『ヤング・シャーロック/ピラミッドの謎』:1985、アメリカ

1870年12月、ジョン・ワトソン少年は、田舎からロンドンの高校へと転校してきた。そこで彼は、シャーロック・ホームズという推理好きの少年と出会う。ホームズは、ボブスター会計士の転落死とネズビット牧師の事故死に興味を抱いていた。
ホームズは二つの死に共通するものを感じ、それが両方とも事故ではなく殺人だと考えていた。だが、ホームズは彼を嫌う同級生ダドリーの策略によって、カンニングの犯人に仕立て上げられてしまう。そのため、彼は退校処分となってしまった。
学校を去ろうとしていたホームズは、尊敬していたワックスフラター元教授の不審な死に遭遇する。ボブスターやネズビットの死との共通点を感じたホームズはロンドンに残り、ワトソンやワックスフラターの姪エリザベスの協力を得て、事件の捜査を開始する。
事件の手掛かりは、死ぬ間際にフラターが言い残した「エタール」という言葉と、現場から立ち去った怪しい男の落としていった吹き矢だ。やがてホームズは、エジプトのイシリス神を信じる狂信的集団ラメテップが、事件に絡んでいることを突き止める…。

監督はバリー・レヴィンソン、脚本はクリス・コロンバス、製作はマーク・ジョンソン、製作総指揮は スティーヴン・スピルバーグ&フランク・マーシャル&キャスリーン・ケネディ、撮影はスティーヴン・ゴールドブラット、編集はスチュ・リンダー、美術はノーマン・レイノルズ、衣装はレイモンド・ヒューズ、音楽はブルース・ブロートン。
出演はニコラス・ロウ、アラン・コックス、ソフィー・ウォード、アンソニー・ヒギンズ、スーザン・フリートウッド、フレディ・ジョーンズ、ナイジェル・ストック、ロジャー・アシュトン=グリフィス、アール・ローズ、ブライアン・オウルトン、パトリック・ニューウェル、ドナルド・エクルス、マシュー・ライアン、マシュー・ブラクスタッド、ジョナサン・レイシー、ウォルター・スパロー他。


推理小説家アーサー・コナン・ドイルが生み出した名探偵シャーロック・ホームズと相棒ワトソンの、若き日の冒険を描いた作品。ホームズをニコラス・ロウ、ワトソンをアラン・コックス、エリザベスをソフィー・ウォードが演じている。

デニス・ミューレンが手掛けた世界で初めてのフィルム・レゾリューションCGキャラクターが登場するなど、幻覚のシーンに特撮技術がたっぷりと使われている。それは素晴らしいことかもしれない。
でも、それってシャーロック・ホームズ物に必要なのか?

もはや、この映画はホームズ物とは言えない。推理の楽しみやトリックの面白さは全く味わえませんよ。完全にアドベンチャー映画。怪しげな宗教儀式とかあるし。
若い頃のホームズが主人公のはずなのに、完全にヤング・インディアナ・ジョーンズだ。

この作品の主人公を、若き日のシャーロック・ホームズにする意味が全く分からない。で、中身は完全にホームズ物から外れているくせに、最後だけモリアーティ教授を持って来たりするのが逆にイヤな感じだったりして。
一応はホームズの生みの親コナン・ドイルへの敬意が示されているのかもしれんが、敬意があったらこんな映画は作れないと思う。

これってもしかして、「最新の特撮技術をたっぷり使いたい」という理由だけで作った映画なんだろうか。そう勘繰りたくなるくらい、むやみやたらと特撮技術が使われている。それと、大掛かりなセットとかね。
で、そこに「若い頃のホームズとワトソン」というキャラクターを、とりあえずハメ込んでみたというだけに思えてしまう。

内容としては前述のように、推理物としての楽しみは全く無いと断言する。一応は推理もしているのだが、そんなことよりSFXってことなんだろう。そこかしこに日本のアニメーションからの影響をひしひしと感じるのは、おそらく私だけではないだろう。

「単純にインディ・ジョーンズの亜流として作られており、SFXだけが売りでストーリーは大して力が入っていない」と観客に思われるのがイヤだったのか、終盤には「ヒロインのエリザベスを殺してしまう」という、意外な展開が待っている。
しかし、そんな裏切りは誰も期待していない。
「素直にハッピーエンドで良かったのに」と、強烈に思った。

 

*ポンコツ映画愛護協会