『ロード・オブ・セイラム』:2012、アメリカ&イギリス&カナダ

1696年、ジョン・ホーソーン判事はマーガレット・モーガンと6人の魔女たちがセイラム郊外の森で集会を開いていることを知り、必ず阻止することを日記を記した。マーガレットと仲間のアビゲイル・ヘネシー、クロヴィス・ヘイルズ、サラ・イースター、メアリー・ウェブスター、エリザベス・ジェイコブズ、マーサ・ビショップは森に集まり、悪魔を呼び出す儀式を執り行った。彼女たちは服を脱ぎ、邪悪な詠唱を炎に捧げた。
[月曜日]
現代のボストン。ハイジ・ラロックはアパートで目を覚まし、愛犬のトロイに挨拶した。廊下に出た彼女は、空き部屋だった5号室に誰かが入るのを目にした。ハイジは新しい入居者だと思って声を掛けるが、相手は無視して部屋に入った。ハイジが大家のレイシー・ドイルに尋ねると、5号室は空き部屋のままだという。「絶対に人がいたわ」とハイジが言うので、レイシーは「有り得ないと思うけど、調べておくわ」と告げた。
ハイジはラジオ局のWIQZでハードロック専門番組のDJを務めており、同僚のハーマン・“ホワイティー”・サルヴァドール&ハーマン・ジャクソンとトリオを組んでいる。このチームは、ボストン情報誌の投票で1位に輝く人気トリオだ。その夜のバンド「リバイアサン」のカウント・ゴルガーンをゲストに迎えた放送でも、いつものように3人はノリノリで喋り、音楽を流した。生放送を終えたハイジは、受付係の女性から木箱が届いていることを教えられる。中にはレコードが入っており、演奏者は「ザ・ロード」と書かれていた。
ハイジはホワイティーを連れてアパートに戻り、木箱のレコードを聴いてみることにしたホワイティーがレコードを掛けようとすると、針が上手く乗らなかった。しかしハイジが交代すると、すぐにレコードの音源が流れ始めた。その演奏を聴いたハイジの脳内には、魔女の1人が出産し、モーガンが「我らは失敗した」と赤ん坊を殺害する映像が飛び込んで来た。ホワイティーがレコードを止めると、ハイジは元の状態に戻った。ホワイティーを宿泊させたハイジは、浴室に魔女の悪霊がいることに気付かなかった。
[火曜日]
ハイジは薬物依存症から抜け出すため、グループセラピーに参加した。夜、ハイジはラジオ局へ出勤し、『セイラム魔女裁判の真実』という著書を出版した作家のフランシス・マサイアスをゲストに迎える。マサイアスは魔女裁判で25人が殺されたことを語り、「魔術は妄想がもたらした産物だ。思い込みだよ」と言う。ハイジがザ・ロードのレコードを掛けようとすると、ホワイティーが「この辺りの連中だろ。ザ・ロード・オブ・セイラムだ」と紹介する。演奏が流れるとハイジは頭痛を訴え、ブース内の音を消してもらった。
マサイアスはレコードの入手経路に興味を持ち、質問されたハイジは自分宛てに届いたことを話した。帰宅したマサイアスは、妻で画家のアリスに「放送を聴いたか」と尋ねる。アリスは絵を描きながら、「もちろんよ。録音したわ」と答えた。マサイアスは番組で流れた曲について、「何か引っ掛かる。特にバンド名が気になる。どこかで聞いたぞ」と口にした。アパートへ戻ったハイジは、レイシーに「妹たちを紹介するわ」と言われる。ハイジがレイシーの部屋を覗くと、彼女の妹であるメーガンとサニーが「いいワインがあるの。パーティーしましょう」と誘った。ハイジは既に酔っ払っている彼女たちの誘いを承諾し、「トロイにエサをあげてからね」と言う。
自分が暮らす2号室に入ったハイジは明かりを付けるが、キッチンの隅に魔女がいることには気付かなかった。1階に戻ったハイジは、レイシーと妹たちの飲み会に参加する。ハイジは手相を見るのが得意だというメーガンに占ってもらうが、「淫らな考えが股間から溢れている。魂に潜む邪悪が、貴方の存在する唯一の理由」と言われる。ハイジは2号室へ戻るが、トロイが廊下へ出てしまう。ハイジは5号室の前で吠えているトロイを見つけ、部屋に連れ帰った。振り向いたハイジは、5号室のドアが勝手に開閉するのを目にした。
気になったハイジが5号室に入ると、赤いネオンで作られた十字架が壁に飾られていた。ハイジは両手を掲げ、じっと十字架を見つめた。ハイジが部屋を出るとモーガンが現れ、「我らの周りには、人をたぶらかすアバズレが集まっている。お前は我らに与えられたナイフの刃。お前を使って、セイラムの娼婦たちを切り刻むのだ。我らのために王を産むのだ」と語り掛けた。「我らに王を与えよ」というモーガンの叫び声が響くと、ハイジはベッドで目を覚ました。
[水曜日]
ハイジは教会を訪れ、神父に声を掛ける。理由は分からないが来たくなったのだとハイジが言うと、神父は「いつでも神は耳を傾けて下さいます」と優しく告げる。しかしハイジが去ろうとすると、神父は彼女を捕まえて「天国での戦争が起きていることを理解すべきだ。お前は汚れている。悪魔の正札。神はお前を救えない。救えるのは私だけだ。悪の化身である山羊に身を捧げてはいけない。神が何をして下さったのか、お前は理解すべきだ」と語って血を吐いた。しかし、それは転寝していたハイジの夢であり、目を覚ました彼女に神父は「どうしたんです?」と怪訝そうな表情で告げた。
教会を出たハイジの前に山羊を連れた男が現れ、「お前を待っていた」と言う。しかし再び視線をやると、男は消えていた。マサイアスは本棚から一冊の本を取り出し、1696年の魔女裁判について調べた。モーガンたちは捕まり、ジョンは火あぶりの刑を宣告した。マサイアスはジョンが魔女たちを「ザ・ロード・オブ・セイラム」と読んでいたことを知り、日記に書かれていた楽譜をアリシアにピアノで弾いてもらう。すると、それはザ・ロードの楽曲と全く同じメロディーだった。ハイジが生放送中のブースに入ると、ハーマンはザ・ロードがセイラムで無料ライブを開催することを発表した。ハーマンがレコードを掛けると、ハイジは魔女の儀式の幻影を見た。気分が悪くなったハイジは、ブースを出て行った。
[木曜日]
マサイアスは魔女裁判の本を執筆したAJ・ケネディーと会い、ザ・ロードというバンドのことを話す。彼がジョンの日記についての詳細を尋ねると、ケネディーは「モーガンは処刑の最中、セイラムの女たちに呪いを掛けた。末代まで女の子孫に呪いを。そしてホーソンの子孫を、この世を引き継ぐ悪魔を宿す器と呼んだ」と語った。ハイジはホワイティーの家を訪れるが、突如として吐血した。3名の白衣の怪人が出現してホワイティーを始末し、ハイジを取り押さえた。彼らはハイジの腹を切り裂き、怪物の赤ん坊を腹から引きずり出した。そこでハイジが悪夢から目を覚ますと、アパートの5号室にいた。
[金曜日]
ハイジが売人から購入した麻薬に溺れていると、お茶会の用意をしたレイシーと妹たちが部屋にやって来た。マサイアスはハイジについて調べ、本名がホーソーンだと知った。ネットで家系図を検索した彼は、ハイジがジョン・ホーソーンの子孫であることを知った。レイシーたちは意識が朦朧としているハイジを眠らせ、マサイアスから電話が掛かると「番号が違うわ」と切ってしまった。レイシーたちはトロイを浴室に閉じ込め、ハイジを車椅子に乗せる。3人は悪魔に祈りを捧げ、ハイジを5号室に連れて行く…。

脚本&監督はロブ・ゾンビ、製作はロブ・ゾンビ&ジェイソン・ブラム&アンディー・グールド&オーレン・ペリ、製作総指揮はブライアン・カヴァナー=ジョーンズ&スティーヴン・シュナイダー、製作協力はジャネット・ヴォルトゥルノ=ブリル&リック・A・オーサコ&ジェシカ・ホール&ベイリー・コンウェイ&ジェレミー・プラット&サラ・マーティン・マッキヴァー、撮影はブランドン・トロスト、美術はジェニファー・スペンス、編集はグレン・ガーランド、衣装はリア・バトラー、特殊メイクアップ効果はウェイン・トス、音楽はジョン・5&グリフィン・ボイス、音楽監修はトム・ローランド。
出演はシェリ・ムーン・ゾンビ、ブルース・デイヴィソン、ジェフ・ダニエル・フィリップス、メグ・フォスター、ジュディー・ギーソン、ケン・フォリー、パトリシア・クイン、ディー・ウォーレス、マリア・コンチータ・アロンゾ、リチャード・ファンシー、アンドリュー・プライン、マイケル・ベリーマン、シド・ヘイグ、ボニータ・フリーデリシー、ナンシー・リネハン・チャールズ、フロー・ローレンス、ブリン・ホロックス、スザンヌ・ヴォス、スーザン・グレイ他。


『マーダー・ライド・ショー』『ハロウィン』のロブ・ゾンビが脚本&監督&製作を務めた作品。
ハイジ役は妻のシェリ・ムーン・ゾンビ。
マサイアスをブルース・デイヴィソン、ホワイティーをジェフ・ダニエル・フィリップス、マーガレットをメグ・フォスター、レイシーをジュディー・ギーソン、ハーマンをケン・フォリー、メーガンをパトリシア・クイン、サニーをディー・ウォーレス、アリスをマリア・コンチータ・アロンゾが演じている。
アンクレジットだが、劇中劇の主人公カルロをクリント・ハワード、魔女ハンターをウド・キアー、司祭をリチャード・リンチが演じている。

この映画にストーリーやドラマとしての面白味を期待しても、全くの無駄である。
それは場末のスナックに、若くて美人のホステスを期待するようなモノだ。
しかし場末のスナックでも、まるで期待せずに入れば「意外に悪くないな」と思える店に当たることもあるだろう。
それと似たようなモノで、この映画も最初からストーリーやドラマ部分に期待しなければ、それなりに楽しめる可能性は充分にあるだろう(それにしても、この例えは本当に合っているんだろうか)。

一言で表現するならば、これは「ロブ・ゾンビの、ロブ・ゾンビによる、ロブ・ゾンビのための映画」である。
ロブ・ゾンビが描きたい映像だけを撮影し、やりたいことだけをやったら、こういうシロモノが出来上がったわけだ。
考えてみれば、ロブ・ゾンビの監督デビュー作である『マーダー・ライド・ショー』だって、プロットはモロに『悪魔のいけにえ』をなぞっているだけで、中身は「残酷殺人ショー」をヌルく見せているだけだった。
リメイク版『ハロウィン』と続編『ハロウィン II』ではストーリーテリングへの意識も見られたが、それが良く出来ていたのかというと、まあ違うわけで。

この映画はストーリーやドラマを度外視して、とにかく「ロブ・ゾンビの大好きな幻想怪奇の世界へようこそ」という映像だけを堪能するってのが適した観賞方法と言えるだろう。
ドラッグ・ムービー的なモノだから、そこにドップリと浸からないと、どうにもならない。
『悪魔のいけにえ』をなぞった『マーダー・ライド・ショー』やリメイク版『ハロウィン』などと違って、ロブ・ゾンビが完全オリジナルで脚本を作っており、まさに彼の集大成的な作品と言っていいだろう。

ただし困ったことに、ストーリーテリングへの意識が全く無いのかというと、そうじゃないのよね。
上述した粗筋で曜日が書いてあるが、一応は「少しずつ恐怖をエスカレートさせ、次第に悪魔の儀式への準備が進んでいく」というストーリーを綴っているのだ。
しかし残念なことに、そのストーリーが面白くないのだ。むしろ、完全にストーリーテリングを放棄して、もっとイカれたシュールな幻想怪奇の映像を好き勝手に羅列してくれた方が、トリップすることは出来たかもしれない。
「ストーリー?ドラマ?それって美味しいの?」という具合にして、「環境映像の悪趣味バージョン」みたいな感じに構築してくれた方が、そっち方面と割り切れば楽しめたかもしれない。

「それを言っちゃあ、おしめえよ」なんだろうけど、ヒロインの訴求力が著しく弱い。
そりゃあロブ・ゾンビからすれば、自分の奥さんだから、シェリ・ムーン・ゾンビはミューズってことなんだろう。
だけど一般の観客からすると、明らかにヒロインとしては弱いわけで。1970年生まれだから、決して若くないし。そこを、もっと若くて美人でエロエロなネーチャンでも起用していれば、間違いなく訴求力は上がっていたはずで。
ハイジは悪魔の生贄として捧げられる女なんだから、そこは「若くて美人の処女」というキャラにでもしておけばいいだろうに。眼鏡を掛けて普通に仕事をしている時よりも、不気味な白塗りメイクを施されてヨハネ・クラウザーII世(『デトロイト・メタル・シティ』)の出来損ないみたいになった時の方がよっぽど似合っているってのは、どう考えてもマズいだろ。
あと、ちょっと気になるのは、ロブ・ゾンビが「訴求力を度外視してもワイフを使いたい」と思っていたのか、「ワイフにはヒロインとしての魅力がある」と思っていたのかってことなんだけど、どうなんだろうね。

なぜハイジがザ・ロードのレコードをラジオ局で掛けようとしたのか、その理由がサッパリ分からない。
「幻覚を見たから」ってのは、何の説明にもならない。むしろ幻覚を見て怖い思いをしたのなら、避けたがるはずで。
「どうしても掛けたくなる」という力が備わっているようには全く思えないのよ。
そう感じさせる描写が用意されていないもんだから。ホワイティーは退屈な音楽だと言っていたから、まるで興味は無かったはずだし、だから彼が率先して掛けたとも思えない。

水曜日になると、ハーマンはザ・ロードの無料ライブが開かれることを番組で嬉しそうに発表する。
だけど、ザ・ロードって無名のバンドなんでしょ。それなのに、そんなことを告知してやる理由は何なのかと。
リスナーの中で話題になっているとか、問い合わせが殺到しているとか、そういうことなら分かるけど、そんな反響は全く描かれていないし。
無名バンドから退屈なレコードが送られてきたはずなのに、いつの間にか大注目の人気バンドみたいな扱いになっているのは、どういうことなのかと。

マサイアスは番組で流れた曲について、「何か引っ掛かる。特にバンド名が気になる。どこかで聞いたぞ」と口にする。
だけど、「ザ・ロード・オブ・セイラム」ってのは、ホワイティーが勝手に言い出したバンド名でしょ。レコードには「ザ・ロード」としか書かれていなかったはずだ。
だから、そこを気にしても、本質に到達することは、本来なら有り得ないはずなのだ。
だけど実際は本質に到達してしまうわけで、だったらホワイティーが勝手に名付けたバンド名ってのはマズいでしょ。ちゃんとレコードにバンド名として記されている形にしておかないとマズいでしょ。

土曜日、ホワイティーがハイジを心配し、アパートまで迎えに行くのは理解できる。
しかし、心配しているなら、なぜ「一緒にザ・ロードのライヴを見に行こう」と誘うのかが分からない。
ホワイティーはハイジがザ・ロードの曲を聴いてヤバい状況になるのを見ているはずでしょ。だったら、なぜザ・ロードの曲を聴かせない方がいいとは思わないのか。
あらかじめ用意された段取りを進めるために、キャラがボンクラになり過ぎているわ。

最初の内は、「たまに不気味な魔女の悪霊が写る」というショッカー演出で怖がらせようとしている。
しかしハイジは全く気付かないので、「スクリーミング・クイーンの怖がる様子を見せて、観客を怖がらせる」というホラー映画の定番は使われていない。おまけに、「映像が切り替わったり明かりが付いたりすると、魔女が画面に出現する」というコケ脅しも、そんなに多くないのよね。
で、魔女のコケ脅しの後に「5号室のドアが勝手に開閉するのをハイジが目にする」ってのを見せられるんだけど、何の恐怖も不安も煽られないよ。
ハイジが怪奇現象を目撃するのは初めてだろうけど、こっちはドアの開閉どころか不気味な魔女の悪霊を見ているわけで。

それ以外だと、ハイジが幻覚を見るシーンが何度も挿入されている。そこは一応、恐怖を煽ろうという意識が見て取れる。
で、そういう部分をもっと増やして、完全に「ワケの分からん幻想奇譚」まで振り切ってしまえば、まあ多くの観客から敬遠されることは確実だけど、一部のマニアに喜ばれるカルト映画になる可能性はあったかなと。
皮肉なことに、それなりに分かりやすくするためのストーリーテリングをしたことが、どっちにも振り切れない中途半端な仕上がりに繋がったんじゃないかと思ったり。
トリップ感覚の強い映像が続くのって、最後だけなんだよね。

ともあれ、「ロブ・ゾンビの世界観が大好き」という熱狂的なファンなら、文句無しに楽しめるはずだ(まあ当たり前っちゃあ当たり前だけど)。
ただし、『マーダー・ライド・ショー』やリメイク版『ハロウィン』が好きなら無条件で楽しめるのかというと、そこは微妙なトコロだ。
それらの作品と比べても、かなりロブ・ゾンビ臭はクドく出ているからだ。
ロブ・ゾンビ原理主義者じゃないと、なかなか厳しいモノはあるかもしれない。

そう考えると、ものすごく対象の狭い映画ってことは言える。
果たしてロブ・ゾンビの熱狂的なファンだけで充分な儲けが出せるのかと考えると、ちょっと難しいんじゃないかと思うわけで。
実際、これって250万ドルしか製作費を使っていない低予算映画なんだけど、それでもアメリカ国内の興行収入は116万ドルちょっとしか稼げていないから、それだけだと赤字なのよね。
オープニングは355館で封切だったけど3週目には50館、4週目には15館まで一気に減っているわけで、お世辞にも興行的に成功したとは言い難い。

(観賞日:2016年2月10日)

 

*ポンコツ映画愛護協会