『ルル・オン・ザ・ブリッジ』:1998、アメリカ

ジャズ・サックス奏者のイジーは、ニューヨークのクラブで演奏中、銃を持って乱入してきた男の発砲事件に巻き込まれる。何とか一命は取り留めたイジーだったが、片方の肺を失ったことで、2度とサックスが吹けない体になってしまった。
唯一の生きがいを失ったイジーは、まるで抜け殻のようになってしまった。そんなある夜、彼は道端にスタンリー・マーという男の死体が転がっているのを発見する。イジーは男の近くにあったカバンを持ち帰ってしまう。
家に戻ったイジーは、カバンの中を開けてみる。そこには、電話番号を記したナプキンと小箱が入っていた。箱の中には、何の変哲も無い石が入っていた。しかし、その石は部屋を暗くすると青い光を放ち、空中に浮かび上がった。
翌日、イジーはナプキンに書かれていた番号に電話を掛ける。電話に出たのは、ちょうどイジーのCDを聞いていた駆け出しの女優セリアだった。イジーはセリアに出会い、そして2人は愛し合うようになった。
セリアは『パンドラの箱』という映画の主役ルルのオーディションを受けることになった。映画の製作者フィリップと監督のキャサリンは、いずれもイジーの友人だった。イジーの口添えもあり、セリアはルル役を射止めることができた。
セリアは撮影のため、アイルランドのダブリンに向かった。後から行くつもりだったイジーだが、謎の男達に襲われて監禁される。そしてイジーはヴァン・ホーン博士と名乗る男から、不思議な石のことについて尋問される…。

監督&脚本はポール・オースター、製作はピーター・ニューマン&グレッグ・ジョンソン&エイミー・カウフマン、製作協力はメリッサ・チェスマン、製作総指揮はシャロン・ハレル&ジェーン・バークレイ&アイラ・デュッチマン、撮影はエイリック・サカロフ、編集はティム・スクイレス、美術はカリーナ・イワノフ、音楽はグレアム・レヴェル、音楽監修はスーザン・ジェイコブズ。
出演はハーヴェイ・カイテル、ミラ・ソルヴィーノ、ウィレム・デフォー、ジーナ・ガーション、マンディ・パティンキン、ヴァネッサ・レッドグレイヴ、ドン・バイロン、リチャード・エドソン、ヴィクター・アーゴ、ケヴィン・コリガン、ハロルド・ペリヌー、デヴィッド・バーン、ルー・リード他。


小説家のポール・オースターが、自身の原作を脚本化し、監督を務めた作品。
彼は自分の原作を映画化した『スモーク』という作品でウェイン・ワンと一緒に共同監督としてクレジットされており、これが単独としては初監督となる。

タイトルにある“ルル”とは、トーキー初期の人気女優ルイーズ・ブルックスが、G・W・パプスト監督のドイツ映画に主演した時の役名。
“ブリッジ”とは、アイルランドのダブリンにある橋のこと。
ただし、監督曰く「タイトルに深い意味はない」らしい。

イジーをハーヴェイ・カイテル、セリアをミラ・ソルヴィーノ、ヴァン・ホーン博士をウィレム・デフォー、ハナをジーナ・ガーション、フィリップをマンディ・パティンキン、キャサリンをヴァネッサ・レッドグレイヴが演じている。
他に、セリアの出演作品を彼女とイジーが見るシーンで、「笑う男」という映画の相手役として元トーキング・ヘッズのデヴィッド・バーン、“ルー・リードのソックリさん”としてルー・リードが顔を見せている。

メインとなるのはイジーとセリアのラブストーリーなのだろうが、この2人が惹かれ合うに至る流れが不自然極まりない。
「光る石があったから恋に落ちました」という形になっているが、そこの不自然さをカバーするような演出は無い。

ハッキリ言って、作品はひどく退屈だ。
平凡な風景の中に、小さなファンタジーが入ってくるのだが、このファンタジーが現実の風景に上手く溶け込んでいない。
サスペンス風味もあるのだが、そこも中途半端で締まりが無い。
演出も凡庸である。

 

*ポンコツ映画愛護協会