『102』:2000、アメリカ

クルエラ・デ・ヴィルはダルメシアンを盗み、その皮でコートを作ろうと企んだが失敗に終わった。服役中の彼女はパヴロフ博士の行動制御療法を受け、すっかり生まれ変わった。クルエラは仮出所が許可され、保護観察下で奉仕活動を行うよう指示された。執事のアロンゾに迎えられたクルエラは、自宅にあった多くの毛皮を全て処分するよう命じた。
保護監察官クロエ・サイモンは、泥棒の前歴があるイワンを担当している。イワンはケヴィン・シェパードが営む「セカンド・チャンス」という施設で働いている。「セカンド・チャンス」は問題のある捨て犬を引き取り、育てる施設だ。しかし金銭的に潤っているとは言えず、ケヴィンは土地の所有者から、明日までに立ち退くよう迫られてしまう。
クロエは自宅で飼っているダルメシアンのディップスティックとドッティーの間に子供が生まれ、大喜びする。ディップスティックは、かつてクルエラに誘拐された犬の中の1匹だ。そのクルエラの保護監察官が自分だと知ったクロエは、相手が更生したとは信じられない。しかしクルエラは「セカンド・チャンス」の困窮を知り、施設を買い取って犬達を助けた。
クルエラは動物愛護運動に熱心に取り組み、マスコミからも取り上げられるようになった。そんな中、パヴロフ博士は行動制御療法の患者が連続する鐘の音を聞くと元に戻ってしまうことに気付くが、事実の公表を控えた。クロエの事務所を訪れたクルエラは、ビッグベンの鐘の音を聞き、昔の彼女に戻ってしまった。
クルエラは、動物愛護家から猛烈な非難を浴びている毛皮デザイナー、ジャン=ピエール・ルペルの元を訪れた。イタチの密猟者から有名デザイナーになったルペルは、クルエラと旧知の中だ。クルエラはルペルに対し、手を組んで新しいコートを作る話を持ち掛ける。コートの材料として、クルエラ達はダルメシアンの子犬を盗み始めた…。

監督はケヴィン・リマ、原作はドディー・スミス、映画原案はクリステン・バックリー&ブライアン・リーガン、脚本はクリステン・バックリー&ブライアン・リーガン&ボブ・ツディカー&ノニ・ホワイト、製作はエドワード・S・フェルドマン、共同製作はパトリシア・カー&ポール・タッカー、製作協力はミシェル・フォックス、撮影はエイドリアン・ビドル&ロジャー・プラット、編集はグレゴリー・パーラー&ソフィー・ソーレンソン、美術はアシェトン・ゴートン、衣装はアンソニー・パウエル、音楽はデヴィッド・ニューマン。
出演はグレン・クローズ、ジェラール・ドパルデュー、ヨアン・グリフィズ、アリス・エヴァンス、ティム・マッキナリー、イアン・リチャードソン、ベン・クロンプトン、キャロル・マクレディー、ジム・カーター、ロン・コック、ティモシー・ウエスト、デヴィッド・ホロヴィッチ、マイク・ヘイリー、ニコラス・ハッチンソン、ティム・ウィルコックス、ジューン・ワトソン他。


ディズニーアニメ『101匹わんちゃん』を実写でリメイクした1996年の『101』の続編。
クルエラをグレン・クローズ、ルペルをジェラール・ドパルデュー、ケヴィンをヨアン・グリフィズ、クロエをアリス・エヴァンス、アロンゾをティム・マッキナリー、イワンをベン・クロンプトン、クロエの秘書アグネスをキャロル・マクレディーが演じている。
ケヴィンが飼っているワドルズワースというオウムの声を、エリック・アイドルが担当している。

前作『101』は、本来はダルメシアンが主役であるべきなのに、悪役のクルエラばかりが目立ちまくり、完全に主役の座を奪ってしまうというバランスの崩壊を引き起こしていた。
そこで開き直ったのか、今回は最初からクルエラを主役に据えている。
それは登場キャラを見ても明らかで、前作から引き続いての登場はクルエラと犬のディップスティックのみ。まずクルエラありきの企画ということだ。
いっそダルメシアンが出てこなくてもいいんじゃないかと思うぐらいだ。

序盤から多くの種類の犬が登場し、ダルメシアンは「その中の1種類」という感じに過ぎない。セカンド・チャンスの犬達が出てくるが、彼らはダルメシアンではないのだ。
ケヴィンを牢から出すのはオウムだし、クルエラの行方を突き止めるのはケヴィンの犬だし、なかなかダルメシアンが活躍しない。
全体を通して、「ダルメシアンの映画」という印象は薄い。

前作の飼い主カップルではなく、新たな男女を犬の飼い主として登場させているので、また最初からロマンスを描かなければいけなくなっている。
そんな所に時間を使うより、クルエラとダルメシアンのドタバタに、もっと時間を使えばいいのに。
どうせケヴィンとクロエなんて、犬の飼い主というだけの存在価値しか持ち合わせていないのだし。

前作でダルメシアンが主役になれなかった要因の1つとして、セリフを喋らせなかったということが挙げられる。
セリフ無しで動物を主役にするのは、なかなか難しい作業だろう。
しかし、だからといって2作目からセリフを喋らせるわけにもいかない。
ただ、犬にセリフを喋らせない一方で、ジャージャー・ビンクス、じゃなかったワドルズワースには人間の言葉を喋らせている。
コメディーリリーフ&説明役ということなんだろうが、ただ騒がしいだけとしか感じない。

「個性無きダルメシアン達」だった前作に比べると、今回は1匹だけブチの無いオッドボールのキャラを立たせようとする意識は伺える。
しかし、「ブチが無い」という見た目の違いほど、中身の個性は強くない。
前半でオッドボールだけを特別扱いするので、こいつが主役として大活躍するのかと思ったら、それほど存在感を発揮するわけではない。

「クルエラがクレイジーな存在感を示し、こっぴどい目に遭う」というだけなら、前作の焼き直しに過ぎない。
そんなことは製作サイドも百も承知だろうし、だからこそルペルという新キャラを登場させたのだろうと思っていた。
ところが、ルペルは大して目立たない。
このコンビは結局のところ、クルエラばかりが自己アピールしていて、ルペルはオマケに過ぎない。

ルペルが元密猟者ということなので、彼がダルメシアンを次々に盗むのかと思ったら、それはアロンゾの役割になっている。
後半に入ってルペルがクロエ宅に潜入してダルメシアンを盗むというシーンがあるが、それも「このままだとルペルのやることが無いので、アロンゾの役割を譲った」という感じだ。
しかも、ルペルがダルメシアンを盗もうとするところでドタバタを繰り広げるのかと思ったら、やらないし。
いっそ後半は、クルエラとルペルが犬を盗もうとしてメタクソにやられるダルメシアン版『ホーム・アローン』でもいいぐらいなのに。
ああ、だけど前作はジョン・ヒューズ印の映画だったけど、今回は製作から外れているんだよな。

クルエラにしたってルペルよりは目立っているが、前作に比べてパワーアップしたという印象は無い。
両名とも肉体労働にはほとんど関与せず、犬を盗むために痛い目を見るのはアロンゾの役回りになっている。
終盤にルペルを懲らしめるのもアロンゾだし、クルエラが巨大ケーキにされる最後のシークエンスを除けば、アロンゾが主役みたいなモンじゃないか。
どっちにしてもダメなモンはダメだけど。


第23回スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【最悪の助演男優】部門[ジェラール・ドパルデュー]
ノミネート:【最も痛々しくて笑えないコメディー】部門
ノミネート:【誰も要求していなかったリメイク・続編】部門
ノミネート:【最悪のカップル】部門[ジェラール・ドパルデュー&グレン・クローズ]
ノミネート:【最悪のヘアスタイル】部門[ジェラール・ドパルデュー]

 

*ポンコツ映画愛護協会