『わんわん物語』:2019、アメリカ

クリスマス、ジム・ディアは妻のダーリングにメスの子犬をプレゼントした。子犬は「レディー」と名付けられ、可愛がられて大きく成長した。夫妻から首輪を与えられたレディーは大喜びし、隣に住む老犬のトラスティーと雌犬のジョックに「これで正式に家族の一員よ」と語った。ダーリングが妊娠していることに、彼女は全く気付いていなかった。一方、操車場を寝床に使う野良犬のトランプは、駅員に発見された。トランプは余裕の態度で駅員をからかい、その場から逃亡した。
町に出たトランプは、公園のベンチでサンドウィッチを食べる男性に目を付けた。彼は策を講じて男性の注意を逸らし、サンドウィッチを盗み取った。サンドウィッチを食べようとしたトランプは、捨てられた2匹の子犬と遭遇した。子犬たちが「お腹空いた」と同情を誘う言葉を口にすると、トランプは「芝居をしてるんだろ」と悪態をつきながらもサンドウィッチを与えた。彼は野犬収容所の馬車に捕まった知り合いのペグとブルから、助けを求められた。トランプは文句を言いながらも捕獲人のエリオットを騙し、ペグとブルを脱出させた。彼はエリオットに追い掛けられ、車の荷台に飛び乗って逃亡した。
ディア家では出産直前のパーティーが催され、大勢の客が来ていた。夫妻は客の相手に夢中で、散歩の時間なのにレディーは放置された。ダーリングの叔母であるセーラは、大きな焼き物をプレゼントに持参した。彼女は「ジムの稼ぎじゃ買えないでしょ。どんな仕事にしろ」とジムを馬鹿にして、ダーリングが「音楽家よ」と言うと「貴方がそう言うなら」と冷たく告げた。レディーが膝に乗ると、ダーリングは「悪い子」と注意して追い払った。
トランプはエリオットから隠れるため、トラスティーが住む家の敷地に入り込んだ。庭に出たレディーは相手がトラスティーだと思い込み、トランプに向かって「おかしなことが起きている」とディア家の異変について詳しく語った。彼女は「ダーリングのお腹が膨らんでる。きっと食べ過ぎよ」などと話していたが、相手がトラスティーではないと知った。レディーは「出て行って。人を呼ぶわよ」と警告し、トランプは「困ってるんだ。説明されてくれ」と語るが、レディーは激しく吠えた。
エリオットがディア家に近付いて来たので、慌てたトランプはレディーに「赤ちゃんのことを教えてやる」と取引を持ち掛けた。レディーは迷いながらも、犬小屋に隠れたトランプの存在を内緒にした。エリオットが去った後、トランプはレディーに「君が家族の中心だった暮らしは終わる。赤ちゃんに取って代わられる」と告げた。レディーが笑い飛ばして全く信じないので、彼は「人間には忠誠心が無い。赤ちゃんが来たら犬は追い出される」と語って立ち去った。
赤ちゃんのルルが産まれると、ジムとダーリングはレディーの存在を蔑ろにするようになった。夫妻は赤ちゃんに夢中で、レディーに愛情を向けなくなった。夫妻はジムの兄弟にルルを見せるため、レディーを残して外出することになった。夫妻はセーラを呼んで、レディーの世話を頼んだ。ルルの子守だと思っていたセーラは落胆し、レディーを無視した。セーラが連れて来た飼い猫のデボンとレックスは、室内で暴れ回って散らかした。セーラはレディーの仕業だと決め付け、激しい怒りを見せた。
セーラはレディーをペットショップに連れて行き、店長に口輪を付けるよう要求した。店長は躊躇するが、セーラの強硬な態度に押されて承諾した。店長はレディーの首輪を外し、口輪を装着した。嫌がったレディーは激しく暴れ、店から逃げ出した。路地裏に迷い込んだ彼女は、野良犬のアイザックに縄張り荒らしだと誤解された。レディーは威嚇されて追い込まれるが、トランプが駆け付けて助けた。レディーはトランプの協力で、口輪を外すことが出来た。
レディーは家に帰ろうとするが、道が分からなかった。案内役を申し出たトランプはエリオットを見つけると、「今の君は野良犬と同じだ。見つかったら捕まる」とレディーに警告した。彼は「景色のいいルートの方が安全だ」と言い、レディーと遊覧船に乗って川を渡った。レディーはレストラン通りを進む時、「もう帰る家は無いのかも。貴方が正しかった」と落ち込む様子を見せた。トランプは彼女を元気付けるため、「何か食べよう」と持ち掛けた。
トランプはトニーのレストランにレディーを連れて行き、裏口へ移動した。店員のジョーはトランプを見つけ、「悪いが、今は満席だ」と言う。しかしレディーが一緒にいると知り、「何とかする」と告げた。そこにオーナーのトニーが来て、トランプとレディーに気付いた。トニーとジョーはテーブルを用意し、スペシャルメニューのミートボールパスタを用意した。トニーたちはレディーとトランプのために、アコーディオンを演奏して歌った。トランプはレディーを丘の上へ案内し、町の夜景を見せた。レディーはトランプから、遠吠えのやり方を教わった。
レディーがディア家での暮らしを「満ち足りた世界だった。愛が一杯だった」と懐かしがると、トランプは「辛いのは分かるけど、君は捨てられた」と口にする。レディーはトランプの態度を見て、彼も以前は飼い犬だったと気付く。トランプは若い夫婦に可愛がられていたが、赤ちゃんが生まれて捨てられたのだった。レディーとトランプはエリオットに見つかり、慌てて逃げ出した。トランプは操車場に駆け込むが、エリオットと駅員に挟み撃ちにされた。そこへレディーが現れ、遠吠えでエリオットたちの気を引いた。その隙にトランプは逃げ出すが、レディーが捕まってしまった。レディーが馬車で連れ去られるのを、トランプは見ていることしか出来なかった。
レディーは野犬収容所に収監され、ペグやブルたちと出会った。レディーから話を聞いたペグたちは、一緒にいたのがトランプだと気付く。ペグたちはレディーに、トランプは一匹狼でトラブルメーカーだと教えた。翌日、ダーリングとジムが野犬収容所を訪れ、レディーを引き取った。夫妻はレディーに謝罪し、家に連れ帰った。夫妻は全く悪びれないセーラを帰らせ、レディーに「貴方の新しい家族よ」とルルを紹介した。レディーはルルと仲良くなり、平穏で幸せな暮らしが戻って来た…。

監督はチャーリー・ビーン、脚本はアンドリュー・ブジャルスキー&カリ・グランルンド、製作はブリガム・テイラー、製作総指揮はダイアン・L・サバティーニ、撮影はエンリケ・シャディアック、美術はジョン・マイヤー、編集はメリッサ・ブレザートン、衣装はコリーン・アトウッド&ティモシー・A・ウォンシク、視覚効果監修はロバート・ウィーヴァー、視覚効果プロデューサーはクリストファー・ライモ、音楽はジョセフ・トラパニーズ。
声の出演はテッサ・トンプソン、ジャスティン・セロー、ジャネール・モネイ、サム・エリオット、アシュリー・ジェンセン、ベネディクト・ウォン、クランシー・ブラウン、ネイト・ワンダー、ローマン・ジアンアーサー、ジェームズ・ベントレー、ジェンテル・ホーキンス他。
出演はキアシー・クレモンズ、トーマス・マン、F・マーリー・エイブラハム、イヴェット・ニコール・ブラウン、エイドリアン・マルティネス、ケン・チョン、アルトゥーロ・カストロ、カーティス・ライオンズ、ケイト・ニーランド、ダリル・ハンディー、ロバート・ウォーカー・ブランチャード他。


1955年に公開された同名の長編アニメーション映画を、実写とCGでリメイクした作品。
監督は『レゴニンジャゴー ザ・ムービー』のチャーリー・ビーン。
脚本は『成果』『サポート・ザ・ガールズ』のアンドリュー・ブジャルスキーと、TV映画『Troubleshooters』のカリ・グランルンドによる共同。
レディーの声をテッサ・トンプソン、トランプをジャスティン・セロー、ペグをジャネール・モネイ、トラスティーをサム・エリオット、ジョックをアシュリー・ジェンセン、ブルをベネディクト・ウォン、アイザックをクランシー・ブラウンが担当している。
ダーリングをキアシー・クレモンズ、ジムをトーマス・マン、トニーをF・マーリー・エイブラハム、セーラをイヴェット・ニコール・ブラウン、エリオットをエイドリアン・マルティネス、産婦人科医をケン・チョン、ジョーをアルトゥーロ・カストロが演じている。

「毒にも薬にもならない」という言葉があるが、まさにそんな感じの映画である。
ただし、そもそもオリジナル版だって、そこまで高く評価できるような映画だったわけではない。 ポンコツ扱いするほど酷いわけではないが、ディズニー・アニメの中で上位に入るような作品ではなかった。
この実写版を見て、改めて思ったのは、「アニメーションであることがオリジナル版に下駄を履かせていた部分は、かなり大きかったんじゃないかな」ってことだ。

このリメイク版は、ほぼオリジナル版をなぞっている。しかしアニメとしての魅力が無くなると、ここまで化けの皮が剥がれちゃうのかと。
いや化けの皮ってのは表現として良くないか。とにかく、オリジナル版の持っていた魅力は、その大半がアニメーション映画としての魅力だったわけだ。
同じことを実写として再現することによって、色んなトコにマイナスが生じている。
まず何より感じるのが、トランプの外見がアニメ版とは全く違うってことだ。表情も含めて、可愛げが大きく落ちる。

次に気になったのは、トニーの店のシーン。
粗筋でも書いたように、トニーとジョーはレディーがいるのに気付くと笑顔を浮かべ、2匹のためにテーブルやメニューなどを用意し、客として丁重にもてなす。
それはオリジナル版でも描かれたシーンだし、ミートボールパスタをレディーとトランプが食べるシーンは有名で人気のあるシーンだ。
なので、もちろん外せないってのは良く分かる。
ただ、これを実写で描くと、「野良犬のためにテーブルやメニューまで用意してスペシャル料理を提供する」という行動の不自然が目立つのだ。

アニメーションという武器を失っても、ミュージカル映画として華やかに飾り付ければ、リカバリーできる可能性はあるだろう。
しかし、たまに歌唱シーンもあるものの、「ミュージカル映画」として捉えると全く物足りないアプローチに留まっている。
オリジナル版からは『Peace on Earth』『La La Lu』『Bella Notte』『He's a Tramp』の4曲が使われているが、ミュージカルパートが輝きを放っておらず、見せ場になっていない。

大きな要因の一つとして、「実写映画なので、あまり大きく誇張できない」ってことが挙げられる。あまり現実離れした動きを取らせたり、動物の動きを合わせて踊らせたりってことが出来ない。そのせいで、絵がホントにつまらなくなっている。
いや「大きく誇張できない」と書いたけど、やろうと思えば出来るのよ。「そういう誇張は作品を壊す」という判断で、やっていないだけでね。
「なるべくオリジナル版をなぞる」という方針や、ドラマパートとのバランスを考えると、それが間違いとは言い切れない。
だけど残念ながら、ミュージカルパートの魅力が無いのは紛れも無い事実なのだ。

粗筋で触れたように、ジムの職業は音楽家だ。だが、その設定がストーリーの中で活用されることは全く無い。
ピアノを弾く様子がチラッと映る程度で、どうやら売れない音楽家のようだけど、それが物語に影響を及ぼすことは全く無い。
そのことでセーラが馬鹿にするけど、キャラ設定からすると、たぶんセーラはジムが音楽家じゃなくても馬鹿にしているだろう。
あと、売れない音楽家にしては、それなりに裕福な暮らしをしているんだよね。そこはどういうことなのかサッパリ分からない。

あと、今回はダーリングとセーラが黒人なので、そこに大きな違和感を覚えるんだよね。
この物語の時代設定は、まだ馬車が当たり前に町を走っている時代なのよ。そんな時代のアメリカで黒人女性が白人男性と結婚したら、間違いなく迫害や差別の対象になるはずでしょ。
そして黒人であるセーラが白人であるジムを見下すという関係性も、考えられない状態だ。
わざわざ黒人キャラにするんだから、人種差別の要素を持ち込むつもりなのかと思ったら、むしろ「人種差別なんて無い」みたいな無理筋にしちゃってんのよね。

終盤、レディーはルルの寝室にネズミが侵入したので退治に向かおうとするが、誤解から閉じ込められてしまう。そこでトランプに頼み、ネズミを退治してもらう。
しかし部屋を見たディア夫妻はトランプがルルを襲うつもりで侵入したと思い込み、エリオットに引き渡す。
レディーは夫妻にネズミの死骸を見せた後、馬車で連行されるトランプを追い掛ける。夫妻はレディーを追い掛ける時、「トランプはルルを守ってネズミを退治してくれた」と理解する。
だけど、あの程度の状況証拠で、良く正解を導き出せたな。それまでの夫妻は鈍感で、そのせいでレディーの心を傷付けていたぐらいなのに。
そこだけ急に推理力が冴えるのね。

(観賞日:2025年4月11日)

 

*ポンコツ映画愛護協会