『101』:1996、アメリカ
ロジャーは売れないビデオゲーム・デザイナー。ダルメシアン犬のボンゴを飼っている。アニタは駆け出しのファッション・デザイナー。こちらもダルメシアン犬のバーディを飼っている。ある日、ロジャーが公園を散歩している途中、ボンゴがバーディを追い掛けたことから、彼はアニタと出会った。
ボンゴとバーディが離れ離れになることを嫌がり、それに引っ張られるようにロジャーとアニタも恋に落ちた。こうしてロジャーとアニタ、ボンゴとバーディという2組のカップルが完成。ロジャーとアニタは結婚し、アニタの乳母でメイドのナニーと共に暮らし始める。
やがてアニタとバーディが、どちらも妊娠していることが分かった。喜ぶロジャーとアニタの元に、アニタの上司でファッション界の女王クルエラ・デ・ヴィルがやって来た。アニタの結婚や妊娠には嫌悪感を示すクルエラだが、バーディの妊娠には大喜びする。
やがてパーディに15匹の子犬が生まれたが、すぐにクルエラがやって来て全ての子犬を買い取ると言い出した。ロジャーとアニタは売ることを拒否し、クルエラを追い返す。しかし、クルエラは諦めたわけではなかった。彼女には恐るべき野望があったのだ。
以前、アニタが描いたデザイン画を見た時に、クルエラはその野望に取りつかれた。それは白と黒のブチ模様のダルメシアンの子犬の毛皮で、ゴージャスなコートを作ること。彼女は手下のジャスパーとホーレスを使い、ロジャーとアニタの子犬を誘拐してしまう…。監督はスティーブン・ヘレク、原作はドディー・スミス、脚本はジョン・ヒューズ、製作はジョン・ヒューズ&リカルド・メストレス、製作総指揮はエドワード・S・フェルドマン、撮影はエイドリアン・ビドル、編集はトルーディ・シップ、美術はアシェトン・ゴートン、衣装はアンソニー・パウエル&ローズマリー・バロウズ、音楽はマイケル・ケイメン。
出演はグレン・クローズ、ジェフ・ダニエルズ、ジョエリー・リチャードソン、ジョーン・プローライト、ヒュー・ローリー、マーク・ウィリアムズ、ジョン・シュラップネル、ティム・マッキナーニー、ヒュー・フレイザー、ゾーレン・ワイズ、マーク・ハディガン、マイケル・パーシヴァル、ネヴィル・フィリップス、ジョン・エヴァンス、ヒルダ・ブライド、マージェリー・メイソン他。
ディズニーアニメ『101匹わんちゃん』を実写化した作品。
ヘッド・アニマル・トレーナーのゲイリー・ゲローを始めとする40人以上のドッグ・トレーナーが、登場する犬の調教に携わっている。
犬の他にも馬や豚、はてはスカンクやアライグマと様々な種類の動物が登場するのだから、アニマル・トレーナーは随分と苦労させられたことだろう。撮影のために多くのダルメシアン犬が使われており、例えばボンゴは4匹によって演じられている。同じ模様にするため、メイクでブチを付けたり消したりという作業が行われたそうだ。ちなみに、全部で485匹のダルメシアン犬が集められたという。
前半部分は、キャラ紹介や出産までの経緯を描くために使われる。
そのため、ダルメシアンが活躍したりするような場面は無い。
しかし、ボンゴやバーディのキャラクターを引き出す場面を作り出すことぐらいは出来たはずで、それを全くしていないのは疑問だ。登場する動物の仕草は可愛いのだが、個性は全く感じない。
見かけも同じなら、中身も同じように感じられた。
人間の言葉を喋らせるという演出をしていないので、動きだけで性格を表現するのは難しかかったという問題はあるだろう。しかし、それにしたって、「ただ数が多いだけ」というのは淋しすぎる。クローンじゃないんだからね。結局、この作品は犬が主役になっていない。
犬が活躍する姿を見せるよりも、クルエラや手下がコテンパンにやっつけられる姿を見せることに重点が置かれている。
悪玉は魅力的に描かれているが、善玉は一向に輝きを見せないのである。本来ならば主役はダルメシアン犬であるべきだと思うが、完全にクルエラ・デ・ビルが一人勝ちした映画である。彼女を演じるグレン・クローズが、強烈な存在感を示す。邪悪な存在でありながら、どこか明るさや壮快さを持った怪女を見事に演じている。
それが製作者の意図ならば構わないが、果たしてクルエラだけが目立ち、それ以外は何も印象に残らないというのは正解なのだろうか。
結局、クルエラは子犬を殺してコートを作ることは出来なかったが、101匹のダルメシアンの存在を殺すことには大成功したようだ。