『リトル・レッド レシピ泥棒は誰だ!?』:2005、アメリカ

いつも赤頭巾を被っている少女のレッド・パケットは、山の上にあるおばあさんの家を訪れた。バスケットを持って家に入ると、ベッドにはおばあさんに化けたオオカミがいた。オオカミはおばあさんに成り済まし、レッドが持っている駕籠の中身を手に入れようとする。しかしレッドに軽く見抜かれ、正体を現した。レッドがオオカミと戦おうとしていると、全身を縛られたおばあさんがクローゼットから飛び出して来た。さらに、斧を持った木こりのカークが、叫びながら窓から飛び込んで来た。現場に駆け付けたビル・ストーク刑事たちは、家庭内暴力に不法侵入、斧の不法所持に人食い未遂の容疑でレッドたちを拘束した。
後からやって来たグリズリー署長は、「レッドがおばあさんに何かを届けようとして、オオカミが2人を食べようとして、ヒーロー気取りのカークが飛び込んだ」という単純な事件だと考える。グリズリーが全員を連行しようとした時、探偵のニッキー・フリッパーズが現れて「任せてくれ。後は引き受けた」と言う。グリズリーが「森中でお菓子のレシピが盗まれてる。俺は何ヶ月も前から事件を追って、ここに辿り着いた。事件は解決だ」と告げると、ニッキーは「容疑者が4人いれば、話も4パターンある。喋らせれば誰かがゲロするはずだ」と告げる。早速、4人の取り調べが行われることになった。
最初の証言者はレッドだ。いつものように彼女は自転車を使い、おばあさんのお菓子を配達していた。その途中、レッドはマフィンの店で働くウサギのボインゴと出会う。するとボインゴはレシピを盗まれて店が潰れたこと、そのせいでクビになったことを話す。レシピ泥棒のせいで店は次々に潰れており、森は絶滅寸前だ。レッドはおばあさんに電話を掛け、「おばあさんのレシピは森で一番有名なんです。盗まれたら大変です。そちらへ届けますから、保管して下さい」と告げる。しかし、おばあさんは「来てはダメよ。子供には危ないわ。お店の金庫に入れておけば大丈夫」と告げて電話を切った。
店に投石があって「次はお前だ」というメッセージが届いたため、レッドはレシピをおばあさんに届けようと考えた。レッドはお菓子を入れた駕籠にレシピを隠し、山へ向かった。ロープウェーから落下した彼女は、オオカミと遭遇した。駕籠の中身を見せるよう脅されたレッドは、それを拒絶して逃げ出した。レッドの仕掛けた罠で川に落ちてしまったオオカミは、「いつまでもレシピを守れると思うなよ」と捨て台詞を吐いた。
山の北側に古い登山道を発見したレッドは、ずっと歌ってばかりいるヤギのヤペスと出会った。レッドはヤペスの小屋からおばあさんに電話を掛けるが、何か焦っている様子で「悪いんだけど今、盆栽をいじってて」と早々に切られてしまった。おばあさんに何か起きたと確信したレッドは、ヤペスのトロッコに乗り込む。そして家に着き、おばあさんに化けたオオカミと遭遇したと彼女は語った。
2番目の証言者はオオカミだ。ニッキーはオオカミが新聞記者だと思い出した。オオカミは半年前からレシピ泥棒を調査しており、レッドに疑いの目を向けた。オオカミは彼女の雇い主を突き止めようと考え、タレ込み屋のウールマークと接触した。パケットばあさんの孫だと知ったオオカミは、レッドが乗ったロープウェーを助手のトゥイッチーと共に見張る。オオカミは落ちて来たレッドに声を掛けるが、、トゥイッチーが壊れたカメラを直す時に尻尾を挟んだため、叫んでしまった。それでレッドは慌てて逃げ出した。
オオカミは急いで後を追うが、空手の達人であるレッドにやられる。ボインゴから近道を聞き出したオオカミはトゥイッチーと一緒に川を移動し、トロッコに乗り込んだ。おばあさんの家に到着したオオカミは、コスプレ衣装で彼女に変装した。その時、既におばあさんはクローゼットの中で縛られていたと彼は証言した。その証言の裏付けとして、トゥイッチーは撮影した写真をニッキーに見せた。
3番目の証言者はカークだ。カークは木こりではなく、役者志望の男だった。彼は「木こりマークのクリーム」のコマーシャルに出演するため、オーディションを受けた。監督の反応が芳しくなかったために不合格を確信したカークは、串カツ屋のバイトに戻った。子供たちに串カツを配って移動販売車に戻ると、タイヤや設備がごっそりと盗まれていた。そこへ監督から電話が入り、二次審査に来てほしいと言われる。「森に入ってナチュラルな木こりを身に付けてくれ」と指示された彼は、斧を持って木を切りまくる。しかし転がって来た大木に追われたために慌てて逃げ出し、パケットばあさんの家へ飛び込んだのだと彼は証言した。
4番目の証言者はパケットばあさんだ。只者ではないと見抜いたニッキーに、彼女は「私は人生を過激に楽しみたいの」と告げた。彼女はXスポーツに夢中で、レッドから「レシピを届けます」という電話があった時に断ったのも、エクストリーム・スキーの大会があるからだった。出場に向けて特訓を積んでいたパケットばあさんは、雪山へ出向いた。仲間のPビギーやゾラたちと合流した。強敵のドルフと競いながらレースに挑んでいる最中、レッドから電話が入った。そこで「盆栽をやっている」と嘘をつき、早々に切ったのだ。
ドルフの一味と戦いながらレースを繰り広げたパケットばあさんは、彼らが泥棒に雇われていることを知った。ドルフは彼女を崖下に突き落とし、「次はレッドだ」と誰かに電話を入れた。パケットばあさんは崖下から脱出したレースに復帰し、見事に優勝した。すぐに彼女はパラシュートを使い、空を飛んで自宅へ向かう。パケットばあさんは煙突から家に飛び込んだが、パラシュートがシーリングファンに絡まってグルグル巻きになってしまい、クローゼットに飛び込んでしまったのだという。
レッドはパケットばあさんに腹を立て、「自分ばっかり人生を楽しんで。私は毎日、配達ばかり。森から出たことも無いのよ。私だって冒険してみたいのに」と不満をぶつけた。「誰も逮捕できないのか」と怒るグレゴリーに、ニッキーは「我々は泥棒まで、あと一歩に迫っている。謎を解く鍵は、この部屋にある」と告げた。密かに侵入した何者かが駕籠を持ち去るが、誰も気付かなかった。レッドが姿を消したために疑いが掛けられる中、ニッキーはレシピ泥棒が誰なのかを指摘する…。

監督はコリー・エドワーズ、共同監督はトッド・エドワーズ&トニー・リーチ、原案はトッド・エドワーズ&コリー・エドワーズ、脚本はコリー・エドワーズ&トッド・エドワーズ&トニー・リーチ、製作はモーリス・カンバー&スウ・ビー・モンゴメリー&プレストン・スタッツマン&デヴィッド・K・ラヴグレン、製作協力はケイティー・フーテン、編集はトニー・リーチ、デジタル&3Dスーパーバイザーはグレン・ニューフェルド、音楽はジョン・マーク・ペインター、オリジナル歌曲はトッド・エドワーズ。
声の出演はアン・ハサウェイ、グレン・クローズ、ジム・ベルーシ、パトリック・ウォーバートン、アンソニー・アンダーソン、デヴィッド・オグデン・スティアーズ、イグジビット、チャズ・パルミンテリ、アンディー・ディック、コリー・エドワーズ、ケン・マリーノ、トム・ケニー、プレストン・スタッツマン、トニー・リーチ、ジョシュア・J・グリーン、マーク・プリミアーノ、ケヴィン・マイケル・リチャードソン、タラ・ストロング、タイ・エドワーズ、トッド・エドワーズ、チャールズ・コプリン、トロイ・ノートン他。


グリム童話『赤ずきん』をモチーフにした長編アニメーション映画。
監督はコリー&トッドのエドワーズ兄弟と友人のトニー・リーチ。
トッド・エドワーズは1999年に『Chillicothe』という実写映画で監督デビューしているが、他の2人は本作品がデビュー作品。
レッドをアン・ハサウェイ、おばあさんをグレン・クローズ、カークをジム・ベルーシ、オオカミをパトリック・ウォーバートン、ストークをアンソニー・アンダーソン、ニッキーをデヴィッド・オグデン・スティアーズ、グリズリーをイグジビット、ウールマークをチャズ・パルミンテリ、ボインゴをアンディー・ディック、トゥイッチーをコリー・エドワーズ、ヤペスをベンジー・ガイザーが演じている。

レッドのキャラクター・デザインは、お世辞にも可愛いとは言えない。
ただし、たぶん意図的に「可愛いキャラクター」ってのを外しているんだろうと、そこは好意的に解釈しておこう。
とは言え、もしも「いかにもディズニー的なキャラクター・デザイン」とか、「とてもキュートな外見」とか、そういうことにしておいた場合に、それがマイナスに作用するのかと問われたら、答えはノーだけどね。
むしろ、そっちの方が効果的だったんじゃないかとは思うけどね。

『赤ずきん』をベースにして、芥川龍之介の短編小説『薮の中』みたいな話をやってみようという映画である。
だから単純なパロディー映画ではなく、ミステリーの要素が色濃くなっている。
原題の『Hoodwinked!』を直訳すると、「騙された!」という意味になる。
『赤ずきん』を使ってミステリーをやるってのは意外に面白そうだと思ったが、実際に見てみると、そうでもなかった。

この映画の欠点は、「ミステリーに対して全く興味が湧かない」ってことだ。
そもそも、最初に設定される状況からして、事件としては中途半端だ。
グリズリー署長は「レッドがおばあさんに何かを届けようとして、オオカミが2人を食べようとして、ヒーロー気取りのカークが飛び込んだ」と解釈しているが、だとすればオオカミだけが犯罪者であって、4人を連行したり、疑いを向けたりする必要性が全く無いはずでしょ。
カークの不法侵入ってのも、「ヒーロー気取りで飛び込んだ」ってことなら見逃してやればいい。
仕掛けの部分に無理がある。

何か1つの犯罪が発生していて、その容疑者が4人いるって感じではないんだよね。
だから「4人を取り調べて何を知りたいのか?」と思ってしまう。
グリズリーは「森中でお菓子のレシピが盗まれてる。俺は何ヶ月も前から事件を追って、ここに辿り着いた」と言っているけど、その事件とレシピ泥棒の関連性もサッパリ分からないし。
「レシピ泥棒を捕まえるための取り調べ」という形にしたいのであれば、そこは「レシピが盗まれた」、もしくは「誰かがレシピが盗み出そうとした形跡がある」ってことにすべきでしょ。でも、そういう事件ではないのよね。

レッドとオオカミがパケットばあさんの家へ向かう道中には、いずれもアクション・アドベンチャーの要素が持ち込まれている。
カークが転がる丸太から逃げるとか、パケットばあさんがエクストリーム・スキーのレースに参加するとか、その辺りもアクションの要素が入っている(特に後者は完全にアクション映画)。
で、そういうのがミステリーと全く連携できていないのよね。
ミステリーを充実させた上でアクションをやるなら別にいいけど、ミステリーを軽視してアクションに偏るってのは明らかに本末転倒でしょ。

一応、レッドとオオカミの道中におけるアドベンチャー的要素については、「レッドのトロッコが途中で飛び出したのには、オオカミのこういう行動が関わっていました」いう仕掛けはあるんだけど、どうでもいいわ。
そんなことが分かったところで、おばあさんの家で起きた出来事の真相究明に繋がるわけではないし、レシピ泥棒の発見に繋がるわけでもない。
「パケットばあさんの家で何が起きたのか」ではなくて、「そこに4人が来る前に何があったのか」を描いているんだけど、それって事件究明と関連しないのよ。

アクションやアドベンチャーの要素だけじゃなくて、ミュージカルの要素も含まれているが、これもミステリーとは全く関連性が無い。
ディズニー・ミュージカルのパロディーになっているという印象も受けない。
ただ単に、ミュージカル・シーンを入れることで時間稼ぎをしているとしか思えない。
映像表現に凝っているわけでもなく、単純にミュージカル・シーンとしての面白さを感じることも無い。

4人の証言が全て終了したところで見えて来るのは、「それぞれの証言が全て正しい」ってことだけだ。そこに嘘は含まれていない。
証言が全て終わった後で、ニッキーが「ここに矛盾や食い違いがある」と指摘し、そこから「この家で実際は何が起きたのか」を突き止めるわけではない。
おばあさんの家で起きたことは最初のシーンで描かれた内容そのまんまであり、それ以上でも、それ以下でもない。
そして全ての証言が出揃っても、それはレシピ泥棒を突き止めるための手掛かりというわけではない。

終盤、ニッキーは「このゲームには、もう1人のプレイヤーがいるらしい。その人物は、全員の話に耳を突っ込んでいる」と告げてレシピ泥棒を指摘するが、その根拠は「4人の証言にそいつが登場するから」というだけだ。
それは根拠として、ものすごく薄弱だ。
「あの時のAの行動は、こういう目的があった」とか、「あのアイテムはAのこういう行為を示す証拠だ」とか、そういうヒントや証拠を積み重ね、丁寧に説明した上で「だからAが犯人」と指摘するわけではない。

ニッキーの指摘した奴が実際に犯人なのだが、「なるほど、そうだったのか」と腑に落ちることは無い。
ミステリーの要素を持ち込んだのであれば、そこをキッチリと使うべきでしょ。なんで「持ち込んだら、ほぼ作業は終了」みたいな感じになっちゃってんのかと。そこからの作業を手抜きしちゃダメでしょ。
っていうか、根本的な問題として、レシピ泥棒が明らかになっても「だから何?」と思っちゃうし。
あと、そもそも「森のレシピ泥棒が犯罪を繰り返していて云々」という話だと、原作の『赤ずきん』から遠くなりすぎているんじゃないかとも思うんだよな。

(観賞日:2014年3月13日)

 

*ポンコツ映画愛護協会