『ワン・ミス・コール』:2008、アメリカ&日本&ドイツ

大学院生のシェリーは、自宅の縁側で椅子に座り、親友のレアンと電話で話していた。電話を切った後、彼女は池の近くにいる飼い猫のルナに目をやった。しばらく目を離した隙にルナが姿を消したので、シェリーは池に歩み寄った。池を覗き込んだ彼女は、向こう側から聞こえた鳴き声を耳にした。ルナがいるのを目にした直後、シェリーは池から伸びて来た腕に捕まれ、水中に引きずり込まれた。
ベス・レイモンドはルームメイトのテイラーと共にホーム・パーティーを開き、大勢の仲間たちを呼んだ。ベスはブライアンがテイラーに見とれているのに気付き、「レアンに振られて当然だわ」と呆れた。ブライアンは「男はみんなスケベなんだ」と悪びれずに言い、「俺を分析してるんだろ。話してみろよ」と告げる。そこでベスは、「まだレアンに未練があるのね。だからテイラーに近付いて嫉妬させようという魂胆なんでしょ」とブライアンの心の内を言い当てた。
シェリーの葬儀に参列していたレアンが遅れてやって来たので、ベスは彼女を連れて2階へ移動した。亡くなる直前のシェリーはおかしなことばかり話していたが、自殺するような子ではないとレアンは言う。2人が話していると、レアンの携帯電話が鳴った。その音は登録した着メロではなく、発信者はシェリーだった。レアンが不気味に思いながら画面を確認すると、3日後の月曜日の着信が残っていた。2人が留守電を聞くと、「分からないけど、気味が悪い。振り向くと、いつもそこに」というレアンの声が吹き込まれていた。そして彼女の悲鳴が上がり、そこでメッセージは切れていた。
ジャック・アンドリュース刑事は病院から連絡を受け、死後1週間以上が経過して発見された妹の遺体確認に行く。遺体を調べた彼は、口の中に入っていた赤い飴玉を発見した。月曜日、大学院で講義を受けていたレアンは窓の外に少女の姿を見る。だが、少女は幻のように姿を消した。続いて彼女は、前の席にいるベスの手を複数の虫が這っているのに気付く。だが、再び視線をやると、虫はいなかった。
レアンは図書館からの帰り道、不気味な気配を感じた。彼女は自宅でレポートを仕上げているベスに電話を掛けるが、不気味な人々の姿を目にして狼狽した。彼女は携帯の着信が月曜日の午後10時17分だったことを気にして、ベスに不安を訴えた。歩道橋にいることをリアンが伝えると、ベスは急いで彼女の元へ向かう。「変な幻覚が見えるの。不気味な人が私を見ていたり」と話しながら歩道橋を渡ろうとした彼女は、ベスの眼前で転落し、走って来た列車にひかれた。死ぬ直前、リアンは携帯電話のボタンを押していた。レアンの口からは、赤い飴玉が発見された。
水曜日、レアンの葬儀に参列したベスは、テイラーが「シェリーもレアンと同じで溺れる前に変な電話があったらしい」「シェリーには既に死んだ看護師から電話があったらしい。死んだ人からの伝言が自分の声なんだって。それが死の宣告」と話しているのを耳にした。ブライアンが苛立って「そんな話はやめろ。自分が馬鹿だと言いふらしているようなものだ」と言うと、ベスが「事実よ」と告げた。「作り話だ」と声を荒らげたブライアンは、虫が柱を這い回って消えるのを目にした。
足早にカフェへ向かったブライアンは、工事現場にいる不気味な顔の作業員を目にした。ベスがカフェまで追い掛けると、ブライアンはレアンから着信が来ていたことを明かした。ベスが留守電を聞くと、水曜日の着信としてブライアンの声が吹き込まれていた。ブライアンは明るく振る舞うが、直後に工事現場で大爆発が起き、彼の体に鉄筋が突き刺さった。ブライアンはベスの眼前で口から赤い飴玉を吐き出し、息を引き取った。彼が死んだのは、着信があった時間だった。
ベスは警察署を訪れてボイスメールのことを話すが、担当のミッキー・リー刑事は「携帯は調べた。ブライアンとレアンの携帯に伝言は無かった」と冷たく告げる。しかし「死ぬ前に電話が掛かって来た」というベスの証言に、ジャックだけは注目した。彼はベスを追い掛け、「シェリーは俺の妹から聖ルーク病院で研修を受けていた。妹はシェリーが死ぬ2日前に転落死した」と話す。「異常なのは確かだ。何か気になったら連絡してくれ」と彼は名刺を渡した。
ベスが帰宅すると差出人不明の手紙が届いており、彼女は開封せずに破り捨てた。テイラーが泣きながら座っており、「彼の携帯に私の番号がある。次はきっと私よ」と不安を吐露した。ベスは「私の番号も入ってるわ」と言い、自分とテイラーの携帯から電話を電池を抜き取って「こうすれば問題は無い」と告げた。だが、その日の深夜、テイラーの携帯から着メロが流れてきた。着信の日付は2日後の金曜日で、悲鳴を上げるテイラーの動画が受信されていた。
ベスは大学院のジュリー・コーン教授に相談するが相手にされず、テイラーは携帯を壊して捨てた。テレビ番組『アメリカの奇跡』のプロデューサーをしているテッド・サマーズはテイラーを訪ね、悪魔祓いのために番組出演するよう持ち掛けた。テッドは携帯を渡して説得するが、ベスはテイラーを連れて家に入ろうとする。その時、テッドがテイラーに渡した携帯から着メロが流れてきた。携帯を見たテッドが狼狽している間に、ベスはテイラーを連れて家に入った。
ジャックはベスの元を訪れ、「通信記録を調べたら、死んだ全員の携帯に着信があった」と言う。彼が「妹に掛けた相手を突き止めた。これから会いに行く。何かあったら連絡する」と告げると、ベスは同行を申し出た。ジャックの妹に掛けたのは、マリー・レイトンという老人ホームの看護師だった。2人は車に乗り、マリーの住むアパートへ赴く。しかしアパートの住人によると、2週間以上も戻っていないらしい。部屋に侵入して調べた2人は、マリーにエリーとローレルという2人の娘がいたことを知った。
ジャックが室内にあった吸入器を見つけると、ベスは「レアンの時もブライアンの時も吸入器の音を聞いた。でも誰もいなかった」と話す。ここ1ヶ月の死亡記録を調べると、エリーが自宅で喘息の発作を起こして死亡していることが判明した。児童保護の記録が残っており、精神科の看護師であるジャックの妹がマリーを調査したことも明らかとなった。一方、テイラーはベスの反対を押し切り、番組への出演を決めていた。ベスはテレビ局を訪れているテイラーに電話を掛けるが、留守電になっていたのでメッセージを残した。
ベスはジャックと共に、彼女の妹が残した資料を調べた。すると、ローレルが虐待の疑いが強い事故で、エリーは喘息の発作で何度も病院を訪れていることが明らかとなった。すぐにベスは、マリーが代理ミョンヒハウゼン症を患って娘たちを虐待していたのだと確信する。エリーの喘息についても、彼女はマリーが発作を起こさせたのだと推理した。ジャックはマリーが虐待の露呈を恐れ、ローレルを連れて蒸発したのだと考えた。
『アメリカの奇跡』の生放送が始まり、ベスはテイラーの出演を知った。ベスはジャックの車でテレビ局へ向かいながら、テイラーに電話を掛けた。テイラーは「きっと上手く行くわ。他に方法は無いのよ」と口にした。エクソシストのレイ・パーヴィスによる悪魔祓いが開始される中、ベスとジャックはテレビ局に到着する。2人はスタジオへ駆け込むが、テイラーは赤い飴玉を吐き出して死亡した。すぐにテッドはフィルムを確認させるが、何も映っていなかった。
ベスがテイラーの遺体に歩み寄った直後、彼女の携帯から着メロが響いて来た。彼女が携帯を確認すると、明日の日付で着信が入っていた。ジャックは上司にベスの保護を訴えるが、怪奇現象を見ていない彼には事情を信じてもらえず、「捜査はするが保護は出来ない」と却下された。ジャックはベスの腕にある傷に見つけ、「これは?」と尋ねる。ベスは彼に、幼少時代に母親から虐待されていたこと、それを知っていた父親が首吊り自殺したことを話した。
里親に預けられているローレルが見つかったという知らせを受け、ジャックはベスを連れて郊外の家を訪れた。里親は2人に、ローレルが腕に切り傷を負っていたこと、病院の火事が起きてからマリーの消息が分からなくなっていることを語った。ローレルは火事が起きてから一言も話さず、表情も失っていた。ジャックが母親のことを聞き出そうとしても、相手にされなかった。ローレルが持っているヌイグルミの腹を押すと、あの着メロの音が流れて来た。死が宣告された7時55分まで4時間を切り、ベスは焦りを募らせる…。

監督はエリック・ヴァレット、原作は秋元康、脚本はアンドリュー・クラヴァン、製作はブロデリック・ジョンソン&アンドリュー・A・コソーヴ&スコット・クルーフ&ジェニー・ルー・トゥジェンド&ローレン・C・ワイスマン、共同製作はスティーヴン・P・ウェグナー&エリザベス・カッシュマン&アリソン・ハスコヴェッチ&マンフレッド・ヘイド&ゲルト・ケクラン、製作総指揮は江川信也&ティモシー・M・バーン&マーティン・シュアーマン&ジョセフ・ローテンシュレイガー&アンドレアス・ティースマイヤー&撮影はグレン・マクファーソン、美術はローレンス・ベネット、衣装はサンドラ・ヘルナンデス、編集はスティーヴ・ミルコヴィッチ、音楽はラインホルト・ハイル&ジョニー・クリメック、音楽監修はデーヴァ・アンダーソン。
出演はシャニン・ソサモン、エド・バーンズ、アナ・クラウディア・タランコン、ミーガン・グッド、レイ・ワイズ、アズーラ・スカイ、ジョニー・ルイス、ジェイソン・ベギー、マーガレット・チョー、ローダ・グリフィス、ドーン・ディニンジャー、アリエル・ウィンター、サラ・キュービック、リーガン・ラム、カレン・ベイヤー、アラナ・ロック、デーブ・スペクター、メアリー・リン・オーウェン、ロイ・マックレリー、ローレン・ペイトン、グレッグ・コーベット、ドン・ビスコー他。


2004年の日本映画『着信アリ』をハリウッドでリメイクした作品。
『トゥルー・クライム』『サウンド・オブ・サイレンス』の原作者である小説家のアンドリュー・クラヴァンが脚色し、フランス映画『マレフィク 呪われた監獄』のエリック・ヴァレットがハリウッドに招聘されて監督を務めている。
ベスをシャニン・ソサモン、ジャックをエド・バーンズ(エドワード・バーンズ)、テイラーをアナ・クラウディア・タランコン、シェリーをミーガン・グッド、テッドをレイ・ワイズ、レアンをアズーラ・スカイ、ブライアンをジョニー・ルイス、レイをジェイソン・ベギー、ミッキーをマーガレット・チョーが演じている。アンクレジットだが、ベスの母親をローラ・ハリングが演じている。
テッドの部下のゲイリー役で、デーブ・スペクターが出演している。

そもそも、この映画のオリジナルである『着信アリ』からして、ポンコツな作品だった。
まずヒットメーカーである秋元康がジャパニーズ・ホラーのブームに乗っかって、『リング』や『呪怨』など複数のJホラーから要素を拝借して再構成した作品を生み出した。
それを映画化する際、大良美波子は「面白そうな要素を組み合わせただけであり、整合性とか巧みな伏線回収といったことには無頓着」という原作の問題点をそのまま持ち込んだ脚本を用意した。
そして、おどろおどろしさや禍々しさに興味の無い三池崇史が演出したことで、本来は雰囲気で怖がらせるべきなのに、そういう雰囲気が全く醸し出されない仕上がりになっていた。

もちろん、オリジナル版が冴えない出来栄えであったとしても、リメイク版が必ずしも駄作になるわけではない。
大幅に改変したり、演出に工夫したりすれば、オリジナル版とは見違えるような出来栄えになる可能性は充分に考えられる。
しかし残念ながら、このリメイク版はオリジナル版の欠点をそのまま踏襲してしまい、そこに「いかにもアメリカ的な欠点」までプラスされているので、どうにも救いようが無いポンコツ映画になっている。

Jホラーがハリウッドでリメイクされた場合、良く言われるのが「Jホラーの雰囲気を全く表現できていない」ということだ。
日本人の考える「怨念」や「幽霊」に対する感覚は、西洋人、特にアメリカ人にとっては、なかなか理解できないものらしい。
しかし本作品の場合、そこは全く問題が無い。前述したように、そもそもオリジナル版の三池崇史監督がJホラー的なセンスを持ち合わせていない人なので、「オリジナル版にあった雰囲気が全く出ていない」という批判は該当しない。
ただし、「だからOK」ってことではないけどね。
どっちにしても、雰囲気作りに失敗していることは確かなんだから。

この映画は、もうアヴァン・タイトルの段階で「ああ、これはダメな映画だな」と感じさせる。
それは何かというと、シェリーが池から伸びて来た腕に捕まれて溺死させられるという描写があることだ。
それによって、もう本作品は「実体を持つ悪霊的な存在が人々を次々に襲うのだ」ということを明らかにしてしまう。
犠牲者の死を「不審な死」とか「異常な死」ということで見せていき、後半に入ってから悪霊の実体を登場させるのではなく、のっけから見せてしまうというのは、ある意味では潔いが、そんな潔さは要らない。

レアン以降は「携帯電話に未来の日付で自分の声が録音され、当日になると吹き込まれていたのと同じ言葉を口にして不審死を遂げる」ということが連続するのだが、シェリーの時はそれが無い。
レアンの葬儀の時にテイラーが「シェリーにも同じことがあった」と話すので、同じパターンだったことは分かるけど、だったら後からセリフで説明するんじゃなくて、最初にそれを示しておいた方がいい。
それと、レアンやブライアンの時は「不審な事故死」に見せているのだが、冒頭で「悪霊による殺人」ってことを明確に見せているので、後から隠しても意味が無いんだよな。

妙なポイントで緊張感や不安を煽ろうとしているのも引っ掛かる。
例えばパーティーでチャイムが鳴り、ベスがドアに歩み寄るシーン。
映像がスローになり、不安を煽る効果音が流れ、意味ありげなカットが挿入される。
しかし、そこで不安を煽る意味は何も無い。むしろ、そこは普通に流せばいい。
あの流れだと、ベスに悪霊が憑依しているか、ドアの向こうに悪霊でもいなけりゃ成立しないんだけど、そうじゃないし。
その後も意味ありげなカットが何度か挿入され、後半に入って「それはベスが幼少時代に母から虐待されていたことを示すための映像」ということが明らかになるが、だから何なのかと。それって、本筋に何の関係もないし。

登場人物の行動や態度は、色々と不可解なことが多い。
レアンは親友を亡くしたばかりでショックを受けているはずなのに、パーティーの会場へ行く。ベスからするとシェリーは親友ではなかったのか、彼女が死んだ直後にパーティーを開いて盛り上がっている。
テッドは妹が死んでも全く動揺せず、まるで赤の他人であるかのように、平気な顔で遺体を調べる。「レアンの携帯に3日後の日付で彼女の声が録音されている」というのは不気味な現象だが、それを聞いたベスは全く気にせずに明るい態度を取っている。
生放送のテレビ番組で奇妙な死亡事件があったにも関わらず、警察が積極的に動く気配は微塵も無い。
ただし、登場人物のおかしな行動の大半はオリジナル版を踏襲しているので、リメイク版だけの問題ではないが。

タ「伏線を巧みに張り巡らせて回収するという作業が全く出来ていない」とか、「整合性が取れていない」とか、「後半になってコケ脅しはどんどんスケールアップするけど怖さが増すわけではない」とか、そういう問題に関しても、「オリジナル版と違って全く出来ていない」ということではない。
オリジナル版でも出来ていなかった作業だ。
ただし、これまた「オリジナル版で出来ていなかったから、リメイク版も同じことをやってOK」というわけではない。
そこはキッチリと修正し、改善すべきだろう。

オリジナル版がポンコツだったので、そのリメイク版がポンコツになるのは、当然と言えば当然のことだ。
しかし、ポンコツな状態をそのまま持ち込むのなら、なぜリメイクしたのかと言いたくなる。「日本でヒットしたから、アメリカでも受けるだろう」というヌルい考えだったんじゃないか。
Jホラーをリメイクした『ザ・リング』や『THE JUON/呪怨』がヒットしたので、何匹目かのドジョウを狙ったんだろうということは分かる。で、それを狙うのは悪いことじゃない。
でも、ただ安易に乗っかるだけで適当なことをやっちゃうと、観客はキッチリと判断する。
だから本作品はキッチリと酷評され、興行的にも成功しなかった。

(観賞日:2014年5月1日)

 

*ポンコツ映画愛護協会