『リジー・マグワイア・ムービー』:2003、アメリカ

リジー・マグワイアは中学の卒業式を迎え、朝から服装選びに没頭する。弟のマットが盗撮していることを、彼女は全く気付かなかった。学校へ赴いたリジーは、エスコバル校長から卒業生代表のスピーチを頼まれる。委員長のマーガレットが休んだので、代役を頼まれたのだ。父のサムや母のジョーたちが心配そうに見つめる中、リジーは壇上に立った。緊張した彼女は転びそうになり、慌てて緞帳を掴んだ。そのせいで緞帳が落ちて来て、大騒ぎになった。マットが撮影してテレビ局に送ったため、その様子は全国放送された。
リジーは同じ高校へ進学する親友のゴードや同級生のイーサンたちと共に、2週間のローマ旅行へ出掛けることになった。高校の校長であるミス・アンガーメイヤーが、一行の引率役を担当する。アンガーメイヤーはルールに厳しい教師で、おべっかを使うゴードに嫌味を浴びせた。いじめっ子のケイトが別のコースを選んだので、リジーは安心していた。だが、そのケイトが同じコースに来てしまったので、リジーはため息をついた。
ローマのホテルに到着すると、アンガーメイヤーは副支配人のジョルジオを紹介し、勝手な行動を取らないよう生徒たちに釘を刺した。部屋割りが発表され、ゴードはイーサンと同室になった。リジーは最も恐れていたケイトと同室になってしまった。リジーはバルコニーでゴードと2人になり、「もうケイトに邪魔される人生は嫌。ローマで一緒に冒険しようよ。一からやり直す。やりたいことに挑戦してみたいの」と話した。
翌日、一行は街へ繰り出し、アンガーメイヤーが観光スポットを説明した。トレビの泉を訪れた時、リジーはパオロという現地の青年から「イザベラ?」と声を掛けられた。人違いだと気付いた彼は、「ごめん、知り合いに良く似てたものだから」と謝った。ボディーガードのセルゲイから「行きましょう」と言われ、パオロはその場を去った。しかしリジーがバスに戻ろうとすると、パオロは再び声を掛けて来た。近くにいた人々はパオロとリジーに気付き、写真撮影を求めて来た。近くにいた新聞記者も2人を撮影した。
近くのビルを見上げたリジーは、大看板にパオロと少女が写っているのを目にした。その少女とリジーは、髪の色が黒か金色かという以外は、まるで瓜二つだった。驚くリジーに、パオロは「あれがイザベルだ。僕らはデュエットのパートナーなんだ」と説明した。パオロから「また明日、会ってくれないか」と誘われたリジーは、彼に好意を抱きながらも「学校の旅行だから抜け出せないの」と断った。するとパオロは「気が変わったら、明日の朝9時、トレビの泉で待ってるから」と告げた。
ホテルに戻ったリジーは、パオロからの誘いについてゴードに相談する。ゴードは行きたがっているリジーの気持ちを汲み、協力することにした。彼はリジーに、熱が出てベッドで寝込んでいる芝居をするよう助言した。アンガーメイヤーはリジーが体調不良だと信じ込み、彼女をホテルに残して他の生徒たちの引率に向かった。リジーはホテルを抜け出し、トレビの泉でパオロと会った。パオロはスクーターを用意しており、リジーを後ろに乗せてローマの街を走った。セルゲイは警護のため、車で追走した。
マットはネットでローマの様子をチェックし、友人のメリーナと話す。マットはリジーの映像をテレビ局に送り付けて恥をかかせたことで満足していたが、メリーナは「金にならなきゃ意味が無いのよ」と告げた。パオロはリジーに、路線変更をイザベラに持ち掛けて断られたこと、それが原因で解散を決めたことを語った。しかし国際ミュージック・ビデオ・アワードの授賞式では、2人揃ってプレゼンターを務めることになっている。イザベラが出演を拒否したため、レコード会社は彼女を訴えようとしているのだとパオロは話した。
パオロはリジーに、自分は歌が心から溢れて来るが、イザベラは口パクだと打ち明けた。そして、イザベラのためにも、それは内緒にしてほしいと頼んだ。それから彼は、「イザベラの代役として授賞式に出席してほしいけど、そんな身勝手なことは頼めないよ」と述べた。リジーはイザベラの代役を引き受けた。ホテルに戻ったリジーは代役を引き受けたことをゴードに話し、パオロを褒めちぎった。
ネットのニュースを見ていたマットは、リジーがイザベラと間違えられている記事を発見した。それを知らされたメリーナは、リジーの失敗を撮影した映像ファイルをイタリアの新聞社に送り付け、金を稼ごうとマットに持ち掛けた。リジーは翌日も体調不良を装ってツアーを休み、パオロと会った。パオロはリジーに「イザベラの衣装を選ぼう」と言い、ファッション・デザイナーのフランカを訪ねた。
リジーがステージに立つことへの不安を吐露すると、パオロは「僕だって不安はある。でもイザベラは恐怖を克服して強くなった。例えば、フランカの言いなりにならず、自分で衣装を選んだ」と彼女に話す。リジーはフランカに、強い口調で「私は着せ替え人形じゃない。衣装は自分で決めるわ」と述べた。衣装選びを終えて外に出たリジーは、近くに来ているツアーの面々を目撃した。慌ててホテルに戻った彼女は、間一髪でベッドに潜り込んだ。
ケイトはリジーがオシャレしてベッドに潜り込んでいるのに気付き、外出していたことを見抜いた。何をしていたのか話すよう要求されたリジーは、全てを白状した。リジーがアンガーメイヤーには内緒にしてほしいと頼むと、ケイトは了承した。ゴードが部屋に来て、リジーの写真がイザベラとして表紙に掲載されている雑誌を見せた。その雑誌には、パオロ&イザベラが受賞式で歌うと書かれていた。
ゴードは「受賞式で歌うのは何か月も前に決まっているはず。それを君に話さないなんて、パオロは何か隠してる」と言うが、リジーはパオロを擁護した。ゴードは「僕よりも会ったばかりの奴を信じるのなら、勝手にすればいいさ」と告げ、部屋を出て行った。マットは両親の前で、「お姉ちゃんがいなくて寂しい」と嘘泣きの演技を見せた。彼の狙い通り、両親は3人でイタリアへ行くと決めた。
パオロが車で迎えに来たので、リジーはホテルを抜け出した。リジーから「受賞式で歌うの?」と問われたパオロは、屈託のな無い笑顔で「そうだよ」と答えた。彼は「イザベラのノドが痛くて出られないと嘘をついてキャンセルしていた。でも君の写真が雑誌に出て、それが嘘だということになった。レコード会社から、歌わないと訴えると言われた」と語った。「歌なんて無理」と不安を漏らすリジーに、彼は「心配ない、僕が教えてあげるから」と告げた。
リジーが「もしもイザベラが受賞式のことを知って、ヘソを曲げたらどうするの?」と尋ねると、パオロは「大丈夫だよ、彼女は気分転換でどこかの島へ行っているから」と述べた。彼が「君に恥をかかせたりしない。約束するよ」と優しく言うので、リジーは彼を信じた。翌日、リジーがホテルを抜け出した後、アンガーマイヤーが彼女の部屋に行こうとする。ゴードは慌てて行かせないようにしようとするが、アンガーマイヤーがリジーが仮病を使ってホテルを抜け出していると睨んでいた。そこでゴードは「抜け出していたのは僕です」とリジーを庇い、そのせいで帰国を命じられてしまった…。

監督はジム・フォール、キャラクター創作はテリー・ミンスキー、脚本はスーザン・エステル・ジャンセン&エド・デクター&ジョン・J・ストラウス、製作はスタン・ロゴー、共同製作はスーザン・エステル・ジャンセン、製作総指揮はデヴィッド・ローセル&テリー・ミンスキー、撮影はジャージー・ジーリンスキー、編集はマージー・グッドスピード、美術はダグラス・ヒギンス、衣装はモニク・プルドーム&デヴィッド・ロビンソン、音楽はクリフ・エデルマン、音楽監修はエリオット・ルーリー。
主演はヒラリー・ダフ、共演はアダム・ランバーグ、ロバート・キャラダイン、ハリー・トッド、ジェイク・トーマス、ヤニ・ゲルマン、アレックス・ボースタイン、クレイトン・スナイダー、アシュリー・ブリロールト、ブレンダン・ケリー、カーリー・シュローダー、ダニエル・エスコバル、ジョディー・ラシコット、ピーター・ケラミス、テラ・C・マクラウド、アレッサンドロ・カヴァリエリ、パオロ・ジョヴァヌッチ、リカルド・マリノ他。


アメリカのディズニー・チャンネルで2001年から2004年まで放送されたTVドラマ『リジー&Lizzie』の劇場版。
リジー役のヒラリー・ダフ、ゴード役のアダム・ランバーグ、サム役のロバート・キャラダイン、ジョー役のハリー・トッド、マット役のジェイク・トーマスは、TVシリーズのレギュラー。
イーサン役のクレイトン・スナイダー、ケイト役のアシュリー・ブリロールト、メリーナ役のカーリー・シュローダー、エスコバル役のダニエル・エスコバルは、TVシリーズの準レギュラー。
パオロをヤニ・ゲルマン、アンガーメイヤーをアレックス・ボースタイン、セルゲイをブレンダン・ケリーが演じている。

TVシリーズは見ていないが、ちょっと調べてみると、どうやら映画版では異なった描かれ方をしている2人の登場人物がいるようだ。
それはケイトとメリーナで、ケイトに関しては、この映画を見ているだけでもTVシリーズとの違いが分かる。
それについては後述するとして、メリーナについては、この映画ではマットに「リジーの映像を新聞社に売って金儲けの同時にしろ」と吹き込む邪悪なキャラだが、TVシリーズでは良い子だったらしい。
そこを変えるのはダメなんじゃないか。
どうしてシリーズのファンを裏切るようなことを平気でやるんだろう。
TVシリーズのファンが、そんな意外性を求めているとは思えないのだが。

それよりも「TVシリーズのファンを裏切っている」と感じる点が他にもあって、それはTVシリーズのレギュラーだったメリンダが登場しないこと。
メキシコ旅行に出掛けているという設定で、今回は1シーンも登場しない。
オファーを出さなかったわけではなく、演じていたラレインが断ったとか、スケジュールが合わなかったとか、仕方のない事情があったのかもしれない。
ただ、そこはきっとTVシリーズのファンからすると、かなり残念に感じるポイントじゃないだろうか。

TVドラマのスペシャル版や映画版で、主な舞台となる場所を移すことで変化を付けたり、外国でロケをすることでスケール感を出したりするのは、良くある手だ。
ただ、外国でロケをするという手口が上手く行ったケースってのは、すぐには思い浮かばない。
それはきっと、外国でロケをしたことだけで製作サイドが満足してしまい、肝心の話の中身が冴えない状態になってしまうからではないだろうか。

この映画も、その失敗をやらかしている。
ツアーの面々が観光スポットを巡ったり、リジーがパオロと一緒にローマの街を巡ったりするシーンは、明らかに観光映画としての描写だ(それにしても、パオロがヴェスパにリジーを乗せて街を走るという描写を見ると、いかに『ローマの休日』が影響力の大きい映画なのかってことが良く分かる)。
「観光映画」というだけでなく、「リジーが瓜二つの別人と誤解されて、その人に成り済ます」「ヒロインが1人2役を演じる」という要素はあるが、いずれもオールド・ファッションドな要素だ。
それがすべて悪いとは言わないが、そこで思考停止しているのはマズい。1950年代や1960年代の映画じゃないんだから。

パオロ&イザベラは街に大きな看板が出てような人気スターで、パオロがバスに乗ろうとするリジーに声を掛けた時には、気付いたファンが押し寄せて写真撮影を求めている。
そんなスターなのに、パオロは「トレビの泉で」と待ち合わせ場所を指定する。
大丈夫なのかと思っていたら、リジーが行った時、彼はファンに騒がれることも無く、普通に待っている。
観光客ばかりで現地の人が少ないから、何の問題も無いということなんだろうか。

その後、パオロとリジーは数日間に渡って様々な場所を訪れるのだが、どこへ行ってもファンに気付かれたり騒がれたりすることは無い。
スクーターで移動している時はバレないのも分かるが、歩いている時も、まるで気付かれていない。
ところが、リジーがイザベラとして振る舞うことへの自信を持ち、フランカの元を去って外に出ると、途端にファンが押し寄せてサインを求めて来る。
なんだよ、その無茶がありまくりの御都合主義は。

ゴードはリジーの無断外出がバレないよう、アンガーメイヤーが彼女とパオロを見てしまいそうな状況になった時には、彼女に話し掛けて何とか視線を逸らしている。
フランカの店を出たリジーにケイトがビデオを向けそうになった時には、その前に立って妨害している。
だが、そのシーンの直後、ホテルに戻ったケイトはリジーが外出していたことに気付く。そしてリジーは何があったか話すよう求められて、あっさりと打ち明けている。
そうなると、ゴードの苦労は台無しだ。

作劇としても、そこでゴードの行動を無意味にしてしまうのは、ダメなんじゃないかと感じる。彼の努力が無駄になったことを笑いにしているならともかく、そうじゃないんだし。
それと、リジーがケイトから何があったのか喋るよう求められ、あっさりと白状しているのも解せない。たぶんパオロとの関係を自慢したかったってことなんだろうけど、ケイトがアンガーメイヤーに報告してしまう可能性も充分に考えられるわけで。
ところが、今回のケイトは、なぜか秘密にすることを了承するんだよね。なんで急に味方になるのかと。
そこも無理のある御都合主義にしか思えないぞ。

リジーはゴードが自分の身代わりで帰国を命じられたと知り、アンガーメイヤーに全て白状しようと考える。
しかしケイトから「ゴードの好意が台無しになる」と説得されると、イザベラの代役として授賞式に参加することを決める。
その時にリジーは「ケイトは正しいことを言ってる」と心で言うのだが、そう受け止めてゴードを犠牲にしたまま授賞式に参加するのは、ただの厚顔無恥にしか思えないぞ。

パオロがリジーに代役を依頼したのは、イザベルを陥れるためだ。授賞式の本番で急に口パク用のテープを止め、素人のリジーに下手な歌を歌わせることによって、イザベルの評判を落とそうとしたのだ。
だけど、その前の練習の時に、パオロはリジーが上手く歌うのを耳にしている。
だったら、その時点で「作戦は失敗だ」と思うのが普通じゃないだろうか。
なんで、そのまま作戦を決行しているのか。

それと、「パオロの罠を知ったイザベラが逆転の方法を考え、その罠を知って困っているリジーを助ける」という展開も、物語の作り方としても無理があるんだよね。
だって、リジーは普通に上手く歌えるんだから。
その証拠に、イザベラが会場で姿を隠したまま歌ってパオロの策略を暴露した後、彼女はリジーを紹介し、2人で歌っている。その後には、リジーがソロで堂々と歌う展開まであるのだ。
だから「リジーは歌が素人だから、それをバオロが利用して罠を仕掛ける」ということにするなら、そこは「罠を仕掛けたはずなのに、いざ本番でテープを止めたらリジーが見事に歌い上げたのでパオロの作戦は大失敗に終わる」という展開にしなきゃ筋が通らないよ。

(観賞日:2013年12月8日)

 

*ポンコツ映画愛護協会