『ラスト・キャッスル』:2001、アメリカ

軍刑務所の所長を務めるウィンター大佐は、カテゴリーAの囚人が移送されて来ることを秘書のケリーから知らされる。彼は右腕であるペレッツ大尉に電話で確認させ、アーウィン陸軍中将が罪を認めて10年の判決を受けたと聞かされる。護送車が刑務所に着くと、受刑者のイェイツが「1週間で自殺するかどうか」という賭けを始めた。デルウォは煙草10束を自殺に賭けるが、他の受刑者たちの反応は鈍かった。アーウィンは持ち込み可能な荷物をチェックされ、所長室へ案内された。
ウィンターはアーウィンに、受刑者の敬礼は禁じられていることを話す。彼は刑務所の配置を説明し、1870年代にあった監獄の名残である石壁を受刑者に復元させていることを語る。ウィンターは戦争関連の書物を収集しており、アーウィンの著書も保有していた。彼がサインを頼むと、アーウィンは快諾した。ウィンターが本を探しに奥の部屋へ引っ込んでいる間に、アーウィンは彼の収集した戦争関連の物品を見学する。ペレッツから「貴方は何か集めてます?」と問われた彼は、「父が軍事物の収集を嫌っていたので。実験経験の無い者がすることだ。骨董価値のある銃弾も、我々には兵を苦しめた金属に過ぎん」と語る。その声を耳にしたウィンターは動揺し、所長室に戻って来ると「貴方の本が見つからなかった」と嘘をついた。
翌日、ウィンターは受刑者が遊ぶためのバスケットボールを1つしか用意しなかった。受刑者のエンリケスとサンパーが些細なことで殴り合いになると、すかさがイェイツが賭けを始めた。ウィンターは殴り合いの様子を見物しながら、タイミングを待った。サンパーが武器を手にすると、ウィンターはペレッツにサイレンを鳴らせと命じた。サイレンが鳴って「伏せろ」という命令が響き、受刑者たちは一斉に身を伏せた。しかしサンパーだけは立ち尽くしていたので、看守の放ったゴム弾を浴びて倒れた。
受刑者たちが石壁の作業をしていると、アギラーがボープレに「モルタルが弱い。父親がレンガ職人だから分かるんだ」と遠慮がちに言う。するとボープレは腹を立て、「だから何だ。遊びでやってるんだ、引っ込んでろ」と怒鳴った。昼食の時間、アーウィンは湾岸戦争で部下だった軍医のバーナードに声を掛けられた。バーナードは大麻で収監されており、他にも多くの罪を犯していた。そこへサンパーが現れ、「ゴム弾でも実弾より痛い」と愚痴をこぼした。
バーナードやエンリケスたちは、国防総省の友人に刑務所の実情を訴えてほしいとアーウィンに要請した。彼らは「今年は13人が撃たれて11人が重傷だ」「所長の意に沿わない者が狙われる」などと説明するが、アーウィンは「私は真の軍人を指揮して来たが、君らは違う。私もだ」と告げて協力を断った。バーナードたちは「ゴム弾でも頭を直撃したら死ぬ。去年も2人死んでるが事故扱いだ」と話すが、「最後の戦いで私は失敗し、引退した。もうどんな戦いも出来ない。刑を終えて帰るだけだ」とアーウィンは告げた。
アーウィンが独居房で読書しているとイェイツが現れ、子供の頃にホワイトハウスの捕虜帰還祝賀会で会ったことがあると告げた。娘のロザリーがアーウィンの面会に訪れるが、困った様子で「ダメだわ、パパとは何でもない話が出来ない」と漏らした。「パパが怖いのか。職業軍人らしくない普通の父親になろうと努めた」とアーウィンが言うと、彼女は「でも失敗した」と告げる。ロザリーは「責める気は無いの。なぜ私を呼んだの?孫を連れて毎週、面会に来るとでも思った?お互い、良く知らないのに。20歳の頃なら話したいことは山ほどあったけど、今は違う」と述べた。5分の面会時間が終わり、アーウィンは「手紙を書く。伝えたいことがある」と述べた。
アーウィンは中庭でアギラーから声を掛けられ、敬礼の起源について教えた。2人が敬礼を繰り返す様子を所長室の窓から見たウィンターは、ペレッツに「士官学校で彼の名は敬意を持って語られた。見るに堪えない」と述べた。ペレッツはウィンターの指示を受け、アギラーに雨中の屋外で敬礼のまま立ち続ける罰を与えた。アーウィンが止めようとすると、看守たちが暴行した。ウィンターはアーウィンに抗議され、「彼は敬礼禁止に違反した。懲罰を理解してほしい」と告げた。
アーウィンが「軍規によれば、日中からの懲罰は翌朝までに終えるべしとされている」と言うと、ウィンターは「喚起に感謝する」と静かに述べた。彼はペレッツに耳打ちし、アーウィンが看守に触れる軍規違反を犯したとして懲罰を与えるよう命じた。アーウィンは1人で石を運ぶ懲罰を与えられ、イェイツが胴元となって最後まで続行できるかどうかの賭けが始まる。用意された石を全て運び終えたアーウィンだが、ウィンターは終日労働として元の場所へ戻すよう指示した。アーウィンが疲労困憊になる中、点呼の時間が訪れて作業が終わった。失敗に賭けていたボープレに「なぜ奴の壁のために?」と問われたアーウィンは、「違う、君らの壁だ」と答えた。
ウィンターはアーウィンに、「アギラーはハンマーで上官を殴り、半身不随にした。情に流されそうになったら、受刑者の資料を読んで最悪の事態を洞察する」と語った。アーウィンはボープレから、「壁のことだが、囚人の遊び道具にさせてる所長の壁だ」と告げられる。アーウィンはベックという兵卒の文字が壁に刻まれていることを教え、「彼は監獄じゃなく、自分守る城を作ろうとしていた」と語った。サンパーが「どうやれば城になる?」と訊くと、アーウィンは「アギラーに尋ねろ。左官屋の息子だ」と答えた。
アギラーは受刑者たちに指示して壁を倒し、最初から作り始めた。彼はボープレや仲間のダフィー、カットブッシュたちに助言し、順調に作業は進められる。ウィンターは指揮官として作業を見守っていたアーウィンを呼び出し、「あの壁のせいで緊張が高まっている。2分で消滅させる」と告げた。彼は看守にブルドーザーを操作させるが、アギラーが壁の前に立ちはだかった。ウィンターがサイレンを鳴らすが、アギラーは伏せようとしなかった。ウィンターが看守のザモロに発砲させ、ゴム弾を頭部に受けたアギラーは死亡した。
アーウィンは受刑者を壁の前に集合させ、アギラーを軍歌で弔った。彼はウィンターに辞任を要求し、「君は軍人の恥だ。指揮官の資格は無い」と言い放った。ウィンターはホイーラー准将を呼び、「アーウィンは指揮官のように振る舞い、私に辞任を要求した。精神を病んでいます。鑑定が必要です。彼を尊敬していますが、適切な待遇は無理かと」と述べた。ホイーラーはアーウィンと面会し、精神鑑定について「私を追い出す口実です」と告げられた。
アーウィンは受刑者に頼み、ウィンターに「辞任しなければホイーラーを人質に取る」という手紙を届けさせた。ホイーラーはアーウィンから事情を聞き、「ウィンターが不当に人を殺した証拠が必要だ。過去に3度調べられているが、容疑を晴らしている。国防総省の評価は高い」と述べた。ウィンターは特殊訓練と称して看守を動かし、ホイーラーを面会室から連れ出した。事情を説明されたホイーラーは、「ここの噂は聞いてる。また死者が出たら君は終わりだ」と告げた。
ウィンターは全ての受刑者に聞こえるよう、大声でアーウィンの罪について語った。アーウィンは大統領命令に逆らい、ブルンジ軍司令官逮捕の小隊を編成した。確実な情報を無視して町に潜入し、小隊の8名が捕まって処刑された。ウィンターは「彼は信頼すべき情報を無視したのだ。プライドだけで動く人間に従っていいのか。彼はもう一度勝ちたいだけだ」と訴えるが、受刑者たちのアーウィンに対する信頼は変わらなかった。
ボープレたちはアーウィンに、作戦の説明を求めた。しかし彼らは同席したイェイツが裏切るのではないかと考え、チームから離れるよう要求した。その様子を目にしたウィンターはイェイツを呼び寄せ、「残り刑期を3年から3ヶ月にしてやる。十字軍に復帰し、情報を提供してくれ」と持ち掛けた。ボープレたちは食堂で喧嘩騒ぎを起こし、全ての看守を引き付けた。看守たちが食堂を出た隙に、アーウィンは受刑者たちに反乱計画を説明する…。

監督はロッド・ルーリー、原案はデヴィッド・スカルパ、脚本はデヴィッド・スカルパ&グレアム・ヨスト、製作はロバート・ローレンス、製作総指揮はドン・ゼプフェル、撮影はシェリー・ジョンソン、美術はカーク・M・ペトルッチェリ、編集はマイケル・ジャブロウ&ケヴィン・スティット、衣装はハ・グエン、音楽はジェリー・ゴールドスミス。
出演はロバート・レッドフォード、ジェームズ・ガンドルフィーニ、マーク・ラファロ、クリフトン・コリンズJr.、デルロイ・リンドー、スティーヴ・バートン、ブライアン・グッドマン、ポール・カルデロン、フランク・ミリタリー、マイケル・アービー、サミュエル・ボール、ジェレミー・チャイルズ、ジョージ・G・スコット、モーリス・ブラード、ニック・コキッチ、デヴィッド・アルフォード、ディーン・ホール、ペグ・アレン、リック・ヴィトー、フォレスト・D・ブラッドフォード、スコット・マイケル、ディーン・ミラー、クリステン・ショー、マイケル・デイヴィス他。


ロバート・レッドフォードがブラッド・ピットと共演した『スパイ・ゲーム』と同じ年に主演した作品。
監督は『ザ・コンテンダー』のロッド・ルーリー。
脚本は、これがデビュー作となるデヴィッド・スカルパと『フラッド』『ミッション・トゥ・マーズ』のグレアム・ヨスト。
アーウィンをレッドフォード、ウィンターをジェームズ・ガンドルフィーニ、イェーツをマーク・ラファロ、アギラーをクリフトン・コリンズJr.、ウィーラーをデルロイ・リンドー、ペレッツをスティーヴ・バートン、ボープレをブライアン・グッドマン、デルフォをポール・カルデロン、バーナードをフランク・ミリタリー、エンリケスをマイケル・アービー、ダフィーをサミュエル・ボールが演じている。
アンクレジットだが、ロザリー役でロビン・ライトが出演している。

製作費が7200万ドルで、アメリカ国内の興行収入が約1820万ドル。
その数字を見れば一目瞭然だろうが、完全にコケてしまった作品である。
2001年という時代に「ロバート・レッドフォードが主演」というだけでは訴求力が弱いだろうし、監督と脚本家の知名度も足りないので、よっぽど中身が上質じゃないと厳しい戦いを強いられることは明らかだ。
そして結果的に惨敗したってことは、中身も冴えなかったってことになるわな。

映画の舞台は、冷酷非道な所長が取り仕切り、理不尽なルールが罷り通る刑務所である。主人公は正義感のある熱い男で、囚人たちの信頼を得てリーダーとなる。そんな彼を疎ましく思う所長は陰湿な嫌がらせを繰り返し、協力者を殺害する。ついに堪忍袋の緒が切れた主人公は、囚人たちを指揮して反乱を起こすというのがザックリとしたプロットだ。
この短い解説だけで、「どこかで見たような」と感じた人も少なくないはずだ。
それもそのはずで、いわゆる「刑務所モノ」では良くあるパターンなのだ。
そんな使い古されたネタを何の臆面もなく堂々となぞっているんだから、そりゃあコケても仕方が無い。

舞台は普通の刑務所ではなく軍刑務所だが、そこに大した意味は無い。やっていることは、普通の刑務所映画と全く変わらない。
刑務所に収監されているのは軍人ばかりだが、これも普通の囚人と全く変わらない。
主人公の地位や役職にしても、そうじゃなきゃいけない必要性は乏しい。
ウィンターがアーウィンのファンという設定にしても、軍人じゃなきゃ成立しないわけではない。他の職業であっても、まるで支障なく成立させることが出来る。

アーウィンがウィンターの軍事物コレクションについて「実験経験の無い者がすることだ。骨董価値のある銃弾も、我々には兵を苦しめた金属に過ぎん」と侮辱するような言葉を平気で口にするのは、あまりにも愚かしい。
幾ら父親の言葉であっても、奥の部屋にウィンターがいることは分かっているんだし、どんだけ不用意なのかと。
挑発して怒らせる目的でもあるならともかく、そうじゃないんだから。
静かに刑期を終えたいだけであるならば、それは全く意味の無い言動だ。

ウィンターは卑劣な男だが、伏せろと命令されても立ち尽くしたまま動かないサンパーはアホすぎる。初めてならともかく、今まで何度も体験しているはずなのに、どんだけ学習能力が無いのかと。
こいつがアホすぎるので、ウィンターの理不尽さや残忍さが薄まってしまう。
あと、銃弾を浴びたサンパーか倒れたので死んだのかと思いきや、ゴム弾なのよね。なぜ実弾じゃないのかと。
「ゴム弾でも死ぬことがある」という説明があるけど、だったら最初から実弾でいいんじゃないかと。どうせ誰かが死んだら、事故に見せ掛けるんだし。
それは中途半端に感じるわ。

アーウィンの言動はデタラメで、まるで筋が通っていない。だから当然のことながら、まるで指揮官としてのカリスマ性や主人公としての魅力など感じられない。
まず、彼がリーたちから「刑務所の実情を国防総省の友人に知らせてほしい」と頼まれた時に断るのは理解不能。
彼は「もうどんな戦いも出来ない」と断っているが、リーたちを指揮して戦うことを求められているわけではない。
単に実情を知らせてほしいと依頼されているだけなので、それさえ断るのは何なのかと。

「国防総省に話したらウィンターに目を付けられるから面倒だ」と考え、腰が引けてしまったのなら、頼みを断るのは理解できる。
しかしアーウィンは入所した時から、ウィンターに対して「おとなしくしていよう」とする様子が乏しい。前述したように、彼が奥の部屋にいると分かっているのに、平気で侮辱するような言葉を吐くぐらいだからね。
それだけでなく、もう最初からウィンターを見下しているような様子が窺えるのだ。
そもそも、「ウィンターに逆らったり疎んじられたりしたせいで刑期が延長された」というケースについての言及が全く無いし。

アーウィンはリーたちの頼みを即座に断るが、その直後に「アギラーの懲罰を止めようとする」という行動を取っている。
さらに彼は、ウィンターに対して強く抗議するのだ。
一応は止めに入る前に、「しばらく見ていたが我慢できなくなって」という手順は用意されている。
しかし、サンパーがゴム弾で撃たれるのを見た直後のリーたちからの依頼は断ったくせに、アギラーの時は止めようとしたり強く抗議したりという「明確なウィンターへの反抗」を示すので、「それはアギラーだけ特別扱いしてねえか」と言いたくなる。

そもそも「敬礼は禁じられている」と最初にウィンターが釘を刺していたのに、所長室から見える場所で何度も敬礼を繰り返して教えているんだから、アーウィンがアホすぎる。
アギラーが懲罰を与えられたのは、明らかにアーウィンのせいなのだ。
その後でアーウィン自身も懲罰を与えられるが、そこも「ウィンターの卑劣さや冷酷さ」よりも「アーウィンの愚かしさ」ばかりが際立つ。
途中で作業を止めたらどうなるのか分からないので、歯を食いしばって必死で続ける意味って何なのかと思っちゃうし。

石を運ぶ作業を終えたアーウィンはボープレから「なぜ奴の壁のために?」と問われて「違う、君らの壁だ」と答えるが、その状況に全く合わない会話だ。
アーウィンは懲罰として命じられたから石を運んでいるだけであって、別に誰のためだとかは関係が無い。
実際、その石を全て運んでも、壁を復元する作業には何の影響も及ぼさないのだ。何しろ、同じ場所に戻すよう命じられるぐらいだからね。
前述した会話自体が要らないとまでは言わないが、少なくともタイミングは完全に間違っている。

アーウィンが「壁で城を作れる」と言った途端、全ての受刑者がノリノリで作業に励むようになるのは、どういうことなのかサッパリ理解できない。
それが監獄であろうが城であろうが、どっちにしろ大して変わりは無いでしょ。
「所長にやらされている作業」と「自分たちの意志でやっている作業」という違いに、大きな意味を持たせようとしているのは分かるのよ。
でも、そこを上手く表現できていないので、「城が完成したとしても、だから何なのか」と言いたくなってしまうのよ。

しかもアーウィンは城を作るよう促して作業を見守るだけで、自分は何もしていないのよね。
そもそも、リーたちからの依頼を断ったくせに、そこは変わらないまま指揮官として振る舞うので、どうにも受け入れ難い。
城を作るのは明らかにウィンターに睨まれるような行為であり、「刑を終えるだけ」と口にしていたのに言動不一致じゃないかと。
そんな反抗的な言動を繰り返すのなら、なぜリーたちの頼みを叶えてやろうとしないのか理解に苦しむ。「どんな戦いも出来ない」と言っていたけど、もう完全に戦ってるんだし。

アーウィンはウィンターに「軍人の恥だ」と告げて辞任を要求するが、底抜けのアホにしか思えない。なぜ無駄に怒らせるような言葉を吐いているのかと。彼を辞任に追い込める勝算があるならともかく、その時点では何も無いのだ。
たまたまウィンターは「穴倉に半年間、閉じ込められてもいいのか」と脅すだけで実際は懲罰を与えなかったけど、そういう処分になっていた可能性だってあるわけで。挑発的な言葉を吐くことに、何の狙いがあるのかサッパリだわ。
アーウィンはウィンターに脅しの手紙を届けているけど、それは「ホイーラーが連絡を受けて刑務所に来る」ということがあったから出来ただけであり、最初から計画できたわけではないし。
っていうか、ウィンターがアーウィンに何の懲罰も与えず、ホイーラーを呼び寄せるという行動に出るのも理解不能。
ホントに半年でも1年でも、穴倉に閉じ込めてしまえばいいでしょ。いっそのこと、事故に見せ掛けて始末してもいいし。

ウィンターがホイーラーにアーウィンの精神鑑定を求めたのは、追い出す口実だ。
つまり彼は、扱いに困ったアーウィンを厄介払いしようと目論んだわけだ。
ところが、アーウィンを早く外に出してやりたいホイーラーから「君の指示が必要だ。手に負えないと言ってくれればいい」と告げられると、「手に負えます」と答える。
手紙による脅しで腹を立て、意地を張ったということも推測できるが、だったら最初から「追い出そうとする」という手順なんて無くていいのよ。そこで半端に弱腰なんて見せても意味が無い。

そこに限らず、ウィンターって冷酷で残忍なキャラ設定のはずなのに、かなり甘いんだよね。
敬礼を禁じていたけど、アギラーの弔いで受刑者たちが髪を撫でる仕草っぽく手を動かして敬礼を誤魔化すのを見ると、アーウィンに「髪を撫でるような動きなら敬礼も許す」と言っちゃうし。
他にも色々とヌルいトコが多いので、ラスボスとしては物足りない。
そんな類の人間性なんて、このキャラには邪魔なだけ。もっと徹底して非情な男にしておいた方がいいよ。

ウィンターは「手に負える」と宣言したので、どうやってアーウィンに対応するのかと思いきや、彼の罪について受刑者たちに話すだけ。
なんで今さら、受刑者たちを説得してアーウィンへの信頼を失わせ、指揮官としての威厳を失墜させようとしているのかと。しかも、それは何の効果も無く、アーウィンと受刑者たちの関係性は全く揺るがないし。
そこは「アーウィンの過去を観客に教える」という目的のためだけに用意されたような手順になっているが、それさえも意味が無い。
なぜなら、「実はこういう事情で命令に背いた」という裏があるわけでもないからだ。ホントにウィンターが言った通り、ただ勝ちたくて8人を死に追いやっただけなのだ。

アーウィンは受刑者たちに反乱計画を明かし、「城を乗っ取って旗を奪い、反旗に掲げる。城は陥落した、救援を頼むという合図だ。その合図でホイーラーを呼ぶ」と言う。
だが、その計画を遂行するまでに、綿密な作戦を立て、慎重に準備を進める様子が全く描かれていない。
なので、いざアーウィンたちが作戦を開始した後、どこからか投石器や巨大パチンコや盾など様々な道具を持ち出されても、「いつの間に用意したんだよ」と言いたくなる。

何しろ準備を進める手順が描かれていないので、「作戦の準備がバレないように慎重に行動する」とか「バレそうになって焦る」というスリルは無い。
また、アーウィンたちの計画は、あっさりとウィンターに露呈しており、その上で実行に移る形となっている。ウィンターの裏をかいて、作戦を実行するわけでもない。
クライマックスを盛り上げるための要素を、色々と失っているうに感じる。
それと、派手な戦闘を用意した方が盛り上がると思ったんだろうけど、ほぼ数の論理で強引に突き進むような作戦なので、あまり知略が感じられない。

(観賞日:2017年10月30日)

 

*ポンコツ映画愛護協会