『ラストサマー』:1997、アメリカ

7月4日。港町のサウスポートでは独立記念祭が催され、高校3年生のヘレンがクイーンに選ばれた。彼女の友人ジュリー、ヘレンの恋人バリー、ジュリーの恋人レイは、客席で盛り上がった。4人は夏休みが終わったら町を出ることに決めている。ジュリーはボストンの大学に進学し、ヘレンは女優を目指してニューヨークへ出る予定だ。バリーとレイも、それぞれの進路を決め、夢を膨らませている。
パーティーの会場に移動したジュリーは、幼馴染のマックスから「町を出る前にデートしよう」と誘われて困惑した。そこにバリーが割って入ったので、マックスが腹を立てた。2人が喧嘩を始めようとしたので、レイが制止した。4人は車で崖下の砂浜へ出掛け、しばし酒を飲みながら時間を過ごした。レイの運転で戻る途中、車は急に飛び出してきた何かにぶつかった。4人が車を降りて近くを調べると、顔の潰れた男性が倒れていた。
ジュリーとヘレンは警察に連絡しようとするが、バリーとレイは反対した。バリーの提案で、4人は死体を捨てることに決めた。そこへマックスが車で通り掛かったので、ジュリーが駆け寄り、適当に話を作って誤魔化した。4人は場所を移動し、死体を捨てようとする。ジュリーは死体の腕に「スージー」という刺青を見た。ヘレンが近寄った時、死んだと思っていた男が体を起こして掴み掛かった。慌ててバリーたちが男を殴り、海に投げ込んだ。彼はジュリーたちに、「今夜のことは何があっても口外しない」と約束させた。
1年後、ジュリーは大学の夏休みになり、久しぶりに帰省した。元気の無い様子の彼女を見て、母は心配そうな様子を見せた。母は彼女に、今朝届いたという手紙を渡した。ジュリーが手紙を開くと、そこには「去年の夏、お前たちが何をしたか知っている」と記されていた。手紙には消印が無く、住所も差出人の名前も書かれていなかった。ジュリーはヘレンの連絡先を訊くため、彼女の姉エルザが主任を務めるマーケットに赴いた。すると、そこではヘレンが働いていた。ニューヨークで上手く行かず、帰郷していたのだ。
ジュリーはヘレンに手紙を見せ、一緒にバリーの家へ行く。既にヘレンとバリーは別れていた。バリーは手紙を見ても「気にするな、誰も知っているはずがない」と強気な態度で言う。ジュリーは、1年前の事件から3週間後にデヴィッド・イーガンという青年の遺体が発見されたことを口にした。エビ漁の網に引っ掛かって発見されたことが新聞で報じられ、それをジュリーは見たのだ。ただし、デヴィッドは海に転落して溺れた事故死として処理されていた。
バリーは手紙を出した犯人がマックスだと決め付け、港で働いている彼の元へ行く。バリーはジュリーとヘレンを外に待機させ、マックスの仕事場に乗り込んだ。そして作業に使う鉤爪を突き付け、「その気になれば殺すことも出来るんだぞ」と脅した。ジュリーたちが去ろうとすると、レイの姿があった。彼は漁師になっていたのだ。あの事件が原因で、ジュリーはレイと別れていた。その後、1人で作業をしていたマックスは、何者かに鉤爪で殺害された。
ボクシングジムでトレーニングしていたバリーがロッカールームに戻ると、「I KNOW(知ってるぞ)」と書かれた一枚の写真が置かれていた。ジャケットを盗まれたジムが外に出ると、一台の車が発進するところだった。バリーが追い掛けると、車は彼を跳ね飛ばした。負傷したバリーが倒れていると、運転手が降りて来た。漁師が使うツイッターコートを着て、鉤爪を手にした覆面の人物だった。
バリーは入院するが、見舞いに訪れたジュリーたちが「警察に全て話すべきよ」と意見を述べても、「殺す気なら殺せた。奴は俺たちをからかっているだけだ」と反対する。「必ず犯人を見つけてやる」とバリーが憤りを示すと、ヘレンも賛同した。彼女は、デヴィッドの身内が犯人ではないかという推測を述べた。ジュリーとヘレンはネットを検索し、2年前に車が海へ転落した事故の記事を発見した。死亡したのはスージーという女性で、運転していたのは彼女の恋人デヴィッドだった。
ジュリーとヘレンは、デヴィッドの姉メリッサが暮らす家を訪れた。2人は「車が故障したので電話を貸してほしい」と嘘をつき、家に上がり込んだ。室内にはツイッターコートが掛けてあった。それとなくデヴィッドのことを尋ねると、メリッサはビリー・ブルーという弟の友人がお悔みに来たことがあったと話す。帰宅したヘレンが翌朝になって目を覚ますと、髪がズタズタに切られていた。姿見に視線を向けると、「SOON(もうすぐだ)」と書かれていた。
ヘレンから電話を受けたジュリーは、車で彼女の家へ向かう。異変を感じたジュリーがボンネットを開けると、何匹ものカニに埋もれたマックスの死体があった。ジュリーがヘレンの家に駆け込むと、バリーが来ていた。ジュリーの話を聞いた2人が車へ行き、バリーがボンネットを開けると、カニもマックスの死体も消えていた。バリーはレイが犯人だと決め付け、彼の元へ行って殴り掛かった。
ジュリーは「仲間割れしてる場合じゃないわ」とバリーを制し、「犯人はビリー・ブルーという男よ」と述べた。メリッサが話していた情報によれば、ビリーはエルザと同級生だった。ジュリーはヘレンに借りた卒業アルバムを持ち、メリッサの元を訪れた。ビリーの正体を知るためだ。メリッサは弟が自殺だったと言い、残されていた遺書を見せた。ジュリーが見せてもらうと、それは自分に届いた文面と全く同じ内容だった。「遺書じゃなくて脅迫よ」と口にしたジュリーだが、メリッサからデヴィッドの腕に刺青が無かったことを聞かされ、死体について人違いをしていたことに気付いた…。

監督はジム・ギレスピー、脚本はケヴィン・ウィリアムソン、製作はニール・H・モリッツ&エリック・フェイグ&ストークリー・チャフィン、製作総指揮はウィリアム・S・ビーズリー、撮影はデニス・クロッサン、編集はスティーヴ・ミルコヴィッチ、美術はゲイリー・ウィスナー、衣装はキャサリン・アデール、音楽はジョン・デブニー、音楽監修はアレックス・ステイヤーマーク。
出演はジェニファー・ラヴ・ヒューイット、サラ・ミシェル・ゲラー、ライアン・フィリップ、フレディー・プリンゼJr.、ジョニー・ガレッキ、ブリジット・ウィルソン、アン・ヘッシュ、ミューズ・ワトソン、スチュアート・グリア、J・ドン・ファーガソン、デボラ・ホバート、メアリー・マクミラン、ラッソー・ジェイハン、ダン・オルブライト、リンダ・クラーク、シア・ブルーム、ジョン・ベネス他。


ロイス・ダンカンの同名小説を基に、『スクリーム』のケヴィン・ウィリアムソンが脚本を務めたホラー映画。
監督のジム・ギレスピーは、これが初の長編映画。
ジュリーをジェニファー・ラヴ・ヒューイット、ヘレンをサラ・ミシェル・ゲラー、バリーをライアン・フィリップ、レイをフレディー・プリンゼJr.、マックスをジョニー・ガレッキ、エルザをブリジット・ウィルソン、メリッサをアン・ヘッシュが演じている。

原作者のロイス・ダンカンは映画を見て、「原作はサスペンスなのにスラッシャー映画にされた」と激怒したらしい。
原作では死者が一人も出ないらしいので、ってことは内容が全く違っているわけだから、腹を立てるのも仕方の無いことかもしれない。
ただ、スラッシャー呼ばわりは、ちょっと違和感があるなあ。
まあ最終的には大勢の死者が出るんだけど、前半から中盤に掛けてはマックスが殺されるだけで、ジュリーたちは脅しを受けているだけなんだよな。
マックスの殺害にしても、「それが無いと後半まで後半まで殺人シーンが皆無だから、それじゃあマズいだろ」という都合だけで用意されているようにしか思えない。

まずオープニング、いかにも「今から怖いことが起きますよ」という感じで、サスペンスを煽るような入り方をしていることに引っ掛かりを覚える。
そりゃあホラー系の映画だってことは宣伝の段階で分かっていることだけど、だからこそ、冒頭で「こういうジャンルの映画ですよ」とアピールする必要も無いんだし、そこはフラットに入ってもいいんじゃないか。
そうじゃないから、独立記念祭で騒いでいても、既に不安の匂いが漂っているんだよな。
そこは「楽しい気分」からの落差を付けた方がいいんじゃないか。

ジュリーたちは、まるで同情の余地が無い。
そりゃあ、例えば『13日の金曜日』に代表されるように、スラッシャー系の映画では、バカな行動を取った登場人物が殺されていくというのがセオリーだ。
だけど、そういう連中はジュリーと違って、犯罪行為に加担しているわけではない。それに生き残る奴はアーパーではない。
この映画の場合、ジュリーたちは車で男をはねて、海に沈めている。襲われたから殺害したとか、以前から甚振られていたから始末したとか、そうではない。
少なくとも隠蔽工作には、まるで同情の余地が無い。

この手の映画に整合性を求めるのは野暮なのかもしれないが、それにしても犯人の行動がデタラメすぎる。
まず、マックスを殺害する理由が全く分からない。
それと、ジュリーが久々に帰郷する朝に手紙を投函しているが、なぜ彼女の帰郷する日が分かったのか。
それと、なぜ犯人は、ジュリーだけに手紙を送ったのか。事件から1年が経過するまで、なぜ何も行動を起こさずに待ち続けていたのか。

犯人はオーナーがいるボクシングジムに忍び込み、ロッカーにメッセージ付き写真を残す。
バリーが追い掛けて来ると車ではねるが、姿を見せただけで殺さずに去る。
犯人は夜の内に、ヘレンの父と姉がいる家に忍び込む。
そのままヘレンが眠るのを待って、気付かれないようにハサミで髪を切り、鏡にメッセージを残す。そして殺さずに立ち去る。
それ、何の意味があるのか。そこまで手間を掛けて、誰かに発見されるリスクを冒して、それでもバリーやヘレンを殺さずに脅すだけって、何のつもりなのか。

ジュリーに対しても、マックスの死体と何匹ものカニをボンネットに入れて脅すが、殺そうとはしない。そして、ジュリーが離れている隙に、カニとマックスの死体を持ち去る。
何がしたいのか。すげえ手間だろ。それに、わずかな時間しか無かったのに、あれだけ多くのカニを持ち去るのは厳しいと思うぞ。
なぜか独立記念日になってから全員を殺そうとするが、その日に限定する意味も良く分からないし、その日まで殺す気が無いのなら、脅しなんか掛けずに、じっと待機していればいいじゃねえか。
大体さ、殺すつもりが無いのなら、ジムやヘレンの家に忍び込む時、わざわざ鉤爪を持っている意味は何なのよ。

独立記念日の日になり、ようやく犯人はバリーを殺害するが、その後は無関係な警官とメリッサを殺すという始末。行動が支離滅裂である。
お前は1年前の報復としてジュリーたちを殺そうとしていたんじゃなかったのかよ。誰でもいいのかよ。
そもそも、そいつの正体が露呈しても、今まで全く出て来ていなかった人物なので、「なんじゃ、そりゃ」という感じだし。
完全ネタバレだけど、犯人はスージーの父ベンジャミンで、デヴィッドも彼に殺されていたのだ。
でも、「なんじゃ、そりゃ」でしょ。

「犯人は誰なのか」というサスペンス・ミステリーも低調。
バリーやレイはマックスを疑っているが、そのマックスは簡単に殺される。
そりゃあセオリーからしてもマックスが犯人じゃないことはバレバレだけど、それにしても、バリーが疑いを持った直後に退場させることもないだろ。ミスリードも何もありゃしない。
しかも、犯人に殺されるシーンを描いてしまうから、「死んだと思わせておいて、実は生きていて」という可能性まで消えてしまうし。

他の容疑者はメリッサぐらいなのだが、それも「マックスを鉤爪で殺す」という力仕事を犯人がやっていることから、そのミスリードも厳しいものがある。
バリーがレイを犯人と決め付けるシーンがあるが、そこにミスリードとしての力は無い。
終盤、ジュリーが「犯人はベンジャミン」と確信した後、レイが犯人だと思い込んで逃げる展開があるが、何のミスリードにもなっていない。

そのジュリーがレイを犯人だと思い込むシーンでは、それまでツイッターコートで鉤爪を持っていたベンジャミンが、普通の漁師姿になり、「通り掛かりの親切なオッサン」を装っているが、それは統一感が無いよなあ。
それに、そこでレイを殺すチャンスがあったのに、彼を放置して、ジュリーを殺すために船に乗せて出港するというのも、デタラメな行動だし。
あと、確か1年前は顔が潰れて素性が分からない状態だったはずなのに、その形跡が全く無いのね。すげえ普通の顔なのね。

(観賞日:2011年5月9日)

 

*ポンコツ映画愛護協会