『リーグ・オブ・レジェンド/時空を超えた戦い』:2003、アメリカ&ドイツ&チェコ&イギリス

1899年、ロンドンの英国銀行が襲撃され、犯行を疑われたドイツは否定した。続いて、今度はドイツのドレイパー博士達がいる研究施設が襲撃を受け、疑われたイギリスはすぐに否定した。ケニアで暮らす伝説の冒険家アラン・クォーターメインの元に、英国政府の使者サンダーソン・リードが現れた。世界大戦勃発の危機を救うため、チームを率いて欲しいと言うリードだが、クォーターメインは断った。そこへ数人の男達が現れ、クォーターメインの友人ナイジェルを射殺した。
クォーターメインは一味を退治し、1人の男を捕まえて尋問しようとする。しかし男は服毒自殺し、それまでいた建物は爆破される。クォーターメインは、イギリスへ戻ることにした。帰国したクォーターメインは、軍事情報部のMと面会した。Mによれば、ファントムと名乗る仮面の男が一味を引き連れ、科学者を集めて軍事兵器を作っているという。ヨーロッパ各国の首脳が集まる秘密会議が間もなくヴェニスで開催されることになっており、その時にファントムが街を襲撃するつもりだという。
それを防ぐため、Mは超人紳士同盟“ザ・リーグ”を召集していた。クォーターメインの他に、その場所には潜水艦ノーチラス号のネモ船長、発明した科学者から透明薬を盗んだ泥棒の透明人間ロドニー・スキナー、科学者のミナ・ハーカーが呼び集められていた。一行はミナの旧知の仲である不死身の男ドリアン・グレイの屋敷を訪れるが、彼は“ザ・リーグ”への加入を拒んだ。
ドリアンの屋敷にファントムたちが現れ、脅しを掛ける。密かに侵入していた米国諜報部員トム・ソーヤーの助けもあり、クォーターメイン達はファントムの一味を退散させた。戦いの中で、ミナが吸血鬼だと判明した。ドリアンは、“ザ・リーグ”への加入を承諾した。クォーターメインは、部外者であるトム・ソーヤーも同行させることにした。一行はパりへ行き、“ザ・リーグ”の最後の仲間であるハイドを捕まえた。野獣として暴れ回るハイドは、薬の効果が切れると小心者のジキル博士に戻った。
一行はノーチラス号に乗り込み、ヴェニスへと向かう。その途中、ジキル博士の薬が1本盗まれ、スキナーに疑いの目が向けられた。そのスキナーはヴェニスに到着しても、姿を現さなかった。一行がヴェニスに降り立った直後、爆弾によって次々と建物が崩れ落ちていく。被害を最小限に食い止めたクォーターメインはファントムと遭遇して彼の仮面を外し、その正体がMだと知る。
ノーチラス号に戻ったクォーターメインたちは、裏切り者がスキナーではなくドリアンだということを知った。目的を達したドリアンは、救助艇に乗って逃亡した。Mとドリアンが吹き込んだレコードによって、クォーターメイン達は一味の目的を知る。Mは虚偽の目的を設定して“ザ・リーグ”を結集させ、ミナの血やジキル博士の薬などを盗んで超人の能力を手に入れることが目的だったのだ・・・。

監督はスティーヴン・ノリントン、原作はアラン・ムーア&ケヴィン・オニール、脚本はジェームズ・デイル・ロビンソン、製作はドン・マーフィー&トレヴァー・アルバート、共同製作はマイケル・ネルソン、製作総指揮はショーン・コネリー&マーク・ゴードン、撮影はダン・ローストセン、編集はポール・ルベル、美術はキャロル・スピアー、衣装はジャクリーン・ウエスト、音楽はトレヴァー・ジョーンズ。
主演はショーン・コネリー、共演はシェーン・ウェスト、スチュアート・タウンゼント、リチャード・ロクスバーグ、ペータ・ウィルソン、トニー・カラン、ジェイソン・フレミング、ナセールディン・シャー、デヴィッド・ヘミングス、マックス・ライアン、トム・グッドマン=ヒル、テリー・オニール、ルドルフ・ペラー、ロバート・ウィロックス他。


アラン・ムーア&ケヴィン・オニールのコミックを基にしたアクション・アドベンチャー映画。
クォーターメインをショーン・コネリー、ソーヤーをシェーン・ウェスト、ドリアンをスチュアート・タウンゼント、Mをリチャード・ロクスバーグ、ミナをペータ・ウィルソン、スキナーをトニー・カラン、ジキル&ハイドをジェイソン・フレミング、ネモをナセールディン・シャー、ナイジェルをデヴィッド・ヘミングスが演じている。
ちなみに内容を見た限り、全く「時空を超えた戦い」ではない。

この映画を巡っては、スティーヴン・ノリントン監督のスローペースな撮影スタイルにショーン・コネリーが激怒し、険悪な関係になるという出来事があった。
編集に関しても意見は激しく対立し、実権を奪われたノリントン監督はプレミアをボイコットした。
その経験が相当に堪えたらしく、ノリントン監督は「二度と映画は撮らない」とまで宣言している。
内容を見た限り、もしも怒るのであれば(というか撮影中にキレるなんて愚かだと思うが)、監督よりも脚本家に怒るべきだったと思うぞ、ショーン・コネリー。

ついでにもう1つゴシップネタを書いておくと、この映画は盗作だとして訴えられている。
ラリー・コーエンとマーティン・H・ポールが、1993年にフォックスに提案した『Cast of Characters』のアイデアを盗まれたと主張し、損害賠償を請求したのだ。
個人的には、ラリー・コーエンがいるので、そちらサイドの肩を持っておく。

“ザ・リーグ”のメンバーは、19世紀に誕生した小説のキャラクターだ。
H・R・ハガードの冒険小説『ソロモン王の洞窟』のアラン・クォーターメイン。オスカー・ワイルドの幻想小説『ドリアン・グレイの肖像』のドリアン・グレイ。ブラム・ストーカーの恐怖小説『吸血鬼ドラキュラ』のヒロインであるミナ・ハーカー。スティーブンソンの怪奇小説『ジキル博士とハイド氏』のジキル&ハイド。ジュール・ヴェルヌの海洋科学小説『海底二万里』のネモ船長。
悪党サイドのMも、その正体はコナン・ドイルの小説『シャーロック・ホームズ』シリーズの悪党モリアーティー教授だ。
なお、「版権が切れた小説のキャラクターを拝借」という縛りがあるため、透明人間はH・G・ウェルズの怪奇科学小説『透明人間』の主人公ジャック・グリフィンではなく別の男に変更されている。
だったら最初から、透明人間を使わず別のキャラを選べと言いたくなる。

原作ではジェームズ・ボンドに似せたキャプテン・ボンドというキャラが登場し、当初は映画版でもロジャー・ムーアが演じることが予定されていたらしい。
そこを削ったらダメだろ。
ロジャー・ムーアが演じるのであれば、なおさらよ。
で、「アメリカ文学の有名キャラがいないとアメリカ市場で受けないぞ」ということで、原作には登場しないマーク・トウェインの少年小説『トム・ソーヤーの冒険』の主人公トム・ソーヤーが新たに加わったそうだ。
あらら。

「まず特殊な能力ありき」ではなく、先に有名キャラクターを放り込んでから、物語を作るために特殊なパワーをプラスさせている。
例えばネモ船長がマーシャルアーツの達人だったり、ハイドが超人ハルクになっちゃったりする。
なので、本来のキャラクターからは完全に逸脱しており、何のためにそのキャラを使ったのか良く分からないような事態に陥っている。
例えば1つの有名キャラクターだけを拝借して、そいつを荒唐無稽に味付けするのであれば、それは比較的受け入れやすいんじゃないかと思う。しかし、この作品は「小説の有名キャラクターが結集する」という仕掛けで入っているわけで、その有名キャラの中身が元の小説とは違うものになっているってのは、かなり厳しいと思うぞ。

なんかねえ、ハイドが超人ハルク化しているのを見ると、「本当はアメコミの有名キャラクターを結集した話にしたかったんじゃないのか」という疑問も沸いてきて、「だけど版権切れキャラで我慢した」という代用品っぽい感覚も伺えるんだよな。
あと、怪奇キャラだけ集めた作品にしても良かったかも、という気もする。
「ヴァンパイア、透明人間、ミイラ男、フランケンシュタインの怪物、狼男などがヒーローとして活躍する」という話にするわけよ。
それなら、キャラを改変することも少なくて済んだかもよ。

“ザ・リーグ”のメンバーが集まると、いよいよ出発となるのだが、そこからしばらくはノーチラス号の中でのマッタリした時間になる。クォーターメインとソーヤーの擬似親子関係とか、ミナとドリアンの恋愛っぽい様子とか、ジキルの自問自答とか、そんな人間模様の表面を軽くなぞる。
決して深く厚く見せることはしない。
あくまでも、薄っぺらくだ。

全てにおいて描写が淡白であり、各キャラクターの掘り下げや、個々のバックグラウンドと今回の物語との関連付けとか、そういうことには全く興味を示さない。
例えばトム・ソーヤーが諜報部員になっているのも、何の説明も無しだ。元の小説の際の設定と今回の話の距離が近ければ説明は要らないかもしれないが、かなり遠いんだから説明してくれよ。
敵の目的と居場所が分かったらテンポアップしてトントンとクライマックスまで畳み掛けてもいいものだが、なぜか一休みしてしまう。
緩急を使い分けるタイミングに対して、あまり計算能力は優れていないようだ。
その一方でノリントン監督は、「困ったら派手な大爆発」という、レニー・ハーリン的な演出技法を披露している。


第26回スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【最悪のグループ】部門[絶望的にミスキャストなザ・リーグの面々]
ノミネート:【チンケな“特別の”特殊効果】部門

ノミネート:【最もでしゃばりな音楽】部門

 

*ポンコツ映画愛護協会