『ラストマン・スタンディング』:1996、アメリカ

開拓史時代のアメリカ合衆国。テキサスのジェリコという小さな田舎町へ、流れ者のジョン・スミスという男がやって来た。ジェリコでは、ドイルが率いるアイルランド系組織とストロッジが率いるイタリア系組織、2つのギャングが対立していた。
到着早々、スミスはドイルの子分に車を壊される。だが、保安官のエドに掛け合っても、彼はギャングを取り締まろうとしない。スミスは銃を取り、車を壊したドイルの子分を射殺した。スミスはストロッジに声を掛けられ、用心棒として雇われる。
トロッジの情婦ルーシーと関係を持ったスミスは、やがてドイルから用心棒にならないかと誘われる。スミスは誘いを断るが、ストロッジの用心棒の仕事は辞めた。
スミスはドイルに捕らわれているフェリーナと出会い、彼女を逃がしてやろうと考えた。スミスはフェリーナを監視している連中を射殺し、ドイルにはストロッジの仕業だと告げる。だが、ドイルの用心棒ヒッキーは、スミスがフェリーナを逃がしたことに気付く…。

監督&脚本はウォルター・ヒル、原案は黒澤明&菊島隆三、製作はウォルター・ヒル&アーサー・サーキシアン、共同製作はラルフ・シングルトン、製作総指揮はサラ・リッシャー&マイケル・デ・ルーカ、撮影はロイド・エイハーン、編集はフリーマン・デイヴィース、美術はゲイリー・ウィズナー、衣装はダン・ムーア、音楽はライ・クーダー。
主演はブルース・ウィリス、共演はクリストファー・ウォーケン、ブルース・ダーン、アレクサンドラ・パワーズ、デヴィッド・パトリック・ケリー、ウィリアム・サンダーソン、カリーナ・ロンバード、レスリー・マン、ネッド・アイゼンバーグ、マイケル・インペリオリ、ケン・ジェンキンス、R・D・コール、テッド・マークランド、パトリック・キルパトリック、ルイス・コントレラス他。


黒澤明監督の『用心棒』を、西部劇としてリメイクした作品。
スミスをブルース・ウィリス、ヒッキーをクリストファー・ウォーケン、エドをブルース・ダーン、ルーシーをアレクサンドラ・パワーズ、ドイルをデヴィッド・パトリック・ケリーが演じている。

雰囲気は悪くない。
そう、決して雰囲気は悪くない。
セピア色を基調とした色使いで、古めかしさを出している。
ライ・クーダーの音楽もいい。
ただ、ここで非常に残念なお知らせがある。
映画の中身は、雰囲気に全く付いていけていないのである。

ブルース・ウィリスが主演というのが、ケチの付き始め。
どう頑張っても、懐の深い、凄みのある男には見えない。
クールなキレ者の男を演じているのだが、なんか軽い。
いっそ、奇をてらってクリストファー・ウォーケンを主演に起用した方が、不気味で底の見えない、スケール感のある男に見えて、まだマシだったんじゃないだろうかと思う。

肝心のアクションシーンも、全然ダメ。
やたらめったら銃を撃ちまくっているだけ。
「そりゃあ、それだけ撃ってりゃ当たるだろ」と思ってしまう。
逆に、ほとんど弾丸を使わずに、1発で確実に相手を仕留めるような形、一撃必殺の方が、ガンマンの凄みは出たような気もしないでもない。

アクションシーンには、バイオレンスはある。
だが、チャンバラで言うところの“殺陣”のカッコ良さが無い。
サム・ペキンパー監督みたいにスロー映像を多用して、「ヒーローには弾丸が当たらない」という部分を荒唐無稽にしちゃった方が、“形”が出来たかも。

常に自信たっぷりで偉そうにしている主人公が、銃を持っていない時に襲われて、メッタ打ちにされるってのは、かなり情けないシーンである。
いっそ、スーパーマン的な悪童の活躍を描くように徹底した方が良かったかも。
まあ、そうしたところで、傑作にはならなかっただろうが。

 

*ポンコツ映画愛護協会