『リトル・レッド2 〜ヘンゼルとグレーテル誘拐事件!?〜』:2011、アメリカ

かつてレッド、パケットばあさん、オオカミ、リスのトゥイッチーは力を合わせ、ウサギのボインゴが企んだ計画を阻止した。事件を解決した後、あらゆる物語にハッピーエンドを迎えさせるための組織「HEA」の司令官だった私立探偵のニッキー・フリッパーズは、自分の下で働かないかと4人に持ち掛けた。こうしてレッドたちは、HEAの捜査官となった。しかし現在、レッドは秘密の場所で伝説の頭巾シスターズから訓練を受けていた。彼女が現場の任務を離れたことで、チームの結束は乱れていた。
ある夜、匿名の通報を受けたHEAの面々は事件解決のために出動した。ジンジャーブレッド・ハウスに2人の子供が閉じ込められており、魔女に食べられそうになっているというのだ。オオカミとトゥイッチーはニッキーの指示を無視し、自分たちだけで事件を解決しようとする。煙突から家に侵入したトゥイッチーは、捕まっているヘンゼルとグレーテルを発見するが、そこへ魔女が戻って来た。ニッキーは特殊部隊を突入させるが、魔女は子供たちを連れて逃亡する。パケットばあさんが追跡するが、魔女に手錠を掛けられた。彼女はオオカミに「レッドを呼んで。一人の力じゃ無理だよ」と言い残し、連れ去られてしまった。
レッドはお菓子を配達しようとしていたが、トロールのモスに橋を塞がれた。モスをかわして橋を渡ろうとしたレッドだが、挑発されて腹を立てる。レッドがモスを叩きのめしているところへ館長のイオナが来て、「テストは終了。配達は失敗のようね」と告げた。レッドはニッキーから連絡を受け、おばあさんが拉致されたことを知った。全ての訓練を終えたシスターは、ある試験を受けることになっている。その試験とは、千年以上も受け継がれているスーパートリュフを再現することだ。秘伝のレシピを知っているのは優秀なシスターだけで、数少ない合格者の一人がパケットばあさんだった。スーパートリュフを食べれば、誰にも負けないパワーを得ることが出来る。
レシピが保管されている箱をイアナが開けると、何者かに盗まれていた。最後の材料はレシピに載っていないが、パケットばあさんは知っている。それを聞き出すために犯人は誘拐したのだろうと、イオナはレッドに告げた。魔女は盗み出したレシピをばあさんに見せ、スーパートリュフを作るよう要求した。ばあさんは拒否するが、人質のヘンゼルとグレーテルに助けを求められたため、料理の準備をするようヴェルーシュカに告げた。
ヘリコプターでHEA本部に戻ったレッドは、オオカミから「お前がばあさんの近くにいれば、あんなことにはならなかった」と文句を言われて反発する。ニッキーはレッドたちに、スーパートリュフの材料が次々に盗まれていること、実行犯を辿るとクラブ経営者の巨人が浮上したことを話す。レッドとオオカミは2人での潜入捜査を命じられ、渋々ながら承諾した。クラブに入ったレッドは情報屋のジミーから手掛かりを得ようとするが、巨人の元へ連行されてしまう。巨人がレッドに凄んでいると、実業家に変装したオオカミが現れて饒舌に語り掛ける。なぜか巨人はオオカミを「愉快な爺さんだ」と気に入り、レッドと共に食事を取るよう勧めた。
巨人がレッドとオオカミに気を取られている隙に、トゥイッチーがジミーを連れ出そうとする。しかし巨人に気付かれたため、レッドたちは慌てて逃げ出した。レッドはジミーから、巨人が盗んだ材料を注文した依頼主はボインゴだと聞き出した。収容所を訪れたレッドたちはボインゴと面会し、ヴェルーシュカとの関係について聞き出そうとする。魔女は欲しい物をメモし、その内容をボインゴが伝達していた。収容所にいた掃除婦が魔女だと気付いたレッドたちだが、逃げられてしまった。
レッドに非難されて言い争いになったオオカミは、「分かった、正しいのはお前だよ。面倒を掛ける前に消える」と不愉快そうに立ち去る。レッドは魔女が脱ぎ捨てた掃除婦の服を拾い、そこにあった「DCT」というロゴを手掛かりと考えた。パケットばあさんは魔女の目を盗んで厨房を抜け出すが、ヘンゼルとグレーテルに捕まってしまう。誘拐は狂言で、彼らがスーパートリュフを作ろうとしている犯人だったのだ。魔女は2人の手下に過ぎなかった。
仮面を外した魔女の正体は、頭巾シスターズの訓練所でパケットばあさんと共に修業していたヴェルーシュカだった。パケットばあさんが優秀だったため、いつもヴェルーシュカは二番手だった。レシピの儀式でヴェルーシュカはトリュフ作りに失敗し、パケットばあさんは成功した。そこでヴェルーシュカは密かにレシピを盗み出し、60年に渡って秘密の材料を探り続けた。そんな彼女にヘンゼルとグレーテルが声を掛け、パケットばあさんにスーパートリュフを作らせる計画に誘ったのだ。
レッドは街に出て「DCT」と呼ばれる場所を見つけ出そうと聞き込みを続けるが、何の情報も得られない。しかしネズミのアーネストと出会い、それが「ダーク・キャッスル・タワー」と呼ばれるホテルだと判明した。レッドから連絡を受けたニッキーは、チームを派遣しようとする。しかしヘンゼル&グレーテルはHEAの動きを察知しており、豚の攻撃部隊を本部に送り込んだ。さらに兄妹は、マッド・ホッグ、ストーン、ウッドという3匹の豚をオオカミとトゥイッチーの住まいに差し向けた。攻撃を受けたオオカミとトゥイッチーは、何とか脱出することに成功した。
レッドは単独でタワーに潜入しようとするが、失敗して攻撃部隊に捕まった。オオカミとトゥイッチーがHEA本部へ行くと壊滅状態になっており、残っているのはニッキーだけだった。オオカミとトゥイッチーはタワーへ行き、レッドを救出した。グレーテルはヘンゼルに、逃げたレッドとオオカミを利用する計画を持ち掛けた。レッドは厳重な警備を突破するため、マッチョを集めようと考える。彼女たちは人気歌手になったカークの元を訪れ、協力を求めた。
カークは元傭兵である仲間のハッピー・ヨーデラーズを集め、タワーの警備隊を退治するために手を貸してくれた。レッド、オオカミ、トゥイッチーは、何も知らずにヘンゼルとグレーテルを助けた。オオカミとトゥイッチーはエレベーターで彼らを外へ連れ出そうとするが、ガスの攻撃を浴びて捕まった。パケットばあさんを捜して厨房に入ったレッドは、スーパートリュフの作り掛けの材料を見つける。それを舐めたレッドは最後の材料に気付き、「マカダミア・ナッツだ」と口にした。
奥の部屋に隠れていたヘンゼル&グレーテルが厨房に現れ、レッドを捕まえた。全ては2人の計画通りだったのだ。2人はレッドをパケットばあさんと共に拘束し、スーパートリュフを完成させた。2人は世界中の悪党から注文を受けており、スーパートリュフを使って大儲けを企んでいた。スーパートリュフを食べた2人は、パワーを得て巨大化した。2人は用済みになったヴェルーシュカを置き去りにしてタワーから去った。残されたレッドたちの前には、兄妹が用意しておいた巨大蜘蛛が現れた…。

監督はマイク・ディサ、原案はコーリー・エドワーズ&トッド・エドワーズ&トニー・リーチ、脚本はコーリー・エドワーズ&トッド・エドワーズ&トニー・リーチ&マイク・ディサ、製作はモーリス・カンバー&ジョアン・コリンズ・ケアリー、製作総指揮はボブ・ワインスタイン&ハーヴェイ・ワインスタイン&エリック・ロビンソン&レイチェル・L・ウォーレン&ラッセル・ポラック、共同製作はデヴィッド・K・ラヴグレン、製作協力はレベッカ・パラトニク、編集はトム・サンダース&ロバート・アニッチ、美術監督はライアン・カールソン、音楽はマーレイ・ゴールド、追加音楽はクリストファー・ティン、音楽監修はメアリー・ラモス、オリジナル歌曲はダン・マイヤーズ&トム・キーン。
声の出演はヘイデン・パネッティーア、グレン・クローズ、パトリック・ウォーバートン、ジョアン・キューザック、デヴィッド・オグデン・スティアーズ、ビル・ヘイダー、エイミー・ポーラー、マーティン・ショート、コーリー・エドワーズ、ブラッド・ギャレット、アンディー・ディック、デヴイッド・アラン・グリア、ウェイン・ニュートン、チーチ・マリン、トミー・チョン、フィル・ラマー、ベンジー・ガイザー、ダニー・パディ、デブラ・ウィルソン・スケルトン、トレス・マクニール、ハイジ・クラム、クラリッサ・ジェイコブソン、マイク・ディサ、ロブ・ポールセン、ランス・ホルト、レベッカ・アンダーソン他。


2005年の長編アニメーション映画『リトル・レッド レシピ泥棒は誰だ!?』の続編。
監督は、映画のメガホンは初めてとなるアニメーターのマイク・ディサ。
前作の監督を務めたコーリー・エドワーズ&トッド・エドワーズ&トニー・リーチは、今回は原案と脚本のみ。
レッド、パケットばあさん、オオカミ、ニッキー、カーク、トゥイッチー、ボインゴ、ジャペスというキャラクターは前作からの登場組。ただし声優陣に変更があり、レッド役はアン・ハサウェイからヘイデン・パネッティーア、カーク役はジム・ベルーシからマーティン・ショートになっている。
パケットばあさん役のグレン・クローズ、オオカミのパトリック・ウォーバートン、ニッキーのデヴィッド・オグデン・スティアーズ、ボインゴのアンディー・ディック、トゥイッチーのコリー・エドワーズ、ヤペスのベンジー・ガイザーは続投。
他に、ヴェルーシュカの声をジョアン・キューザック、ヘンゼルをビル・ヘイダー、グレーテルをエイミー・ポーラー、ジミーをウェイン・ニュートン、巨人をブラッド・ギャレット、マッド・ホッグをチーチ・マリン、ストーンをトミー・チョン、ハッピー・ヨーデラーズのハイジをハイジ・クラムが担当している。

前作のラストで、ニッキーはレッド、パケットばあさん、オオカミ、トゥイッチーに対して、自分が物語にハッピーエンドを迎えさせるための組織「HEA」の一員だと明かし、「良ければ私の元で働いてみないか」と持ち掛けていた。すると4人は、働く意欲を示していた。
前作から6年も経過してからの続編なので、そのラストを無視しても別に構わないのだが、そこは律儀に引き継いでいる。
ただし、そういう意味での繋がりはあるけど、前作を見ていなくても全く支障は無い。
でも前作を見ていないと、『赤ずきん』の登場人物がメンバーであることに疑問を抱くかもしれない。今回の物語には、『赤ずきん』は何の関係も無いからね。
で、そう考えると、もはや続編を作ろうという時点で無理があるような気がするぞ。『赤ずきん』の物語の続きをやるわけじゃないんだから。
そして、そうでないとすれば、『赤ずきん』の登場人物を使う意味が無い。そこにパロディーの素は無いんだから。

前作はグリム童話『赤ずきん』をベースにして、芥川龍之介の短編小説『薮の中』みたいな話をやろうという映画だった。それが成功していたかというと、全く出来ていなかったが、そういう仕掛けを持ち込んでいたことは確かだ。
ただ、同じ手を再び使うことは出来ない。いや、出来ないことは無いけど、使ったらアホだ。
また、前作では、「実はレッドが凄腕の空手家」とか、「実はパケットばあさんがXスポーツの達人」とか、そういう設定があったわけだが、今回は最初から彼女たちが運動能力に優れていることは分かっている。
だから、そういうトコで意外性を持たせることも出来ない。

そこでコーリー・エドワーズ&トッド・エドワーズ&トニー・リーチは、今回の続編をスパイ・アクション映画として仕立て上げ、そこにパロディーの要素を持ち込むという構成にした。
どうせ前作もミステリーの仕掛けを持ち込んでおきながら全く機能していなかったし、むしろアクションの要素が圧倒的に強くなっていた。
それを考えれば、続編を単純明快なスパイ・アクションにするってのは賢明な判断だったんじゃないだろうか。
ただし大きな問題は、それでも面白くないってことだが。

前作は『赤ずきん』の登場人物が登場し、冒頭部分で同作品の1シーンが使われていた。
しかし、それ以降の展開は、あまりにも原作童話からの逸脱が大きくて、『赤ずきん』のパロディーという印象は薄かった。
今回は『ヘンゼルとグレーテル』の登場人物が登場するが、やはり同名童話のパロディーという印象は薄い。
ファンタジーの世界観でスパイ・アクションをやりながら、そこに『羊たちの沈黙』や『エントラップメント』『スター・ウォーズ』など、様々なヒット映画のパロディーを持ち込んでいるという構成だ。

で、そうなると、「それって『シュレック』の二番煎じになってねえか?」と思ってしまう。
っていうか、レッドの「実は凄腕の空手家」ってのも、『シュレック』と被ってるしね。
そこの路線を狙うのは、得策とはも思えないぞ。『シュレック』はシリーズ第1作の公開が2001年だから、かなり遅れ馳せながらの便乗になっちゃうし。
まあ便乗を意図したわけではないんだろうけど、でも『シュレック』が10年も前にやったアイデアを模倣しているだけになっているので、そこは厳しいことになっている。
それで『シュレック』より面白い内容に仕上がっていればともかく、そうじゃないんだし。

単純に「スパイ・アクション映画」としてどうなのかと考えても、冴えない出来栄えなんだよな。
最もダメなのは、ヒロインであるはずのレッドがヘマを繰り返し、それが「笑えるミス」として描かれていないってこと。
クラブでは彼女が真正面から巨人を尋問しようとして危機に陥り、収容所ではバカ正直にボインゴを尋問して嘲笑される。タワーに潜入しようとした時は落下して捕まり、オオカミに助けてもらう。そして、ついにはスーパートリュフの秘密の材料をヘンゼル&グレーテルに知られてしまう始末。
見ている途中で、レッドは不愉快な奴に成り下がっている。

あと、レッドとオオカミを使って「仲違いするが和解する」というドラマを作り、ここでバディー・ムービーの要素を構築しようとしているんだけど、これも上手く行っていない。
そもそも2人が仲違いする経緯に無理がありすぎる。最初から「2人を喧嘩させる」という目的が設定されていて、そこに向けてキャラを動かしているってのが不格好な形で露呈してしまっている。
それと、そもそもレッドとオオカミでバディーを作るってと自体、どうかと思うし。オオカミにはトゥイッチーという相棒がいるんだからさ。
それなら「バディー」じゃなくて、ばあさんも含めた「チーム」としての活躍を描く内容にした方がいいんじゃないかと思うよ。

(観賞日:2014年3月15日)

 

*ポンコツ映画愛護協会