『ワイルド・スピード ICE BREAK』:2017、アメリカ&中国&日本

キューバのハバナ。レティーと共に過ごしていたドミニクは、従弟のフェルナンドが困っている現場へ赴いた。金を返さなかったという理由で、フェルナンドは借金取りのラルドに愛車を没収されそうになっていた。ドミニクはラルドにレース対決を持ち掛け、負ければ自分の愛車も引き渡すと約束する。フェルナンドのボロ車で勝負するようラルドが要求すると、ドミニクは承諾した。彼はボロ車を改良し、ラルドの仲間による妨害を受けながらも勝利した。ラルドが負けを認めて「約束は約束だ。アンタを尊敬するよ」と車のキーを差し出すと、ドミニクは「気持ちだけで充分だ」と受け取らなかった。彼はフェルナンドに、自分の愛車をプレゼントした。
翌日、ドミニクはサイファーという女性と遭遇し、大仕事の手伝いを要請される。「他人のために仕事はしない」とドミニクが断ると、サイファーはスマホの画像を見せて「貴方の方から働きたいと言ってくる。貴方は自分の仲間を裏切り、ファミリーを破壊する」と述べた。彼女は事情を誰にも話さないよう釘を刺し、その場を立ち去った。娘が所属するサッカーチームの試合でコーチをしていたホブスは、アラン外交保安部長から「君の言う通りだった。消えたEMPはベルリンの武器商人に渡った」と聞かされる。EMPは大都市の電子機器を全て無効化する強力な兵器であり、ホブスはチームを集めて奪還する任務を命じられた。
ホブスはドミニクに電話を掛け、ベルリンでの仕事を手伝ってほしいと告げる。 集められたのはドミニク、ホブス、レティー、ローマン、テズ、ラムジーはベルリンに飛び、EMPを奪って逃亡した。チームが一時的に解散した直後、ドミニクがホブスを襲撃してEMPを持ち去る。ホブスはレティーたちに、ドミニクの裏切りを伝えた。ホブスは刑務所に連行され、ミスター・ノーバディーから新しい部下のリトル・ノーバディーを紹介される。ノーバディーが取引を持ち掛けると、ホブスは拒否して収監された。同じ刑務所にはデッカードも収監されており、ホブスを挑発した。
ホブスが言い返していると、突如として独房の扉が開いた。ホブスとデッカードは駆け付けた看守たちを次々に殴り倒し、外へ飛び出した。するとノーバディーが待ち受けており、腕時計を見て「意外と遅かったな」と口にした。ノーバディーはホブスを連れて、レティーたちを集めた作戦本部へ赴く。ノーバディーはホブスたちにサイファーの写真を見せ、ドミニクがEMPを渡したサイバーテロリストだと教える。彼はドミニクを捕まえるよう要求し、追加要員としてデッカードを紹介した。
ホブスたちが憤る中、デッカードは「俺にはファミリーなんて関係ない。狙いはサイファーだ。奴は最初、俺の所へ来た。俺が仕事を断ると弟の元へ行った」と語った。オーウェンのことで恨みがあるため、デッカードはサイファーを殺そうと目論んでいるのだ。ローマンはドミニクを見つけ出す方法として、ゴッド・アイを使ってはどうかと提案した。そこでラムジーがゴッド・アイを操作すると、世界各地の大都市で次々に反応が出た。サイファーが居場所を隠すため、細工を施していたのだ。
ラムジーが偽の位置を全て排除すると、彼女たちのいる作戦本部が残った。そこへサイファーが爆弾を投げ込んでホブスたちの感覚を麻痺させ、ドミニクと共にゴッド・アイを持ち去った。飛行機へ戻ったドミニクはサイファーに怒りをぶつけるが、従わざるを得ない事情があった。サイファーはエレナと男児を人質に取り、ドミニクを脅していたのだ。ホブスたちはニューヨークの新しい作戦本部へ移動し、車を選んだ。ドミニクはサイファーによる監視の隙を突き、ショウ兄弟の母であるマグダレーンと接触して助けを求めた。
サイファーはゴッド・アイを使い、ロシアの国防大臣を乗せた車の位置を特定した。彼女は車を走らせているドミニクに指示を出し、周辺車両の自動操縦機能をハッキングした。彼女は警護中の隊列を攻撃し、大臣の車を停止に追い込む。ドミニクの脅しを受けた大臣は抵抗を諦め、核弾頭の発射コードが入ったアタッシェケースを引き渡した。そこへホブスたちが現れたので、ドミニクは逃走した。包囲されたドミニクは車を捨て、デッカードを撃つ。レティーがケースを奪取すると、ドミニクは威嚇発砲する。レティーは彼が撃たないと確信して逃げようとするが、サイファーの手下であるローズが待ち伏せていた。ローズはレテイーを殺そうとするが、ドミニクが阻止した。ローズはケースを手に入れ、サイファーの元へ戻る。サイファーはドミニクの失態を指摘し、目の前でエレナを始末した…。

監督はF・ゲイリー・グレイ、キャラクター創作はゲイリー・スコット・トンプソン、脚本はクリス・モーガン、製作はニール・H・モリッツ&ヴィン・ディーゼル&マイケル・フォトレル&クリス・モーガン、製作総指揮はアマンダ・ルイス&サマンサ・ヴィンセント、共同製作はクリフ・ラニング、撮影はスティーヴン・F・ウィンドン、美術はビル・ブルゼスキー、編集はクリスチャン・ワグナー&ポール・ルベル、衣装はマーリーン・スチュワート、視覚効果監修はマイケル・J・ワッセル、音楽はブライアン・タイラー。
出演はヴィン・ディーゼル、ドウェイン・ジョンソン、ジェイソン・ステイサム、シャーリーズ・セロン、カート・ラッセル、ミシェル・ロドリゲス、タイリース・ギブソン、クリス・“リュダクリス”・ブリッジス、スコット・イーストウッド、ナタリー・エマニュエル、エルサ・パタキ、テゴ・カルデロン、ドン・オマール、クリストファー・ヒヴュ、パトリック・セント・エスプリト、ルーク・エヴァンス、ジャンマルコ・サンティアゴ、コーリー・マー、オレク・クルーパ、アレクサンダー・バーバラ、アンドレ・プシュキン、ロバート・ジェカブソン、ニック・グレイサー、エデン・エストレラ他。


シリーズ第8作。
監督は『完全なる報復』『ストレイト・アウタ・コンプトン』のF・ゲイリー・グレイ。
脚本は第3作から6作連続となるクリス・モーガン。
ドム役のヴィン・ディーゼル、ホブス役のドウェイン・ジョンソン、デッカード役のジェイソン・ステイサム、ノーバディー役のカート・ラッセル、レティー役のミシェル・ロドリゲス、ローマン役のタイリース・ギブソン、テズ役のクリス・“リュダクリス”・ブリッジス、ラムジー役のナタリー・エマニュエル、エレナ役のエルサ・パタキ、オーウェン役のルーク・エヴァンスは、前作からの続投。テゴ役のテゴ・カルデロンとサントス役のドン・オマールは、4作目と5作目からの復帰。
他に、サイファーをシャーリーズ・セロン、リトルをスコット・イーストウッド、ローズをクリストファー・ヒヴュ、アランをパトリック・セント・エスプリトが演じている。
アンクレジットだが、マグダレーンをヘレン・ミレンが演じている。

ジャスティン・リンが離脱したことによって、このシリーズは完全に「ヴィン・ディーゼルの俺様映画」として作られることになった。
ヴィン・ディーゼルが製作も兼任するようになってからは「ポール・ウォーカーとダブル主演」という形は完全に崩れていたが、そのポール・ウォーカーが死去したことを受けて、ますますヴィン・ディーゼルのジャイアニズムが強まることになった。
今回もブライアンは生きている設定だが、「いや無理があるし」とツッコミを入れたくなるだけだ。

既に当初の「カーアクション映画」というジャンルからは大幅に逸脱するようになっているシリーズだが、オープニングではカーレースの様子が描かれる。
このレース、ストーリー展開だけを考えれば、特に必要性があるわけではない。
一応は「ラルドがドミニクを助ける」という後半のシーンに向けた伏線になっているが、そこが無くても大きな問題ではない。
ただ、「そう言えばカーアクション映画だったな」と思い出させるという意味はある。

ラムジーはサイファーについて、「デジタル世界の神のような存在で全てのシステムを操ることが出来る。ハッキング出来ない物は無い」と評している。
しかし、サイファーに「巨悪の親玉」としての力が全く感じられないんだよね。
ファミリー側がホブスに加えてデッカードまで入って強大化しているんだから、それに1人で対抗できる親玉ってのは、かなりの存在感や説得力が必要になる。
でも、そういうのは全く感じられないのよ。

1人でファミリーに匹敵する凄みを出さなきゃいけないという縛りを考えると、男じゃなくて女にしたのは悪くない考えだと思うのよ。単純な「強さ」よりも、「狡猾さ」とか「統率力」で勝負した方が賢明だろうからね。
でも、サイファーってそんなに頭がキレるようには見えないのよ。
「手下は大勢いるだろ」と思うかもしれないが、信頼できる手下はローズだけで、他は顔も名前も分からん雑魚ばかりだ。
そんな雑魚たちは、幾ら数がいてもドミニクたちの前では何の意味も無いのよ。
仮面ライダーが8人揃ったら、ショッカーの戦闘員が大勢いても意味が無いのと同じことだ。

ジャスティン・リンが復帰して以降、このシリーズは過去に出演していたレギュラー陣を次々と呼び戻し、「ファミリー」を重視するようになった。シリーズを追うごとに、どんどんファミリーを増やしていくようになった。
今回の映画でも、「ファミリーの絆」が強く打ち出されている。
「何よりもファミリーが大事で、みんながファミリーのために行動する」というのがチームの行動理念になっている。
前作の撮影途中でポール・ウォーカーが死去し、ブライアンの再登場が無くなったことは(それに伴ってミアも消えた)、さらに「ファミリーの絆」を重視するきっかけになったかもしれない。

ファミリーになるのは、仲の良い面々だけではない。
「昨日の敵は今日の友」ってことで、最初は敵対関係だった相手も、あっさりと仲間になる。
だから当初は敵対していたホブスも、すっかりドミニクたちの仲間と化している。政府機関にとって厄介な犯罪グループだったドミニクたちが、いつの間にか「悪党を倒すために働く正義の味方」へと鞍替えしているので、敵対する必要性が無くなったのだ。
とは言え、まだホブスに関しては、ドミニクがエルサと恋仲になったこともあるし、個人的に恨みつらみがある間柄でもないので、ファミリー入りすることに大きな障害は無い。

問題は、今回の作品でショウ一家がファミリーに加わることだ。デッカードとオーウェンの兄弟、さらに母親のマグダレーンが、ドミニクの仲間になるのだ。
これが単に「かつて敵対していた相手」というだけなら、ホブスと似たような立場なので問題は無い。
しかしながらマグダレーンはともかくデッカードとオーウェンに関しては、ドミニクの大切な仲間を死に追いやった憎き敵のはずだ。
本当にファミリーの絆を重視しているのであれば、そんな奴らを仲間として迎え入れるのは理解し難い。
無残に殺された仲間の墓前で、そいつらを「新しいファミリー」として堂々と紹介できるのか。

仮にドミニクがショウ兄弟を認めたとしても、他のメンバーまで許しちゃうのは、どういうつもりなのかと。無残に殺された仲間への思いって、その程度なのかと。
結局、「仕事のために必要なら、どんな奴でも平気で仲間に加える」ってことにしか思えないんだよね。
もっと言っちゃうと、ファミリーの絆を重視するってのは建前で、実際はファミリーのことなんて大して考えちゃいないようにしか思えない。
少なくともドミニクは、そういう奴だ。何しろ、人質がいるとは言え、仲間が死ぬかもしれない行動を平気で取っているし。

ドミニクはサイファーから「人生で最も大事な物は?」と問われて、「ファミリー」と答える。
それに対してサイファーは「嘘よ。正直になって。貴方は仕事を始めてから終えるまで、ファミリーのことなんて考えていない。自分のことだけよ」と指摘するが、それが正解なんだよね。
まあエレナとの間に産まれた息子もファミリーだから、「ファミリーを大切にする」という意味では間違っちゃいないだろう。
ただ、「固い絆で結ばれたファミリー」よりも、「血で繋がったファミリー」の方を重視したってことだね。

サイファーはドミニクを脅して指示に従わせるため、エレナと男児を人質に取っている。
だが、彼が隙を見て自分を殺そうとしていることを指摘した時には「自分を殺せば手下たちが男児を殺す手筈になっている」と説明する。
つまり、サイファーとドミニクの間では「脅迫の道具は男児だけ」という共通認識が、いつの間にか出来上がっているのだ。
シリーズとしても、男児はいた方がいいけどエレナが残るのは何かと都合が悪いので、あっけなく始末されてしまう。

「エレナを殺したらドミニクが怒って裏切るかもしれないのに、サイファーはバカじゃねえのか」と、ツッコミを入れたくなる人がいるかもしれない。だけど、ホントにバカなんだから仕方がない。サイファーに限らず、この映画の登場人物に本当の知性を求めるのは間違いなのだ。
そんなわけでエレナは簡単に殺されるのだが、それをラストシーンのドミニクが引きずっている様子は皆無だ。男児が無事だっただけで、すっかり浮かれている。
このシリーズ、ファミリーの絆を重視しているが、その命はものすごく軽い扱いになっている。
でも、そうやってエレナを簡単に殺す一方で、「まだ使い勝手があるから」という理由でサイファーは生き延びさせてしまい、スッキリとした大団円を迎えさせない。

(観賞日:2018年10月27日)

 

*ポンコツ映画愛護協会