『ロード・トリップ パパは誰にも止められない!』:2008、アメリカ

イリノイ州で警察署長をしているジェームズ・ポーターは、溺愛する娘のメラニーをノース・ウエスタン大学に進学させたいと考えていた。家から近くにあり、車で28分の距離だからだ。メラニーがノース・ウエスタン大学に合格したので、彼は大喜びした。学校の模擬裁判で弁護士を務めたメラニーは見事に勝訴し、見物していたジェームズは誇りに思う。メラニーは模擬裁判に来ていた判事から、彼の母校であるジョージタウン大学に興味を持っていることについて質問される。順番待ちをしていることをメラニーが明かすと、判事は同級生が審査しているので話しておこうと告げた。
メラニーの弟であるトレイは、飼っている豚のアルバートとチェスをする変わり者だった。ジェームズから「あいつは変たぞ」と言われた妻のミシェルは、「ああいう子は想像力が豊かなのよ。見守ってあげなさい。」と告げる。ジェームズが「あの豚も気にくわない。俺を睨んでる」と告げると、アルバートが部屋から出て来て見つめていた。ジェームズに「ほら見ろ」と言われたミシェルが視線を向けると、アルバートは消えていた。ジェームズは「あいつは妖怪だ」と顔をしかめた。
夜、近所のオマリー夫妻が訪ねて来るが、メラニーは「図書館で友人たちと勉強なの」と告げて外出する。メラニーは友人であるナンシーとケイティーの待つ車に乗り込み、ジェームズが家から様子を見ているのを確認する。ジェームズが2度の確認を済ませて引っ込んだ後、3人はパーティー会場へ行って盛り上がった。オマリー夫妻は出産を控えており、子供の育て方についてジェームズに訊く。ジェームズは「メラニーとは何でも話し合える中だ」と言うが、メラニーは友人たちに「パパは何も分かってない」と不満を漏らした。ナンシーたちは一緒に大学見学へ行こうと誘うが、メラニーは「行きたいけどパパが許してくれるかどうか」と告げた。
翌朝、留守電に「ジョージタウン大学の入学審査会がワシントンで順番待ちの数人を面接する」という判事のメッセージが入っていたので、メラニーはミシェルと共に大喜びした。面接は3日後だが、ミシェルは仕事で送って行くことが出来なかった。メラニーは「友人たちが車で旅行するから乗せて行ってもらうわ」と告げる。ジェームズは休暇を取り、パトカーで送って行くことに決める。メラニーから抗議を受けたミシェルは、女子寮に宿泊してもいいという条件を付けて妥協させた。
ジェームズはパトカーにメラニーを乗せて出発するが、勝手にノース・ウエスタン大学へ向かった。彼は嫌がるメラニーを連れて、強引に見学ツアーへ参加した。ダグとウェンディーのグリーンハット父娘は、ハイテンションでツアーに参加していた。ジェームズがノース・ウエスタン大学の良さをアピールしようとするので、メラニーはウンザリする。そこへニックという男が現れ、案内を申し出た。メラニーは彼を気に入り、ジェームズも「彼なら安全だ」と任せる。しかしニックの不用意な発言で、メラニーは彼が父の部下だと気付いた。彼女は「ニックからパーティーに誘われて大盛り上がりした」と嘘をつき、怒ったジェームズはニックをスタンガンで気絶させた。
ノース・ウエスタン大学を後にしたジェームズとメラニーは、工事による渋滞に巻き込まれた。ジェームズは警察用GPSを使って別の道を進むが、森の中で迷ってしまい、おまけにタイヤがパンクした。ジェームズがツールボックスを開けると、トレイがアルバートと共に隠れていた。出発前、国防長官に手紙を渡してほしいと頼まれたジェームズが「自分で渡せ」と言ったので、付いて来たのだ。ジェームズは誤って車を谷底へ落とし、使えなくなってしまった。
ジェームズたちはインディアナ州のホテルに到着するが、「ペットお断り」と書かれていた。ジェームズはアルバートを赤ん坊に偽装し、ホテルに宿泊した。メラニーがコーヒーを煎れようとすると、ジェームズは「カフェインはドラッグだ」と豆をゴミ箱に捨てた。その豆を食べたアルバートが暴れ出し、部屋から逃走した。ジェームズたちは慌てて追い掛けるが、アルバートはホテルの庭で行われていたリリーとテッドの結婚式に乱入して大暴れした。
ホテルを出たジェームズたちは、翌朝をダイナーで迎えた。ドーナツを買うために来たダグとウェンディーは、彼らを同乗させることにした。ノリノリで喋ったり歌ったりする2人に、ジェームズたちは辟易した。ウェンディーの質問を受けたメラニーは、ジョージタウン大を受験してクーパー・プログラムに参加したいと話す。ウェンディーが「私も東京へ行きたいわ」と言ったことから、ジェームズは東京の姉妹校へ留学する期間があることを知った。
グリーンハット親娘と別れた後、ジェームズたちは日本人ツアーの観光バスに乗せてもらった。メラニーは「留学は1学期の間だけよ」と釈明するが、ジェームズは「ガッカリした。お前が知らない人になったみたいだ」と嘆く。メラニーはガイドのマイクを借りて、幼い頃に父と歌った思い出の歌を熱唱した。それを聞いたジェームズは元気になり、クーパー・プログラムについて詳しく話すよう促した。
ジェームズたちはピッツバーグに入り、グランマの家へ赴いた。ジェームズは「グランマは年寄りだから、あまり動かないんだ」と言う。しかし実際のグランマは元気一杯で、仲間たちと一緒に踊っていた。ジェームズたちが来たので、グランマは慌てて仲間たちを帰らせた。ジェームズは何も知らないまま、新しい警備システムを取り付けた。ケイティーとナンシーが来たので、メラニーは喜んだ。ケイティーの姉の部屋に泊めてもらうことになり、メラニーは2人と女子寮へ向かった。
その夜、ジェームズはメラニーが心配になり、女子寮に電話を掛けた。メラニーがシャワーを浴びていたため、ケイティーの姉であるクリスが電話を取った。しかし名前がクリスの上に声が低かったため、ジェームズは男だと思い込む。彼は女子寮に乗り込むが、不審者と思われて寮母に立ち入りを禁じられた。そこで彼は梯子を使って2階へ上がり、窓からメラニーに呼び掛けようとする。メラニーたちが部屋を出た隙に、ジェームズは部屋に忍び込んだ。メラニーたちが戻って来たので、彼は慌ててベッドの下に隠れた…。

監督はロジャー・カンブル、脚本はエミ・モチズキ&キャリー・エヴァンズ&シンコ・ポール&ケン・ダウリオ、製作はアンドリュー・ガン、製作総指揮はアン・マリー・サンダーリン&アンソニー・カタガス&レイヴン=シモーネ&マイケル・グリーン、製作協力はダリス・ロリンズ、撮影はテオ・ヴァン・デ・サンデ、編集はロジャー・ボンデッリ、美術はベン・バーロード、衣装はフランシン・ジェイミソン=タンチャック、音楽はエドワード・シェアマー、音楽監修はリサ・ブラウン。
出演はマーティン・ローレンス、レイヴン=シモーネ、ダニー・オズモンド、ブレンダ・ソング、ウィル・サッソー、エシャヤ・ドレイパー、キム・E・ホイットリー、アーネッタ・ウォーカー、マーゴ・ハーシュマン、ジョシュ・マイヤーズ、マイケル・ランデス、ルーカス・グラビール、アダム・ルフェーヴル、モリー・エフライム、ジョセフ・ガナスコーリ、ケリー・コフィールド・パーク、ロニー・ロス、ティファニー・グリーン、ジェネヴァ・カー、ジョン・デイリー、ユージーン・ジョーンズ、ベンジャミン・パターソン他。


『クルーエル・インテンションズ』『クリスティーナの好きなコト』のロジャー・カンブルが監督を務めた作品。
全米映画興行成績で初登場2位に食い込んだコメディー映画。
ジェームズをマーティン・ローレンス、メラニーをレイヴン=シモーネ、ダグをダニー・オズモンド(元オズモンド・ブラザーズ。妹のマリーとのダニー&マリー・ショーでも活動)、ナンシーをブレンダ・ソング、オマリーをウィル・サッソー、トレイをエシャヤ・ドレイパー、ミシェルをキム・E・ホイットリー、グランマをアーネッタ・ウォーカー、ケイティーをマーゴ・ハーシュマンが演じている。

冒頭、ジェームズのナレーションで「娘のために完璧な大学を選んだ」ということが説明され、赤ん坊のメラニーにノース・ウエスタン大のTシャツをあてがう様子が描かれて「計画は早い内から始めよう」という台詞が入る。
しかし、その直後には、もう合格通知が届いている。
それは勿体無いし、処理が雑すぎる。
赤ん坊の頃から計画が始まっていたことを示すのであれば、その後も成長過程で何かに付けて洗脳作戦が実行されていたことを見せるべきだ。それをやらないなら、赤ん坊のシーンの挿入も要らないし。

ジェームズが知らない所で、メラニーがジョージタウン大学への進学希望を明かし、判事から審査への口添えを約束されるシーンを描写しているのは上手くない。
そういう描写がある以上、実際に面接がOKになることは目に見えている。
そして、そのことを知らされてジェームズが驚く様子が描かれた時に、観客からすると「とっくに分かっていたことだし」ってことになるから、何の驚きも無い。

メラニーがジェームズの思っているような「真面目で堅物」とは全く異なっていることは、観客に早々と明かされている。もう模擬裁判をやっている時の様子からして、かなりノリの軽い奴だってことが伝わって来る。
判事から口添えを約束されて飛び付くのも同様だ。図書館へ行くと告げて外出する時も、すぐに嘘をついていることが明らかにされる。
しかし、そういうのは見せ方として上手くない。
もっとハッキリとした落差を付けてこそ、面白味が生まれるわけで。

ジェームズがメラニーとの関係をオマリー夫妻に語る様子と、メラニーが父への不満を友人たちに漏らす様子をカットバックで連ねるのは、やり方としては理解できるけど、そこに関しては見せ方として上手くないと感じる。
ジェームズが「メラニーとは何でも分かり合えて云々」などと語るのを最後まで一気に見せた後で、実はメラニーが図書館へ行っていないことを観客に明かし、父に対する不満を吐露するという流れにした方がいいだろう。
ただし、その後のメラニーは、ジェームズの前でも普通に不満を漏らしているし、反発しているんだよね。
そんなに行儀良く装っているわけでないのだ。

だったら、そもそも軽いノリも見せているんだし、序盤の構成を大幅に変えた方がいいんじゃないかと。
具体的には、「ジェームズがメラニーの幼い頃から洗脳作戦を続けてきたことを描き、カットが切り替わるとメラニーがジョージタウン大の面接を受けることを発表している様子が写し出される」という構成にした方が、話の流れとしてはいいんじゃないかと。
メラニーがジェームズの前でも軽いノリを見せるのなら、「ジェームズが真面目で堅物だと信じている」というのを見せる時間帯は無駄でしかないし。
どうせメラニーは「パパは最低」とハッキリと批判したりもするんだし、「洗脳作戦で全ては順調に運んでいると思っていたジェームズだが、メラニーからジョージタウン大の面接を受けると知らされてショック」という落差で笑いを作った方が効果的なんじゃないかと思うのよ。

パーカー家は両親とメラニーだけじゃなくてトレイと豚のアルバートもいるんだけど、こいつらの存在は邪魔でしょ。
「ジェームズが娘に干渉して何とかノース・ウエスタン大へ通わせようとして、メラニーは反発して」という父娘関係が軸になるわけで。
それを描く上で、トレイやアルバートなんて全く必要性が無い。
例えばトレイがジェームズかメラニーのいずれかの味方をするとか、メラニーがアルバートを利用してジェームズを遠ざけようとするとか、そんな風に父娘関係と密接に絡むならともかく、そういう形ではないんだし。

警察用GPS(PGPS)の故障で森に迷い込むという展開は、「ジェームズがメラニーをコントロールしようとする」という筋道とは全く関係が無い。
トレイとアルバートが付いて来るのも同様だ。アルバートが逃げ出して結婚式に乱入するのも、完全に話がズレている。結婚式のエピソードなんて、完全にアルバートが中心になっている。
そこだけ急に、なんで「豚のアルバートとの珍道中」みたいなノリになってしまうのかと。ピントがボヤけまくっているでしょ。
最初は「ジェームズが何とかメラニーを翻意させ、ノース・ウエスタン大学へ通わせようとする」という話だったはずなのに、途中から「家族で旅するロード・ムービー」へと変貌している。
「旅の道中で様々な出来事があって、家族の絆が深まりました」というロード・ムービーをやりたかったのなら、最初に「ジェームズがメラニーをノース・ウエスタン大学へ通わせようとする」という明確な目的を提示してしまったのは大きな失敗だ。

結婚式の騒ぎがあった後、メラニーは「ピンチになるとウチは団結するのね」と笑顔で話し、すっかりジェームズと仲良くなっている。父娘の対立は、なし崩し的に消滅している。
その後、東京への短期留学を知ったジェームズが嘆くと、メラニーは罪悪感を抱いて謝罪する。そこに来て、「メラニーの方が悪い」という形になってしまうのだ。
いやいや、それは違うでしょ。
ジョージタウン大へ行くことも反対していたんだから留学なんて知ったら反対するのは明らかで、だから隠していたんでしょうに。それなのに「メラニーが罪悪感を抱いて謝罪する」という形にしたら、ますますブレていると感じるわ。
なんで「ジェームズが可哀想」という見せ方にするのかと。

そんで、メラニーが思い出の歌を歌うとジェームズは簡単に仲直りし、ジョージタウン大へ行くこともクーパー・プログラムに参加することも受け入れてしまう。
いや、そりゃあ最終的に「娘の希望を最優先で考える」という物分かりの良さを見せることは必須だけど、まだ話は途中なのよ。
そういう変化は、もうちょっと後まで引っ張るべきじゃないかと。
ジェームズが全てを快く受け入れちゃったら、もう話としては終わっちゃうでしょ。

その後、ジェームズが女子寮に忍び込んで逮捕され、メラニーが「こんな人はパパじゃない」と拒絶し、ジェームズがグランマから「娘を信用しなくてどうするのか」と諭され、「もうジョージタウン大学は諦める。パパの希望通りになったわ」と言うメラニーに「ベストを尽くせ」と告げて一緒にジョージタウン大学へ向かう展開になる。
だけど、ジェームズが女子寮に侵入したのはメラニーを男から守ろうとしたからであり、「ジョージタウン大に行く」という問題に関しては、もう納得していたはずでしょ。
観光バスの中でジェームズはメラニーと話し合い、ジョージタウン大へ行くことに関しては納得したはずだ。それなのに、その後の展開で、なぜか「ジェームズは未だにメラニーをノースウエスタン大へ通わせようとしていて、グランマの説得で気持ちが変わった」みたいな形になっているのは変だろ。
「ジェームズがメラニーを過剰に心配する」という設定と、「ジェームズがメラニーをノース・ウエスタン大へ通わせようとする」という設定が上手く合致せず、そのせいで論点がズレたような状態を引き起こしているんじゃないかと。

再び「父娘が和解する」という手順を踏んだ後には、「ダイビングチームの飛行機と間違えてスカイダイビングチームの飛行機に乗せてもらい、スカイダイビングでワシントンのゴルフ場に着地し、新婦の父を湖に落としてしまい、カートで大学へ向かう」というドタバタ劇が用意されているが、それも何となく話が散らかっているような印象を受けてしまう。
父娘が完全に和解したのなら、その後は色々と欲張らず、「裏ワザ的な方法で大学へ向かう」ということだけをテンポ良く描いても良かったんじゃないかなと。
まあ、ともかくウォルト・ディズニー・ピクチャーズの製作したファミリー向けコメディー映画なので、毒も無ければ花も無い。
おまけに面白くも何ともないという次第であった。

(観賞日:2015年3月22日)

 

*ポンコツ映画愛護協会