『レジェンド・オブ・ゾロ』:2005、アメリカ

1850年、スペイン領だったカリフォルニアでは、アメリカ合衆国31番目の州になるか否かを決める住民投票が実施されていた。投票箱が ライリー知事の元へ届けられようとした時、悪漢マクギブンスの一味が現れた。彼らは投票を妨害し、カリフォルニアがアメリカ合衆国の 州になることを阻止しようとしているのだ。一味が暴れているところへ、黒マスクの英雄ゾロが現れた。
マクギブンスたちが投票箱を奪って逃走したため、ゾロは後を追った。ゾロは格闘の末、マクギブンスから投票箱を奪い返した。マスクを 奪われて素顔が露わになったため、彼はマントを破いてマスクを手作りした。だが、アレハンドロ・デ・ラ・ベガとしての姿を、物陰から 2人の男たちがこっそり覗き見ていた。ゾロは愛馬トルネードに跨り、投票箱をライリー知事の元へ届けた。
人々のために戦ったアレハンドロは、妻エレナと息子ホアキンが待つ我が家へ戻った。アレハンドロはエレナに、ゾロを引退すると約束 していた。しかし帰宅した彼は、「カリフォルニアが正式な州と認められるまでの3ヶ月間は政情が不安だ」と告げ、それまではゾロを 続けたいと切り出した。エレナは家族を大事にするよう求め、アレハンドロを責めた。2人は言い争いになり、エレナは「出て行くなら 帰ってこないで」と言い放つ。売り言葉に買い言葉で、アレハンドロは家を出た。
翌日、外出したエレナは、2人の男たちに尾行されていると気付いた。それは、ゾロの正体を覗き見ていた連中だった。エレナは路地で 待ち伏せ、2人を叩きのめそうとする。しかし銃を向けられ、協力するよう要求された。一方、仲間たちと一緒にいるアレハンドロの元へ、 エレナの代理として弁護士のゲンドラーが現れた。彼はアレハンドロに、離婚手続き申立書を手渡した。
3ヶ月後、メイドの世話を受けながら自堕落に過ごしているアレハンドロは、友人フェリペ神父の強引な誘いを受け、ワイナリーで開催 されるパーティーへ赴いた。フランスから来たアルマン伯爵が買い取ったのだという。アルマンが同伴者としてエレナをパーティー客に 紹介したため、アレハンドロは驚いた。アレハンドロは悪酔いし、アルマンとエレナに絡んで煙たがられた。会場を後にしたアレハンドロ は、アルマンのシャトー近くで大規模な爆発を目撃した。
翌日、アレハンドロはマクギブンス一味が友人ギエルモの農場へ向かったとの情報を聞き、ゾロへと変身して急行する。一味はギエルモの 妻に剣を突き付け、土地の権利書を渡せと脅迫した。そこへ駆け付けたゾロは一味と戦い、ギエルモと妻も武器を手に立ち向かう。ゾロは 燃え盛る納屋から妻を救い出したが、マクギブンスはギエルモは殺害して権利書を奪い去ってしまった。
エレナは例の2人組に伝書鳩を飛ばし、アルマン邸で彼と夕食を取ることを伝えた。2人組は、用が済めばエレナを使い捨てにするつもり だった。エレナは化粧室へ行くと嘘をついて席を外し、邸宅を探る。一方、ゾロも密かに邸宅へと侵入し、アルマンが鉄道を敷く計画を 進めていると知った。マクギブンスが邸宅を訪れ、アルマンに権利書を渡した。
アルマンはマクギブンスに、マデラスの入り江に来る荷物を運ぶこと、あと2日で鉄道を仕上げることを命じた。その様子を、ゾロは覗き 見ていた。一方、エレナはアルマンの部屋を調べ、彼が爆発実験の報告を受けていたことを突き止めた。バルコニーに出たゾロとエレナは、 鉢合わせして驚いた。アルマンが来たため、ゾロは慌てて身を隠した。アルマンはエレナにプロポーズした。
ホアキンはフェリペ神父に連れられ、他の子供たちと共にベア・ポイントの見学に訪れた。そこへマクギブンス一味が現れたため、ホアキン は馬の腹にしがみ付いて隠れ、彼らの行動を調べようとする。ホアキンは一味に捕まるが、ゾロが現れて救い出した。一味が運んでいた箱 には石鹸が入っており、蓋には紋章が刻まれていた。ゾロはフェリペに紋章の意味を聞き、アルマンが秘密結社“アラゴン騎士団”の一員 だと知った。アラゴン騎士団の面々は、アメリカ合衆国を滅ぼそうと企んでいたのだ。
町を歩いていたアレハンドロは注射で眠らされ、ある家に監禁される。犯人は例の2人組だった。彼らはピンカートン探偵社のパイクと ハリガンで、アメリカ政府の指名を受けて動いていた。2人はアルマンを調査したかったが、正式に併合されるまでは権限が無い。そこで アルマンの身辺を探るために魅力的な女性を使って油断させようと考え、エレナをスパイとして使うことにしたのだ。彼らはゾロの正体を バラすと脅し、エレナをアレハンドロと離婚させてアルマンの元へ送り込んでいた。
パイクとハリガンはアルマンがヨーロッパの仲間に発信した電信文を傍受し、彼が最新兵器を開発しているとの情報を得ていた。その兵器 の正体を探るため、エレナは調査を進めていた。それが終わるまで、彼らは邪魔なアレハンドロを閉じ込めておくつもりなのだ。ホアキン の協力で脱出したアレハンドロは、秘密結社の会合場所に潜入しているエレナと合流した。アルマンがマクギブンスに運ばせていた石鹸は 、そこからグリセリンを抽出して化合し、ニトログリセリンを製造するためのものだった…。

監督はマーティン・キャンベル、キャラクター創作はジョンストン・マッカリー、原案はロベルト・オーチー&アレックス・カーツマン& テッド・エリオット&テリー・ロッシオ、脚本はロベルト・オーチー&アレックス・カーツマン、製作はローリー・マクドナルド& ウォルター・F・パークス&ロイド・フィリップス、共同製作はジョン・ガーツ&マーク・ハイムズ&エイミー・レイド・ロスコー、 製作総指揮はゲイリー・バーバー&ロジャー・バーンバウム&スティーヴン・スピルバーグ、撮影はフィル・メヒュー、編集は スチュアート・ベアード、美術はセシリア・モンティエル、衣装はグラシエラ・マゾン、音楽はジェームズ・ホーナー。
出演はアントニオ・バンデラス、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、ルーファス・シーウェル、ニック・チンランド、アドリアン・アロンソ、 ペドロ・アルメンダリス、ジュリオ・オスカー・メチョソ、シュラー・ヘンズリー、マイケル・エマーソン、グスターボ・サンチェス・ パッラ、トニー・アメンドーラ、レオ・バーメスター、ラウル・メンデス、フィリップ・メヒュー、ジョヴァンナ・ザカリアス、 アレクサ・ベネデッティー、マー・カーレラ、アルベルト・レイエス、マリー・クロスビー他。


1998年の映画『マスク・オブ・ゾロ』の続編。
前作から10年後の物語。
アレハンドロ役のアントニオ・バンデラス、エレナ役のキャサリン・ゼタ=ジョーンズは引き続いて出演し、監督もマーティン・ キャンベルが続投。
アルマンをルーファス・シーウェル、マクギブンスを ニック・チンランド、ホアキンをアドリアン・アロンソ、ライリーをペドロ・アルメンダリス、フェリペをジュリオ・オスカー・メチョソ、 パイクをシュラー・ヘンズリー、ハリガンをマイケル・エマーソンが演じている。

まず冒頭で「カリフォルニアがアメリカ合衆国の州になれば人々の自由が約束される」と断言しているところで、大げさに言うならば、 反吐が出そうになる。
「アメリカは正しい、アメリカこそ正義」ということを堂々と主張する、アメリカ万歳主義に満ち溢れた映画だという宣言になっている わけだね。
だけど、勝手に怪傑ゾロをアメリカの英雄にしてんじゃねえよ。ゾロはスペイン語圏、メキシコの英雄なのよ。
なんでゾロを「スペイン語圏の人々をアメリカ人にするために戦う英雄」に仕立て上げてんのかと。

エレナはアレハンドロにゾロを引退するよう求めているんだが、前述した「アメリカ万歳主義」の問題をひとまず置いておくとして、 困っている人々のために頑張っている男に、それをやめろと要求するなんて、そりゃヒロインとして共感できねえよ。
例えば夫の身が心配だからというなら分かるが、「皆のために戦うのをやめて家族を大事にしろ」という要求なんだから。
大体、脅されたという事情があるにせよ、エレナだってホアキンを放り出してアルマンと仲良くやってんだよな。
で、脅されている事情があっても、なんか全く同情する気にならんな。そのことに負い目を感じている様子も無いし。
そこをアレハンドロが指摘しないのはどうかと思うし、「向こうからヨリを戻したいと言ってくるさ」とグチグチ言ってるのも情けない けど。

どうもエレナって、ダンナが英雄として活躍するのはイヤだけど、テメエはスパイとして活動することに積極的な感じがしてならない。
「ゾロの正体をバラすと脅された」という事情を用意しているけど、あんなチンケな探偵2人ぐらいなら、何とでもなりそうなんだよな、 エレナぐらいの強さがあれば。そんな脅しに負けるようなタマじゃねえだろと。
それと、探偵たちがゾロの正体を見たのは偶然であり、その偶然が無ければどうする気だったのかと。
で、「出て行くなら帰ってこないで」というエレナに対し、意地を張ったアレハンドロが家を出るんだが、そりゃ展開が拙速すぎるよ 。
「ゾロを続けるかどうかで夫婦関係に亀裂が生じており、修復を試みるが上手く行かない」みたいな展開はゼロで、いきなり別居ってか 。
っていうか、そもそも夫婦の不和という家庭の問題で悩むようなゾロを見たくないっての。

前作でもコメディー色はあったけど、あくまでも昔の東映時代劇のような「明るく楽しい剣劇」としての作りになっていた。
ゾロは基本的に「カッコよくて勇敢なヒーロー」としての立ち位置を守り、その中で余裕の表れとしてユーモラスな一面も見せるという 感じだった。
ところが今回は、エレナを尾行したり、嫉妬心で愚痴ったりと、ただのヘタレになっている。
勘弁してくれよ。

そんで最初に「ホアキンのことも考えて」とか言ってるくせに、そのホアキンが話になかなか絡んでこないのよね。
前半は全く出番が無い。ベア・ポイントでマクギブンス一味の様子を調べる場面で、ようやくホアキンが話に関わってくる。
でもね、そういうことじゃないのよ。アレハンドロとエレナの夫婦関係を描く箇所で、ホアキンを絡ませるべきなのよ。この映画に スパイ・キッズなんぞ要らんのよ。
あと、アレハンドロがホアキンを思っている様子が全く見られないのも、いかがなものかと。
っていうか後の展開を考えると、最初の夫婦ゲンカって要らないんじゃないのか。
「エレナが探偵に脅されてスパイ活動をすることになる」→「そのためにアレハンドロと離婚する」→「アレハンドロは付きまとって文句 をぶつけ、エレナも売り言葉に買い言葉でケンカ」という形にしておけば成立するでしょ。そっちの方がスッキリしていいんじゃないの 。
アレハンドロのゾロ続行にエレナが反対している設定は、後の展開に何の影響も及ぼさないし。

ゾロは剣を使うが、それで悪党を退治することは無い。
で、最初にマクギブンス一味を始末しておかないからギエルモ夫婦が襲われるのよ。
殺生する覚悟を持たないヒーローって、大抵の場合は締まりが無いのよねえ。
農場でもゾロが殺生を避けるから、夫婦が武器を取って悪党を殺す役目を担うハメになってる。
その剣は何のために持ってるのかと。
殺傷能力の無いオモチャなのかと。

悪党一味の放火で納屋が焼失するのも、ギレルモが殺されるのも、全てゾロがチンタラやっていなければ防げたことだぞ。
さっさと一味を殺しておけば、そんなことにならなかった。
っていうかさ、そこは殺生しないにしても、普通に活躍する形にしておけよ。
なんで犠牲者が出るシナリオにしちゃうのか。
そのことでゾロが罪悪感を抱いたり悔恨したりすることも無いし、何やねんと。
そんなこんなで、もう途中で最後まで見る意欲が失われるぐらいグダグダな出来映えなのであった。

(観賞日:2008年5月16日)


第28回スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【ザ・スペンサー・ブレスリン・アワード(子役の最悪な芝居)】部門[アドリアン・アロンソ]

 

*ポンコツ映画愛護協会