『REDリターンズ』:2013、アメリカ&カナダ&フランス
フランク・モーゼスが恋人のサラと買い物をしていると、マーヴィン・ボックスが現れた。フランクはサラと離れ、彼に「何してるんだ」と告げた。「メッセージを無視したな」と言われ、フランクは「俺は引退して幸せになったんだ」と告げる。マーヴィンが「協力しよう。敵が来ると感じる。彼女も連れて来ればいい」と話すと、フランクは「彼女はどこにも連れて行かないむと拒絶した。サラが戻って来て「どこへ行くの?」と目を輝かせるので、フランクは「どこへも行かない」と述べた。
店を出たフランクたちの目の前で、マーヴィンの乗った車は爆発炎上した。サラは渋るフランクを説得し、マーヴィンの葬儀に赴いた。2人が教会を出ると、FBIの連中が現れた。「施設へ同行してもらいたい。貴方は危険人物だ」と言われたフランクは、おとなしく手錠を掛けられて施設へ連行された。施設にはジャック・ホートンという男が現れ、受付の女性職員に責任者のジョン・スナイダーを呼び出させた。ジャックは女性職員を銃殺し、フランクの居場所を聞き出してからジョンも始末した。
連行されたフランクは捜査官から、ナイトシェード計画について教えてほしいと要求される。「何も知らない」と答えたフランクは、銃声を耳にした。ジャックが職員を撃ち殺しながら、取調室に向かっていたのだ。ジャックは取調室に乗り込み、フランクに「尋問のために政府に雇われた者だ」と告げた。彼はフランクに、情報を吐かなければサラに危害を加えると告げた。フランクは手錠を外し、ジャックの一味を次々に始末する。そこへ生きていたマーヴィンが駆け付け、彼に加勢した。
マーヴィンに連れられて施設の外へ出たフランクは、彼がサラを同行させていたので激怒した。「安全な場所に隠れていろと言っただろ」とフランクが言うと、サラは「命令しないで」と反発した。マーヴィンはフランクに「96時間前、俺たちが1979年にナイトシェードという計画に関わっていたという情報がネットに流れた」と語り、そのために死を装ったのだと説明した。彼はフランクたちに、軍情報部の幹部を追い込んで情報を聞き出し、車のトランクに監禁していることを明かした。
ペンタゴンに戻ったジャックは、長官に伝えて問題を公にしようとする将軍を始末した。ジャックは上司のデイヴィスに、フランクを始末するための専門家を雇う考えを示した。以前に失敗しているCIAではなく、殺し屋のハン・チョバイが最適だと彼は告げた。香港で仕事を遂行したハンは、フランクの抹殺を依頼されて引き受けた。一方、ヴィクトリアの元にはMI6のフィリップス長官から、フランクの暗殺依頼が届いた。
マーヴィンは将校を脅し、フランクとサラにナイトシェードのことを教えるよう命じた。ナイトシェードとは冷戦時代、米軍将校が勝手に作った強力な爆弾だ。爆弾は分解され、外交官の手荷物としてモスクワに運ばれたが行方不明になった。発明者が物理学者のエドワード・ベイリーだと聞いたフランクは、「俺のミスだ」と漏らした。フランクとマーヴィンは彼の警備を担当してモスクワへ赴いたが、車を爆破されていたのだ。
ネットに流出した書類を確認したフランクは、その染みを見てザ・フロッグと呼ばれる男の仕業だと確信した。ヴィクトリアはフランクに電話を掛け、暗殺を依頼されたこと、アメリカ政府がハンを雇ったことを教えて警告した。ハンは韓国の諜報部員で、フランクのせいで刑務所に入った過去を持つ男だった。ハンは部下を使ってフランクの動きを調べ、ニュージャージーのテターボロに到着した。彼はホテルを突き止めて乗り込むが、既にフランクたちは姿を消していた。しかもフランクたちは、ハンの自家用機を奪って逃亡していた。
フランクはフロッグを誘い出すため、彼の好きな高級ワインをネットで売りに出すことにした。パリに到着したフランクがホテルへ行くと、ロシアの諜報部員であるカーチャと部下たちが現れた。カーチャはフランクの元恋人で、「会いたかった」と熱烈なキスをした。彼女はフランクにロシア政府がナイトシェードに関する情報を求めていることを語り、「断ればアメリカに引き渡す」と告げる。サラは嫉妬心を剥き出しにするが、フランクは「彼女の助けが必要だ」と説得した。
ジャックはデイヴィスから、国家安全保障局が通信を傍受したこと、フランクたちがフロッグを追っていると判明したことを聞かされた。かつてフロッグはKGB本部の水道に毒を流し、1600人の職員を病院送りにしてロシアの機密を盗み出していた。あまりに多くの情報を知り過ぎているため、アメリカ政府も手が出せずにいた。フロッグがワインをネットで購入したのを確認し、フランクはサラを連れて、彼のいるレストランに潜入した。
フランクが「何があっても目を合わせるな」と忠告したにも関わらず、サラは目を合わせてしまった。フロッグは銃を乱射し、店から逃走した。フランクはカーチャの用意した車に乗り込み、奪ったバイクを走らせるフロッグを追う。カーチャに対抗心を抱くサラも別の車を使い、マーヴィンを乗せて追跡した。フランクとカーチャがフロッグを捕まえ、ホテルに連行した。サラに色仕掛けに落ちたフロッグは、貸金庫の鍵を差し出した。
カーチャはフランクを誘い出して薬を飲ませ、体の自由を奪って鍵を奪い去った。しかしマーヴィンはカーチャの動きを予測し、事前に鍵を摩り替えていた。フランクたちはハンの襲撃から逃亡し、銀行へ赴いた。カーチャの手に渡ったのは、テロリストの使っている貸金庫の鍵だった。何も知らない彼女は貸金庫へ行き、張り込んでいた警察に捕まった。ただしロシアの諜報部員である彼女は、1時間以内に解放されることが確実だ。それまでにフランクたちは、仕事を済ませる必要があった。
フランクたちは貸金庫の中身を調べ、ナイトシェードに関するMI6の記録を発見した。兵器を隠した工作員については、生かしたまま閉じ込めておくことを意味する「ICE」の表記が使われていた。英国へ移動したフランクが車を走らせていると、マーヴァンの連絡を受けたヴィクトリアが現れた。彼女は身代わりの死体を用意して車を爆破し、時間を稼いでくれた。ジャックはフロッグを捕まえて尋問しようと目論むが、彼は毒を飲んで死んでいた。
フランクたちしはヴィクトリアと共にロンドンへ行き、工作員が収容されている要塞のような施設を視察した。そこは精神疾患のある犯罪者の収容所で、工作員のいる凍結区域は厳重に警備された建物の奥にある。ヴィクトリアが患者になって潜入し、注射を打とうとする職員たちを静かにさせた。彼女は窓から入り込んだフランクと共に、残りの職員たちを拘束した。凍結区域に入った2人か見た工作員は、ベイリーだった。彼は爆破事故で死んでおらず、生き延びていたのだ。
フランクたちが部屋に入ると、ベイリーは壁を埋め尽くすように数式を書いていた。フランクはベイリーの様子を見て、精神を病んでいると感じた。ヴィクトリアがナイトシェードについて尋ねると、ベイリーは饒舌に語った。しかし肝心な部分に全く行き着かないので、ヴィクトリアはスタンガンで失神させた。フランクは彼女に、MI6がベイリーの死を偽装した理由を探るよう依頼した。ヴィクトリアは渋々ながら承諾し、わざとMI6に捕まった。その間にフランクは、ベイリーを連れて逃亡した。
ジャックはデイヴィスに、ベイリーの逃亡を報告した。デイヴィスは「状況が変わった。ベイリーの知っていることは、あまりにも危険だ。ベイリーかナイトシェードがテロリストの手に渡れば大惨事になる」と語り、ジャックに機密文書を見せた。驚くジャックに、彼は「このままだとモスクワの真ん中で爆発するが、それが今は最良のシナリオだ」と述べた。フランクたちがロシアの空港に到着すると、イヴァンの率いる部隊が待ち受けていた。モスクワの街に入ったフランクたちは、ハンの襲撃を受けた…。監督はディーン・パリソット、キャラクター創作はウォーレン・エリス&カリー・ハムナー、脚本はジョン・ホーバー&エリック・ホーバー、製作はロレンツォ・ディ・ボナヴェンチュラ&マーク・ヴァーラディアン、製作総指揮はジェイク・マイヤーズ&デヴィッド・レディー、製作協力はクリフ・ラニング、撮影はエンリケ・シャディアック、編集はドン・ジマーマン、美術はジム・クレイ、衣装はベアトリクス・アルナ・パーストル、視覚効果監修はジェームズ・マディガン、音楽はアラン・シルヴェストリ、音楽監修はジョン・フーリアン。
出演はブルース・ウィリス、ジョン・マルコヴィッチ、ヘレン・ミレン、アンソニー・ホプキンス、メアリー=ルイーズ・パーカー、イ・ビョンホン、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、デヴィッド・シューリス、ブライアン・コックス、ニール・マクドノー、スティーヴン・バーコフ、ティム・ピゴット=スミス、ギャリック・ヘイゴン、イ・ジョンクン、フィリップ・アルディッティー、ミッチェル・ミューレン、マーティン・シムズ、トリスタン・D・ララ、カリド・ライス、トム・ウー、エミリオ・ドールガシン、デヴィッド・パパーヴァ、ダン・ジーンノット他。
2010年の映画『RED/レッド』の続編。
脚本は前作と同じくジョン・ホーバー&エリック・ホーバー、監督はロベルト・シュヴェンケから『ギャラクシー・クエスト』『ディック&ジェーン 復讐は最高!』のディーン・パリソットに交代。
フランク役のブルース・ウィリス、マーヴィン役のジョン・マルコヴィッチ、サラ役のメアリー=ルイーズ・パーカー、ヴィクトリア役のヘレン・ミレン、イヴァン役のブライアン・コックスは、前作からの続投。
他に、エドワードをアンソニー・ホプキンス、ハンをイ・ビョンホン、カーチャをキャサリン・ゼタ=ジョーンズ、フロッグをデヴィッド・シューリス、ジャックをニール・マクドノーが演じている。最初に書いておくと、私は大ヒットした前作も面白いとは思わなかった。
不満な点は色々とあるが、ほとんどの事柄は「せっかく面白くなりそうなプロットを全く生かし切れていない」という言葉に集約できる。
『RED/レッド』のポイントは「引退したロートルが大活躍する」ということにあった。
それなのに、まず主役を張るブルース・ウィリスに現役感が強すぎた。そしてフランクの描写にも、やはり現役感が強すぎた。
「引退した年金生活の老人たちが、現役の凄腕工作員たちを相手に回して戦う」という図式こそが面白さの肝なのに、「元スパイたちは体力だと勝てないから知恵や経験で対抗する」という見せ方をするわけでもなく、「年寄りなのに驚異的な能力を発揮する」というわけでもなかった。「現役の若手たちより、ちょっとだけ上」という中途半端な状態になっていた。
パワーバランスが微妙で荒唐無稽さを妨害していたし、ケレン味にも欠けていた。この続編では、前作で感じた不満点が全く解消されていないどころか、むしろ増えている。
前作で感じたポイントにおける不満の度数は上昇し、他にも不満点がプラスされている。
まずキャスティングからして、大いに不満がある。
前作の主要キャストからはモーガン・フリーマンとリチャード・ドレイファスが抜けて(これに関しては前作で退場しちゃってるから仕方がない)、アンソニー・ホプキンス、イ・ビョンホン、キャサリン・ゼタ=ジョーンズといった面々が加わっているが、「足りない」と感じる。
それは人数が足りないということではなく、「本当に必要な人材が足りていない」ってことだ。新しく加わった面々の内、イ・ビョンホンとキャサリン・ゼタ=ジョーンズは「引退したロートル」に該当しない。
そしてアンソニー・ホプキンスは善玉サイドではなく、悪玉だ。
つまり、前作のモーガン・フリーマンが抜けた穴を、誰も埋めていないのだ。
そりゃあ、前作のモーガン・フリーマンが充分に活躍していたか、彼の演じたジョーというキャラが魅力的だったかと言えば、そういうわけでもない。
ただ、少なくとも補充は必要でしょ。イ・ビョンホンとキャサリン・ゼタ=ジョーンズをフランクたちの仲間にしているってことは、たぶん製作サイドは、その2人がモーガン・フリーマンの補充になると考えたのだろう。
その考え方が完全に間違っている。ロートルの補充要員は、ロートルじゃなきゃダメなのよ。そこは絶対だ。
イ・ビョンホンに関しては、作品の内容を考えた時に、そもそも韓国人が登場している時点で違和感は否めない。
ただ、それを置いておくとしても、せめて悪役にすべきなのだ。悪役っていうか、やられ役ね。
「いかにも強そうな現役バリバリの殺し屋」として登場し、その上でロートルたちに退治される役回りに据えるべきなのよ。フランクたちと組む設定にするにしても、「ヘマをして助けられる」とか、「フランクたちの戦いぶりに圧倒される」とか、そういう役割を担当させるべきだ。
ようするに、ロートルたちの噛ませ犬であったり、ロートルの引き立て役であったり、そういうキャラにしておくべきなのよ。
ロートルたちと同列の扱いで、優れた実力を発揮して活躍する姿を描くなんて、正気の沙汰とは思えない。
それは、この映画の根幹を崩壊させる所業と言ってもいいぞ。キャサリン・ゼタ=ジョーンズに関しては、「映画にはヒロインが必要でしょ」というハリウッド的感覚による起用なのかもしれない。前作に引き続いてメアリー=ルイーズ・パーカーは登場するが、別の女性を起用することで華やかさを出したいってことなのかもしれない。
「華」として女性を用意するのは、007シリーズ的な感覚として捉えれば、まあ許容できる範囲だ。
ただし、登場させるのであれば、ちゃんと使ってあげるべきだろうに。カーチャの存在意義が全く見えないし、まるで活躍していないぞ。
彼女を使って三角関係の構図を描いているが、後半に入ると完全に忘れ去られるし。ハンの登場シーンは、警備の厳しい建物に彼が通される様子から始まる。全裸で身体検査をされた後、ハンは警備員の渡した浴衣を着る。通された場所には依頼主が待っているのだが、部屋の真ん中にデカい畳が置いてあり、その上に一畳分の畳が敷いてあり、そこに着物姿で座っている。
いわゆる「勘違いした日本」の典型的な描写と言ってもいいのだが、そもそもハンは韓国人なので、そこも勘違いしている。
それはともかく、ハンの登場シーンでは、それぐらい尺を取って彼をアピールしているってことだ。
ひょっとすると、それはアジア市場を見据える意識の表れなのかもしれない。まあ日本の市場だけで考えると、彼の出演がどれぐらいの訴求力に繋がったのかは疑問だけどね。一時は熱狂的な韓流ブームが巻き起こっていたけど、あっけなく過ぎ去ったしね。
でもアジアで一番の中国市場だったら、かなりの訴求力になるのかな。ただ、彼の演じるハンって、やたらと「フランクの最大の敵」とか「凄腕の殺し屋」とか、その強さをアピールしているんだけど、なんかバカに見えちゃうんだよね。
パリのシーンでは、平気で派手な銃撃戦をやらかすし、仕事が雑なのよ。もう少し秘密裏に行動する意識を持てないものかと思ってしまうのよ。
あんだけ派手に乱射したら、凄腕じゃなくても標的を殺すことは難しくないだろうと思ってしまうぞ。
まあ、それでもフランクに逃げられるので、やっぱりマヌケなんだけど。モスクワではハンが大暴れする格闘アクションの見せ場が用意されているけど、この映画で重要なのはロートルのアクションであって、若手のアクションではない(まあイ・ビョンホンを若手と呼べるかどうかは微妙だが)。
だから、フィーチャーするポイントを完全に間違えている。
「フランクに立ちはだかる強敵」として、その実力をアピールしておく必要はあるだろう。
ただ、そういうのは登場シーンで済ませておくことであって、後半に彼の見せ場なんて要らない。前述したように、1作目の段階で既に元スパイたちのキャラクター描写には不満があった。そこは全く改善されておらず、むしろ質が悪くなっている。
ブルース・ウィリスに関しては、前作と同様で現役感が強すぎる。
なんせ『ダイ・ハード ラスト・デイ』でバリバリに活躍しているし、「あまりアクションをやりそうにないベテラン俳優にアクションをやらせる」という面白味が出ない。
そのくせ、ボンクラなヘマをやらかしたりするので、「なんだかなあ」と思っちゃうし。前作でイカれたジジイだったマーヴィンは、ちょっと騒がしいだけのジジイに成り下がった。
銃を撃ちまくる様子がカッコ良くて(それはキャラクターの魅力ではなくヘレン・ミレンの放つ魅力だったのだが)、彼女が主役を張る映画にした方がいいんじゃないかとさえ感じたヴィクトリアも、前作には劣る。
キチガイの芝居をするのが見せ場のつもりなら、そんなことよりケレン味のあるアクションシーンで活躍させてくれと言いたくなる。
まあ、それでも他の面々に比べれば圧倒的にカッコイイけどさ。元スパイたちが前作より劣化している一方で、なぜかサラの扱いがデカくなっているのだが、これが邪魔でしょうがない。
彼女が凄腕のエージェントなら、まだ分からんでもないよ。だけど、ただ単に好奇心が旺盛で危険が大好きなド素人でしかないのだ。
つまり「平凡な主婦が火遊びをしたがる」ってのと同じような感覚で、死ぬかもしれないような事件に危機感ゼロで首を突っ込みたがるのだ。
だけど、プロとしての能力なんて無いもんだから、ただ迷惑なだけでしかない。今回の映画、とにかくサラが邪魔でしょうがない。そして、迷惑ばかり掛けているのに反省ゼロでしゃしゃり出るのが不愉快でしょうがない。
そんなトコにトラブル・メイカーは要らないのよ。しかも笑えるトラブル・メイカーならともかく、疎ましいだけなんだからさ。
フロッグを色仕掛けで落とすとか、たまに役立つこともやるけど、まるでリカバリーできていない。トータルで考えると、どう考えても圧倒的にマイナスがデカいぞ。
その色仕掛けで落とすシーンも、むしろサラを無理に活躍させている感じバリバリで不快だし、得意げな彼女の様子も不快だわ。そこまでに、どんだけ迷惑を掛けていると思ってるんだよ。
その後も、とにかくサラを活躍させよう、役立つ女として描写しようという意識が強すぎて、それが話のバランスを崩壊させている。(観賞日:2015年7月29日)