『ラスト・ドラゴン』:1985、アメリカ

リーロイ・グリーンは、東洋人である師匠の下で修業を積んでいた。師匠が不意に放った矢を、リーロイは見事にキャッチした。すると師匠は、「お前は無意識の動きを会得した。修業も最終段階に入った」と笑みを浮かべる。以前から師匠は、リーロイに「極意を極めた時、体中が光り輝いて、その時が来たと分かる」と教えていた。リーロイは「極意とは、最初に戻ることだ」と言われるが、その意味が良く分からなかった。
リーロイが「まだ私には修業が必要です」と教えを乞うと、師匠は「もう私は師匠ではない」と冷たく突き放す。だが、リーロイを心配した彼は、どうしても師匠が必要なら、ニューヨークにいるサム・ダム・ゴイに会え。宇宙で最も賢い男だ」と述べた。彼はブルース・リーが持っていたというメダルをリーロイに差し出し、「彼に出会えたら、これを渡せ。技を教えてくれる」と語った。
ニューヨークへ出たリーロイは、『燃えよドラゴン』が上映されているハーレムの映画館に入る。観客がブルース・リーを見て興奮する中、数名の若者たちがラジカセで音楽を流して踊り始めた。腹を立てた一人の男がラジカセを踏み潰すと、観客は拍手を送った。そこへハーレムの将軍を自称するショーナフが、手下を引き連れて現れた。ショーナフが「俺は誰だ?」と大きな声で訊くと、手下たちは声を揃えて「ショーナフ」と答えた。
ショーナフ軍団の傍迷惑な挨拶に、観客たちは苛立ちを隠せない。一人の少年が「やられちゃえ」と言うと、それを聞き付けたショーナフが彼を捕まえた。「俺が誰にやられるって?」と凄むと、少年は「ブルース・リーロイだ」とリーロイを指差す。ショーナフはリーロイに、「お前の噂は聞いていた。ピストルの弾を歯で受け止めるそうだな」と告げる。バカにした態度を取るショーナフに対し、リーロイは穏やかに対応した。
ショーナフが「お前のような奴はカンフーの面汚しだ。俺の力を見せてやる」とリーロイを挑発すると、観客たちは「うるせえぞ、静かにしろ」と文句を言う。腹を立てたショーナフは、「そんなことを言う奴は来てみろ。相手になってやる」と怒鳴った。喧嘩に自信のある男たちが次々に襲い掛かり、ショーナフが捻じ伏せる。リーロイは喧嘩騒ぎを無視し、映画館を出て行った。
ビデオ制作会社の社長を務めるエディー・アルカディアンは、『ローラズ・ビデオ・ホットピックス』という音楽番組を事務所で見ていた。彼は所属タレントで自分の愛人でもあるアンジェラに、「すぐに、あそこで踊れるぞ」と告げる。その番組ではミュージック・ビデオを大型スクリーンで流し、ディスコに見立てたスタジオで客が踊る。人気スターのローラ・チャールズが司会を務めている。
エディーの指示を受けた番組スタッフのJJは、ローラに彼との夕食に行ってほしいと頼む。「予定が詰まってるの」とすげなく断られたJJは、「あいつはビデオ業界を牛耳ろうとしている恐ろしい奴なんだ。頼むよ」と怯えたような目で言う。だが、ローラは「知らないわ。諦めてと伝えて」と告げる。JJからの電話連絡を受けたエディは、「私の誘いを断るとは、あの女、許さん」と怒りを示した。
ローラが収録スタジオのセヴンズ・ヘヴンを出たところにリーロイが通り掛かり、彼女と目が合った。ローラはエディーの手下たちに車で拉致されそうになるが、そこへリーロイが駆け付けた。リーロイは得意のカンフーで一味を撃退し、ローラのためにタクシーを拾った。ローラが目を離している間に、リーロイは姿を消した。ローラは道路に落ちていたメダルを拾った。リーロイはメダルを落としたことに気付いて戻るが、どこにも見つからなかった。
日は変わり、リーロイは自分が開いたカンフー道場で門下生に指導していた。そこへショーナフ一味が乗り込んできて、しつこく挑発してきた。それでもリーロイは戦わずに黙っていると、門下生のジョニーが調子に乗って一味をコケにした。一味はジョニーを捕まえて首を絞め、リーロイに対して「ひざまずけ。でないと、こいつの首をへし折るぞ」と脅しを掛けた。リーロイがひざまずくと、ショーナフは膝蹴りを浴びせた。彼は「今日はこれで許してやるが、いつか戦ってやるからな」と告げ、手下を連れて道場から去った。
リーロイの弟リッチーは、セヴンズ・ヘヴンのコンテストで優勝しようと意欲を燃やしている。スタジオ観覧に出掛けた時、ローラの「優勝者には私と過ごす楽しい夜を」という言葉で、すっかりその気になったのだ。彼は同居しているリーロイのことを、風変わりで気持ち悪い存在として受け止めている。テレビにローラが写り、リッチーは「彼女だ、きっとデートする」と言う。リーロイは助けた女性がローラだと気付き、「会いたい」と口にした。
リッチーが「誰だって会いたいさ。僕は今日会うけどね」と言うと、リーロイは「一緒に行きたい」と告げる。「嫌だよ。みっともない」とリッチーは拒絶した。「修業ばかりで女のオの字も知らないんだろ」と彼がバカにするので、リーロイは「そんなんじゃない。会う必要がある。連れてってくれ」と頼む。リッチーはチケットを買わず、タダでスタジオに入ろうとする。リッチーをスタジオの外で待っていたリーロイは、ロックに呼び出されたローラがトラックで拉致されるのを目撃した。ロックの落としたファイルを見つけたリーロイは、トラックの行き先がエディーの事務所だと知った。
エディーはアンジェラのミュージック・ビデオをローラに見せ、番組で流すよう要求する。ローラが拒否すると、彼は手荒な真似に出ようとする。そこへリーロイが乗り込み、エディーの手下たちを倒した。リーロイは「彼女に手を出すな」とエディーを脅し、水槽に顔を突っ込ませる。また助けてもらったローラは感謝し、リーロイを自宅へ連れて行く。リーロイがメダルを探していると知り、彼女は「持ってるわ」と返した。彼女と2人きりの空間に緊張したリーロイは、すぐに帰った。
リーロイがサム・ダム・ゴイの住所へ行くと、そこはフォーチュン・クッキーの製造工場だった。外にいた3人の工員たちに、リーロイは「師匠に会わせてほしい」と頼む。すると工員たちは「お前なんかには会わないよ」と冷笑し、リーロイを追い払った。リーロイの父が営むピザ屋に、ショーナフ一味が現れた。リーロイがいないと知った一味は店を荒らし、反抗的な態度を取ったリッチーに暴力を振るった。ショーナフは「相手になってやる、逃げるなと奴に伝えろ」と告げ、店を後にした。
リーロイが店に戻ると、リッチーは「お前がビビってるから、こんなことになった。役に立たないカンフーなんて何の意味も無い」と非難する。道場へ赴いたリーロイが苛立ちの中で稽古していると、ローラがやって来た。ボディー・ガードを依頼する彼女に、「自分は修業中の身だから、それは出来ない」とリーロイは冷たく言う。そこへジョニーが来たので、ローラは「考えておいて」と去った。
エディーはリーロイを始末するため、用心棒をオーディションして数名を雇った。彼はアンジェラが「あの女、私のビデオなんか流してくれないわ」と諦めているので、「リーロイさえ始末すれば大丈夫だ。それでもローラが拒めば、一緒に消すまでだ。お前をスターにするためだ」と述べた。アンジェラが「私をスターにするためなら、人殺しはやめて。本当は貴方自身のためじゃないの?」と言うと、彼は「代わりは幾らでもいる。嫌なら出て行け」と声を荒げた。「俺がいなけりゃお前なんか娼婦が精一杯だぞ」と言い放つエディーに、アンジェラは「アンタだって身分違いの野心を持ったハゲじゃないの」と告げて立ち去った。
エディーの用心棒になったショーナフは、「奴を俺の前に連れて来い。ぶちのめしてやる」と言う。リーロイはローラの元へ謝罪に行き、「ボディーガードはやるけど、その前に極意を極めたい」と述べる。ローラはリーロイを連れてスタジオへ行き、ブルース・リーの映像を使ったミュージック・クリップを見せた。興奮しているリーロイに、彼女はキスをした。リッチーは友人たちと共にスタジオへ忍び込み、2人のキスシーンを目撃した。外に出た彼は、友人たちの前で苛立ちをぶちまけた。
スタジオのスクリーンには、『ドラゴン怒りの鉄拳』でリーが変装して敵の隠れ家へ行くシーンが写し出される。それを見たリーロイは、「気付かなかった」と口にしてスタジオを出て行く。リーロイに文句を言おうとスタジオへ戻ったリッチーは、ローラがエディーとロックに捕まる様子を目にした。リーロイはピザの出前に化けて工場へ行くが、あっさりと工員3名に気付かれ、博打に誘われた。
故郷へ帰ることにしたアンジェラは、その前にリーロイに会いたくて道場へ行くが、そこにいたのはジョニーだけだった。彼女はジョニーに、「スタジオには近付くなと、リーロイに言っておいて。エディーがおかしくなってしまって」と告げる。ローラとリッチーを拘束したエディーは、スタジオの装置を勝手に操作する。するとスクリーンにはシャーリーンの『ファイア』のクリップが写し出された。
リーロイは「師匠に会わせてくれ。これを見れば会ってくれるはずだ」と言い、工員たちにメダルを見せる。工員たちがメダルを奪って追い出そうとしたので、怒ったリーロイはドアを蹴破って凄んだ。すると工員たちは「師匠なんていない。宣伝のために名前を使っているだけだ」と釈明し、自分たちがサム・ゴム・ダイと呼んでいるコンピュータを見せた。愕然としたリーロイは師匠の元へ戻り、「なぜ存在しない人を捜しに行かせたんですか」と問い掛けた。
師匠は「お前を導く物は、ここに全てある」と言い、おみくじを抜いたフォーチュン・クッキーをリーロイに差し出した。リーロイがクッキーを割ると、彼は微笑を浮かべて「考えなさい。おみくじが無いのに割った。分かっている答えを探して割ったのだ。お前の師匠は、お前の中にしかない」と述べた。道場に戻ったリーロイは、ジョニーからアンジェラの伝言を聞かされる。リーロイは同行を求めるジョニーをロッカーに閉じ込め、一人でスタジオへ乗り込んだ…。

監督はマイケル・シュルツ、脚本はルイス・ヴェノスタ、製作はルパート・ヒッツィグ、製作協力はジョセフ・カラッチオロ、製作総指揮はベリー・ゴーディー、撮影はジェームズ・A・コントナー、編集はクリストファー・ホームズ、美術はピーター・ラーキン、衣装はロバート・デ・モーラ、音楽はミシャ・シーガル、追加音楽はウィリー・ハッチ&ノーマン・ホイットフィールド、音楽監修はスザンヌ・コストン。
出演はタイマック、ヴァニティー、ジュリアス・J・キャリー三世、クリス・マーニー、レオ・オブライエン、フェイス・プリンス、グレン・イートン、マイク・スター、ジム・ムーディー、アーニー・レイエス・シニア、ロジャー・キャンベル、エスター・マーロウ、ケイシャ・ナイト(ケイシャ・ナイト・プリアム)、ジャマール・メイソン、B・J・バリー、サリータ・アレン、ジャッキー・リー・スミス、ジョディー・モッチア、サル・ルッソ、チャズ・パルミンテリ、フランク・レンズリ、トーランス・マティス他。


モータウン・レコードの創業者であるベリー・ゴーディー・ジュニアが製作総指揮を務めた映画。
『カー・ウォッシュ』『サージャント・ペッパー』のマイケル・シュルツが監督を務めている。
リロイをタイマック、ローラをヴァニティー、ショーナフをジュリアス・J・キャリー三世、エディーをクリス・マーニー、リッチーをレオ・オブライエン、アンジェラをフェイス・プリンス、ジョニーをグレン・イートン、ロックをマイク・スター、リロイの父をジム・ムーディーが演じている。

リロイ役のタイマックは、剛柔流空手と柔術とテコンドーで黒帯を取得している俳優。
この作品で主演に抜擢され、それ以降も映画出演はしているものの、ほぼ一発屋のような人。
ローラ役のヴァニティーは、プリンス・ファミリーで初の女性グループ“ヴァニティー6”の中心メンバーで、プリンスの元恋人。この映画の頃にはプリンスと別れ、グループも脱退している。
ちなみにプリンスは、アポロニア・コテロという新しい女性を見つけ、ヴァニティー6を“アポロニア6”に変えてグループの活動を続行させた。

マーシャル・アーツのコレオグラフィーを担当した3人の中で、最も有名だと思われるのはロン・ヴァン・クリーフ。
空手、柔術、テコンドー、ボクシング、クンフーを学んだ武術で、香港映画で主演を張ったこともある。
「ブラック・ドラゴン」というニックネームがあるが、そう名付けたのはブルース・リーらしい。
タイマックもロン・ヴァン・クリーフの下で武術を学んでいたことがある。
ちなみに、UFC4ではホイス・グレイシーと戦っている(もちろん負けたが)。

モータウン・レコードが製作しているので、サウンド・トラックには当然のことながら自社所属のミュージシャンによる楽曲を揃えている。
劇中では、ミュージック・ビデオを流したり、ヴァニティーが歌ったりするところで、たっぷりと時間を使っている。
その中で、デバージの『Rhythm of the Night』がゴールデン・グローブ賞の歌曲賞にノミネートされ、ヴァニティーの『7th Heaven』とドワイト・デヴィッドの『The Last Dragon』がゴールデン・ラズベリー賞の最低オリジナル歌曲賞にノミネートされた。
同じ映画の音楽が、両極端の賞にノミネートされているんだから、それだけ印象に残るサウンド・トラックになっているということだね。

アメリカではブルース・リーの死後に『燃えよドラゴン』が公開されて以降、その人気が一気に上昇した。
特に黒人の間で、その人気は高かった。
そんなブルース・リー人気に便乗しようという狙いで作られた映画だが、オープニングの演武でタイマックがやっているのは、どう見ても空手の動きだよな。
その後に木人で稽古をするシーンがチラッとだけあるけど。
ただ、リーロイがカンフーとは名ばかりの空手アクションをやることになるのかと思ったら、ローラを救う最初の格闘シーンでは、ちゃんとカンフーの動きになっていた。

ブルース・リー人気にあやかろうという気持ちはあるのだろうが、残念ながら製作関係者の中にブルース・リーやクンフーに関する正確な知識、正確な情報を持っている人はいなかったようで、明らかに中国(香港)と日本がゴチャ混ぜになっている。
例えば、ショーナフはリーロイに「お前はカンフーの面汚しだ」と言っているけど、そんな彼は自分を「ショーグン」と呼ばせており、日本をイメージした衣装(誤解に満ちたファッションだが)を着ている。
ショーナフは道場に乗り込んだ後、立ち去る時にカタコトの日本語で「サヨナラ」と言う。一方のリーロイも勘違いしており、両親に「パパさん」「ママさん」とカタコトの日本語で話し掛ける。
エディーの事務所に乗り込む時は、なぜか忍者装束で顔を隠す。意味が分からん。
しかも、そこでの格闘スタイルはブルース・リー的なカンフーというよりニンジャ・アクションで、手裏剣まで投げちゃう。
まあ未だにブルース・リーが日本人だと思っているアメリカ人も少なくないみたいだし、しょうがないんだろうけどね。

リーロイはカンフーを真面目な気持ちで修業している青年という設定なのだろうが、とてもそうは見えないってのが、この映画の抱える大きな問題点。
正直に言って、「ブルース・リーかぶれの痛い奴」に見えちゃう。
そもそも、師事しているマスターが、マトモな武術家に見えない。
何しろ、ブルース・リーが持っていたというメダルを保有ってるんだぜ。
終盤になって「実は嘘でした」とバラしているけど、そんな嘘を平気で付くんだから、胡散臭いだろ。

映画館でショーナフに捕まった少年は、「誰か俺を倒すって?」と訊かれ、「ブルース・リーロイだ」とリーロイを指差す。
なぜか少年、リーロイのことを知っている。少年だけでなく、ショーナフまでリーロイを知っている。
ニューヨークに出るのは初めてのはずだが、既に有名人のようだ。
で、ショーナフは「お前の噂は聞いていた。ピストルの弾を歯で受け止めるそうだな」と笑う。なんちゅう噂だよ。
っていうか、ピストルの弾を歯で受け止めるって、ブルース・リーっぽさから大きく離れてるよな。
それって奇術の演目じゃねえか。

ニューヨークへ出た時のリーロイは、中国服に麦わら帽子という妙な格好。
で、映画館のシーンから切り替わると、もう彼は道場を開き、しかも大勢の道場生がいる。
で、そこで教える時のリーロイの服装はトラックスーツで、ジョニーはブルース・リーごっこをやっているようにしか見えない。
っていうか、リーロイはニューヨークへ出たわけじゃなくて、戻ったってことなのね。
30分が経過した辺りで彼が実家で暮らしている様子が写るので、初めてそれが分かったよ。

なぜリーロイがショーナフに挑発されても戦わないのか、それが良く分からん。
「作法を重んじて道徳に導かれ、平和を尊ぶ」と稽古しながら口にするシーンがあるので、それが理由ってことなのか。
たぶん『ドラゴン危機一髪』のブルース・リーをイメージしていると思うんだけど、『ドラゴン危機一髪』の場合は「母から2度とケンカをしないように言われ、ペンダントを渡された」という設定があったからね。
この映画の場合、師匠から「挑発されても戦うな」とか止められていたわけでもないし。

どこまでマジなのか、ふざけているかという塩梅が良く分からん。
エディーはアンジェラのビデオを番組で流してもらうためだけにローラを拉致したり手荒な真似に出ようとしたりしているが、スタッフが怯えるほどヤバい大物なのに、その程度の目的なのかと。
ちっちゃい奴だなあ。
ショーナフにしても、ただリーロイが挑発に乗って来ないから店を荒らすとか、すげえ小さい奴。
で、挑発はするけど、一方的にボコボコにするようなことはないんだよね。相手が戦う気になるまでは、挑発を繰り返すだけ。
ただ「戦いたい」という、ある意味では純粋な目的で動いているんだけど、まあアホにしか見えんわな。
後半に入ると、エディーの雇われ用心棒になっちゃうし。

もう物語が佳境に入った辺りでローラが捕まるが、それに参加しているのはエディーとロックだけ。
多くの用心棒を雇ったはずなのに、そこには誰も加わっていない。なぜか2人だけでローラの拉致に行くのね。
だったら大勢の腕自慢を雇った意味が無いだろうに。
そんで、そんな状況だが、リーロイは「変装して工場に行き、博打に誘われる」というダラダラしたノりをやっている。
もうさ、そんなヌルい喜劇みたいなことをやっている時間帯じゃないでしょ。
まあ時間帯の問題ではないけど。

っていうか、まだ「リーロイがサム・ダム・ゴイという師匠に会おうとする」という筋は終わってないのね。出向いた先にあったのがクッキー製造工場だった時点で、「サムはカンフーの師匠じゃなかった」ということで終わりにするのかと思ったら、まだ続けるのね。
だけど仮にサムがコンピュータじゃなくて実在したとしても、ただのクッキー工場の経営者に過ぎないと思うぞ。
それと、師匠もそんなバカなことをやらせて、何がしたいのかと思っちゃうぞ。
戻って来たリーロイに対して「お前の師匠はお前の中にしかいない」と言うけど、そんなことぐらい、さっさと教えてやれよ。あれだけの時間と手間を掛けさせて、それが言いたかっただけかと呆れてしまう。
武術の真理や東洋哲学に関して表現したかったんだろうってことは何となく分かるけど、見事なぐらいの空回り。

リーロイがスタジオに乗り込むとエディーのビデオメッセージが流れ、用心棒たちが登場する。
どうやら「エディーはローラを捕まえてリーロイを誘い出した」という風に見せたいようだが、それは変だろ。
そういう狙いがあったのなら、エディーはローラを捕まえた後、「彼女を返してほしければスタジオへ来い」とリーロイに伝えなきゃ。
もしもアンジェラがジョニーに伝言を教えなかったら、リーロイはローラが捕まっていることを知らないままだったんだぜ。

で、そのスタジオへ乗り込む時も、またリーロイは忍者装束。
しかも今回は顔を隠しているわけでもないので、ますます忍者装束の意味は無い。っていうか、それこそトラックスーツになるべきじゃないのか。
で、彼はその場だけの登場でしかない名も無き用心棒たちを相手にして苦戦し、駆け付けた門下生たちに助けてもらう始末。
そんで、それまでおふざけ専門だったジョニーと、単なるチョイ役だった少年の門下生(武術指導を担当したアーニー・レイエス・シニアの息子)が急に大活躍。
特にレイエス・ジュニアは、リーロイよりもアクションのキレやスピードがあるんじゃないか。

スタジオにショーナフはおらず、倉庫に移動して、ようやく登場。
そんなショーナフをリーロイがどうやって倒すのかというと、隠れておいての不意打ちキック。
なんちゅう卑怯な奴だ。
で、それで終わりかと思いきや、ショーナフは立ち上がり、「お遊びは終わりだ」と告げると両手の周囲が赤く光る。そんで殴ったり蹴ったりすると、手足から赤い閃光が放たれる。
クライマックスに入って、急に格闘アクションゲームみたいなノリが入る。

一方のリーロイも力に目覚め、こっちの方が派手な閃光を放つ。しかも打撃が当たると、激しい爆発音がする。
そんなこんなでリーロイがショーナフを倒すと、エディーが拳銃を構えて発砲する。
しかしリーロイは、弾丸を歯でキャッチする。
いや、だからさ、それはブルース・リーでもカンフーでもないだろ。
ってなわけで、素晴らしくポンコツな仕上がりのブラックスプロイテーション映画であった。

(観賞日:2013年4月8日)


第6回ゴールデン・ラズベリー賞(1985年)

ノミネート:最低オリジナル歌曲賞「The Last Dragon」
ノミネート:最低オリジナル歌曲賞「7th Heaven」

 

*ポンコツ映画愛護協会