『レイジング・ケイン』:1992、アメリカ

カーターは幼児の心理研究に異常な執念を見せる男。そのことで親友ヘレンと口論になり、彼女を麻酔薬で眠らせてしまう。焦るカーターの元に兄ケインが現れた。ケインは彼女を殺して死体を始末するようにアドバイスする。
公園で妻のジェニーが昔好きだった男ジャックと浮気をしているのを見てしまったカーター。そこにもケインが現れ、全て片付くまで自分が成り代わると言ってカーターを家に返す。その日の深夜、カーターはジェニーを窒息させ、車ごと湖に沈めてしまう。だが、それはカーターではなくケインだった。
警察に行き、妻と娘が公園で行方不明になったと言うカーター。そこへ偶然やって来ていた元刑事マックは、彼が20年前に5人の子供を誘拐したニックス博士の息子だと確信する。ニックス博士は多重人格研究の権威だったが、実験のために誘拐した子供達を多重人格に仕立て上げていた。
家に戻ったカーターの前に、ジェニーが現れた。彼女は死んでおらず、車から脱出したのだ。カーターは警察に逮捕された。彼もまた、ニックス博士の実験台だった。ケインはカーターの別人格だったのだ。さらに彼は、他にもジョッシュ、マーゴといった人格も持っていた。やがてカーターは隙をついて、警察から逃亡する…。

監督&脚本はブライアン・デ・パルマ、製作はゲイル・アン・ハード、共同製作はマイケル・R・ジョイス、撮影はスティーヴン・H・ブラム、編集はロバート・ダルヴァ&ポール・ハーシュ&ボニー・コーラー、美術はダグ・クレイナー、衣装はボビー・リード、音楽はピノ・ドナッジオ。
主演はジョン・リスゴウ、共演はロリータ・ダヴィドヴィッチ、スティーヴン・バウアー、フランシス・スターンヘイゲン、グレッグ・ヘンリー、トム・ボウアー、メル・ハリス、テリ・オースティン、ガブリエル・カーテリス、バートン・ヘイマン、アマンダ・ポンボ、キャスリーン・キャラン、エド・フックス、ジム・ジョンソン、カレン・カーン、ノー・モントーヤ、リック・ブーギー・エスピノーザ他。


『サイコ』をベースにして、ブライアン・デ・パルマが崇拝するアルフレッド・ヒッチコック監督にオマージュを捧げた作品。カーター(&カーターの別人格の全て)をジョン・リスゴウ、ジェニーをロリータ・ダヴィドヴィッチが演じている。

『サイコ』の主人公は二重人格だったが、この作品は多重人格の数をアップさせている。細かい部分へのこだわりを見ても、デ・パルマの「オイラはヒッチコック先生が大好きなんだ」ってのが良く分かる。崇拝する対象への思い入れだけは伝わってくる。

ただねえ、あまりにも複雑に作りすぎてるから、ヒッチコックのようにサスペンスに集中できないのよね。だって、何が起こっているのかを理解することに、全神経を使わないといけないんだから。映像に凝りすぎて、人物造形が不充分ってのも気になるし。

カーターの中にあるケインという別人格が実際に映像として現れ、カーターとケインが同じ画面に存在するので、最初は混乱する。でも、そういう映像表現はたぶんデ・パルマ監督の得意技なんだろうなあ。しかし、それがサスペンスの邪魔をしてちゃあイカンだろ。凝りすぎて捻りすぎて、結局は自滅してるって感じでしょうか、編集長。

 

*ポンコツ映画愛護協会