『夢を生きた男 ザ・ベーブ』:1992、アメリカ

1902年、父親に連れられてボルティモアのセント・マリー少年矯正院にやって来た7歳のベーブ・ルース。素行の悪さが手におえなくなり、親が施設に預けることにしたのだ。矯正院で初めて野球を知った巨漢の少年は、たちまち才能を発揮するようになる。
12年後、すっかり成長したルースはマイナーリーグのボルティモア・オリオールズにスカウトされる。そこでの活躍が認められ、メジャーリーグのボストン・レッドソックスへ。目覚ましい活躍を見せるルースだが、素行の悪さは相変わらずだった。
ルースはヘレンという女性と結婚するが、乱れた生活態度が原因で関係が悪化し、ついには離婚に至る。そんなルースをレヴューガールのクレアが慰め、やがて2人は結婚した。生活態度も改まってきたルースだったが、年齢と共に成績が落ち始めていき…。

監督はアーサー・ヒラー、脚本&製作はジョン・フスコ、製作総指揮はビル・フィネガン&ウォルター・コブレンツ、撮影はハスケル・ウェクスラー、編集はロバート・C・ジョーンズ、美術はジェームズ・D・ヴァンス、衣装はエイプリル・フェリー、音楽はエルマー・バーンスタイン。
主演はジョン・グッドマン、共演はケリー・マクギリス、トリニ・アルヴァラード、ブルース・ボックスライトナー、ピーター・ドゥナット、ジェームズ・クロムウェル、J・C・クイン、ジョー・ラグノ、マイケル・マクグラディ、ランディ・ステインメーヤー、ダイラン・デイ、リチャード・タイソン、ラルフ・マレーロ、ボブ・スワン、バーナード・ケイツ、スティーヴン・キャフリー、ジーン・ロス他。


メジャーリーグの歴史に名を残す伝説的なホームラン王、ベーブ・ルースの人生を描いた作品。ルースをジョン・グッドマン、共演はクレアをケリー・マクギリス、ヘレンをトリニ・アルヴァラード、矯正院のマシアス神父をジェームズ・クロムウェルが演じている。

ジョン・グッドマンをベーブ・ルース役にキャスティングしたのは、正解と言っていいだろう。かなり似ている。しかし、残念ながら今作品には、それぐらいしか評価すべき点が見当たらない。映画としては、全く誉める部分が見当たらない。

事実を単純に順番に並べているだけで、演出には何のメリハリも感じられない。当然のことながら人間関係はあるのだが、それを生かす様子は無い。感動のクライマックスも無いし、最後のシーンに向けて盛り上がっていくわけでもない。

確かに伝記映画というのは、長い人生を限られた時間の中で収めるために、どうしても「収める」ことだけで終わってしまいがちだ。それにしたって、この作品はあまりに凡庸で、人間の野球映画としての魅力も無ければ、ヒューマン・ドラマとしての魅力も無い。

何よりも、ルースという人間があまりに身勝手で素行が悪いので、主人公としての魅力が全く無い。憎めない悪党だったらOKだが、単に素行不良な男として描かれている。
もしもアメリカでの一般的なルース像がそのような感じなのだとすれば、彼を主役にした映画を作ったこと自体が間違いなのでは、とさえ思ってしまった。

 

*ポンコツ映画愛護協会