『ワイルド・ストーム』:2018、イギリス&アメリカ

1992年、アラバマ州ガルフポート。ハリケーンのアンドリューが迫る中、ブリーズとウィルの兄弟は父のブルースが運転するトラックで逃げていた。ウィルが「捕まったら兄ちゃんのせいだ。凧なんかで遊んでるからだ」と非難し、ブリーズは「殴ってやろうか」と反発して喧嘩が始まりそうになったのでブルースは注意した。ブルースは倒壊した大木を避けるために慌ててハンドルを切り、トラックは茂みに突っ込んだ。タイヤが茂みに挟まって立ち往生したため、ブルースは子供たちを連れてトラックを降りた。
ブルースは近くの民家を発見し、ウィルとブリーズを連れて向かう。玄関が開いていて無人だったので、彼は子供たちを残して「トラックを道に戻す」と外へ出た。ブルースはトラックに戻るが、強風を受けて思うように作業が出来ない。兄弟が避難した家は強風を受けて浮き上がり、屋根は激しく飛ばされた。それに気付いたブルースは家に戻ろうとするが、転がって来た大きなタイヤが激突して命を落とした。家は完全に屋根が無くなって崩壊寸前となり、兄弟は悲鳴を上げて泣き出した。
現在、メリーランド州アメリカ国立気象局。メキシコ湾の熱帯低気圧を観測していた職員のローリーは、局長のナイルスに異常性を報告した。ナイルスは職員のキースに、気象学者のウィルを呼ぶよう指示した。ガルフポートで調査に当たっていたウィルは、運転している特殊車両「ドミネーター」の数値を取るためドローンを飛ばすようナイルスから要請された。ガルフポートでは秋祭りが開かれていたが、保安官のディクソンは部下のマイケルズやガブリエルたちに「25年前の悲劇は繰り返さない。住民は全員避難だ。最後の車が町を出たら道路を封鎖しろ」と指示した。
財務省職員のケーシー・コービンやコナー・パーキンスたちは、数台のトラックで移動していた。避難する市民の渋滞に巻き込まれたため、先頭のトラックを運転していたケーシーは道を外れて強引に突っ切った。彼女たちが運転するトラックの荷台には古い紙幣が積んであり、武装した兵士が警護していた。ガルフポートでは犯罪集団のライスやジャッキー、ザンダーたちが通信タワーに細工を施し、トラックの到着を目にすると「札束の到着だ」と不敵な笑みを浮かべた。
ドローンを飛ばしたウィルは空の様子を確認し、大変な事態になると確信した。ケーシーたちはガルフポート財務局に到着し、荷台の紙幣を運び込んだ。ウィルはナイルスから測定作業を続けるよう指示されるが、「お断りだ。嫌な予感になる」と告げる。「手遅れになる前に州兵を呼べ」と彼は言うが、ナイルスは「君の予感だけで大統領に進言は出来ない」と告げた。ケーシーは古い紙幣が裁断されていないと知ってディーリング軍曹に理由を尋ね、シュレッダーが急に故障したと聞かされた。
犯罪集団のサシャとフリアーズは修理担当者を装い、財務局に来て責任者のモリスと会った。ケーシーは保管庫から上司のモリスに連絡し、シュレッダーの問題を報告した。モリスは既に問題を知っており、対処中だと告げる。「6億ドルの破棄までが君の仕事だ」と言われたケーシーは保管庫のコードをリセットしておきたいと申し入れ、モリスの許可を得た。町を出ようとしたウィルは、修理店を営むブリーズに連絡を入れる。しかし留守電になっていたため、彼は町に引き返した。
財務局でシステムエラーが発生したため、モリスは緊急連絡先であるブリーズの店に電話を入れようとする。しかし全ての電話が通じなくなっていたため、ケーシーがブリーズの元へ向かった。ウィルが修理店に着くと、ブリーズは昼から酒を飲んでソファーで眠り込んでいた。ウィルは兄を起こし、「ハリケーンが来る。父が死んだ時より大きい」と避難を促す。ブリースは避難を拒むが、ウィルが説得すると「その前に窓を塞ぐのを手伝え」と告げた。
クレメントたちは電話修理を装って財務局に入り込もうとするが、警備の兵士に「許可が出ていない」と立ち入りを拒まれる。そこで彼らは銃を持ち出し、兵士を次々に殺害した。一味のリーダーであるコナーも本性を現し、局内の職員を次々に射殺した。クレメントたちは爆弾を使って壁を破壊し、クレメントと合流した。一味はサシャたちとも合流し、モリスを脅して協力を要求した。ケーシーはブリーズの元に到着し、発電装置の修理を依頼した。ブリーズは道具を用意し、ケーシーの車で財務局に向かった。
サシャたちは保管庫を開けようとするが、コードが変更されていた。モリスに変更する権限は無く、コナーはケーシーの仕業だと確信した。彼はモリスを脅し、ケーシーが修理屋を呼びに行ったことを聞き出した。財務局に戻ったケーシーは異変を悟り、ブリーズに車で待機するよう指示した。彼女は拳銃を構えて建物に入ろうとするが、待ち伏せていた一味が銃の照準を合わせて降伏を要求する。ブリーズは車にケーシーを乗せ、逃亡を図る。一味がポールを作動させて行く手を塞ぐと、ブリーズはケーシーを逃がして捕まった。
ケーシーは追って来た一味と銃撃戦になり、通り掛かったウィルが車に乗せる。話を聞いたウィルは本部に連絡しようとするが、衛星通信の装置は銃撃を受けて壊れていた。ケーシーは苛立つウィルに落ち着くよう説き、助けを求めるため保安官事務所へ行くよう指示した。コナーはブリーズに、修理を急ぐよう命じた。ウィルは保安官事務所に着き、ディクソンに事情を話して助けを求めた。しかしディクソンはコナーの仲間であり、ウィルとケーシーにショットガンを構えた。
デイクソンはコナーに連絡を取り、「ザンダーが向かってる」と言われる。ケーシーは隙を見て発砲し、ウィルと共に事務所から脱出する。2人が車で逃走すると、ディクソンは駆け付けたザンダーと共に追跡する。ウィルはディクソンとザンダーの車を横転させ、失神に追い込んだ。ケーシーはディクソンのショットガンを奪い、ウィルと共に逃亡した。「通信網が断たれてるのにハッカーたちは作業できた」とケーシーが疑問を呈すると、ウィルは「専用の衛星回線を使ってる可能性がある」と述べた。「その回線を遮断すれば救助を待てる」とケーシーが言うと、彼は車内の装置を使って一味の使っている回線を簡単に割り出した。
ウィルはケーシーの質問を受け、気象学者になった理由を話す。「愛する人が目の前で殺されるのを二度と見たくない」と彼が口にすると、ケーシーは「私もよ。ユタにいた頃、私の決断のせいで、ある人が死んだの」と告げた。コナーとジャッキーはトラックを運転し、車が壊れて動けなくなったディクソンとザンダーを迎えに出向いた。ウィルとケーシーは一味が使っている通信タワーに到着し、車のウインチを使って倒すことにした。ウィルはケーシーに車での見張りを頼み、タワーに登った。しかしケーシーが誤って車のライトを付けたため、コナーたちに気付かれてしまった。
コナーたちがトラックで通信タワーに来たので、ケーシーは発砲する。銃撃戦の末にジャッキーが撃たれ、トラックはガソリンスタンドに衝突して炎上した。ウィルとケーシーは一味に狙われながらも協力してタワーを倒すが、まだウインチが繋がれたままだった。ウィルはケーシーに、「ウインチを外せ。俺が奴らを撃退する」と告げる。ウィルは敵と戦い、ザンダーは死亡した。ケーシーはウインチを外し、ウィルと共に逃亡した。
ブリーズは捕まっている兵士たちに状況を知らせ、脱出させようとする。しかし防犯カメラの映像で気付いたフリアーズが金網に電気を流し、ブリーズの行動を阻止した。コナーとディクソンの元にはマイケルズたちが到着し、車でに乗せて救助した。コナーは財務局に戻り、ザンダーとジャッキーが死んだことをライスに伝えた。そこにディクソンが部下たちを率いて現れ、銃を向けた。彼はコナーに、「後は俺たちがやる。金は俺が貰う」と告げた。
コナーはディクソンを射殺し、マイケルズたちに「協力すれば1人に2000万ドルずつ払ってやる」と持ち掛けた。マイケルズたちは取引を受け入れ、彼への協力を約束した。ケーシーはウィルから作戦を聞かされ、コナーに電話を掛ける。彼女は「人質を解放すれば、保管庫の中身を明け渡す」と提案し、コナーと交渉してブリーズとモレノの解放を約束させた。居場所を訊かれたケーシーは、「モールにいる。町に1つしか無いから自分で探して」と告げ、電話を切った。
ウィルとケーシーが準備を整えていると、保安官補のダイアモンドとボールドウィン保安官補がブリーズを連れて現れた。ウィルは兄に「合図でトリックプレーをやるぞ」と告げ、ケーシーに合図を送る。ケーシーが天井に発砲したのでモールの屋根が壊れ、突風が吹き込む。ダイアモンドとボールドウィンは上空に飛ばされるが、ワイヤーを腰に繋いでいたウィルとケーシーは無事だった。ブリーズは近くの柱に捕まり、モールの外に脱出した。
ウィルとケーシーは修理店へ移動し、ブリーズが用意していたサンドウィッチで腹ごしらえをする。ケーシーは一味がハリケーンの目を利用して逃げるつもりだと確信し、車に爆弾を仕掛けることをウィルに提案した。ケーシーは爆弾を作る材料を知っており、「ゲートの外に車爆弾を仕掛け、出て来たところを狙う」と話す。彼女はウィルを説得し、ドミネーターを使うことを承諾させた。ケーシーが爆弾を作ろうとしていると、ライスたちが乗り込んで来た…。

監督はロブ・コーエン、原案はアンソニー・フィングルトン&カルロス・デイヴィス、脚本はスコット・ウィンドハウザー&ジェフ・ディクソン、製作はモシュ・ディアマント&クリストファー・ミルバーン&ロブ・コーエン&マーク・デイモン&マイケル・タドロスJr.&ダニー・ロス&ダミアーノ・トゥッチ&カレン・ボールドウィン&ウィリアム・J・イマーマン、製作総指揮はフィル・ハント&コンプトン・ロス&ピーター・ハンプデン&ナミット・マルホトラ&グレッグ・ギャヴァンスキー&アラステア・バーリンガム&チャーリー・ドンベック&タマラ・バークモー&ジェナ・サンズ=アゲロ&クリストファー・コノヴァー&カルロス・デイヴィス&アンソニー・フィングルトン&バイロン・アレン&キャロリン・フォークス&ジェニファー・ルーカス&テレンス・ヒル&マーク・ボード&クリス・チャラランボース&マーク・デヴィトル&マリーナ・ベスパロフ&セルゲイ・ベスパロフ、共同製作総指揮はアリー・グリーンリーフ・マルドナード、撮影はシェリー・ジョンソン、美術はケス・ボネット、編集はニーヴン・ハウィー、衣装はイリーナ・コチェヴァ、特殊効果監修はエリア・ポポフ、音楽はローン・バルフェ。
出演はトビー・ケベル、マギー・グレイス、ライアン・クワンテン、ラルフ・イネソン、ベン・クロス、メリッサ・ボロナ、ジェームズ・カトラー、クリスチャン・コントレラス、ジミー・ウォーカー、エド・バーチ、モヨ・アカンデ、ジェームズ・バリスケイル、エリック・ロンデル、マーク・バスナイト、キース・エヴァンス、マーク・リノ・スミス、ブルック・ジョンストン、パトリック・マコーリー、レナード・ディケンズ、スチュアート・マッカリー、ナターシャ・カラム、JR・エスポジート、スティーヴ・バドゥスケ、ヴェセリン・トロヤノフ、ライアン・ディーリー他。


『ハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝』『バーニング・クロス』のロブ・コーエンが監督を務めた作品。
『プリズン:インポッシブル』『デッドトリガー』のリライトを担当していたスコット・ウィンドハウザーと、これが映画デビューとなるジェフ・ディクソンが脚本を手掛けている。
ウィルをトビー・ケベル、ケーシーをマギー・グレイス、ブリーズをライアン・クワンテン、コナーをラルフ・イネソン、ディクソンをベン・クロス、サシャをメリッサ・ボロナ、ライスをジェームズ・カトラーが演じている。

冒頭、避難している家が飛ばされそうになった時、ウィルが空を見上げると雨雲が一瞬だけドクロの形になる。それはウィルが見た幻覚か、たまたまドクロっぽい形になったのか、真実は不明だ。
どうであれ、たぶんオープニングで観客を怖がらせるためにスパイスを加えようとしたんだろう。
だけど完全に逆効果で、そこは普通に「強風で屋根が飛ばされ、家が壊れそうになり」ってのを描いた方が良かった。
そこにファンタジーを入れることで、いきなりリアリティーから離れてしまう。
ハリケーンの迫力や恐怖を表現するには、リアリテイーに寄せた方が得策だ(もちろん、「あたかもリアリティー」でいいのよ)。

オープニングシーン、タイヤが転がって来るとブルースの姿が消えるので、そこで彼が死んだのだろうってのは何となく分かる。現在のシーンになって、「父が死んだ」という台詞もあるしね。
ただ、映像を見ていると、そのシーンは何となくボンヤリしているように感じる。
それよりも問題なのは、ウィルとブリーズが無事で生き延びているってこと。
あの状況で2人の子供だけが取り残されて、どうやって無事に生還したのか。それは現在のシーンになっても、説明されないからね。
空を見上げるウィルのアップから現在のシーンに切り替えることで、誤魔化しているつもりかもしれない。だけど、全く騙し切れていないからね。

オープニングで「ハリケーンの襲来で父が命を落とす」という出来事が描かれ、現在のシーンに切り替わるとウィルが気象学者になってハリケーンを観測している。
なので、「ウィルがハリケーンの被害を最小限に食い止め、人々を救おうとする」ってのを描く災害映画かと思っていた。
しかし、ハリケーンと人間の戦いを描く映画なら、『ツイスター』を始めとして何本も作られている。同じことをやっても能が無いと思ったのか、この作品はそこを外してきた。
ってなわけで、この映画は犯罪とハリケーンを組み合わせている。
っていうかメインは「クライム・サスペンス」であり、ハリケーンは舞台装置のような扱いだ。

コナーは財務局を制圧してモリスを脅す時、「ハリケーンの襲来は賭けだった」と言っている。彼らは最初からハリケーンの襲来を想定し、その日に合わせて計画を実行しているのだ。
だけど、その日にハリケーンがガルフポートを襲うかどうかなんて、なかなか分からない。
もちろん天気予報は出るけど、あくまでも確率に過ぎないわけで。熱帯低気圧が弱まるかもしれないし、進路がズレるかもしれないわけで。
「ハリケーンが発生してガルフポートを襲う」という確率に賭けた計画って、どんだけギャンブル性が高いんだよ。
もっと確実な計画を立てず、そんなギャンブルに出るメリットがサッパリ分からないわ。

そもそも、ハリケーンの日に財務局を襲うことのメリットが見えないのよ。
どうやら、「ハリケーンで市民を避難させて道路が封鎖されるから、犯行には都合がいい」という考えらしい。
でも、そこで得たメリットなんて、遥かに凌駕するデメリットによって全て潰れるでしょ。
全ての市民が避難しなきゃいけないぐらいのハリケーンが襲来するってことは、そこにいたら自分たちだって命の危険があるわけで。「命あっての物種」という言葉があるけど、幾ら6億ドルを入手しても死んだら無意味なわけで。

「アクションシーンさえ次々に用意すれば、それで満足できるでしょ」と思ったのか、登場人物のキャラ造形はペラペラだ。
強盗一味には兄弟や恋人の関係が設定されているが、充分に活用されているとは到底い難い。ただ単に「強盗グループ」という設定でも、大差が無い。
財務局の職員や保安官が強盗一味に参加しているが、その動機は「大金が欲しいから」というだけ。分かりやすいが、何の深みも無い。
その職業設定は、「ストーリー進行にとって都合がいい」というだけのモノだ。

ブリーズは昼間から酒を飲んで居眠りしているが、だからって「酒に溺れて人生を踏み外している」というわけではない。「生きる意欲を失っていたが、今回の一件で大きく変化して」みたいなドラマは無い。
昼間から酒ばかり飲むようになった理由も良く分からない。
父の死に罪悪感でも抱いているのかと思ったが、そういう様子は無い。
冒頭でウィルが「捕まったら兄ちゃんのせいだ」とブリーズを責めていたが、父の死で兄弟に心のわだかまりが出来てギクシャクしているような設定も無い。

ケーシーはユタで仲間を死なせてしまう失態を犯したらしいが、詳細については教えてくれない。
そこを説明しないもんだから、「過去の失敗を引きずっていたケーシーが、それを今回の出来事に重ね合わせて乗り越える」というドラマもマトモに描くことが出来ていない。
そこは「ケーシーは財務局の仕事をしているのに戦闘能力が高い」という不自然さの言い訳として、「かつて軍人だった」という設定を用意しているのだ。
それに関連して「過去に何かがあって」という形にしてあるが、細かいディティールは放棄しているのだ。

一味は保管庫のコードが変更されていたため、ケーシーを捕まえようとする。しかし、サシャとフリアーズがコンピュータを使って解析し、コードを割り出そうとしている。もしもタワーが倒れなかったら、そのままコードを突き止めることが出来ている。
そうなると、一味がケーシーを必死になって捕まえようとしていたのは何なのかってことになる。
もちろん、ケーシーはウィルと協力してタワーを倒そうとしていたので、結果的には「その行動は間違っちゃいなかった」ってことになる。
だけど目的が全く違っているわけで、しかも自分たちの意識していない内に摩り替っているような状態なので、それはシナリオとして間違っちゃいないかと。

ディクソンはコナーに銃を向ける時、「計画は完璧だった。成功に必要なのはハリケーンが1つ。なのにお前のせいで台無しだ」と言う。
だけど、計画が台無しになったのは、決してコナーが弱気になってミスをやらかしたからではない。そもそも、計画は完璧でも何でもなく穴だらけだったのだ。
「成功に必要なのはハリケーンが1つ」と言うが、むしろハリケーンによるデメリットの方が遥かに大きいんだし。
ハリケーンと犯罪映画を組み合わせようとした時に、そこのアイデアが既に破綻しているんだよね。
あと、ただでさえ一味は杜撰な計画を完璧だと思い込んでいるボンクラどもなのに、一枚岩で結束しているわけでもないんだよね。大金に目がくらんで、あっさりと仲間割れを始めちゃうんだよね。

モールのシーンは、かなり無理がある。
ウィルとケーシーはワイヤーで繋がっているから、ハリケーンで浮かび上がっても吹き飛ばされずに済むってのは受け入れられる。だけどブリーズが助かるのは、何の説得力も無いぞ。
ウィルが「合図でトリックプレーをやるぞ」と事前に言っているけど、具体的に何をやるのかブリーズは全く分かっちゃいないわけで。それにワイヤーを体に繋げているわけではないから、ハリケーンに飛ばされないようにするには「近くの壁や柱に捕まる」という方法しか無いわけで。
それは敵と大して変わらない状態でしょ。
だからブリーズがモールの外に脱出できたのは、ただラッキーだっただけなのよ。

ウィルが通信タワーに登るシーンまでは、ハリケーンがアクションに影響を及ぼすことが全く無い。
モールのシーンでは前述したようにウィルがハリケーンを利用するが、かなり都合のいい展開になっている。ケーシーが爆弾を作ろうとしているトコへ一味が襲い掛かると、大津波が来て全員が流される。
ハリケーンがデウス・エクス・マキナのような扱いになっている。
そしてハリケーンの影響が及ぶ度に、「人間どもが金を巡って必死に争っても、大きなハリケーンの前では無力」ってのを見せられる形となっている。
なので、犯罪映画の部分がバカバカしくなっちゃうのよね。

財務局の中だけで話を盛り上げる自信が無かったのか、そこで物語を畳むアイデアを思い付かなかったのかは知らないが、クライマックスは大型トラックを使ってのカーチェイスになっている。
コナーの一味がケーシーを拉致して金を奪い去り、それをウィルとブリーズが追い掛けるのだ。
そんなカーチェイスの大半で、ハリケーンは何の影響も及ぼさない。
そのくせ最後は都合良くハリケーンが襲来し、一味の盗んだ金を全て吹き飛ばしてコナーを始末する。
最後まで、分かりやすくデウス・エクス・マキナになっているのね。

(観賞日:2020年7月28日)

 

*ポンコツ映画愛護協会