『私だけのハッピー・エンディング』:2011、アメリカ

30歳のマーリー・コーベットはルイジアナ州ニューオーリンズの広告代理店に勤務するキャリア・ウーマンだ。彼女は結婚や出産に全く夢や願望を持っておらず、自由気ままな独身生活を謳歌している。その日、前夜に飲み過ぎたマーリーは寝坊し、飼い犬であるスタンリーの散歩を同じアパートに住むピーターに任せて出勤する。プレゼン会議に出席したマーリーは、コンドーム会社の仕事をゲットした。その夜、彼女は同僚のサラや友人のレネ、その夫であるトーマスたちと共に、馴染みのバーで大いに盛り上がる。レネにはキャミーという幼い娘がいるが、妊娠したことを発表した。
マーリーはセックスフレンドのダグに電話を掛け、部屋に連れ込んで激しいセックスに興じた。しかし真剣な付き合いを求めるダグに、彼女は「私は嫌よ」と告げた。レネはマーリーの昇進祝いに写真立てをプレゼントし、恋人の写真を飾るよう促す。しかしマーリーは軽く笑い飛ばした。サラから「顔色が悪いわよ。健康診断は受けてる?」と言われたマーリーは、「健康番組なら見てるわ」と告げた。
マーリーは病院を訪れ、ジュリアン・ゴールドスタイン医師の検診を受けた。軽口を叩きながら診察を受けていたマーリーだが、左脇腹を揉まれると強い痛みに見舞われた。ジュリアンはマーリーに、さらに詳しい検診を受けるよう勧めた。麻酔で眠り込んだマーリーは神様と出会い、「貴方は死ぬの」と宣告された。しかしマーリーは「ちょっとストレスが溜まってるだけよ」と言い、本気にしなかった。
神様に「願い事を3つ言ってみて」と言われたマーリーは、「空を飛びたい」「百万ドルが欲しい」という2つの願いを立て続けに告げる。神様は「税金で百万ドルの半分は持って行かれる」と説明した上で、その2つを叶えることを約束した。3つ目の願いでマーリーは悩むが、「何が欲しいのか分からない」と口にした。すると神様は穏やかな口調で、「違うわ、認めたくないだけ。自分の心を真っ直ぐに見つめれば分かるわ」と告げた。
友人たちと楽しく会食している最中、マーリーは唐突に「私、大腸癌なの」と言い出した。彼女は友人たちに、「なぜ大腸癌なのか」とジュリアンに尋ねた時のことを語る。ジュリアンは正直に、「分からない」と答えた。末期癌治療の第一人者であるサンダース教授に相談することを考えているというジュリアンに、「悪い箇所をさっさと取っちゃえばいいじゃない」とマーリーは言う。するとジュリアンは、癌が既に大腸全体へと広がっていることを説明し、「もう手術は不可能だ」と口にした。
動揺を隠せないマーリーに、ジュリアンは「君の選択肢は2つ。直ちに治療を開始するか、死ぬかだ」と現実を突き付けた。マーリーは彼の言い方に腹を立て、「患者に対して死ぬという言葉は禁句よ。この後も待っている患者に死を宣告するのなら、もうちょっと思いやりを持つことね」と告げて病室を後にした。マーリーは母のビヴァリーと父のジャックに電話を掛け、レストランで病気のことを打ち明けた。「最先端の治療を受けさせる。金なら幾らでも出す」とジャックが言うと、ビヴァリーは「何でも金で解決しようとする。娘に必要なのは愛とサポートよ」と声を荒らげ、別居している2人は言い争いを始めた。
マーリーは会社に病気のことを明かさず、上司のロブには「感染症なので自宅で仕事をする」と嘘をついた。会社の人間で病気のことを明かしたのはサラだけだ。サラとドライブ中、ラジオ番組の懸賞に応募したマーリーは、ハンググライダーの一日乗り放題チケットを当てた。病院を訪れたマーリーは、ジュリアンを見つけて声を掛ける。明るく喋るマーリーに、彼は「化学療法が怖いのかい?」と問う。「そんなんじゃないわ」と否定したマーリーは、順番が来て看護婦に呼ばれた。
マーリーがバーでレネと会うと、お腹がすっかり大きくなっていた。医者から順調だと言われているレネだが、マーリーに気遣いを示す。「気にしないで。私の主治医の方が絶対に可愛いし」と、マーリーは明るく告げた。「今は治療に専念すべきじゃない?」とレネが言うと、マーリーは「セックスも両方やりたい」と軽口を叩く。レネは「お願いだから、一度ぐらいは真面目に聞いてよ」と口にした。
散歩に出掛けたマーリーは、バーでジュリアンと遭遇した。「軽く食事でもどう?」とマーリーが誘うと、「患者さんと食事はマズい」と一度は断ったジュリアンだが、結局は応じることにした。仕事一筋で恋人もいないというジュリアンに、マーリーは「仕事だけじゃ私は満足できない」と話す。「じゃあ君はなぜ恋人がいないの?」と問われた彼女は、「男友達がいれば充分」と言う。ジュリアンは「答えになってない。君って冗談ばかり言うけど、本心は絶対に明かさないんだね」と笑いながら述べた。
ビヴァリーはマーリーの世話をするため、マーリーの近所に引っ越した。本当は一緒に暮らして面倒を見たいが、犬アレルギーなので無理だった。「力になりたいのよ」とビヴァリーは言い、食事を作ったり栄養療法の専門家に会うことを勧めたりする。しかしマーリーは、「来てくれただけで充分よ」と告げる。マーリーはジュリアンの紹介で、サンダースと会った。サンダースは彼女に、化学療法の効果が出なかったことを告げた。
ジュリアンはマーリーに、臨床試験で患部に注射を打つ他の治療法を提案した。するとサンダースは、副作用が酷いこと、確実に癌が治るとは限らないことを補足した。マーリーは臨床試験を受けることを決め、ジャックに電話を掛ける。考え直すよう求めるジャックに腹を立てたマーリーは、途中で電話を切った。新しい治療法を開始したマーリーは、ロブに病気のことを打ち明けた。ロブは彼女に、会社の団体保険を申請すれば百万ドルを前払いしてもらえることを教えた。
マーリーはビヴァリー、レネ、サラ、ピーターと共に、百貨店へ買い物に出掛ける。レネは「疲れちゃった。帰って休むわ」とマーリーに告げ、先に帰ることにした。彼女はマーリーのいない場所で、サラとピーターに「マーリーは病気よ。明るく振る舞おうとしたけど無理。せっかくの楽しい時間を台無しにしたくないから、帰るわ」と泣きそうな表情で述べた。マーリーは「綺麗な服を着れば前向きになれる」と言う母に腹を立て、「もっと現実を見てよ。ステーキを食べて高い服を着れば癌が治るとでも思うの」と怒鳴った。
百貨店を出た直後、マーリーは脱水症状で苦痛に見舞われる。病院に運ばれたマーリーは、ジュリアンに「この治療って耐えるだけの価値がある?」と質問した。注射を打ってもらったマーリーが病院を去ろうとすると、追い掛けて来たジュリアンは「今度の土曜日、患者のための資金集めのパーティーがあるんだ。一緒に行かないか」と誘った。ピーターは食欲が減退して元気が無さそうなマーリーのために、ヴィニーという小人のエスコート・サービスを派遣した。
マーリーは「有り難いけど遠慮しておくわ」とヴィニーに言うが、彼が二度死に掛けていることや、その時に見た光景について語ると、サービスを受けることにした。マーリーはヴィニーとカード遊びで盛り上がり、恋愛の話題になって「癌だから誰かに恋焦がれてもらう資格なんて無い。いい出会いも無いし」と言う。するとヴィニーは、「アンタは心を閉ざしてる。本気になって傷付くのが死ぬより怖い」と告げる。マーリーが「気になってる人に誘われたの」と明かすと、彼は「きっとデートらしくなるさ」と述べた。
パーティーに出席したマーリーは、ジュリアンと楽しく話す。マーリーが席を外している間に、ジュリアンはサンダースから彼女が治療を中止したことを聞かされた。サンダースは彼に、「治療のことも含め、医者の君よりも彼女の方が冷静なようだな」と告げる。「僕は彼女を救いたいだけです。医師の務めですから」とジュリアンが言うと、サンダースは「患者とは一線を引きなさい。それが君のためでもある。軽率なことはするな」と諭した。
マーリーはジュリアンから「抜け出さないか」と言われ、「面白い場所に連れてってあげるわ」と告げる。マーリーが路地裏のクラブへ連れて行くと、大勢のドラッグ・クイーンや店の雰囲気にジュリアンは戸惑った。マーリーは音楽に合わせて激しく踊り、ジュリアンも誘った。帰り道、マーリーが「神様を信じる?」と訊くと、ジュリアンは「医師としてはノーだけど、個人としては何とも言えない」と答えた。マーリーは「信じてる人が羨ましい。独りじゃないって確信してるから。恐れの無い人生って素晴らしいわ」と述べた。2人は熱いキスを交わし、そしてベッドを共にした。
マーリーは治療をやめたことをジュリアンに明かし、その理由として「毎日を大切にしたいから」と告げた。ジュリアンはマーリーの選択を尊重し、彼女とデートする日々を過ごす。しかし「レネの生き方が羨ましい」というサラの言葉を聞いたマーリーは、寂しそうな表情を浮かべる。早朝、マーリーはジュリアンのベッドを抜け出した。自宅に戻ったマーリーは、心配するビヴァリーに苛立ちをぶつけた。マーリーがキャミーを連れて動物園へ出掛けていると、ジュリアンがやって来た。「今朝はどうしたの」と訊く彼に、マーリーは「何だか眠れなくて」と答える。「どうして?」という質問に、「忘れたの?私、死ぬのよ」とマーリーは言う。「それなのに僕は力になれなくて。でも君は、もっと素直に怒ったりすべきだ」とジュリアンが口にすると、マーリーは「悪いけど、今はどう生きるべきかなんて聞く気分じゃないの」と告げる。
「怖いだろうけど、それは当然だ」と言うジュリアンに、マーリーは不機嫌そうな態度で「医者が担当患者と寝るのも普通?楽しかったわ。それで充分でしょ」と述べる。「もう過去形なのか」とジュリアンが言うと、彼女は「だって、もうすぐ私が過去の存在になるのよ」と涙ぐむ。ジュリアンは「愛してる。僕らの気持ちは通じ合ってる。僕は本気だ」と言うが、マーリーは「でも私は窒息しそうなの。もう放っておいて」と拒絶する…。

監督はニコール・カッセル、脚本はグレン・ウェルズ、製作はジョン・デイヴィス&アダム・シュローダー&マーク・ギル&ロバート・カッツ、共同製作はグレン・ウェルズ&イアン・ウォーターメイアー、製作総指揮はニール・サッカー&マイケル・ゴーゲン&マイケル・J・ウィザリル&スコット・ブライト、撮影はラッセル・カーペンター、編集はスティーヴン・A・ロッター、美術はスチュアート・ワーツェル、衣装はアン・ロス、音楽はエイトル・ペレイラ、音楽監修はジョジョ・ビジャヌエヴァ&リベカ・トゥーマ、オリジナル・ソングはアイヴァン・ネヴィル。
出演はケイト・ハドソン、ガエル・ガルシア・ベルナル、キャシー・ベイツ、ウーピー・ゴールドバーグ、ローズマリー・デウィット、ルーシー・パンチ、ロマニー・マルコ、トリート・ウィリアムズ、アラン・デイル、ヨハン・アーブ、スティーヴン・ウェバー、ピーター・ディンクレイジ、ジェイソン・デイヴィス、ベイリー・ベース、シャーロット・ベース、ブレット・ライス、モーリーン・A・ブレナン、ドナ・デュプランティア、ジャクリーン・C・フレミング、ジェームズ・ヘバート他。


『NINE』『キラー・インサイド・ミー』のケイト・ハドソンと、『バベル』『ジュリエットからの手紙』のガエル・ガルシア・ベルナルが共演した作品。
監督はTVシリーズ『コールドケース3』『クローザー』などの演出を手掛けたニコール・カッセルで、これが映画は2作目。
脚本のグレン・ウェルズは、これがデビュー作品。
マーリーをケイト・ハドソン、ジュリアンをガエル・ガルシア・ベルナル、ビヴァリーをキャシー・ベイツ、神様をウーピー・ゴールドバーグ、レネをローズマリー・デウィット、サラをルーシー・パンチ、ピーターをロマニー・マルコ、ジャックをトリート・ウィリアムズが演じている。

詳しい検査が始まった途端に画面が切り替わり、マーリーは雲の上にいて神様と出会う。
マーリーは「嘘でしょ」と笑いながら言うけど、こっちこそ「嘘でしょ」と言いたくなった。
しかも神様役がウーピー・ゴールドバーグときたもんだ。
コメディーとしてやっているのかと思ったのだが、そうじゃないんだよな。
これが純然たるコメディーなら、そこで安易&唐突に神様を登場させるセンスも、ウーピーを配置するセンスも余裕でOKなのよ。
ただ、そうじゃないってことになると、ちとマズいかなと。

しかし、もっとマズいのは、そこで神様を登場させて「貴方は死ぬの」と宣告させちゃうこと。
医者から宣告される前に、そこで死の宣告をしちゃうのかよ。
マーリーは軽く受け流しているけど、観客にはその段階で「マーリーが病気で死ぬ」ってことはハッキリする。それって、決して得策とは思えないんだよな。
百歩譲って神様を登場させるのを受け入れるとしても、なんで死の宣告をさせちゃうのかねえ。

麻酔で眠りに落ちたマーリーが夢の中で神様と出会っているわけだから、その神様は「彼女の深層心理が生み出した存在」と解釈することも出来る。
特に、3つ目の願いについて「認めたくないだけ。自分の心を真っ直ぐに見つめれば分かるわ」と話している辺りは、そういうことを窺わせる。
ところが、深層心理が生み出した存在だと解釈した場合、「貴方は死ぬ」とい宣告が引っ掛かる。深層心理で自分の死を予感しているってことになるからだ。
そうなると、「なんで自分の死を予感しているんだよ」という疑問が生じるのだ。

そうなると、深層心理が生み出した存在ではなく、本物の神様と解釈せざるを得ない。
そこは「その可能性もある」ということではなくて、神様が「貴方は死ぬ」と宣告した段階で、そっちの選択肢しか残っていない。
しかし、本物の神様ということになると、今度は前述した「そこで安易&唐突に神様を登場させるセンスってどうなのよ」ってのが引っ掛かってしまう。
そこだけが明らかに異質なモノになっており、すっかり浮き上がっているので、「そこを排除した方がまとまりがいいのに」と思ってしまう。

その後にジュリアンから実際に病気の宣告を受けるシーンがあるのかと思いきや、マーリーが友人たちと会食している席で唐突に「私、大腸癌なの」と言い出す。
で、そこから回想として、「なぜ大腸癌なのか」とマーリーがジュリアンに質問した時の様子が挿入される。
いやいや、なんで病気を宣告された時のシーンを省略しているんだよ。宣告された瞬間のマーリーのリアクションって、ものすごく大事だろうに。
その後の動揺は描かれているけど、宣告された瞬間の表情を見せない意味が分からん。

マーリーをどういうキャラクターとして描きたいのか、どういう方向性で描きたいのかは良く分かる。
「何事に対しても真剣に向き合わず、本心を隠して生きている。病気を宣告されてからも冗談を飛ばしたりして明るく振る舞っているが、実際は不安や恐怖や動揺があって、時折、それが苛立ちの態度として表現される」という風に描こうとしているのも良く分かる。
そして、それはある程度、狙い通りに表現されているという風にも感じる。
ただし問題なのは、「それよりも恋愛要素がデカくなっちゃう」ってことだ。

「あんなキュートな医者が登場するのはアンタの人生と昼メロだけ」というサラの言葉があるが、まさにその通りで、ジュリアンみたいな若いイケメン医師が担当になるってのは非現実的だが、それは全く気にならない。
そこは映画の嘘として、余裕を持って受け入れられる。
ただ、向こうの方からマーリーに恋愛感情を抱き、アプローチしてくるってのが、「そこまでやっちゃうとなあ」と思ってしまう。
それは映画の虚構として受け入れられるラインを、超えちゃってる感じなんだよなあ。

しかし実のところ、この映画における大きな問題点は、「ジュリアンの方からマーリーに惚れる」という展開にあるのではない。
恋愛劇を持ち込み、それを物語の軸に据えることによって、「今までは傷付くことを恐れて何事に対しても真剣に向き合わなかったマーリーが、癌を患って初めて自分の生き方を見つめ直す」という筋道がボンヤリしてしまうってことなのだ。
本来なら、それを描かなきゃいけないはず。
ところがジュリアンとの恋愛劇が大きく扱われることによって、すっかりピントがズレてしまうのだ。

ジュリアンとの恋愛劇が開始されなければ、この映画は「マーリーの考え方や生き方が病気によって変化する」という話だ。
しかし恋愛劇が軸に配置されると、「マーリーの考え方や生き方がジュリアンとの出会いによって変化する」ということになってしまう。
そうなると、「じゃあ病気の要素って要らなくねえか」と思ってしまう。
病気の要素を排除して、「今までは傷付くことを恐れて何事に対しても真剣に向き合わなかったヒロインが、ジュリアンと出会って初めて本気の恋を知り、考え方や生き方が変化する」という恋愛劇として構築した方が、スッキリするんじゃないかと思ってしまうぞ。

おまけに、実は「マーリーの考え方や生き方がジュリアンとの出会いによって変化する」というのも上手く描写できていないんだよな。
神様の力を借りないと、マーリーは心を開かない。ジュリアンに対して拒絶する態度を示したマーリーは神様に「問題は彼の気持ちじゃなくて貴方の気持ち。戻って伝えなさい」と諭され、ようやく素直になるのだ。
あと、実はヴィニーもマーリーの考え方に影響を与えている。
ヴィニーは1シーン、神様は2シーンしか登場しないが、そういうキャラに重要な役回りを任せるってのはどうなのよ。ジュリアンや友人たちを、マーリーが本心を明かすきっかけとして使ってあげるべきじゃないのか。

もう1つの問題として、ジュリアンにまるで魅力を感じないってことがある。
そりゃあ見た目はイケメンだけど、それしか無い。中身が伴っていない。医者として、患者であるマーリーへの思いやりが薄い。マーリーが明るく振る舞っているけど本当は怖がっているとか、痛みと戦っているとか、そういうことへの気配りが全く感じられない。
もちろん、腫れ物でも扱うかのような過剰な気遣いは、むしろマーリーにとって迷惑なだけかもしれない。
しかし、これまで多くの患者と接してきたはずなんだから、その辺りのサジ加減は分かるはずでしょ。
分からないならヤブ医者だよ。

ジュリアンはマーリーをパーティーに誘うが、それも「主治医として、末期癌患者をデートに誘うのは果たしてどうなんだろう」というところに何の迷いも無いのが引っ掛かる。まるで普通の男女のように考えているんだけど、それは違うんじゃないかと。
そりゃあ「末期癌患者であっても女性は女性」という意味で、普通の女性に対するのと同じように接するってことなら分かるのよ。彼女の恐れや不安を全て理解した上で、それを和らげてあげよう、取り除いてあげようとしているなら分かるのよ。
でも、そういうことじゃなくて、単に深く考えていない軽率な行動にしか受け取れないんだよな。
サンダースが「患者とは一線を引きなさい。軽率なことはするな」と説教するけど、それが正しいと思えてしまうのはマズいでしょ。

マーリーが傷付くことを恐れて周囲の人間と真剣に向き合うことを避ける生き方を選んだのは、両親の不仲を見ていたことが原因だ。
だったら、「マーリーが両親と向き合って心の内を互いにさらけ出し、両親に対するわだかまりが解けて、それによって周囲の仲間たちにも素直な気持ちで本心を吐露し、たくさんの愛に包まれていることを認識し、死を受け入れることが出来ました」という筋書きにすべきじゃないのか。
つまり両親との関係を軸に据えるべきじゃないのか。
どう考えても、恋愛がメインってのはバランスが悪いよ。

(観賞日:2014年8月23日)

 

*ポンコツ映画愛護協会