『ヨギ&ブーブー わんぱく大作戦』:2010、アメリカ&ニュージーランド

ジェリーストーン自然公園には、豊かな自然を求めて多くの家族連れがピクニックにやって来る。熊のヨギは相棒のブーブーに協力させて、家族連れのバスケットを狙うが失敗する。公園監視員のスミス隊長は、唯一の部下であるジョーンズから、家族がバスケットを盗まれたという報告を受ける。ヨギの仕業だと確信したスミスは、様子を見に行く。ヨギは新たな仕掛けを用意し、別の家族連れから食料を奪おうとする。そこへスミスが来て注意すると、ヨギは「僕たちじゃない」とバレバレの嘘をついて立ち去った。
レイチェルという美女が事務所に来たので、スミスは一目惚れしてしまう。レイチェルはドキュメンタリー映画の撮影許可を申請し、喋る熊として有名なヨギ&ブーブーを撮りたいのだと説明した。ブラウン市長は補佐官から、金の使い過ぎで街が破綻の危機だと聞かされる。既にゴルフコースや消防署などを売却していたが、まだ予算は不足していた。そこでブラウンは、ジェリーストーン自然公園を農地として売却しようと考えた。
スミスはヨギ&ブーブーに、レイチェルを紹介した。レイチェルは2頭の生活風景を撮影するため、ブーブーの棒タイに小型カメラを取り付けた。ブラウンは補佐官を伴ってスミスの元へ行き、「公園は維持費が掛かり過ぎているので閉鎖する」と通達した。百周年を迎える伝統ある施設だとスミスは訴えるが、ブラウンは「いかなる市の資産も、自力で予算を生み出せない場合は別の用途に変更できる」という条例の存在示した。
決算報告は1週間後だが、ジェリーストーンには3万5千ドル以上の赤字があった。スミスは「何とかしてみせます」と言うが、ブラウンは鼻で笑った。ヨギはブーブーに、バスケット泥棒用のグライダーを披露した。釣竿を盗まれたという報告を受けたスミスは2頭の住み家へ行き、グライダーを見つけて没収した。彼は「キャンパーの邪魔をするな。このままだと公園は閉鎖だ。君の悪戯で、みんな酷い目に遭ってる」と話すが、ヨギは全く反省の色を見せなかった。
レイチェルが山へ行ったことを知ったスミスは、正装して会いに出掛けた。スミスはレイチェルをロッジでのディナーに誘い、ステーキを御馳走した。そこへヨギが現れ、「貯めた金を公園のために寄付する」と百ドルををスミスに差し出した。だが、それは募金箱から盗んだ金だった。スミスが「公園に必要なのは客を呼ぶことだ」と言うと、ヨギは「オイラがショーをすれば大勢が集まる」と語る。スミスは「キャンパーの邪魔になることはするな。公園を救いたいなら、身を潜めて人間に近付くな」と注意し、ヨギに約束させた。
レイチェルはスミスに「イベントをやれば大勢のお客さんが集まるわ」と告げ、百周年記念の花火大会を提案した。来客の半分が年間パスを買えば運営資金を捻出できると考えたスミスは、レイチェルにも協力してもらって宣伝活動に励んだ。ブラウンは隊長になりたがっているジョーンズに接触し、「隊長にしてやるから大会を潰す協力をしろ」と持ち掛けた。スミスが隊長になるまでに12年掛かったと知ったジョーンズは、「そんなに待てない」と考えてブラウンに協力することを決めた。
百年祭には大勢の人々が集まり、スミスは年間パスを1割引きで売る。ジョーンズはヨギの元へ行き、大会を盛り上げるためにショーをやるよう促した。ヨギが水上スキーを披露すると、来客は喝采を送った。調子に乗ったヨギはファイアー・トーチを回し始めるが、マントに引火してしまう。慌てたヨギから外れたマントは、用意してあった花火の舞台に落下した。火の付いた花火は倒れ、客に向かって次々に発射された。客は一斉に逃げ出し、花火大会は大失敗に終わった。
スミスはヨギに、「君の尻拭いで、いつも僕は酷い目に遭って来た。今度は公園まで潰した」と告げた。公園の閉鎖が決定し、ブラウンから移動を通告されたスミスは荷物をまとめる。彼はレイチェルに「公園にとっても、君にとっても、僕は要らない存在だったんだ」と告げ、ジェリーストーンを去った。ヨギはブーブーに、「オイラは頭が良すぎて迷惑ばかり掛けて来た。普通の熊に戻る。これからは森の中で暮らすよ」と告げる。しかし彼がポテトチップスやコーラなどを持って行ったので、ブーブーは呆れた。
公園を農地に作り変える計画を知らないジョーンズは、隊長に就任して浮かれていた。ヨギは森に入るが、すぐに持参した食料は切れた。彼は森で食料を集めようとするが、まるで口に合わなかった。そこへブーブーが現れて木が伐採されていることを知らせ、公園を救うために頭を使うよう促した。スミスの力が必要だと考えたヨギは、街の清掃員として働く彼の元へ赴いた。弱気になっていたスミスだが、ヨギの「諦めちゃダメだ。ジェリーストーンのために戦いましょう」という言葉で気力を取り戻した…。

監督はエリック・ブレヴィグ、キャラクター創作はハンナ=バーベラ・プロダクションズ、脚本はジェフリー・ヴェンティミリア&ジョシュア・スターニン&ブラッド・コープランド、製作はドナルド・デ・ライン&カレン・ローゼンフェルト、共同製作はティム・コディントン、製作総指揮はアンドリュー・ハース&ジェームズ・ダイヤー&リー・バーガー、撮影はピーター・ジェームズ、編集はケント・ベイダ、美術はデヴィッド・R・サンドファー、衣装はリズ・マックレガー、音楽はジョン・デブニー、音楽監修はジュリアンヌ・ジョーダン。
声の出演はダン・エイクロイド、ジャスティン・ティンバーレイク、ジョシュ・ロバート・トンプソン。
出演はアンナ・ファリス、トム・キャヴァナー、T・J・ミラー、ネイサン・コードリー、アンドリュー・デイリー、デヴィッド・ストット、グレッグ・ジョンソン、クリスティー・クイラム、パトリシア・アルダーズリー、ティム・マクラクラン、ヘイデン・ヴァーノン、ディーン・ノーズリー、バリー・ダフィールド、マイケル・モリス、ウィル・ウォレス、スザンナ・スルペク他。


ハンナ=バーベラ・プロダクションズのTVアニメーション『Yogi Bear』(日本では『クマゴロー』の題名で放送されたことがある)を基にした作品。
脚本は『恋のクリスマス大作戦』のェフリー・ヴェンティミリア&ョシュア・スターニンと『団塊ボーイズ』のブラッド・コープランド、監督は『センター・オブ・ジ・アース』のエリック・ブレヴィグ。
ヨギの声をダン・エイクロイド、ブーブーをジャスティン・ティンバーレイクが担当している。
レイチェルをアンナ・ファリス、スミスをトム・キャヴァナー、ジョーンズをT・J・ミラー、補佐官をネイサン・コードリー、ブラウンをアンドリュー・デイリーが演じている。

この映画は、「ヨギやブーブー、スミス隊長のことは皆さん、良くご存じでしょ」というスタンスで作られている。
だから、それらの面々を紹介するための手順は用意されていない。
ヨギやブーブーが人間のように喋り、人間のように行動しても、誰も驚かない。
それどころか、レイチェルが「有名」と説明しているように、ヨギ&ブーブーが人間のように行動することは広く知られている設定になっている。

「食いしん坊でイタズラ好きだけど失敗ばかり」ってのが、ヨギというキャラクターの大きな特徴であり、同時に笑いを生み出すポイントになっているんだろうと思う。
だが、これがヌルいのなんのって。
まあファミリー映画であり、基本的には小さな子供たち向けの映画だということを考えれば、「大人の感覚で鑑賞すると厳しい」ってのは、ある程度は仕方が無いのかもしれない。
ただし、「それにしても」と思うぐらいのヌルさである。

冒頭、ヨギはワイヤーに吊るされて丘の上から滑降し、家族連れのバスケットを奪取する。だが、その勢いのままワイヤーの滑車が木にぶつかり、ヨギは一回転して飛ばされる。バスケットが手から離れ、中身が散らばる。
着地したヨギはバスケットを拾うが、穴が開いて中身が空っぽになっている。
次にヨギが思い付いたのは、木のテーブルの板に重さで作動するセンサーを取り付け、投石器のように跳ね上がってバスケットを的まで飛ばす仕掛け。
でもスミスの注意を受けている間に仕掛けが作動し、パイがヨギ顔に激突する。
文章による説明だと伝わりにくいかもしれないが、その2つのコント、まあヌルいよ。

そこにマジでツッコミを入れるのはカッコ悪いことかもしれないけど、州知事の座を狙っているブラウンが予算を使い過ぎており、金を捻出するためにゴルフコースをマンション業者に売却し、消防署2つをフローズン・ヨーグルト会社に売り払い、湖の水の販売権も売り、空っぽになった湖をゴミの廃棄場に使い、そして今度は自然公園を農地に変更して森林伐採権を売り払おうとするなんてのは、変でしょ。
そんな奴が州知事選に当選するはずがないでしょ。
これが「市民からは気付かれないように裏で手を回している」ってことならともかく、堂々と悪事を繰り返しているんだぜ。
メチャクチャだわ。

レイチェルがブーブーの棒タイに小型カメラを知り付けて記録を開始したのに、ヨギがバスケット泥棒用のグライダーを平気で見せるのは不可解だ。ヨギは「頭が良すぎる熊」ってことのはずなのに、なんでカメラに記録されてバレることに気付かないのか。
しかも、「ヨギが気付かずに喋っちゃったのでスミスにバレる」とか、「カメラで撮影していていることをブーブーに指摘される」とか、そういうオチがあるならともかく、そういうのは無いんだよな。
そもそも、レイチェルが小型カメラを取り付けた後、それを巡る筋書きが描かれるわけではないんだよね。終盤になって小型カメラの存在に触れるまで、それを取り付けたことなんて完全に忘れたかのように物語が進んでいく。
だったら、レイチェルが自らカメラを回し、ヨギ&ブーブーに密着するスタイルを取った方がいいんじゃないかと思ってしまう。ブーブーに設置した小型カメラの映像だけでは、たぶんドキュメンタリー映画なんて作れないだろうし。

ヨギはスミスから公園が閉鎖になるかもしれないと聞かされても、まるで危機感を持たない。
「あらゆる手を尽くして公園を守らなきゃならない。食べ物を絶対に盗むな」と諭されても、「みんなオイラに食べ物を盗まれるのを期待して来る。ハッピーになって帰ってる」と平気な顔で言う。
「君のせいでみんな酷い目に遭ってる」とスミスが告げると、「オイラは遭ってません」と語る。
その辺りの態度は、かなり不愉快なキャラクターになっている。

一方でスミスにしても、「あと1週間で赤字を解消しないと公園が閉鎖になる」という切羽詰まった状況なのに、それに見合う危機感を胃でいているようには見えない。
何しろ、ヨギに説教した直後、浮かれた様子でレイチェルの元へ行き、ディナーに誘っているのだ。
今は惚れた女を口説くことよりも、公園閉鎖を阻止するための対策を練ることに全神経を注ぐべきじゃないのかと。もっと必死になって、赤字を解消するための方法を考えなきゃいけない状況のはずだろうに。
ヘラヘラした顔で、恋にうつつを抜かしてる場合じゃねえだろ。

自分のダンスや水上スキーのショーで客を呼び込もうと提案するヨギに対して、スミスが「森に潜んでろ、余計なことはするな」と反対するのは、まるで解せない。
ヨギ&ブーブーが人間のように喋ったり行動したりすることは、広く知られているはすだ。
そして、そんな熊は他に存在しないのだから、とても珍しいってことになる。
だったら、そんなヨギ&ブーブーを売りにすれば大勢の客を呼び込むことが出来るんじゃないかと思うんだよね。

「普通の熊らしくしろ」というスミスの考えは、どうにも理解し難い。
ヨギが普通の熊らしく行動しても、それは客を呼び込むことに繋がらないでしょ。単にピクニックをしたがるキャンパーだけで黒字が出るならともかく、そうじゃなくて毎年の赤字が続いているわけで。
あと、これまで赤字続きだったのに、百年祭で花火大会を開くことに決めて宣伝活動をしただけで、大勢の客が集まるのは無理がある展開だわ。
そんな程度で多額の赤字が一気に解消されるほどの客が集まるのなら、イベントを頻繁に開けばいいわけで、すんげえ簡単ってことになるじゃねえか。

ヨギが水上スキーのショーを始めると観客は喝采を浴びせて満足しているので、「やっぱりヨギにショーをやらせた方が正解じゃねえか」と思ってしまう。
その後、ヨギのヘマで台無しになってしまうわけだが、ようするにヨギがショーをすること自体が問題なのではなく、「必ずヘマをして迷惑を掛けるからダメ」ってことなんだよね。
だけど、スミスは「君は必ずヘマをして迷惑を掛けるから、ショーは駄目。おとなしくしていろ」という風に注意していたわけではないのよ。
だから、そこに大きなズレを感じるのだ。

花火大会が台無しになった後、スミスはヨギに「君は頭が良すぎる。独りよがりで辺り構わず引っ掻き回す。どれだけ頭がいいんだ」と非難の言葉を浴びせる。
ヨギも「頭が良すぎてて迷惑ばかり掛けて来た」とブーブーに言う。
しかし、ヨギは頭が良すぎるから、迷惑を掛けているわけではない。ボンクラなヘマをやらかすから迷惑を掛けてしまうのだ。
だから、そこもズレがある。
最終的に、ヨギやスミスが考えの間違いに気付くならいいんだけど、そこを間違えたままなので、なんかモヤモヤするわ。

前述したように、終盤に入ってから、ブーブーカメラの映像をレイチェルが確認するシーンがある。そして、その映像によって、ブーブーの飼っていた亀が絶滅危惧種だと分かり、「そのことが明らかになれば公園閉鎖は阻止できる」という展開へ繋げている。
ようするに、小型カメラを取り付けたのは、そのための手順なのだ。
でも、伏線の回収としては、かなり無理矢理だと感じる。
それに、小型カメラが無くても、「レイチェルが住み家に行って亀を見つける」とか、「ブーブーがレイチェルに亀を紹介する」とか、終盤の展開を成立させるための方法は幾らだって思い付くしね。

その後には、亀を奪い取ったブラウンが得意げになって悪事をベラベラと喋り、彼が去ってから「全て小型カメラに記録されている」と気付いたスミスたちが記者会見のスクリーンにその映像を映し出すという展開がある。
だから、そこでも小型カメラは活用されているけど、それはそれで「また小型カメラを利用するんですか」と思ってしまう。
あと、その直前に「小型カメラの映像に亀が写っていた」というネタをやっているもんだから、ブラウンが悪事を喋っている時点で「全て小型カメラに記録されてますけど」ってのが分かってしまうのね。
だから、後からスミスたちが気付いても、「とっくに分かってましたけど」ってことになっちゃうんだよね。

(観賞日:2015年5月29日)

 

*ポンコツ映画愛護協会