『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』:2006、アメリカ&ドイツ

アリゾナに暮らす高校生のショーン・ボズウェルは、駐車場で同級生の女から話し掛けられた。彼女の恋人であるアメフト部員のクレイは 、その様子を目撃して嫉妬し、ショーンを挑発してきた。ショーンは軽くバカにした後、車に乗り込んで去ろうとした。するとクレイが ボールを投げ、車のフロントガラスを割った。怒ったショーンが殴り掛かろうとすると、クレイの恋人がカーレース対決を持ち掛けた。 ショーンは勝利するが、女が「プロムは彼と行くわ」と言ったのに怒ったクレイは車を激しくぶつけて来た。クレイの車は土管に激突し、 ショーンの車は横転した。
ショーンたちは警察に捕まるが、両親が金持ちであるクレイと恋人は無罪放免となった。ショーンは刑事から、「お前は確実に有罪だ。 18歳になる前に終わりだ」と言われる。シングルマザーであるショーンの母が、警察署にやって来た。ショーンは今まで2度の逮捕歴が あり、その度に母は引っ越しを余儀なくされていた。母はショーンに愛想を尽かし、今度は一人で引っ越すよう突き放した。
ショーンは東京の米軍基地に勤務する父を頼り、日本へ向かった。父の住む家を訪れると、彼は息子が来る日を忘れていた。彼は困った 様子で、家にいた恋人を帰らせた。父はショーンに「ここに来なければ施設行きだった。お前の母親とはルールを決めると約束した。 ちゃんと高校に通わせ、車に乗らせないことだ」と語った。翌朝、ショーンが目覚めると父はおらず、高校へ行くよう指示した紙が 置かれていた。ショーンは電車を間違えて遅刻し、和田倉高校へ登校した。
ショーンは学食で同級生のトゥインキーに話し掛けられた。彼も軍人の息子だった。トゥインキーはショーンに、パソコンや携帯を売ろう とする。ステアリングを持っていたのでショーンは興味を持つが、トゥインキーは「これは俺のだ」と言う。「俺の車は世界に一台しか 無い」と言うのでショーンは関心を示し、「見せろよ」と告げた。彼が自慢げに見せたので、ショーンは「とりあえず運転させろよ」と 言ってハンドルを握った。
ショーンとトゥインキーは、車好きが集まっている地下駐車場へ赴いた。すると、そこにクラスメイトのニーラが車で現れ、仲間のアール とレイコに話し掛けた。ショーンはエンジンのことで不満を言っているニーラに声を掛け、「V8に乗せ換えればいい」と告げた。その 様子を見ていたニーラの恋人D.K.は嫉妬し、ショーンに突っ掛かってバカにした。ショーンが腹を立てると、トゥインキーが「マズいよ、 あいつはヤクザだ」と告げた。だが、ショーンは「彼女が誰と話そうと自由だ」と言い、D.K.を挑発した。
D.K.がレースに出ると知ったショーンは、「だったら俺も出るよ」と口にした。D.K.が「車も無いのに」と笑うと、彼の仲間でメカニック をしているハンが「これを使え」と言い、ショーンに車のキーを渡した。トゥインキーはショーンに、D.K.はドリフトキングの略称だと 教えた。ショーンは初めてドリフトを見て驚いた。ショーンはハンがカスタマイズした車に乗り込み、地下駐車場内でのレースに挑んだ。 しかしD.K.に惨敗を喫し、ハンから借りた車を壊してしまった。
夜遅くに帰宅したショーンは、レースをやったと知った父から「ここで面倒を起こしたら拘置所行きだぞ。ここに住むなら俺のルールに 従え。でなきゃ追い出すぞ」と怒鳴られた。ショーンはハンから、車を弁償するために借金取り立ての手伝いをするよう要求された。彼が 「お前は今日から俺のパシリだ。俺が呼んだら来い」と言うと、ショーンは「ドリフトを教えてくれるならな」と持ち掛けた。
ハンはショーンに、「D.K.はヤクザじゃない。ヤクザは奴の叔父のカマタだ。奴はチンピラ相手にいきがってるだけ。だが奴とつるんで いれば使える。カマタはみかじめ料を集めてるが、俺はD.K.に内緒でピンハネしてる」と明かす。ハンはショーンを自分の自動車修理工場 へ案内し、赤いランエボを見せて「お前がレースで使うマシーンだ」と告げた。ショーンはその車を使い、ドリフトを練習した。
ショーンはハンに、「どうして俺に車を貸した?壊すのは分かってただろう?金が勿体無くないか」と尋ねた。するとハンは「金ならある 。俺に必要なのは、信頼できる仲間だ」と返答した。ハンはショーンにドリフトの技術を教え、峠で練習させた。ショーンは父の家を出て 、ハンの自動車工場で寝泊まりするようになった。ショーンはハンの仲間モリモトとのレースに勝利し、観客の喝采を浴びた。
ショーンはニーラにアプローチし、心の距離を縮めていく。それを知ったD.K.はショーンを激しく暴行し、「ニーラに近付くな」と恫喝 した。腹を立てたニーラは、D.K.の溜まり場に乗り込んで彼を非難した。彼に侮蔑されたニーラは、「貴方が大きな顔をしていられるのは 、叔父さんのおかげよ」と鋭く告げた。するとD.K.は「俺たちは同類だが、俺は自分の居場所を知ってる。お前は分かってるのか」と口に した。ニーラは泣いてハンの自動車工場へ行き、ショーンにすがった。
カマタがD.K.の元を訪れ、ハンが稼ぎの一部を着服していることを指摘した。ショーンたちが自動車工場にいると、D.K.とモリモトが 乗り込んで来た。D.K.はハンに拳銃を向け、引き金に手を掛けた。トゥインキーがシャッターを降ろしてD.K.の注意を引き付け、ハンが 反撃した。ショーンやハンたちは車に乗り込み、D.K.が追跡した。激しいチェイスの末、ハンはD.K.の車と激突して死んだ。
ショーンはニーラを連れて父の家に戻るが、そこにD.K.が現れた。彼はニーラに「車に乗れ」と告げ、ショーンに拳銃を構える。そこに ショーンの父が現れて拳銃を向けると、ニーラは「貴方と行くわ」とD.K.に告げて彼と去った。ショーンはアメリカへ帰らせようとする父 に、「全て俺のせいなんだ。尻を拭う責任がある」と告げた。ショーンは決着を付けるため、カマタの元へ赴いた。彼はカマタにハンが 着服していた金を返し、「平和的な解決方法があります」と告げる。「D.K.とレースで対決し、負けた方が町を去る」というショーンの 提案を、カマタは受け入れた…。

監督はジャスティン・リン、脚本はクリス・モーガン、製作はニール・H・モリッツ、共同製作はアマンダ・コーエン、製作総指揮は クレイトン・タウンゼント&ライアン・カヴァナー&リンウッド・スピンクス、撮影はスティーヴン・F・ウィンドン、編集はフレッド・ ラスキン&ケリー・マツモト、美術はアイダ・ランダム、衣装はサーニャ・ミルコヴィッチ・ヘイズ、視覚効果監修はマイケル・J・ ワッセル、音楽はブライアン・タイラー、音楽製作総指揮はキャシー・ネルソン。
出演はルーカス・ブラック、バウ・ワウ、ナタリー・ケリー、ブライアン・ティー、サン・カン、レオナルド・ナム、ブライアン・ グッドマン、JJ・サニー・チバ(千葉真一)、ザッケリー・ブライアン、ニッキー・グリフィン、ジェイソン・トービン、北川景子、 リンダ・ボイド、ヴィンセント・ラレスカ、 ジミー・リン、妻夫木聡、KONISHIKI、柴田理恵、真木よう子、ジョセフ・“バマ”・クランプトン、トシ・ハヤマ、土屋圭市、 和田倉和利、虎牙光揮、中川翔子、矢野未希子ら。


シリーズ第3作。
ショーンをルーカス・ブラック、トゥインキーをバウ・ワウ、ニーラをナタリー・ケリー、D.K.をブライアン・ティー、ハンをサン・カン 、モリモトをレオナルド・ナム、ショーンの父をブライアン・グッドマン、カマタを千葉真一、クレイをザッケリー・ブライアン、クレイ の恋人をニッキー・グリフィンが演じている。
前作までのキャストは全く登場しない。唯一、1作目でドミニクを演じたヴィン・ディーゼルが、ラストで「ハンの仲間だった男」として カメオ出演しているだけ。ストーリーとしての繋がりも全く無い。
まるで別物なのに、これを3作目として堂々と表に出せる大胆な神経には、頭が下がる。

日本を舞台にしていることもあり、日本の俳優やタレントが多く出演している。
レイコ役の北川景子は公開当時、ハリウッドデビューとして大きくマスコミに取り上げられたが、ほとんど空気みたいな存在で、いても いなくても変わらない。
他に、ショーンの父の恋人役で真木よう子、数学教師役で柴田理恵、駐車場レースのスターター役で妻夫木聡、カマタの子分役で虎牙光揮 が出演している。

「日本を舞台にした海外の映画(主にハリウッド映画だが)は、ほとんどポンコツな仕上がりになる」という印象が、私の中にある。
それは、偏見なのかもしれない。
しかし偏見だとしても、この作品も、その偏見を崩すことは出来ていない。
そもそも1作目と2作目も「物語はどうでもいいからMTV的演出によるカー・アクションだけ見てくれ」という中身ペラペラの映画 なのだが、次元が違う。

冒頭でショーンとクレイの間に因縁が勃発し、クレイの女が「勝者のプレゼントは私」と小悪魔チックなことを言った上にショーンに好意 を示すようになる。
だから、その関係性が軸となって物語が構築されていくんだろうと思ったら、それは冒頭だけで終わる。
主人公を日本へ行かせるために用意されただけのシーンなら、もうタイトルロールの間にカーレースを始めてしまえばいい。
クレイとの因縁とか、相手がどんな奴だとか、どうでもいいことだ。

っていうか、別にショーンのトラブルとか描かず、いきなり日本に来たところから始めてもいいぐらいなんだよな。
経緯とか、そんなに重要じゃない。どうせ物語も彼のキャラ描写もペラペラなんだし。
しかも、ショーンは余裕満々だったから余裕で勝つのかと思ったら、色んな物にぶつかったり建設中の家に突っ込んだりしている。
おいおい、そこは圧倒的な力の差を見せ付けて勝つべき場面でしょ。
苦戦するのは日本に来てからでいいんだよ。

「主人公が別の国へ初めて行く」という話だと、カルチャーギャップに困惑したり、驚いたり、次第に馴染んでいったりというネタを使う ことが多い。
だが、この映画では、そういう展開は見られない。
高校の制服、銭湯、パチンコやマージャンなど、日本の文化を見せる意識は強いが、それにショーンが戸惑ってアタフタするとか、 間違った行動を取ってしまうとか、そういう描写はほとんど無い。

まあハッキリ言うと、話の舞台が日本である必要性って、そんなに無いんだよね。
理由としては、「ドリフトをやりたいから」という1点だけだよな。
だけど、それなら主人公が日本へ行くのではなく、逆に「主人コアが日本から来た転校生にドリフトを教わり、その魅力にハマる」という 形にしちゃっても良かったような気はするけどね。
あと、主人公が高校生である必要性も感じない。ルーカス・ブラックの制服姿が似合っていないこともあって、余計にそう思う。
似合っていないのはアメリカ人だからということよりも、年齢的な問題だ。
若く見えるならいいけど、年相応だからね。

日本を舞台にした外国映画では、「変な日本」の描写が付き物だ。この映画でも、そういうモノが多くみられる。
例えば米軍基地勤務であるショーンの父は、東京にある昔ながらの日本家屋に暮らしている。
ショーンは日本語が通じないのに、インターナショナル・スクールではなく、普通の高校に通う。手続きも何も無くて、保護者の同行も 無く、いきなり登校する。ショーンを父が学校へ連れて行き、校長への事前の挨拶を済ませるようなことも無い。
担任が転校生としてクラスメイトに紹介することは無い。学校の廊下には、「オアシス」と書かれた謎の紙が吊り下げられている。学食で 出て来るのは、懐石料理のようなメニューだ。
激しいカーチェイスをやっていても、警察は全く絡んで来ない。

そういった「変な日本」の描写は、コメディーでない限り、ダメな映画に成り下がる大きなポイントとなる。
ただし本作品の場合、コメディーではないものの、ある程度は意図的に「間違った日本」をやっているように思える。
ただし、それが面白いのかと言われると、そうでもないけどね。

(観賞日:2011年10月2日)

 

*ポンコツ映画愛護協会