『レジェンド・オブ・メキシコ/デスペラード』:2003、アメリカ

腕利きの殺し屋を捜していたCIA捜査官サンズは、メキシコの酒場で情報屋ベリーニから伝説の男エル・マリアッチを推薦される。 ベリーニは、マリアッチがマルケス将軍の恨みを買っていること、マルケスの愛人だったカロリーナがマリアッチの女になったこと、 カロリーナはマリアッチを殺そうとしたマルケスを撃ったが死ななかったことなどを語った。
マリアッチは、ある町でギター職人の老人から完成したばかりのギターを受け取り、それを弾きながら歩く。そこへ、ククイという男が 手下を連れて現われた。ククイはギター職人を射殺し、マリアッチに「会いたがっている人がいる」と告げて車で連行する。一方、麻薬王 バリーニョの邸宅に、ブラスコという男が雇用を求めてやってきた。彼はビリーという男の案内でバリーニョと会う。
ククイは、サンズが雇った男だった。サンズはククイに、マリアッチが穴から出てきたことをバリーニョに伝えるよう指示した。サンズは マリアッチに会い、ある組織が賞金を懸けていることを告げる。そして彼はマリアッチに、「クーデター未遂がある。マルケス将軍が 大統領を殺す。しかしマルケスに権力は握らせない。大統領が殺された後、マルケスを殺してくれ」と依頼した。
サンズはマリアッチに、教会へ赴いてサロメという仲間に会うよう指示した。AFNの女性捜査官アヘドレスは、大統領を護衛する任務に 志願するが上司に無視される。大統領は側近ニコラスと、バリーニョの組織がクーデターを企てていることについて話をする。大統領は 麻薬組織の壊滅を目指しているが、バリーニョは民衆に英雄視されている。
マリアッチは教会へ行き、サンズが変装した司祭に会って話をする。だが、急にサンズは教会から逃亡する。そこへバリーニョの手下たちが 現われ、マリアッチを襲撃する。サンズはマリアッチをテストするため、わざとバリーニョの組織に情報を漏らしたのだ。サンズは敵を 全て倒したマリアッチに連絡を入れ、仲間を集めて準備するよう指示した。
サンズはオープンカフェに赴き、かつてバリーニョを追っていた元FBI捜査官ラミレスと会う。すぐ近くでは、バリーニョと主治医の ゲヴァラが話している。ラミレスは、「メキシコ国民のバリーニョを、アメリカにおける犯罪で逮捕することは出来ない」と言う。サンズ はラミレスが相棒をゲヴァラの拷問で惨殺されていることを語り、彼の感情を刺激した。
マリアッチは酒場へ行き、そこで歌っている仲間ロレンソに会う。もう1人の仲間フィデオは、酒を浴びるほど飲んでマトモに動けない 状態だった。マリアッチは自分のギターを受け取り、ロレンソに「フィデオが必要だ」と告げて何とかするよう求めた。サンズはニコラス に会って大統領のスケジュールを聞き、暗殺の手引きを頼んだ。
サンズは酒場へ行ってベリーニに会い、バリーニョの情報を聞く。だが、バリーニョは勿体を付けた。ウェイトレスが酒をこぼし、サンズ が「もういい」と言っているにも関わらず、彼のインチキな義手を何度も拭いた。サンズはベリーニを射殺し、ウェイトレスも殺した。 サンズはベリーニの服を探り、バリーニョの情報が記されたメモを発見した。
サンズはアヘドレスの元を訪れ、ベリーニのメモを渡す。そして、バリーニョが大統領を殺すためマルケス将軍を雇ったこと、死者の日に クリアカンで実行するつもりだということを告げる。サンズはアヘドレスに、そのメモに書かれているネタを元にバリーニョを逮捕する よう指示し、彼がマルケスに払うつもりの200万ペソを奪う計画を説明した。
マリアッチ、ロレンソ、フィデオは下見のため、ニコラスの手引きで大統領邸に入った。大統領邸ではパーティーが催されており、3人は ギターを演奏する。マリアッチは大統領にリクエストを聞き、「マラゲーニャ」を弾いた。下見を終えたマリアッチは、ロレンソから 「どうして仕事を引き受けたのか」と聞かれ、「随分と遅くなったが、復讐のためだ」と答えた。
ラミレスはFBIの身分証を加工し、現役の捜査官に成り済まして行動することを決意した。バリーニョとゲヴァラを尾行した彼は、 サンズに連絡を入れる。そしてゲヴァラが死者の日にバリーニョの手術を実施すること、逃亡犯ビリー・チェンバーズが組織にいることを 語る。サンズは、チャンスと見たら組織に近付くようラミレスに指示した。
ラミレスはビリーに現役の捜査官と偽って接近し、2人だけで話をする。実は組織を抜けたがっていたビリーは、国外逃亡と引き換えに ラミレスへの協力を承諾する。マリアッチの前にククイが現れ、もうサンズとは切れたことを告げる。ククイは「バリーニョに知っている ことを全て話せ」と要求し、拒否したマリアッチを仲間たちに襲撃させる。マリアッチは応戦するが、ククイによって薬を塗った矢を額に 打ち込まれ、意識を失った。
ククイはマリアッチをバリーニョの元へ連れて行く。バリーニョはピアノを教えていたブラスコの態度に苛立ちを覚え、ビリーに始末を 命じる。バリーニョは自分側への寝返りを口にしたククイをビリーに絞殺させた。バリーニョ邸にマルケスが現われ、マリアッチと対面 しようとする。だが、マリアッチは朦朧とする意識の中で見張りを倒し、邸宅から逃亡した…。

監督&脚本&撮影&編集&美術&音楽はロバート・ロドリゲス、製作はエリザベス・アヴェラン&カルロス・ガラルド&ロバート・ ロドリゲス、共同製作はトニー・マーク&スー・ジェット&ラズ・マリア・ロハス、衣装はグラシエラ・メイゾン。
出演はアントニオ・バンデラス、サルマ・ハエック、ジョニー・デップ、 ウィレム・デフォー、ルーベン・ブラデス、ミッキー・ローク、エヴァ・メンデス、ダニー・トレホ、エンリケ・イグレシアス、マルコ・ レオナルディー、チーチ・マリン、フリオ・オスカー・メチョソ、 ゲラード・ヴィジル、ペドロ・アルメンダリス、ティト・ラリヴァ、ミゲル・クチュリエ、トニー・ヴァルデス他。


『エル・マリアッチ』『デスペラード』に続き、ギターを持った伝説のガンマンが活躍する“エル・マリアッチ”シリーズ第3作。
ただし1作目と2作目ではマリアッチが違う(1作目では本作品のプロデューサーを務めるカルロス・ガラルドが演じていた)。
セルジオ・レオーネ作品から拝借した「Once Upon a Time in Mexico」という原題を提案したのは、ロバート・ロドリゲスの盟友であるクエンティン ・タランティーノ。エンドロールでは、スペシャル・サンクスとして彼の名が表示される。
劇中で使用される曲の中には、アントニオ・バンデラス、ジョニー・デップ、ルーベン・ブラデスが作ったものが1曲ずつ含まれている。
また、「マラゲーニャ」演奏でギターを弾いているのはブライアン・セッツァー。公開されたのは2003年だが、撮影は2001年に行われて いる。ロバート・ロドリゲスは、この映画を最後にWGA(アメリカ脚本家組合)を脱退している。

マリアッチをアントニオ・バンデラス、カロリーナをサルマ・ハエック、サンズをジョニー・デップ、バリーニョをウィレム・デフォー、 ラミレスをルーベン・ブラデス、ビリーをミッキー・ローク、アヘドレスをエヴァ・メンデス、ククイをダニー・トレホ、ロレンソを エンリケ・イグレシアス、フィデオをマルコ・レオナルディー、ベリーニをチーチ・マリン、ニコラスをフリオ・オスカー・メチョソ、 マルケスをゲラード・ヴィジル、大統領をペドロ・アルメンダリスが演じている。
前作と同じ役で続投しているのは、アントニオ・バンデラスとサルマ・ハエックのみ。
ダニー・トレホ、チーチ・マリン、ティト・ラリヴァ(タクシー運転手役)は前作にも出演していたが、役柄が異なっている。
マリアッチの仲間が2人なので前作のカンパとキーノが復活するのかと思ったら、全く違っていたし(まあ前作で死んでるんだけどさ)。

続編と書いたが、話としての繋がりは全く考えなくていい。
フィルムではなくHigh-Definition digital video撮影なので、冒頭では「a Robert Rodriguez flick」と表示される(filmでなくflickとなっている)。
ロバート・ロドリゲスは監督と脚本だけじゃなく、複数の作業を一人でこなしている。
ちなみに撮影は「director of photography」ではなく「shot」、編集は「edited」ではなく「chopped」と表記される。

見終わって最初に頭に浮かんだ言葉は、「ロバート・ロドリゲス監督、ただ大金を使って好き放題にアクションがやりたかっただけだろ」 というものだった。
この人、物語のイメージは全く固まっていなかったんじゃないの。
そもそもロバート・ロドリゲスの脚本って大雑把だけど、それにしてもテキトーすぎるだろ。もっとシンプルな復讐劇にすりゃ良かったのに。
それを、金目当てのCIA、復讐に燃える元FBI、麻薬組織、逃亡犯、AFN捜査官など色々な要素を盛り込みすぎて、手に負えなくなってるじゃん。

マリアッチの過去を回想するシーンが何度も入るけど、これは1つにまとめた方が良かったと思う。
回想の複数回に渡る挿入は、話を無駄にややこしくしている要因の1つだ。
1つにまとめることによって、ヒロインであるはずのサルマ・ハエックの出番は減るけど、そもそも彼女のスケジュールの都合で撮影されたシーンが少ないんだし(『フリーダ』と撮影時期が 重なったため)。

日本で公開された時に、まるでジョニー・デップ主演作のように宣伝されていたという記憶があるが、もちろんエル・マリアッチ、つまり アントニオ・バンデラスの主演作である。
ただし映画を見ると、本当にジョニー・デップが主役のような扱いになっていた。
もちろん本人が独特の存在感を発揮しているということもあるが(しかも志願して司祭としての出番まで増やしてもらってるし)、シナリオや演出と して、マリアッチよりもサンズの方がメインの如き扱いになっているのだ。
しかし裏を返せば、サンズが本作品のバランスを壊している元凶だと言ってもいい。彼が関わるところで、裏切りやら策謀やら複雑な人間関係やらが渦巻いているのだ。
そして、サンズを中心とする絵図において、マリアッチは単なる駒の1つでしかない。しかも主戦場 から遠く離れた場所で、裏切りや策謀とは全く関係無しに動いているのだ。
終盤なんて、政府側とクーデター軍の戦闘になってしまうので、マリアッチの個人的な復讐は影が薄くなっちゃってるし。

話は「全くチンプンカンプンでワケが分からない」というほどでもないが、そこまで複雑に入り組んだ構造にしても、プラスの効果はゼロ だろう。
マリアッチの立場から見ると、「殺しの依頼を受けて、標的が愛するカロリーナを殺したマルケスだったので承諾し、仲間と共に 行動する」ということで、話は単純だ。
そして、この映画は「アクの強いキャラクターと荒唐無稽なアクション」が売りのはずで(そして売りにすべきで)、話はシンプルに した方が面白くなっただろうに。

ウィレム・デフォー、ルーベン・ブラデス、ミッキー・ローク、エヴァ・メンデスなど、多くの俳優が贅沢な使われ方をしている。
まあハッキリ言えば、「もっと無名の役者でもいいんじゃねえか」というのが正直な感想。出番は少ないし、扱いも小さいし。
いや、役者が云々という以前に、そもそもキャラとして、登場させる必要性さえそんなに感じないぞ。
マリアッチの仲間2人にしても、前作の「急に登場してすぐ役目は終了」のカンパとキーノより出番は遥かに多いけど、印象は薄いなあ。

結果的に、これって日本公開時の宣伝が大正解で、完全にジョニー・デップのための映画になってんのよね。
終盤、両目をバリーニョに奪われ、少年の手助けで銃を装備し、傷付きながらも敵の声を頼りに戦うシーンなんて、明らかにマリアッチ よりサンズの方が扱いが上じゃん。
サンズがバリバリに存在感を発揮する一方で、マリアッチは単なる大統領の護衛役みたいになってるじゃん。
あとギター無しで普通に銃を撃つシーンが何度も出てくるので、もはや主人公がマリアッチ(メキシコの楽団)である意味が無いぞ。

 

*ポンコツ映画愛護協会