『レイダース/失われたゾンビ』:1986、アメリカ

放射性物質を積んだタンクローリーを、銃を持った男の車が尾行していた。タンクローリーが赤信号で停まると、男は屋根を歩いて運転席まで移動した。男が運転手を拳銃で脅してタンクローリーを発進させると、ランドール刑事や警官たちがパトカーが追跡した。すると森で大型トラックの男が立ちふさがり、追跡を妨害した。ランドールは本部に連絡を入れ、「テロリストが核燃料工場の者を人質に取って囚人の釈放を要求している。犯人は爆発物を持ってる」と説明した。テロリストは工場に乗り込んできた2名の警官を叩きのめして逃亡を図るが、高圧電流を浴びて死亡した。
カーステアーズ医師は息子の出張中、孫であるジョナサン少年を家で預かっていた。ジョナサン少年は彼からレーザーディスクの修理代が高いことを聞き、「僕が直してみる」と申し出た。ある男はテロリストに注射を打ち、ある装置を使って復活させた。ジョナサンは傍らにモルモットのフェリックスが入ったケージを置き、レーザーディスクを直し始める。すると誤ってレーザー光線が発射され、フェリックスが死亡した。ジョナサンは友人のミシェルから、「レーザー光線を発見したのなら、何かに利用を」と提言された。
新聞記者の男は恋人を車に乗せて夜道を走らせ、コルター農場へ赴いた。彼は写真を撮るため、恋人を車内に残して外へ出た。懐中電灯を持って建物に入った記者は、テロリストとゾンビに遭遇した。記者は外へ逃げ出すが、今度は老人ゾンビに襲われた。記者トラックの荷台に積んであった灯油を発見し、それを地面に撒いて火を放った。老人ゾンビは炎に包まれ、記者は車に戻る。しかしエンジンが掛からず、彼は恋人を連れて外へ逃げた。しかし記者はテロリストに首を絞められて失神し、恋人はゾンビに襲われた。
次の日、記者は道路に出て助けを求め、走って来た車にはねられて道路脇に倒れ込んだ。後ろを走っていた女性は車を停めて駆け寄り、男が生きているのを確認した。彼女は自宅に連れ帰り、食事を用意した。女はシェリーと名乗り、元気になった男は「ランドールだ」と言う。ランドールは町まで車で送ってもらい、中古のショットガンを買う。彼はシェリーに紹介された下宿へ行き、部屋を借りた。シェリーは電話でランドールからデートに誘われ、最初は断ったが結局はOKして映画館に出掛けた。
ジョナサンはカーステアーズにレーザー光線のシステムを説明し、完成させて実験した。デートを終えたランドールが下宿に戻ると、部屋にゾンビが待ち受けていた。襲われた彼はショットガンを発砲し、外へ逃げ出した。車とぶつかりそうになった彼はショットガンを落とすが、そのまま走り去った。通り掛かったカーステアーズは診療所に招き入れ、事情を話すよう促す。するとランドールは「話は3ヶ月前に遡る」と言い、農場での出来事を語った。
シェリーは下宿に呼ばれてクルーガー警部補と会い、ランドールとの関係を問われた。シェリーが正直に説明すると、クルーガーは2階へ案内した。すると検視医のケイペックが待っており、死後2年が経過しているという男の遺体を見せた。カーステアーズはランドールから話を聞き、「一晩寝て、明日は町を出なさい」と勧めた。翌日、町を出たランドールはシェリーに電話を掛け、警察が捜していることを聞かされる。シェリーは車で出掛け、映画館にいるランドールを見つけ出した。
ランドールはシェリーに、「追っているのは警察だけじゃない。ある物の取材に来ていた。死体を生き返らせている者がいるんだ」と語る。彼は農場で襲われた時、RCIという刺繍の入った作業服の切れ端を発見していた。それを見せた彼が「誰か分かる人は?」と尋ねると、シェリーは「図書館の歴史学会なら記録がある」と述べた。帰宅したシェリーは、待ち伏せていたテロリストとゾンビに拉致された。深夜に悪夢で目を覚ましたランドールはシェリーに電話するが、もちろん応答は無かった。
翌朝、ジョナサンはミシェルに会い、「お爺さんはゾンビのことで真剣になってる。彼を助けなきゃ」と告げる。ランドールはシェリーの家を訪ねるが、インターホンを押しても応答が無いので立ち去った。ジョナサンはミシェルと墓地へ行き、墓を掘り起こした形跡に気付く。彼は夜になって出直し、詳細を確かめることにした。ランドールは歴史学会へ赴いて司書と話し、RCIの文字が40年前に閉鎖されたロックムーア刑務所の意味だと知る。さらに彼は、刑務所では朝早くに看守が鐘を鳴らして囚人を叩き起こしていたこと、精神科医が囚人に酷い実験を繰り返していたことを司書から聞いた。
夜になってから墓地に戻ったジョナサンとミシェルは、テロリストが鈴を鳴らしながら歩いて来るのを目撃した。2人が身を隠していると、テロリストは手首を傷付けて墓地に血を垂らした。すると地面からゾンビが出現し、テロリストの指示に従う。ジョナサンはレーザー銃を使おうとするが不発だったため、ミシェルと共に逃げ出した。翌朝、2人はカーステアーズに昨晩の件を話し、軽率な行動を注意された。ランドールはカーステアーズに電話を入れ、ロックムーア島の無人の刑務所跡にシェリーがいるはずだと告げる。カーステアーズは警察に相談するよう助言するが、ランドールは島へ行くことを決める。カーステアーズはランドールを助けるため、ジョナサンを伴って島へ向かうことにした…。

監督はサミュエル・M・シャーマン、原案&脚本はサミュエル・M・シャーマン&ブレット・パイパー、製作はダン・Q・ケニス、製作総指揮はチャールズ・ボールドウィン、製作協力はデヴィッド・ワイズマン、撮影はダグラス・メルツァー、編集はジョン・ドナルドソン、美術&衣装はルース・セイドマン、タイトル・デザイン&特殊効果はボブ・ルバー、タイトルソング&テーマ曲作曲&歌唱はジョージ・エドワード・オット、音楽プロデュースはマイク・ペニー、音楽コーディネーターはティム・フェランテ。
出演はスコット・シュウォルツ、ロバート・デヴォー、ドナ・アサリ、ボブ・アレン、ボブ・サチェッティー、ジータ・ジョハン、コリー・バート、レナード・コーマン、クリスティン・ファリッシュ、ニーノ・リガリ、バーバラ・パターソン、テックス・タートル他。


『ドラキュラ対フランケンシュタイン』など数多くのポンコツ映画を製作したインディペンデント・インターナショナル・ピクチャーズの総帥であるサミュエル・M・シャーマンが、自ら監督&原案&脚本を務めた作品。
最初は共同脚本として表記されるブレット・パイパーが撮った映画があって、そこに追加撮影シーンを加えて再編集したのが本作品らしい。
ただ、そもそも最初の時点で低予算のポンコツ映画だったのに、再編集によって原型を留めない状態に変貌し、ポンコツ度数が格段にアップしてしまったらしい。

ジョナサンをスコット・シュウォルツ、ランドールをロバート・デヴォー、シェリーをドナ・アサリ、カーステアーズをボブ・アレン、黒衣の男をボブ・サチェッティーが演じている。
もちろん出演者は無名俳優ばかりが起用されているが、そんな中でダントツに知名度があるのは司書役のジータ・ジョハン。
とは言っても「誰なんだよ、知らねえよ」とツッコミを入れたくなる人が大半だろうけど、1932年の『ミイラ再生』でヒロインを演じていた女優なのだ。
なんと悲しいことに、ジータ・ジョハンは本作品が遺作になった。

冒頭、テロリストがタンクローリーを奪うシーンが描かれる。
普通に考えれば、彼が運転手に拳銃を突き付けたら何か脅し文句を口にして、そこから「運転手が慌てる」→「テロリストが要求を出す」といった手順を踏むだろう。
しかし実際には、「テロリストの運転席の後ろから拳銃を構える」というシーンの後、カットが切り替わると彼がドアを開けてタンクローリーの助手席に乗る。そしてタンクローリーは走り出す。
この間、2人とも一言も発していないのだ。

パトカーに追われるシーンでも、普通に考えればテロリストと運転手に何か喋らせるだろう。
ところが、この映画ではテロリストも運転手も一言も喋らない。ランドールが本部に連絡するまで、台詞は全く無い。
そして工場のシーンでも、人質も含めて誰も喋らない。
たぶん、その理由は「ズブの素人ばかりを起用している」ってことにあるんだろうと推測される。
素人に台詞を喋らせるとボロが出やすいので、それを避けようとしたんだろう。

パトカーがタンクローリーを追跡していると、森でトラックが立ちはだかる。
ってことはテロリストの仲間だと思われるが、警察が彼を捕まえたり尋問したりすることは無い。そして彼がテロリストの仲間かどうかは、全く分からないままだ。
そこからシーンが切り替わると、テロリストは工場で人質を取っている。
しかし囚人の釈放を要求するために爆弾を仕掛けたかったのなら、タンクローリーを奪う必要は無い。タンクローリーに放射性物質が積んであるんだから、それ自体を取引の材料に出来るはずだし。

テロリストが立て籠もったのは核燃料工場だが、なぜか人質になっているのは事務員みたいな女性2名と男性2名。
テロリストがいる場所を見る限り、わざわざ別の場所から連行してこなきゃ不自然な服装の連中ばかりだ。いわゆる「工員」みたいな奴は1人もいない。
人質にせず解放したのかもしれないが、その4人を選んだ理由は不明。
そんなテロリストは警官にスタンガンで撃たれるが、すぐに復活する。彼は不用意に近付いてきた警官を殴り倒し、スタンガンを撃った奴にもパンチを浴びせる。
ちなみに、工場に乗り込んだ警官は2人だけ。もっと大勢で一気に攻めれば制圧できた可能性は高いが、なぜかランドールも含めて誰も応援に駆け付けない。

ジョナサンがレーザーディスクを修理していると、レーザー光線が発射されて近くにいたモルモットが死亡する。
「レーザーディスクを少年が改造していたら殺人レーザー光線銃が誕生する」という設定は、なかなかのポンコツ度数だ。
ただ、それよりも「可愛がっていたペットが死亡したのに、平気な顔のジョナサン」という描写の方が遥かに気になるぞ。
そのモルモットが、レーザー光線の威力を示すためだけに登場させられているのは分かるよ。ただ、それでも設定としてはペットのはずなのに、その冷たさは酷すぎるだろ。

記者は車を走らせている時、「何かいい記事になる物を撮りに行く」と言っている。
しかし、そんなフワッとした目的しか無いのなら、わざわざ深夜にコルター農場へ行く必要性は全く無い。
恋人が「去年、たくさんの墓が見つかった場所」と言っているので、オカルト系の写真を撮ろうとしたのかもしれない。でも、それならそれで、ちゃんと記者の口から説明させりゃいい。
「何かいい記事になる物」と、ボンヤリした表現に留めておく必要性は何も無いわけで。

建物に入った記者は、テロリストと不気味な男の2人を目撃する。もちろん我々は、不気味な男の見た目や歩き方で「こいつはゾンビ」と一発で分かる。
でも記者は、そんなことを分からないはずで。なので、何も言わず一目散に逃げ出すのは、行動として変だろう。せめて「君たちは何者だ?」とか「ここで何をしてる?」ってなことでも尋ねて、それでも返答が無かったら、「危険を察知して逃げ出す」という形でも分かるけど。
あと、外では老人に襲われるが、ここでも記者は彼がゾンビだと分からないはず。
それなのに、いきなり灯油を撒いて火を付けて殺すってのは、かなり乱暴な対応だぞ。

記者は車に戻り、窓を何度も激しく叩く。ってことはドアが開かず、恋人に何かあったのかと思いきや、カットが切り替わると記者がドアを開けている。
だったら「ドアが開いておらず、記者が窓を何度も叩く」という手順は何の意味があったのかと。
あと、ここでも記者と恋人には一言も喋らせず、「エンジンが掛からないので車を降りて物陰に隠れる」という様子を描いている。で、ここでテロリストに首を絞められた記者だが、なぜか生き延びている。
なぜテロリストが彼を殺さないのか、ゾンビが襲わないのかは全く分からん。

記者が車にはねられた時、女は駆け寄って生きているのを確認すると、病院へ運ぼうとはせず自宅に連れて行く。なぜか男も、あっという間に元気になっている。ここで2人は名を名乗り、男は「ランドール」と自己紹介する。
でもランドールって刑事だったはずだよね。どういうことだよ。
そんなランドールは、出会ったばかりのシェリーをデートに誘う。でも恋人がいたはずなのに、すっかり忘れちゃったのか。っていうか、その恋人がどうなったのか気にならないのか。なぜ警察に通報したりしないのか。ショットガンを買って身を守る前に、やるべきことは他にあるんじゃないのか。
あと、ショットガンを購入するってのは「いつゾンビが襲って来るか分からない」と考えたからだろうけど、それも変でしょ。「農場に入ったからゾンビが現れた」と考える方が腑に落ちるぞ。まあ実際には下宿にゾンビが来るんだけどさ。
ただ、そこまで来て殺そうとするぐらいなら、なぜ農場で殺さなかったんだよ。

ランドールはカーステアーズから事情を話すよう促された時、「話は3ヶ月前かに遡る」と言う。
つまり、農場での出来事は3ヶ月も前に起きている設定なのかよ。そこから下宿を借りたりショットガンを買ったりシェリーとデートしたりしている内に、3ヶ月も経過していた設定なのかよ。それは全く伝わらないぞ。
あと「3ヶ月も経ったのなら、シェリーを口説くのも分かるわ」とはならんぞ。
恋人が殺された可能性が高いのに、なんでノホホンと他の女とデートしているんだよ。せめて恋人の生死を確認しようとしろよ。

ランドールは町を出てシェリーと会った時、「ある物の取材に来ていた。死体を生き返らせている者がいるんだ」と話す。
そういうことであれば、最初から「あいつらはゾンビだ」と理解して逃げ出すのも理解できる。そして、「襲って来るかも」と警戒してショットガンを購入するのも理解できる。
でも、それなら取材に行くシーンの時点で、そういう事情を説明しておくべきだろ。
その説明を後回しにしても、何の得も無いぞ。

ランドールはシェリーがゾンビに拉致されたことを知らないはずなのに、なぜか拉致されたと確信してロックローア島へ向かう。そんな彼を1人には出来ないと考えたカーステアーズは、ジョナサンを率いて助けに向かう。
でも、その前にジョナサンの軽率な行動を注意して警察に話すよう諌めていたのに、なんで島には連れて行くんだよ。レーザー銃を持って同行するよう指示しているけど、危険な場所に子供を連れて行くなよ。
レーザー銃が使えると思ったのなら、それだけ持って行けばいいはずだろ。しかもジョナサンだけじゃなく、ミシェルまで連れて行くし。
あと、実際にレーザー銃でゾンビを倒したことがあるわけでもないのに、その性能を信頼しすぎだろ。

カーステアーズは島へ行く前に、アクストンという男に連絡して加勢を頼んでいる。
アクストンは「先生には借りがある」と言っているが、この映画では何も描かれていないので関係性は不明だ。
そして彼はカーステアーズと合流しないまま島へ行き、すぐにゾンビに囲まれて退場する。
ランドールは島でミシェルを助けるが、「ミシェルを発見し、声を掛けて連れ出す」という手順は用意されていない。
ミシェルが写り、カットが切り替わるとランドールと共に走っている。

いつの間にかテロリストがゾンビのボスのようになっているが、彼に注射を打って復活させた黒幕がいる。
映画も残り10分ぐらいになった頃、その黒幕がケイペックであることが明かされる。ほとんど伏線は無かったし、辻褄が合っていない部分もあるが、この映画に整合性や理路整然としたストーリー展開なんて物を期待するのは酷ってモノだ。
ちなみにケイペックがゾンビを増やしている理由については、何も分からない。
彼は「命の再利用をしている」と言うけど、何の説明にもなっていないからね。

(観賞日:2020年9月15日)

 

*ポンコツ映画愛護協会