはワーニャの姪だとネイトが話すと、トリッシュは探ることを許可した。ドミニカは大使館のパーティーに出向き、ネイトが接触するのを待った。彼女はネイトが全て調べたことを分かっており、「政府の仕事をすれば母を治療してもらえる」と告げた。ネイトが改めて食事に誘うと、ドミニカは次の日の夜8時を指定した。
ドミニカがアパートへ戻ると、まだマルタは帰宅していなかった。ドミニカは室内を探り、マルタが議員補佐官のステファニー・ブーシェを誘惑して情報を得ようとしている証拠を発見した。帰宅したマルタはドミニカにヴォントロフの報告書のコピーを見せ、不利な内容が書かれていることを教えた。ドミニカはバーでヴォントロフに接触し、自分に殴り掛かるよう仕向けた。ヴォントロフが店の用心棒に取り押さえられると、彼女は「いい報告を書かないと暴行罪で逮捕よ」と脅した。
ドミニカはネイトを尾行してアパートを突き止め、泣いている芝居で部屋に入れてもらう。彼女がゴーリキーパークでの発砲について訊くと、ネイトは友人を守るためだと答えた。ドミニカがキスすると、ネイトは「何が望みだ?家に帰って良く考えろ」と告げた。次の日、ドミニカはネイトの留守中に部屋へ侵入し、指紋の付着したグラスを盗み出した。彼女がアパートへ戻るとワーニャが来ており、何か報告できることは無いかと言う。ドミニカは「私とマルタが目を付けた。議員補佐官の弱みを握った」と告げ、情報を買うのに25万ドルが必要だと説明した。
ワーニャが立ち去ると、話を聞いていたマルタがドミニカに拳銃を向けた。激怒するマルタに、ドミニカは「手柄も金も貴方にあげる。私は時間を稼ぎたいだけよ」と落ち着き払って告げる。事情説明を要求するマルタに、ドミニカは「ウスチノフの暗殺を目撃した」と打ち明けて協力を求めた。マルタは承諾したように見せ掛けてヴォントロフの元へ行き、ドミニカの弱みを握っていると明かして取引を持ち掛けた。ドミニカはウィーンへ行き、銀行で口座を開いた。
ドミニカが帰宅するとマルタが殺されており、マトーリンが襲い掛かった。彼はウスチノフ暗殺を口外しないよう釘を刺し、その場を後にした。ドミニカはマトーリンに命じられた通り、警察に連絡して取り調べを受けた。彼女が解放されると、情報を得たネイトが待っていた。ネイトはドミニカを家に連れ帰り、スパローであることを指摘する。ドミニカは殺人を目撃してワーニャに選択を迫られたこと、マルタの死が警告であることを語り、母を守りたいだけだと言う。ネイトは「ワーニャは任務が終わっても君を自由にしない」と話し、手を組むよう持ち掛けた。
ドミニカは必ず守ると約束したネイトの提案を受け入れ、彼とのセックスに及んだ。ドミニカはマーティーとトリッシュに会い、嘘発見器に掛けられた。彼女は「私を雇うならウィーンの口座に入金を」と告げ、手始めに3万ドルを要求した。ドミニカはマーティーたちに、ステファニーが金曜にロンドンで情報を流すつもりだと教える。ドミニカはロンドンでステファニーに会おうとするが、ヴォントロフが来て同席すると言い出した。ドミニカはヴォントロフの目を盗み、ステファニーから受け取ったディスクを摩り替えた。しかしCIAの監視に気付いて動揺したステファニーがトラックにひかれて死亡し、ドミニカはヴォロントフと共にモスクワへ呼び戻された…。

監督はフランシス・ローレンス、原作はジェイソン・マシューズ、脚本はジャスティン・ヘイス、製作はピーター・チャーニン&スティーヴン・ザイリアン&ジェンノ・トッピング&デヴィッド・レディー、製作総指揮はメアリー・マクラグレン&ギャレット・バッシュ、製作協力はキャメロン・マッコノミー&ジェフリー・ハーラッカー、撮影はジョー・ウィレムズ、美術はマリア・ドゥルコヴィッチ、編集はアラン・エドワード・ベル、衣装はトリッシュ・サマーヴィル、振付はジャスティン・ペック、音楽はジェームズ・ニュートン・ハワード。
出演はジェニファー・ローレンス、ジョエル・エドガートン、マティアス・スーナールツ、ジェレミー・アイアンズ、シャーロット・ランプリング、メアリー=ルイーズ・パーカー、キーラン・ハインズ、ジョエリー・リチャードソン、テクラ・ルーテン、ダグラス・ホッジ、サキーナ・ジャフリー、セルゲイ・ポルーニン、サーシャ・フロロワ、セバスチャン・ハルク、インゲボルガ・ダクネイト、ニコール・オニール、クリストフ・コンラッド、クリス・オハラ、ジュディット・レゼス、カタ・パルフィー、カレン・ギャグノン、キャメロン・マッコノミー、ヒュー・クワシ、セルゲイ・オノプコ、デヴィッド・ゾルタン・ミラー他。


CIAの工作員だったジェイソン・マシューズによる同名小説を基にした作品。
『ハンガー・ゲーム2』と『ハンガー・ゲーム FINAL』前後編の3本を手掛けたフランシス・ローレンスが、シリーズのヒロインだったジェニファー・ローレンスと再びコンビを組んだ。
脚本は『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』『ローン・レンジャー』のジャスティン・ヘイス。
ドミニカをジェニファー・ローレンス、ネイトをジョエル・エドガートン、ワーニャをマティアス・スーナールツ、コルチノイをジェレミー・アイアンズ、監督官をシャーロット・ランプリング、ステファニーをメアリー=ルイーズ・パーカー、ザハロフをキーラン・ハインズ、ニーナをジョエリー・リチャードソン、マーティーをテクラ・ルーテンが演じている。

ハリウッド映画なので当然っちゃあ当然だが、全編に渡って英語が使われている。ドミニカやワーニャたちはロシア人の設定だが、英語で会話を交わす。
ハリウッド映画において、外国が舞台だったりキャラ設定が外国人だったりしても、台詞が英語ってのは普通のことだ。そして、それが大して気にならないケースも多い。
ただ、この作品の場合、それが欠点になっていると思わざるを得ない。これが荒唐無稽なスパイ映画ならともかく、かなりシリアスでリアルな手触りを狙っているように感じるからだ。
そうなると、「ロシア人が英語を喋っており、本来ならアメリカ人と話す時は違う言語に切り替わるはずなのに全く同じ言語のまま」という部分が傷になる。「スパイの能力として、ロシア人だが英語を流暢に喋る」という仕掛けも使えない。

冒頭、自宅にいるドミニカが登場するが、すぐにカットが切り替わってネイトのシーンになる。そこからはドミニカとネイトの行動を交互に描く時間が、しばらく続く。
そういう導入部なんだから、この2人の関係を軸にして話が進んでいくものだと思うのは普通の感覚だろう。
しかし実際には、完全に「ドミニカだけが主役」という形なのだ。少し立つと割合はドミニカが圧倒的に多くなるものの、ネイトの様子が何度も挿入される構成は続く。
たぶん、CIAが動いていることを、そっちサイドからも描いておきたいという事情はあるんだろう。

しかし、ドミニカがネイトに接触するのは映画開始から50分以上が経過してからだ。それまでネイトの方は、ドミニカの存在など全く知らない。ドミニカにしても、ネイトを知るのは任務を命じられてからのことだ。
そういう関係性を考えた時、果たして冒頭から「ドミニカとネイトの双方から描く」という構成にしてあるのが正解なのかと考えた時に、それは違うんじゃないかなと。
ドミニカが接触してからはネイトとの距離を急速に縮めるが、それを踏まえても、やっぱり違うんじゃないかなと。
この2人は、明らかに同等の扱いじゃないんだから。

ワーニャはドミニカに、ウスチノフに接触して誘惑する仕事を依頼する。
ドミニカはスパイの能力など無いズブの素人だが、ウスチノフは彼女のファンなので、誘惑するだけなら難しい仕事ではない。ただ、携帯電話を摩り替える仕事まで命じるのは、ちょっとリスクが高いように感じる。
ただ、ドミニカが携帯を摩り替える前に、マトーリンが来てウスチノフを殺してしまう。
ワーニャは殺害した理由について「ウスチノフが護衛を外したのでチャンスだと思った」と説明するが、最初からマトーリンを差し向けていなかったら殺せないわけで。
つまり彼は、最初から「隙あらば殺そう」と目論んでいたことになる。

だけど、そもそも彼はドミニカに仕事を指示する際、ウスチノフが怪しいから携帯電話を摩り替えろと言っていたはず。
つまり、まだ何も確証が掴めていないからこそ、携帯電話を手に入れようとしたんだよね。それなのに殺してしまったら、まるで意味が無いでしょ。
一方で、もしも既に裏切り行為が確定していたとすれば、今さら携帯電話を摩り替えたりする必要も無い。最初から暗殺だけを狙えばいいわけで。
どっちにしろ、ワーニャの指示は支離滅裂ってことになる。

ヒロインがスパイの世界に飛び込む内容だが、決して派手なアクションをやるわけではない。巧妙な作戦で相手を騙すような、頭脳ゲームの面白さを見せるわけでもない。
この映画で示されるスパイの仕事は、「標的を性的に満足させる」ってのが全てと言ってもいい。
実際の諜報活動でもハニー・トラップは大きな武器として使われているので、そこに焦点を当てるってのは、趣向としては面白い。
ただ、それが映画の面白さに繋がっているのかというと、残念ながら答えはノーだ。

意図的にやっているんだろうとは思うが、ドミニカの心情が分かりにくいのは大きな難点となっている。
当初、ドミニカはスパイとして行動することを嫌がり、母親の面倒を見てもらうため仕方なくワーニャに従っている。しかし監察官から全裸になるよう命令された彼女は、それを拒絶する。
では、その後も性的な行為には難色を示すのかと思いきや、兵士を満足させるよう命じられた時は最初に動いている。どういう心境の変化があったのか、どんなきっかけがあったのか、それは全く分からない。
最初に動いたのは「ホントは嫌だけど、どうせやらなきゃダメだから手淫で済む相手を見定めた」ってことなのかもしれないが、その辺りの理由も全く分からない。

実のところ、分かりにくいのはドミニカの心情だけではない。他にも色々と、分かりにくい事柄はある。
例えばヴィクトルはドミニカをシャワー室でレイプしようとするが、その理由はサッパリ分からない。「欲情したから」ってことかもしれないが、それまでにヴィクトルがドミニカを意識しているような様子は全く無かった。
「ドミニカが優秀なので嫉妬した」という推理も無理に捻り出せなくはないが、そこに至るヒントは何も無い。何しろ、「ドミニカが同期の中で特に優れている」ということを示す描写は乏しいからだ。
でも、その後に監察官が「カーチャの素質は高い」と評するシーンがあるんだし、そこから逆算した時、もっと分かりやすく「ドミニカが圧倒的な素質の高さを披露し、監察官を感心させる」ってな感じの描写を入れておいた方がいいんじゃないかと。

ドミニカはブダペストへ来たワーニャから何か報告できることは無いかと問われると、マルタが得た情報を「2人で突き止めた」と言って流す。どうやら、「上層部が早く情報を欲しがっているので、時間を稼ぐためにマルタの情報を横取りした」ってことらしい。
ただ、その時点では、そこまで焦る必要を感じないのだ。
ワーニャは「上層部がうるさい」とは言っているが、まだドミニカがネイトに接触してから数日しか経っていない設定のはず。なので、他の情報を流さなくても、まだ大丈夫じゃないかと。
実際、そこまで可及的速やかな結果を迫られているようには感じなかったし。

スパイ養成所で全裸になれと言われた時は嫌がっていたドミニカだが、それ以降はクールで強気な態度が続く。しかしマトーリンがマルタを惨殺して脅迫した時は、怯えた様子を見せる。
もちろん、ドミニカはスパイになったばかりだし、「ホントは弱いけど気丈に振る舞っていた」ってことなのかもしれない。ただ、キャラの見せ方として、いかがなものかと。
そりゃあ、殺し屋に脅されても冷静沈着だったら緊迫感が薄れるかもしれないけど、そこまで怯えさせなくてもいいんじゃないかなと。
どうせ全体を通して起伏に乏しく、テンポも悪く、たぶん期待したであろう緊迫感には程遠い結果しか得られていないんだし。

ドミニカとネイトは、初めて互いの素性を知った頃は、まだ「相手を利用しよう」という意識で動いているように思われる。だが、ネイトは早い段階で情が移り、ドミニカを守ろうという気持ちに変化していることがハッキリと分かる。
一方のドミニカは前述したように感情が分かりにくくなっているが、ネイトを騙してロシアに売ろうという気は無さそうに見える。なので、「スパイ同士の巧妙な心理戦」が展開されることは無い。
アクションシーンに頼れない分、他で何か効果的な武器が欲しいのだが、それが見当たらない。
ちなみにジェニファー・ローレンスはヌードも披露しているが、エロとしての力は今一つだ。

ドミニカがワーニャに憤慨していることは、最初の段階からハッキリと見えている。
そしてブダペストへ飛んだドミニカが本来の任務とは別の目的を持って行動していることは、早い内から何となく分かる。
この2つから、「ドミニカはワーニャを裏切る気だな」ってことが、推測できるようになっている。
なので、二重スパイとしてCIAのために働くってのが建前かどうかは別にして、「ドミニカが最後までロシア情報庁のために働くつもりなど無いだろう」ってのは読める。

だが、ドミニカの腹が読めていることは、決してマイナスではない。裏切ることが分かっていても、「どのタイミングで動くのか、どんな方法でワーニャを痛い目に遭わせるのか」という部分で興味を引き付けることが出来るからだ。
ただ、この部分と「ドミニカの心情が良く分からない」という演出は、上手くマッチしていないように感じられる。あまりにもドミニカの気持ちが見えにくいことが、「彼女が計画を練って動いている」という部分の面白さを邪魔しているように思えるのだ。
どうせ彼女が裏切ることは明白なので、そこに関する心情の表現は、もう少し見える形を取っても良かったんじゃないかなと。
ミステリアスを狙ったんだろうけど、メリットよりもデメリットの方が圧倒的に勝っちゃってる感じだわ。

(観賞日:2019年5月27日)

 

*ポンコツ映画愛護協会